家電製品ミニレビュー

ほっとくだけでごちそうができる電気無水鍋「ヘルシオ ホットクック」

シャープ「ヘルシオ ホットクック KN-HT99A」

 水を加えない「無水調理」は、素材の旨味を引き出し、調理による栄養の損失を抑えると言われている。しかし、料理の知識や慣れも必要なうえ、調理中は当然ながら火の側につきっきりになる。

 そこで今回紹介したいのが、シャープのヘルシオシリーズ「ホットクック KN-HT99A」だ。無水調理をはじめとする様々な煮炊き料理を、ボタン1つで自動で美味しく仕上げてくれる。かきまぜも火加減も、一切合切おまかせできるのだ。無水調理ができる家庭用電気鍋は、ヘルシオ ホットクックが初めてだという(2015年11月現在)。

メーカー名シャープ
製品名ヘルシオ ホットクック
購入場所Amazon.co.jp
購入価格55,817円

 ホットクックの最大の利点は、とにかく「失敗知らず」であること。食材と調味料を放り込んで、ボタンをポンとスタートするだけで、あとは文字通り「放っておく」だけで見事に美味しくできあがってしまうからだ。

 味よし、見た目良しで、煮崩れもなければ、カレーさえも焦げ付きの心配が要らない。

5.5合炊き炊飯器が置ける場所は必要

 本体の大きさは、367×280×224mm(幅×奥行×高さ)で、重量は約5.2kg。1台の鍋としては大きめかもしれない。だが、最近の5.5合炊きの炊飯器が置ける場所があれば設置できる。

 付属品として、取り外しが簡単な定格容量1.6Lの「内鍋」に、「保存専用ふた」、「蒸し板」、そして材料を自動的に混ぜてくれる「まぜ技ユニット」がある。他に100種類が掲載されたレシピも付属する。100種類のうち、無水メニューだけでも36種類用意されており、応用もしやすい。

大きさは、1台の鍋としては大きめだが、5.5合炊きの炊飯器が置ける場所があれば設置できる。コードの長さは約1.8mで、マグネットプラグ式(右下)
左奥から、ホットクック本体、内鍋、電源コード、蒸し板、まぜ技ユニット、保存専用ふただ
取り扱い説明書の他に、100種類のレシピが掲載されているメニュー集と、自動メニュー一覧表が付属する

 内鍋はステンレス製だ。内径は約190mm、深さは約130mm。保存専用ふたの上部は平らなので、冷蔵庫で鍋ごと保存しやすい。熱源は、面で熱くなる熱板がホットクック内の底にある。調理中はファンの音も無くとても静かだ。

 自動で食材をかき混ぜてくれるまぜ技ユニットは、ワンタッチで取り付け取り外しが簡単にできる。調理中は自動的に混ぜ棒が降りてくる仕組みだ。

内鍋は、簡単に本体に着脱できる(上)。保存専用ふたを使えば、鍋のまま冷蔵庫で保管できる
内鍋の定格容量は1.6L。まぜ技ユニットが正しく作動するためにも「水位MAX」を超えないように材料を入れる(上)。熱源は面積の広い熱板タイプだ。中央に温度センサーがある
調理に応じて、内ぶただけ、まぜ技ユニットを取り付ける。装着はワンタッチだ。まぜ棒は調理中に自動で出てくる仕組みだ(右下は撮影の為)
本体のフタは、ボタンをワンタッチするだけで開く(上)。内ぶたを通して、調理中の中の様子が確認できる
本体ふたの上部に、操作部と表示部が集約されている。ボタンの数は7つ

 操作は全てホットクック上部で行なう。調理に合わせて最初に自動か手動かを選び、2つの数字をレシピに応じて選んで設定し、スタートボタンを押すだけだ。メニューは数字から選ぶため最初は戸惑うが、一度要領が分かれば操作は簡単だった。

 調理をスタートすると、できあがるまでの時間が表示され、できあがったら追加調理も可能だ。調理中メニューボタンを押せば、何番を設定したかも確認できる。

操作の仕方は3ステップ。メニューボタンを押して、[<>]キーで自動/手動のいずれかを選び、メニューで決定。次に表示部の左側のカテゴリーの番号を[<>]で選んでメニューで決定。最後にレシピで指定された番号を選び、メニューを押して決定する。スタートボタンを押すと調理が始まる。手動の場合は調理時間を[<>]で設定する。調理中は表示部に工程が記される
表示部にはできあがり時間が表示される(上)。できあがった直後、調理時間を延長できる
メニュー集には100点のレシピが掲載されている。材料、その量の他、調理方法、メニュー操作まで記載されている

 今回はレシピを参照しながら、実際に6品を作ってみた。その様子を順に紹介していこう。

まさに絶品! 「チキンと野菜のカレー」

最初に無水の「チキンと野菜のカレー」を作った。材料を入れるだけで後はおまかせ調理できる(上)。1時間ちょっとで1.6Lの美味しいカレーが自動でできてしまった。焦げ付きも無し!

