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子乗せ自転車を選ぶなら電アシ? それともe-bike? とある家族の購入検討記
2021年2月26日 07:00
間もなく新生活シーズンを迎えます。保育園や幼稚園の通園をはじめ、小さな子どもとお出かけするために、子乗せ自転車の購入を考えているご家庭も多いでしょう。その選択肢として圧倒的に人気なのが、子乗せ専用の電動アシスト自転車。しかし、e-bikeにもチャイルドシートを装着できるモデルが数車種あります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、「子乗せ」タイプの選択肢も広がっています。そこで、今回はe-bike部・瀬戸家の子乗せ自転車のリアル購入検討記をお届けしたいと思います。
初めての子乗せ自転車選び。妻の悩みと夫の目論見
瀬戸家は、妻・娘(1歳半)・小型犬という家族構成。お子さんが1歳半になり、ママ友の間でも子乗せ自転車の話題が上がるようになってきました。通園はまだ先の話ではありますが、そろそろ移動手段をベビーカーから自転車に変更したいとも考えています。
奥様は自転車に強いこだわりはないそうですが、いろいろ調べてみると、一般的には2歳くらいまでは「前乗せ」のほうが良いと言われていることを知ります。そして、 前乗せでもハンドルに引っかけるタイプは膝がぶつかりそうなので、せっかくならハンドルの直上に乗せられる専用タイプのほうがよいかなと思っているとか。
その一方で、夫の瀬戸は「あと半年のためにわざわざ前乗せできる自転車いらないでしょ?」という考え。二人目の予定はないので、前後に兄弟を乗せて走ることもないし、子乗せとして使用する期間は5年間ほど。子どもが成長して役割を終えた子乗せ電動アシスト自転車は、そのままパパが通勤用に使っているケースを知人からも聞いているそう。だったら「最初からパパが乗りたい自転車を子乗せにしたらいいじゃないか!!」と目論んで(企んで)いるわけです。
そのターゲットに考えているのがターン「Vektron S10」(以下、Vektron)。e-bike Watchにも何度も登場しているミニベロタイプのe-bikeですが、実はオプションのリアキャリアにチャイルドシートの装着が可能。本人も以前に試乗経験があり、自転車好きとして“個人的”に欲しいと考えていたモデルです。チャイルドシートが装着できて奥様も気に入れば、“個人的”な願望も叶えられて一石二鳥というわけです。
「折りたたみなのにとても剛性が高いし、太いタイヤのおかげで乗り心地もいい。シートの上げ下げ幅もとても広く、さらにハンドルの位置も調整できるので、妻でも自分の身長でもOKというのは嬉しい」というのが瀬戸のお気に入りポイント。
また、「折りたためば愛車(セダン)のトランクにも積載できるというのは夢が広がる。たとえば八ヶ岳でe-bikeのレンタル可能なスポットへ行って、1台はレンタルe-bike。もう1台はVektronに子乗せでサイクリングといった遊び方もできそう」と妄想(ホンネ)を語っていました。
子どもが大きくなったあとは、「妻の街乗り用としてもいいし、ハンドルをブルホーン化して自分の週末ロングライド用にしてもよさそうだ」と考えています。つまり「子乗せ」の役割後も、楽しく使い続けられる自転車が欲しいのがホンネです。そして、購入につなげるために説得力のある「完璧な言い訳」が必要な状況となっています。
電動アシスト自転車の専門店・モトベロ湘南へ
瀬戸家は徒歩圏内にe-bikeも取り扱う電動アシスト自転車の専門店「モトベロ湘南」があります。Vektronの展示を知っていた瀬戸は、「完璧な言い訳」の下準備として、散歩がてらに奥様を連れて行ったそうです。奥様も見た目のかわいらしさや、ステップインでも乗れる形状で気に入ったそうで第一関門を突破。ウキウキ状態でショップのスタッフに「子乗せ化」を聞いてみると、「できないわけではないが、ターンは純正品以外のオプションが推奨されていないので、何かあっても保証はできない」との回答があったそう。
とはいえ、Vektronが欲しくてしかたのない瀬戸は「推奨していなくても強度的に足りないわけでもないし、本国のWebサイトには子乗せで使っている画像も掲載されている。違法改造でもないので気にしないことにする」と結論を出します。まだ購入が確定したわけでもないのに。ただ、以前に訪問した際に「ペダリング時に子どもの足と運転者のかかとがぶつかる可能性がある」とも聞いており、実際に試してみようと家族で「モトベロ湘南」へ。
