e-bike試乗レビュー
e-bikeが買いたいからMERIDA X BASEでいろいろ試乗してきた
2021年1月8日 10:45
筆者はe-bike Watchと同じインプレスの媒体であるCar Watchのライターで、主に新車の情報や各種発表会レポートなどを書かせてもらっている。
そのなか、2018年の夏に新登場したホンダのN-VANを買ったことから、オーナーレポートを約2年という長い期間で連載していた(深田昌之のホンダ「N-VAN」で幸せになろう)。N-VANはアウトドア系の趣味と相性がいいので、クルマの使い勝手紹介だけでなくN-VANを使った遊びも紹介してきたが、そこにe-bikeを積んで出かける「クルマ+e-bikeのツーリング」を提案するネタもやっていたのだ。
クルマで目的地まで行くことにすれば自宅からe-bikeで出発するよりはるかに行動範囲は広がるし、現地へ早く着けばそれだけあちこち巡る時間も稼げる。それになにより自転車趣味には興味があるけど「体力的な自信がない」と諦めていた人(筆者自身も)に「こうすればOK」を見せたかったのだ。
ミニベロタイプのe-bike初体験
最初に借りたのはBESVの「PSF1」という20インチのミニベロだった。ドライブユニットはBESVオリジナルでバッテリーは36V/10.5Ah。走行モードは3パターンとなっていた。
借りるときに伺った話ではアシストはそれほど強くないとのことだったが、初めてe-bikeに乗った筆者にとっては全然そんなことはなく、目の前の坂に向かって漕ぎ出すと「おぉ!」と声が出るくらい坂道を上がるのが楽。12~13km/hのペースで走っていたが、緩い勾配がダラダラ続くような区間ではアシストのないふつうの自転車で平地を走るのと変わらないくらいだ。
そんなこともあり、ふだん自転車に乗らないどころか、400mも歩くとふくらはぎが痛くなるくらい(笑)。運動不足の身体ながら延々登り坂の10km行程を走れてしまったのだ。
事前の予想では「途中で絶対に休憩しなきゃ」と思っていただけに、一気に走り切れたことはストレートに「うれしいこと」だった。そんなことから筆者にとってe-bikeは「いい気分にさせてくれるもの」というすり込みがバッチリ入ったのであった。
本格e-MTBの「X-VALLEY E6180」で新しい世界に目覚める
次に乗らせてもらったのがNESTOのe-MTB「X-VALLEY E6180」というモデル。こちらに使用されているドライブユニットは、シマノSTEPSシリーズでミドルグレードになる「E6180シリーズ」。筆者の印象ではトルク感は十分で、トルク特性も初期の出方がマイルド。その先も2次曲線的に立ち上がる設定だったので、自転車としての挙動に違和感がなく乗りやすい印象を受けた。想像だけど「脚力のある人の漕ぎ出し」を再現しているようなものなのかもしれない。
「X-VALLEY E6180」ではダート区間がある林道へ入った。ルート自体は最初に走ったときより短かったのだけど、コースがちょっときつかったのと暑さで体力切れ。なんと予定の場所にたどり着けないというオチになってしまう。
これはかなり悔しかったが、同時に「体力的に目一杯がんばるなんて経験は何十年ぶりだろう」という妙な懐かしさを感じた。そして、前回感じた「うれしい」とはまた違う「うれしさ」がジワッと来た。こうなってしまうとアタマの中はもう「e-bike欲しい」となるわけだ。
買うならどのタイプ? 考えてもわからないから乗ってみよう!!