 最初に骨付きの鶏手羽元と、野菜だけで作る「チキンと野菜のカレー」に挑戦した。

 作り方はとにかく簡単。事前の準備といえば、野菜を切るだけ。トマト中2個、みじん切りの玉ねぎ2個、みじん切りのセロリ1本弱を順番に鍋に投入。最後に鶏手羽元を野菜の上に載せ、5皿分の市販のカレールーを載せ、すりおろしたにんにくと生姜を適量入れる。水は入れない。材料を入れ終わったら、まぜ技ユニットを内蓋に装着し、ふたを閉じる。

 次に、操作パネルの「メニュー」「<」「>」の3つのボタンを使って、レシピに提示された指示に沿って設定していく。「自動」→カテゴリーの煮物の「1番」→メニュー名のカレーを示す「14番」を順に選択・設定し、スタートボタンを押す。操作はこれでオシマイだ。あとは火加減の調整も何も要らず、できあがりを待つだけだ。できあがり時間は60分と表示された。

 調理がスタートして30分を過ぎた頃にはカレーの香りが漂いはじめ、コトコトと静かに沸騰する音が聞こえてくる。1時間ほどで、今度はまぜ技ユニットがゆっくりと自動的に回転をはじめ、撹拌が始まった。スタートから71分でブザーが鳴りできあがった。

 フタを開けると大量の蒸気が一気に上がり、カレーがコトコトと煮えたぎっているのが見えた。香りがとても良い。水をまったく入れていないのに、内鍋の「水位MAX」のラインピッタリにカレーが出来上がっていた。

 さっそく一口。あまりにも美味しくて、まずエエエッ! と驚いた。実は、無水カレーを初めて食べたのだが、野菜の旨み、辛味、トマトの酸味のバランスが何と言っても絶妙で美味。鳥手羽元の身は骨からホロッと外れるほど柔らかい。トロ味が丁度良く、ごはんとよく絡む。まるで、じっくりと手をかけたような絶品カレーに仕上がっていた。しかも、鍋底には焦げ付き1つ無いのだから驚きだ。

まさに絶品。野菜の旨みが凝縮された、辛味、酸味のバランスが絶妙の美味しいカレーだ
鳥手羽元の肉は柔らかく、ホロッと骨から外れた。完璧に調理されていた

 スタート時、できあがり時間は60分と表示されたが、予定よりも11分多くかかったのにはちゃんとした理由がある。レシピには鳥手羽元は8本とあったが、購入した鳥手羽元は1パック5本入り。2パック買ったものの、2本だけ余らせるのもなぁと思い、10本を一度に投入していたのだ。

 そんな心を察知するかのように、ホットクックは調理中に食材の量を検知し、自動で調理時間、かきまぜるタイミング、火加減を調節してくれていた。

 レシピには「2~4人分まで自動でできます。」と記されていたように、材料が内鍋の水位線に収まっていれば、失敗なく調理してくれる。水分の元となる野菜とルーの比率を変えなければ、鳥手羽元をポークやビーフ、シーフードに変えて応用できるだろう。

まぜ技ユニットが作動する様子。自動でタイミングを計り、ゆっくりと撹拌して焦げ付きを防ぐ

主菜をたった15分の調理時間で「豚バラ大根」

 次に選んだ無水レシピは、調理時間がたった15分で完成するという「豚バラ大根」だ。

 いちょう切りの大根300g、2cm幅に切った豚バラ薄切り肉100g、切った冷凍インゲンを4~5本分と、調味料を内鍋に投入。まぜ技ユニットをセットして、操作メニューを自動→煮物1→20番をセットして調理スタート。

 本当に15分の調理時間で豚バラ大根ができあがった。大根は柔らかく炊き上がり、味も染みていた。大根から出てきた水分に豚バラの脂が溶けこんだ出汁は滋味深く、ごはんが進む。大根の辛味も残る美味しいひと品だった。

大根といんげん、豚バラ肉と調味料を入れただけ(上)。たった15分で「豚バラ大根」が完成した
盛りつけた様子。大根は柔らかく炊かれ、できたてでも出汁が大根に結構しみている
一晩置くと、出汁がより染み込んでさらに美味しかった