モトベロ湘南は電動アシスト自転車の専門店だけに、電動アシスト自転車からe-bikeまでラインナップが豊富。モトベロのスーパーバイザー・村上 耕大さんが子乗せが可能なe-bikeについて解説してくれるというのでe-bike部・清水も同行してきました。
モトベロ湘南で子乗せ仕様のe-bike「Vektron」を試乗
試乗車としても用意されている本命のターン「Vektron」と「HSD P9」(以下、HSD)を夫婦で試乗することに。まずは本命のVektronから。気になるかかとの部分に関しては、子どもの足乗せ部分をいちばん下げた状態をチェック。
「たしかにぶつかりそう。ただ、ペダルを母指球ではなく土踏まずのあたりで踏むようにしたり、ペダルを立てて漕ぐように工夫すれば回避できそう。現時点での娘の身長だと足乗せがずっと上にあるのでまったく問題ない感じ。内側のドレスカバーにシューズがこすれるけど、これもペダルの少し外側に足を置くことで解消できた」と満足そう。ちなみに瀬戸は180cmある大柄なので参考までに。
もう一点、気にしていたのがスタンドの問題。Vektronは片足スタンドで、ネットで事前に調べた情報では両足スタンドに対応できないとの話を見つけていたそう。しかし、モトベロの村上さんによると、「センタースタンドが取り付けられる穴もあるので大丈夫」と説明されて一安心。それよりも、「Vektronはホイールベースが短く、お子さんが成長するとより後ろに重心がかかるため、ウイリー状態を避けるためにしっかり前傾姿勢で体重で支える必要があります。子乗せ専用の電動アシスト自転車にはまったく不要の心配ですが、Vektronを子乗せにした場合には注意が必要です」とアドバイス。
それぞれ夫婦で試乗してみると、足のサイズが小さい奥様の場合はそもそもぶつかることはなかったので、瀬戸が運転時に少し気を使うだけでクリアできそう。
さらに「1歳半なのでチャイルドシートに乗せるにはまだ早い」と考えていたようですが、村上さんから「チャイルドシート自体は1歳9kgから乗れる設計になっている」と説明を受けると、ますます前のめりに。止まらないVektron愛!! さっそく実際に子どもを乗せて状態で試乗することに。e-bikeに限らず電動アシスト自転車も共通することですが、村上さんから大切なアドバイスをいただきました。
・子どもが乗せられる体型に達していること
・しっかりベルト装着を管理すること
・ヘルメットもしっかり着用すること
どれも当然に感じるかもしれませんが、忙しい毎日では「すぐそこまでだし」と気を抜いてしまう場面も考えられます。「前乗せの場合は多少ベルトの締まりが緩くても見えるのでフォローすることもできます。しかし、後ろの場合は運転に集中することを考えると、ベルトをしっかり締めることをシビアに考える必要があります」と村上さん。
小さな子どもがいると準備に時間がかかったり、いざ出発という際にぐずり出したり、ついつい時間を優先してしまった経験をお持ちの方も少なくないでしょう。小さなころも成長してもチャイルドシートに乗せる際にはベルトのチェックは怠らず、ヘルメットをしっかりかぶることも忘れないでほしいと村上さんは語ります。
「どのメーカーのチャイルドシートもきちんと体を覆ってくれます。ただし、チャイルドシートのヘッドレストに関しては頭を完全に守ることはできない構造です。ヘルメット以上の安全性は担保できないので、チャイルドシートまかせでなく、大切なお子様のためにも必ずヘルメットをきちんと着用しましょう」とのことです。電動アシスト自転車でもe-bikeでも、あらためて肝に銘じておきましょう。
そんな安全性を再確認して、実際にチャイルドシートに子どもを乗せて試乗へ。ヘルメット初体験のお子さんも心なしか楽しそう。自転車に乗るのが久しぶりだという奥様も「すごーい。乗りやすい」と好感触。ワンちゃんが入れるバッグを乗せられますか? と質問するなど、購入に向けてイイ感じになりつつあります。瀬戸はすでにVektron試乗経験がありますが、子乗せ仕様に関して以下のような感想を残しています。
「実際に走ってみると、もっともフラつきやすい走り始めの低速からしっかりアシストが効いている。ミニベロで重心が低いので、子乗せ状態でも普段とほとんど印象が変わらない状態で走ることができる。かかとの問題もペダルの足の置き方で問題ないことがわかった。そもそも子乗せ状態ではそんなに速度も出さないし、ボッシュのドライブユニットのおかげで、ペダルの踏み方が少し変わっても走りにくさは感じない」とコメント。このまま購入手続きをしそうな雰囲気です。
電動アシスト自転車にも乗ってみよう!!
