e-bike試乗レビュー
e-bike購入後にまさかの新型発表。ミヤタ「ROADREX i 6180」をいち早く試乗してきた
2021年7月21日 08:00
「えぇ~!!」と思わず声が出たのが、5月11日に掲載されたミヤタのe-bikeに関するニュース記事。そこにはミヤタのe-bike「CRUISE」と「ROADREX 6180」の情報が……。新カラー追加とか軽めのものではなく、インチューブバッテリーを初採用という大幅モデルチェンジに関することだった。
筆者は今年の2月にROADREX 6180を購入していただけに、この情報はかなりショック。まあ、ROADREX 6180もデビューから時間が経っていたのでモデルチェンジが近いことは予想していたけど、それでもいろいろな話などから「今年中はない」と踏んでいた。ところが購入後わずか3カ月で新型が発表されるとは……。
さて、そんなわけで近々旧型(になる)モデルのオーナーとしては新型が非常に気になっていた。とはいえ、事前情報は限られていたのでこの件に対してはもんもんと過ごしていたところ、伊豆にあるMERIDA X BASEで開催された新型ROADREX i 6180の発表会に参加のお誘いを受けた。
ということで、プロトタイプではあるが新型ROADREX i 6180(以下、新型)をいち早く試乗してきた。現行型のROADREX 6180(以下、現行型)オーナーとして「どこが変わったのか」「乗った感じはどうなのか?」をお伝えしよう。
まず、おさらい。ミヤタのROADREX 6180はオンロード、オフロード問わず、多彩なシーンに対応するグラベルロードe-bike。
ドライブユニットはシマノSTEPS「E6180シリーズ」を採用。シマノSTEPSシリーズではミドルレンジに位置するモデルだけど、上り坂でのトルク不足などは一切ないし電費もよい。また、アシストフィーリングも「いかにもモーター動いてます」みたいなモノでなく、ペダルの踏み込みに対してナチュラルで違和感はない。そんな感じで、バランスよい特性のドライブユニットというのが筆者の印象だ。
オフロード走行も視野に入れたジオメトリーを採用しつつ、シマノSTEPS「E6180シリーズ」搭載を前提に設計された専用アルミフレームで、バッテリーはシートチューブ部にシマノ製大容量リチウムイオンバッテリーのBT-E8014(36V/11.5Ah)を装着するようになっている。
このような現行型に対して新型だ。最大のトピックはなんと言ってもインチューブバッテリーを採用したことだろう。
インチューブバッテリーにするメリットは、バッテリーという重量物をできるだけ低い位置に搭載する低重心化が主題のようだが、ダウンチューブに大容量のバッテリーを収めると、フレームが太くなりすぎる傾向でもあった。これはルックスの面でも気になることであるし、フレーム設計の観点からも強度バランスが取りにくくなる課題もあった。
そこで新型では、サードパーティのDARFON社がリリースしているe-bike用小型バッテリーを採用した。そして、このバッテリーサイズに合わせてフレームをデザイン&設計することで、ダウンチューブ内蔵式の問題点を克服しているそうだ。
バッテリー容量に余裕があるシマノ製から小型のDARFON製に変えたことによって、スペック上の最大航続距離が気になるところだが、そこは市場での乗られ方などをリサーチしたうえで問題ないレベルに収めているという。とくに新型は趣味や生活で乗るグラベルロードバイクだ。そうしたキャラクターであることを踏まえて、実際の使用状況に合わせ込んだモデルと考えていいだろう。1充電あたりの最大航続距離はエコモードで105km、ノーマルモードで85km、ハイモードで70kmだという。
次はフレーム全体に関して。インチューブバッテリーを採用したことで、ダウンチューブ長が現行型より長くなったようだが、それはヘッドチューブを短くすることで対応しているとの説明を聞いた。フレームを見ると、現行型オーナーの視点ではヘッドまわりの印象がコンパクトになったと感じたし、ロードバイクっぽくも見えるものであった。
また、シートチューブからバッテリーがなくなったことで2種類のフレームサイズのうち、小さいサイズを現行型より20mm短くすることができたので、フレーム自体がコンパクトになっていることも感じた。