 夜に作って、残りを冷蔵庫に保管しておいたが、朝には出汁が大根によく染みこんで、さらに美味しくなっていた。少し多めに作って、お弁当のおかずのひと品にもいいだろう。

 豚バラ大根と同じ操作でできるレシピとして、「白菜のクリーム煮」、「鶏とカシューナッツの炒め物」、「八宝菜」なども掲載されている。

お惣菜屋さんに負けない「里いもの煮ころがし」

 無水調理レシピの中からもう1つ、「里いもの煮ころがし」を作った。

 用意した材料はレシピよりも200g少ない、500gの里いも。皮をむいて塩でぬめりを取って水で洗っておいた。それを内鍋に入れ、調味料を一緒に入れる。まぜ技ユニットをセットして、操作メニューを自動→煮物1→3番をセットして調理スタート。里いもがレシピよりも少なかったので、予定で35分のところ、33分でできあがった。

 フタを開けると、里いもは煮崩れもなく、調味料がタレと化してツヤツヤに仕上がっていた。食べてみると里いもは若干固めだったが、ねっとりとした歯ざわりが楽しめる。もちろん焦げ付きとは無縁だった。

 このレシピは、「ひじきの煮物」と同じ操作でできるものとして掲載されていた。同じ操作で、他にきんぴら、こんにゃくの甘辛煮があった。いずれも30分程度で、火加減を一切気にせずに、主菜を作りながら副菜が自動的に仕上がるのはありがたい。おかずがもう1品増えるだけで、食卓が豊かになるからだ。

里いもも無水調理の対象だ(上)。35分で里いもの煮ころがしが完成
煮崩れもほとんどなく、見た目も味もお惣菜屋さんに負けないぐらい美味しい

本来手間のかかかる「黒豆」もおまかせ調理できる

レシピの調味液に黒豆を浸した様子(左)。調理をスタートして2時間を過ぎた頃にブザーが鳴り、表示部には「加える」と記され、砂糖を入れるのを促された

 ホットクックは無水調理以外にも、火加減に気を使い、時間もかかる豆料理も得意だ。お正月にはちょっと気が早いが「黒豆」を炊いてみた。

 材料は、280gの黒豆に、水1L、砂糖、醤油、塩、重曹だ。一般的な黒豆の作り方と大きく違うのは、最初から調味料と水を内鍋に入れ、そこに乾燥したままの洗った黒豆も入れ、一晩つけて置くところだろう。

 一晩経ったら(豆が倍以上に膨らむ)、メニュー操作で自動→煮物1→13番を選択して調理を開始する。調理時間は3時間と表示された。

 本来黒豆を炊くならば、灰汁を取り、落し蓋をし、煮汁が豆に常にかぶるように適宜水をさすなど、工程も多く目が離せない。レシピによっては3日に分けて炊くやり方さえある。

 ところが、ホットクックならばほぼおまかせで調理ができてしまう。ほぼというのは、調理過程で砂糖をもう一度手動で追加する必要がある。とは言っても、砂糖投入のタイミングはちゃんと知らせてくれる。

 調理が始まって2時間が経過すると自動でブザーが鳴るので、フタを開け、砂糖を入れて軽く混ぜる。フタを閉めてもう一度スタートボタンを押せば再び調理が始まる。手間と言ってもコレだけだ。

 砂糖を投入して1時間後にはブザーが再び鳴り、できあがりを知らせてくれた。炊き上がったばかりの熱い豆を指で押してみると、簡単につぶれるほど柔らかく炊き上がっていた。それから一昼夜置いて味を含ませながら、煮汁の色を豆に戻す。

 次の日に黒豆を食べてみて驚いてしまった。落し蓋もしていなければ、灰汁も取っていない。しかも調理時間はたったの3時間程度。それなのに、黒豆は芯までふっくらと柔らかく、シワも寄っていない。甘みも丁度よく、豆本来の味もしっかり感じられてとても美味しい。欲を言えばもう少し黒くてもと思ったが、十分満足のいく仕上がりだった。

砂糖を加えてフタをし、調理を再スタートする(左)。炊き上がった黒豆は指で簡単につぶれるほど柔らかい
一晩置いて味と色を染み込ませた黒豆。たったの3時間程度の調理時間で、芯までふっくらと柔らかくシワも寄っていない黒豆が完成した