e-bike初体験の奥様も満足そうなVektron。とはいえ、今回の趣旨は「子乗せ自転車」選び。e-bikeが好きだといっても、瀬戸の計画をアシストするつもりもありません。電動アシスト自転車とe-bikeそれぞれを体験してもらうため、モトベロ湘南でも人気だというブリヂストン「bikke」を試乗することに。
子乗せ電動アシスト自転車も初体験の奥様は、それぞれを乗り比べてアシストの力強さの違いに驚いていた様子。一般的な電動アシスト自転車は、漕ぎ出しのアシストを重視しており、その後の伸びが少ないのです。e-bikeのVektronは、走り出したあともしっかりとドライブユニットがアシストしてくれると感じていたようです。自転車乗りでもないごくごく普通の主婦の奥様ですが、その差は明確に分かったようで「ぜんぜん違う」と興奮気味に語っていたのが印象的でした。e-bikeと電動アシスト自転車の違いに関しては、こちらの「電動アシスト自転車とe-bikeの違いって何?」をご覧ください。
瀬戸は(勝手に)e-bikeを本命にしていますが、電動アシスト自転車に興味がある方も多いと思います。e-bikeと比較した場合のメリットとデメリットを村上さんにアドバイスいただきました。
【電動アシスト自転車に関して】
・子乗せ設計なので安定性に優れる
・前乗せもあれば双子や兄弟が乗せられる
・「乗せる・運ぶ」の前提で漕ぎ出しのアシストが強い
・子どもとのコミュニケーションが取りやすい
・専用スペースがない駐輪場には止めにくい
・車体が重たい
・新型のバッテリーに対応しないケースが多い
子乗せタイプの電動アシスト自転車ですが、そもそもが「子乗せ」設計なので、チャイルドシートがホイールベース内側に収まるので安定性や安全性は抜群。子乗せでの移動が主目的であれば、購入すればオプションが必要ないのも魅力。ただ、車体重量は30kgオーバーが標準なので「押す」ことが重たいのは避けて通れません。経験のある方はご存じだと思いますが、駐輪場のスロープをはじめ、子どもを乗せての買い出しや駐輪などは押すことが日常茶飯事です。それでも村上さんが最大の魅力と感じていることは「コミュニケーションの取りやすさ」だそうです。
前乗せタイプは、「小さな子どもとのコミュニケーション」が目一杯取れること。自転車に乗っている間に話したり歌ったり、その時しかできない時間を楽しむことができます。成長の早い子どもとのかけがえのない時間を満喫できるのは魅力だと語ります。
また、子乗せの役目が終わったユーザーさんについても聞いてみました。チャイルドシートの期間が決まっている電動アシスト自転車ですが、その後は専用バスケットに変える人、自分のために買い替える人も多いそうですが、チャイルドシートをそのまま「カゴ」扱いで乗り続ける人も少なくないそうです。子どもを乗せるチャイルドシートは積載力にも優れているので、普通のカゴでは満足できないケースも多いとのこと。それまでの数年間で重さにも慣れており、そのまま使い続けるそうです。ちなみに電動アシストを体験した人は、買い替えも電動アシスト自転車を選ぶ人がほとんどだとか。
【e-bikeに関して】
・子乗せ(日常使い)以外の自由度が高い
・子乗せ役割の終了後も使いやすい
・積載力&バッテリー容量がすごい
・(今回のボッシュに関しては)バッテリーやディスプレイが新型に交換可能
・標準で子乗せをすることができない
・電動アシスト自転車に比べて車体重量が軽い
・電動アシスト自転車より価格が高い
そして、e-bike。子乗せ仕様のモデルは少ないのが現状ですが、いちばんの魅力は「自由度が高い」こと。VektronやHSDはYeppのチャイルドシートが装着できますが、着脱も非常に簡単。子どもを乗せないときは、スポーツバイクとしての走りも楽しめます。ただ、スポーツバイクに乗り慣れている人は、足を後方に蹴上げると子どもを蹴ってしまうので、子乗せの際にはトップチューブをまたいで乗る必要があります。
さらに、チャイルドシート+パニアバッグといった使い方で、たっぷりと荷物を運べるのも魅力。また、e-bikeは「重い」「価格が高い」といった印象を持つ人が少なくないのも現状ですが、Vektronでいえば約20kg。通常の子乗せ自転車と同等の重さで、電動アシスト自転車より10kgほど軽いので扱いやすいともいえます。
また、価格としては電動アシスト自転車より10万円ほど高価になりますが、「子乗せ」に加えて「遊び」も楽しめる付加価値があるので、そこをどう捉えるかでしょう。たとえば、双子や年齢の近い兄弟姉妹を乗せる必要がある、子どもの送迎がメインの目的という人にはe-bikeは不要ですから。