筆者は身長約168cmくらいで現行型は470というサイズ(シートチューブ長が470mm)に乗っている。このサイズの代わりになるのが450(シートチューブ長450mm)で、試乗した新型もこのサイズだったので試しに跨がってもみると、股下に明らかに余裕がある。これなら小柄な人でも扱いやすいのではないだろうか。
車体重量は現行型より若干重くなっていて、現行型の470サイズが18.1kgに対して、新型の450サイズが18.9kg。現行の530サイズが18.3kgに対して新型が19.1kgとなっていたが,取り回しで「重い」と感じることはなかった。
肝心のドライブユニットは現行型と変わらずのシマノSTEPS「E6180シリーズ」、ハンドル周辺の操作系アイテムも変わっていない。ここは現行型オーナーとしてはホッとしたところ。もし、ドライブユニットまで変わっていたら「買い換え不可避」みたいな気持ちになったかもしれない。
バッテリーの能力は現行型が勝っているのだけど、正直、アシスト介入が少ない平坦路中心の走行であれば、毎日約20km走ったとしてもふた月くらいは充電が不要だろうから、アシストの介入時間が長いヒルクライムをガンガンやるのでなければ現行型ほどのバッテリー容量は必要ない気もする。
おそらく新型で採用したバッテリーも平坦路中心の走行ならばかなりの距離を充電なしで乗れると思うので、一般的な乗られ方においてバッテリーの小型化による不利益はないはずだ。
バッテリーやフレームのほかにも新型の変更点はほかにもあるが、あとは画像にて紹介していこう。
新型のプレゼンテーション終了後は、約1時間の試乗。MERIDA X BASEのまわりは自転車の試乗に適したコースが豊富にあるが、以前、現行型の試乗でも走った狩野川沿いのルートを中心に走ってみた。
試乗車は新型の430サイズ。シート高を自分が乗っている現行型と同じ高さに合わせて漕ぎ出すと……。ん? ドライブユニットのアシストに関しては、現行型と同様のスムーズさで漕いでいて違和感はなかったが、明らかに「違う」と感じたのがハンドリング。いつも乗っている現行型に比べて、明らかに直進安定性がいい……いや、バランスが取りやすいのだ。
河川敷のオフロードに降りても印象は変わらない。河川敷のオフロードは梅雨時期だったのでところどころにぬかるみがあり、それを避けて走るのだけど、新型は車体を無理に抑え込まずとも狙ったラインに車体が向く感じで走りやすく感じた。また、バランスが取りやすいので、起伏があるところも積極的に走ってみようかという気にもなり、余計に走り回ったくらいだ。
オフロード後は一般道も走ってみた。周辺の道路は舗装が古めで、とくに路肩は路面の荒れもそれなりだ。こういう道路は車体が振られやすい傾向だと思うが、新型ではけっこう安心して路肩を走れた。
こうした特性は何がポイントなのかを試乗後にミヤタのスタッフに質問してみたところ、いちばん貢献しているのはバッテリーの搭載位置を変えたことによる重量バランスと低重心化だという。たしかにプレゼンテーションでも低重心化に触れていたけど、バッテリーの位置がシートチューブからダウンチューブに移ったくらいで「そんなに変わるかな?」と思っており、とくに重要と捉えていなかったけど、ヒジョーに大事なポイントだったようだ。
でも、こう書くと現行型の重量バランスやハンドリングがよくないと感じるかもしれないが、そういうことではない。購入後の約3カ月で現行型を1,000kmほど乗っているが、ハンドリングに不安や不満はない。まあ、当初からクイックな特性だとは感じていたが、それはネガティブなものではない。でも、バランスが取りやすくて安心して乗れることは、公道を走るe-bikeにとって大きな進歩なので、ここは「新型がいい」と素直に認めるべきところ。ホント、いいと思う。
いやぁ、しかし、予想していたより好印象だったのはワクワクした反面、現行型オーナーとしてはガッカリ感も大きいのは正直なところ。……なので、ひとことだけ言わせてほしいのは「やってくれましたね、ミヤタさん(泣)」ですよ。
新型ROADREX i 6180の印象として、乗る前は「ドライブユニットが変わったわけでもないから乗り換えはしない」と思っていたけど、新型の走りのフィーリングはかなり好みのものだったので「欲しいかも」という気持ちも出た。すぐにとはいかないが、価格的にも他のグラベルロードe-bikeよりリーズナブルなので、時期が来たら乗り換え候補の1台になるのは間違いないだろう。