ごはんも炊ければ、ケーキも焼ける

 ホットクックはごはんも炊ける。ただし、炊飯は手動で調理する。とは言え、お米の量に応じて、調理時間を設定するだけなので簡単だ。

 内釜に、洗米して水気をしっかり切ったお米を入れ、レシピの表示に沿った量の水を入れる(2合の白米に、水は410mlと普通よりも多め)。そのまま30分以上つけておき、操作メニューで手動→煮物1→2番を選び、炊飯する合数に合わせた調理時間を自分で指定する(2合なら45分)。炊き上がったら、フタを開けずにそのまま15分蒸らしてできあがりだ。

 2合炊いて食べてみた。ごはんの固さは丁度良く、お米の甘みもしっかりと感じられた。粘り気は普段使っている炊飯器よりも少ないが、十分に美味しいと感じた。最大3合まで炊けるので、小さい炊飯器しか持っていない方が、一時的に多めのごはんが必用な時に役立てられるだろう。

炊飯は十分米に水を吸わせてから手動を選んで調理する(上)。ムラ無くちゃんと炊き上がった
炊飯器よりも粘りは少なかったが、美味しいごはん2合が45分で炊き上がった

 ケーキは、レシピに掲載されていたホットケーキミックスを使う「野菜ジュースのケーキ」を、敢えてホットケーキミックスだけで焼いてみた。焼色と膨らみ具合をチェックしたかったからだ。操作メニューで、自動→お菓子6番→3番を設定し調理をスタートする。あとは自動で焼きあげてくれる。

 丁度1時間でキレイな焼色の付いた分厚いホットケーキが完成した。ホットケーキは内鍋にくっつくが、シリコンのヘラを使って案外簡単に取れた。内鍋に接している面は焼色が付くが、接していない上面には焼色はつかない。それでもしっかり火が通っており、美味しくいただけた。

内鍋にバターを塗り、ホットケーキのたねを入れた様子(上)。自動調理1時間で焼き上がった。表面に焼色はつかなかった
内鍋から焼いたホットケーキを取り出した様子。見事に焼色が均一だ
しっかり膨らんだホットケーキ。こんな食べ方もアリだろう

 なお、どの調理中も、蒸気孔から湯気は穏やかに立ち上る程度なので、吹きこぼれなどでホットクック周囲が汚れる事は一切なかった。消費電力も最大で600~630Wぐらいなので、他の調理器具と並行して使えるだろう。

 手入れも簡単で、炊飯器と同じ手間で済む。まぜ技ユニットはもちろんのこと、内ぶた、内部のつゆ受け、蒸気孔は簡単に外れ、丸洗いできる。

調理中の湯気は穏やかだ(上)。調理中の最大消費電力は634Wだった。自動的に火力がコントロールされ、とろ火の時は100W前後だった
パーツは簡単に外れ、丸洗いできる。お手入れは一般的な炊飯器とさほど変わらない

値段は高い。だが、美味しい料理が失敗なく自動でできる喜びは大きい

 個人的に、黒豆と里いもの煮ころがしのできの良さから、ホットクックがあったらおせち料理作りが相当ラクになるだろうと感じた。時間も手間もかかる黒豆、食材を1種類ずつ炊く面倒な煮しめが任せられるだけでも、気持ちに余裕ができる。今回試してはいないが、つぶ餡も自動で作れる。コンロを占領しないので、その間を他の調理に充てられる。ただでさえ多忙な時期に、料理の時間短縮ができるのはありがたい。

 ただし、気になった点もあった。内ぶたのシリコン製のパッキンについたニオイが取れにくいのだ。特にカレーは、洗ってもパッキンにどうしてもニオイが残る。ごはんを炊いて、そのままホットクックに放置した時以外、他の物にカレーのニオイを感じる事は無かったが、この点は改良の余地があるだろう。

 もう一つは価格だ。一般的な無水鍋は1万円前後で買えるのに対して、ホットクックはその5倍以上。かなりハードルが高い。

 それでも、無水調理、煮物に、今回は試さなかったが蒸し物など、数多くの調理が「自動」でできてしまうのは相当魅力的だ。しかも美味しい。それだけでも十分な価値を感じるが、食材の衛生面に配慮した温度帯に自動調節し、設定時刻に合わせて食べごろに仕上げてくれる「予約調理」もできる。他の器具では到底真似できない点だ。

 食材の栄養素をたっぷり残した無水料理を、美味しく、気軽に楽しみたい方はもちろん、忙しくて、なかなか凝った料理が作れない方、今ひとつ料理に自信のない方の強力な助っ人になってくれるだろう。毎日の食事を一層楽しく、美味しくする調理器具としてオススメだ。

藤原 大蔵