第2候補のカーゴバイクタイプe-bikeにも試乗
続いてはカーゴバイクタイプe-bike「HSD」を試乗することに。Vektronと同じくドライブユニットはボッシュ製「Active Line Plus」を搭載。車体重量は約30kgと重たいですが、そのぶん積載力や安定感には優れるモデル。愛車にe-bikeを積んで遊びに行きたい瀬戸は積載性を重視するので、ハンドル部の折りたたみしかできないHSDは、セダンだと後席を倒さないと積載できないのが第2候補にした理由です。
HSDはホイールベースが長いので、取り回しが気になっていたそうです。しかし、ホイールベースが長い子乗せタイプの電動アシスト自転車も試乗したこともあり、比較してみると取り回しの良さに差は感じなかったとのこと。もちろん、Vektronに比べれば小回りは利きませんが、子どもを乗せた状態ではむしろ安定感があったそうで、こちらもグッと印象がアップした模様。
「走行中も安定感があって、とくに巡航速度になってからの安定感はVektronより高い。どっしりとした印象で直進安定性が高い。ひとりで走るならVektronのほうが良さそうだけど、子乗せを考えるとHSDのほうがオススメできそう。e-bikeとしては重たい部類に入るけど、電動アシスト自転車よりは軽いので、駐輪場のスロープを押して上がるような場合もラクそう」と走りの面に満足し、重量にもネガティブな印象はなさそう。
もちろん、奥様にも試乗してもらいましたが、「どちらかといえばVektronが好き」とコメント。乗車姿勢的にもVektronのほうが合っていたそうです。小柄な女性にはHSDは大きく感じるのかもしれません。
想定外のe-bke試乗で予期せぬ展開に!?
e-bikeと電動アシスト自転車をいろいろ試乗し、瀬戸家はVektronで決まりそうな雰囲気。……でしたが、モトベロの村上さんが新たな試乗車を出してきました。それがエレクトラのビーチクルーザータイプのe-bike「TOWNIE GO! 8D(タウニー ゴー)」。こちらもボッシュ製のドライブユニット「Active Line Plus」を搭載しており、オプションのリアキャリアにチャイルドシートの装着が可能なモデルです。ビーチクルーザータイプで趣味性の強いe-bikeなので、モトベロの村上さんも最初は試乗を考えていなかったそうですが、瀬戸家の反応を見て子乗せ仕様を試乗させてくれることに。
瀬戸もTOWNIE GO! 8Dが展示されているのは知っていたそうですが、スポーツ自転車好きの視点からアップライトなポジションのTOWNIE GO! 8Dは選択肢になく試乗したこともなかったそう。
「両足が地面に付くようなシート高でハンドルは相対的に高く感じる。そして、足を前に投げ出すようなイメージでペダルを漕ぐ。アップライトなのに漕ぎやすく、スピードも出せる。予想以上にスポーツ自転車だった。走り出すとすぐに脳内で『Born to Be Wild』が流れ始めて、気分はまさにイージーライダーだった(笑)」と印象がガラリと変わった様子。
日ごろからスポーツ自転車もe-bikeも乗るモトベロの村上さんも「結構スピードも出せるし、長距離も問題なく走れます。ただ、翌日はいつもと違う筋肉痛になりました(笑)」と話しており、瀬戸もいい意味で予想を裏切られたようです。
続いて奥様も試乗。「乗りやすーい」と言って走り出し、戻ってくるなり「これが欲しい!!」とコメント。まさかの発言に瀬戸もモトベロの村上さんも驚いた表情。ステップインで乗り降りしやすい、両足が地面に付くポジション、アップライトな姿勢で手が痛くない、サドルも大きいのでお尻も痛くない、この自転車もカゴ付けて犬を乗せられますか? など、この日一番に多弁でした(笑)。
前傾姿勢のスポーツ自転車に初めて乗った人が「手が痛い」「お尻が痛い」というのはよくある話。慣れると手と足とお尻に分散させるほうがいい、というのはスポーツ自転車好きのロジックですが、もともと自転車に興味がない奥様には、これまで乗り慣れたシティサイクルに近いアップライトなTOWNIE GO! 8Dがしっくりきたようです。
TOWNIE GO! 8Dで走っている姿を見ても、湘南という土地柄ともマッチしていてオシャレな感じで、足つき性が良いので信号で止まったときなども安心感があります。
ということで、瀬戸家の子乗せ自転車選びは、電動アシスト自転車ではなくe-bikeでほぼ決定の模様。ただ、瀬戸の当初の目論見とは変わってしまい、夫婦でTOWNIE GO! 8Dに傾きつつあります。もうしばらく悩むことにしたそうなので、結果はまた別の機会にお届けしたいと思います。