2回の試乗を経て「e-bikeを買おう」と決めたはいいけど、そもそも自転車の知識が乏しい、例えばロードバイクタイプとMTBとの乗り味の違いとか、そこから知らないのであった。
そこで昨秋に行ってみたのが、静岡県伊豆の国市にある静岡県伊豆の国市にある「MERIDA X BASE」。e-bike Watchでも何度か紹介しているが、ここはメリダが日本国内で販売している全車種が展示され、そのほとんどがレンタルできる世界最大級のサイクリング施設である。
しかもMERIDA X BASE周辺はサイクリングに適したコースがたくさんある。つまり実際に購入したら「走りに行くはずのようなコース」で各種e-bikeを試乗体験しようという考え。これほど現実味のある試乗ができるのはMERIDA X BASEだけといっても過言じゃない。
ドライブユニットや大容量バッテリーを搭載するe-bikeは、そのぶん販売価格が通常の自転車よりも高くなるので、筆者のような初心者が検討する範囲でも300,000~400,000円といったところだ。そんななかで気になったのがミヤタ「ROADREX 6180」、グラベルロードバイクというタイプのe-bikeだ。
自転車知識に乏しい筆者でも〇〇タイプと言われれば、そのカタチくらいはアタマに浮かんだのだが、グラベルロードバイクは初耳だった。そこで調べてみると、ダートを走ることも想定したロードバイクであることがわかった。筆者はのんびりペースで林道走行などもやってみたいと思っていたので、グラベルロードはまさにピッタリのモデルである。
そんなわけでMERIDA X BASEでいちばんのお目当ては「ROADREX 6180」なのだが、林道を走るとなるとe-MTBの存在も気になる。そこで今回はグラベルロードとMTBの両方を借りて乗り比べてみることにした。e-bikeは安い買い物ではないだけに、欲しいものが決まっていたとしても比較ができるのはありがたいことである。
本命に乗る前に2タイプのe-MTBに乗ってみた
では、試乗だけど本命の「ROADREX 6180」に乗る前に2タイプのe-MTBを借りることにした。今回の取材はe-bike Watch編集部の清水氏も同行していたので、ミヤタ「RIDGE-RUNNER」とメリダ「eBIG.NINE 400」の2台で出発。
向かったのはMERIDA X BASEのすぐそばを流れる狩野川河川敷にある専用ダートコース。正式オープンに向けて整備が進んでいるため、常時走れるわけではないが、取材日は走行許可をいただいたのでここを走ってみた。一般の方でもタイミングが合えば走れるそうだ。
河川敷ダートコースで操縦性とドライブユニットの違いを体験
最初に乗ったのは「RIDGE-RUNNER」。MERIDA X BASEから河川敷コースまでは舗装路を走行したが、e-MTBは漕ぎ出しがスムースなので信号待ちや左右確認のための一時停止など、「再スタートのことを考えると本当は止まりたくないけどな」と考えてしまうケースでもそれが苦にならない。
しかも停止時にちょっと動きたいときの軽い漕ぎに対して、シマノのドライブユニットは自然にトルクを出してくれるので、予想以上にグンと飛び出してしまうようなこともない。e-bikeのアシストというとスポーティーに走るときに役立つものというイメージもあるけど、街中を安全にスムースに走るときにも便利な機能だ。
ダートコースは、河川敷の地形を活かした適度な凹凸があるダート路面がメインで、途中にコブを設けたり砂地になっている部分もある。コースは藪の中を縫うようにレイアウトされているので、コーナーはほぼブラインド。ハイペースで走れる人にとっては路面状態や起伏のほか、コーナーの先を読みながらの速度コントロールやライン取りを考える必要があるので、攻略しがいがあるコースなのではないだろうか。
そんな上級者にとって走りごたえのあるコースでも、基本的に平坦な地形なのでラインを選んで走れば初心者の試乗にも適しているというものだ。
コースへ進入。この時点でドライブユニットのアシストモードはハイモードになっていたので、草地よりさらに路面抵抗があるダート路面でもちゃんと前に進める。とくにタイヤが少し埋まり気味になる砂地でのサポートは大きい。アシストなしだと路面抵抗に負けて徐々に漕ぎ切れなくなって止まってしまうような区間も乗り切れるのだ。
砂地区間で一度停止してからの再スタートを試してみた。おそらくアシストなしでは相当キツいシーンだろうが、「RIDGE-RUNNER」は力強くグッと走り出せた。ただ、筆者の場合、上半身や腕の力が足りないのか、漕ぎ出し時にハンドルが砂地に取られて切れ込んでしまうことがあった。
そこでアシストモードをノーマルに落としてみると、漕ぎ出しのトルクが減ったぶんバランスが取りやすくなった。まあ、ハンドルというか車体を押さえつけられる筋力があればモード切替は不要だろうが、そうはいかない身体であってもモード切替を使えばなんとかなることがわかった。
こうした力の切り替えができるe-MTBは、未舗装路を走りたいと思っている人にとって楽とかだけでなく、乗りやすさも自分に合わせ込める能力があるといえるだろう。
本命の「ROADREX 6180」に乗る。なるほどこういうものか
いったんMERIDA X BASEへ戻って2台を返却。そして、いよいよ本命の「ROADREX 6180」を借り出した。「ROADREX 6180」のフレームは適正身長ごとに2種類あるが165~178cmまでが対応する「47cm」のサイズを選択。筆者の身長は約170cmなので身体とのサイズ比はちょうどいい感じだ。
跨がってみると、直前まで乗っていたのがMTBだっただけにハンドル幅を狭く感じで、ハンドルのグリップも遠く止まったままの姿勢では腕で上半身を支える印象。なので「疲れそう……」と思っていたが、ロードバイクはさらに前傾がキツイので「ROADREX 6180」のポジションは楽なほうと聞いた。ドロップハンドル初心者にとってはありがたい。
「ROADREX 6180」でも狩野川のコースへ行ってみたが、前傾していると感じたポジションは、サドルに体重が載せられると多少楽に感じた。だが筆者はまだ体幹の筋肉が不足しているのでポジションだけならMTBのほうが楽だった。ただ、MERIDA X BASEで「自転車に乗っていると自然と体幹が鍛えらえる」と聞いているので、ポジションに関する印象がどんな感じで変わるか楽しみでもある。
また、体幹での上半身保持が不十分なのでどうしても腕に力が入ってしまう。舗装路では問題ないが未舗装路になると、ハンドルが取られることが多いので余計に力が入ってしまった。
こうした面もスペックや製品写真を見ただけではわからないので乗ってよかった部分である。e-bikeの性能が優れていることも実感できた。とにかく筆者に必要なのは上半身を支えられる筋肉だ。そうすれば、さらにe-bikeの魅力を実感できるだろう。
ダートコースではMTBのようにフロントショックがないぶん、コースの凹凸をしっかり感じるが、それでもタイヤが太くエアボリュームがあるので、ロードバイクやクロスバイクよりはるかに楽なのだろう。たしかに衝撃は感じるが路面のいいところを選びながらペースを抑えているぶんには「走れてしまう」乗り物だ。
筆者はそもそもダウンヒルでスピードを楽しむつもりもないので「ROADREX 6180」の乗り味でなんら問題はないと感じた。
次にアシスト力についてだが、先ほどの「RIDGE-RUNNER」とは異なり、ミドルレンジのシマノSTEPS「E6180シリーズ」を搭載するが、力が余ることはあっても足りないと感じることはない。ダートでは「RIDGE-RUNNER」よりいい路面を選ぶし、ペースも抑えるので余計に能力が余るのだ。これなら林道に行ったとき、ダートの上り区間が出てきても現状の筆者の体力で対応できるだろう。
河川敷コースを走り終えたあとは、狩野川沿いの舗装路と公道を走って修善寺まで行ってみた。朝から4台のe-bikeでダートコースを走っているので、本来なら「もう帰りましょうか」という疲労度だと思うが、そこはe-bike。まだ走れてしまうのだ。
平坦な舗装路での走りは言うまでもなくイージー。一般道に入って車道を走る際でもタイヤが太く安定感があり、タイヤの厚みから乗り心地もいい。これで上半身がしっかり支えられてハンドルに余計な力(体重)がかかっていなければ、より走りやすそうと思えた。
でも、上半身は乗っていれば自然と鍛えられるそうなので、つまり「ROADREX 6180」を買えば「いいカラダになる」ってことでもある。衰える方向まっしぐらのオジさんにはまさに趣味と実益を兼ねることになるので、e-bikeに乗るのはとても魅力的なことだ。
やっぱり「ROADREX 6180」で決定。あとはポチるだけ!?
ということでお目当ての「ROADREX 6180」をダート、舗装の両方で乗ることができたし、ちょっと気になっていたe-MTBとの乗り比べもできた。
感想としては、考えていたより身体を使うというか、それなりに慣れ(身体作りを含めて)が必要なようだけど、グラベルロードバイクゆえのフレキシブルさは「e-bikeであちこち行ってみたい」と考える筆者の好みに合うので、やっぱり「ROADREX 6180」を買うという結論。当初の画像やイメージのみでの「買う気」よりよっぽど納得したうえでの「買う気」である。
もし、e-bikeが欲しいと思っているのなら、MERIDA X BASEでの試乗をオススメするが、新型コロナウイルス感染症による行動の規制がどうなるかについてはまったく予想がつかないので、出かける前にはMERIDA X BASEのHPにて営業日等の情報を確認していただきたい。
最後にやってみたのがホンダ「N-VAN」への搭載。N-VANは大型のSSバイク(スーパースポーツと呼ばれるオートバイ)も載ってしまうキャパがあるので、「ROADREX 6180」なら載せる前から問題ないことはわかっていたがまあ、やってみたかったのである。
結果は余裕、キャンプ地に持ち込むというシーンであっても、いろいろな道具も一緒に運べるスペースが残る。それにハンドルを切った状態で固定すれば助手席をしまうことなく搭載できるのがうれしい。そもそも載せる手間はたいしたことないが、少しでも減ればより気軽に出かけられるだろう。