家電レビュー

ほったらかしで2品同時にできる! 象印の自動調理なべが想像以上に使いやすかった

象印「STAN.」シリーズの自動調理なべ。シックなデザインが特徴

共働き世帯の増加やコロナ禍によるテレワークの普及で、「家での食事をより簡単に、よりおいしく」と考える家庭が増えています。かくいう筆者も最近フリーランスになったことで3食作る必要があり、自動調理鍋の購入を本気で考えるようになりました。

自動調理鍋には「圧力調理」で時短を図るタイプと、圧力調理はできなくてもほったらかし調理が可能なタイプがあります。今回紹介する象印マホービンの「STAN.」シリーズから登場した「自動調理なべ EL-KA23」は後者で、料理好きな筆者としては「圧力調理ができないのは物足りないのでは?」という不安があったのも事実。

しかし、この自動調理なべを実際に使ってみると、物足りないどころか有り余るほどの魅力に溢れた自動調理鍋だったんです! 筆者が実際に使って感じたEL-KA23(直販価格33,000円)の利点をご紹介しましょう。

シックなデザインでキッチンに馴染みやすい

象印の「STAN.」シリーズは、同社創業101年目の2019年に作られた30代の共働き世帯をターゲットとする家電ブランドです。デザインとクリエイティブディレクションはクリエイティブユニットTENTと象印がコラボで手掛けており、これまでの象印のイメージをガラリと変えるようなスタイリッシュなデザインが目を引きます。

カラーはブラックとホワイトの2色展開。最大調理容量は2.3Lで最大6人分の調理が可能
ホワイト

EL-KA23の本体サイズは約28.5×31×22.5cmとなっており、5.5合炊きの炊飯器とほぼ同じくらいです。重さは約7.0kgなので、使うたびに出し入れするというよりは、常に出しっぱなしにしておくことを想定されています。そうなると気になるのがデザイン性。STAN.シリーズだけあって、無駄のないシンプルなデザインで、キッチンに置いても生活感が出過ぎません。

ブラックは本体下部がブラウンになっており、木目のように見えるので優しい印象がある

使用時は本体に内鍋をセットして、メニューを選んで調理を開始するだけ。毎回洗うのは、内ぶた、内鍋、本体背面のつゆ受けだけなので、手入れがしやすいのもこの電気調理鍋の強みです。

後片付けがしやすいので、日々使う調理家電としてはありがたい

また、内鍋は厚さ2.0mmのホーローでできており、「蓄熱性が高い」という特徴があります。作った料理をそのまま食卓に置いても冷めにくく、さらには直火での加熱もできるので、翌日の温め直しもスムーズです。

ホーローなべは腐食しにくく、色移りしにくい。フタが付属し、調理後にそのまま冷蔵庫に保存できる。ただし、直火での加熱はIH非対応なので注意

ジッパー付き食品保存袋で主菜と副菜を2品同時に作れる

EL-KA23が多くの電気調理鍋と一線を画するのは、ジッパー付き食品保存袋を使って、2品同時に調理ができる点です。面倒なときは主菜と副菜を作ってもいいですし、副菜2品を作っている間に自分で主菜を作るといったときにも便利。洗い物が少なく済むというのも大きなメリットだといえるでしょう。

パック調理をする際は、内鍋にパックホルダー→ジッパー付き食品保存袋の順にセット。続いてパックホルダーカバーをセットする。今回は手持ちのジップロックを使用した

最初はレシピブックを参考に「小松菜のあさり煮」と「鶏ささみときゅうりのマスタード和え」を作ってみました。パック調理で注意したいのが、同時調理するレシピ選びです。異なるレシピを2パック同時に調理する際は、同じ温度調理で作れるものを選ぶ必要があります。また、温度は同じでも調理時間が異なる場合は、片方のパックを取り出してから延長加熱が必要です。

まずはジッパー付き食品保存袋に決められた食材と調味料を入れます。あとは、パックホルダーとパックホルダーカバーを使って本体にジッパー付き食品保存袋をセットし、注水口から水を注げば準備は完了。

袋は開けたままでセットする。口部分はパックホルダーカバーのツメに引っ掛ける

「コース」キーを押して「パック調理」を選んだら、「調理温度」キーを押して「90℃」に設定します。続いて、「分」キーで時間を15分に設定し、「スタート・再加熱」キーを押せば調理が開始します。

メニューに応じて調理温度と時間を設定

ここで忘れてはいけないのが、調理自体は15分ですが、実際は内鍋の温度が設定した温度に達するまでの時間も必要な点。湯沸かしは30分程度必要で、完成までに約45分がかかってしまいます。そうなるとお世辞にも「時短」とはいいにくいですが、その間にほかのことができるほったらかし調理ならではの魅力は享受できます。

待つこと45分、完成した2品をお皿に盛り付けて食べてみると、小松菜のあさり煮はだしがしっかり染み込んで、直火で作ったものとほぼ遜色ない仕上がり。また、もう一品の鶏ささみときゅうりのマスタード和えは鶏ささみがしっとりしていて、さすが調理温度を設定できるだけあるなと感じました。

2品の副菜が同じタイミングで完成するので、すぐに食卓に出せるのがいい

別の日には「かぶのひき肉あんかけ」と「きんぴらごぼう」という、なかなか普段は作らないような献立の同時調理にも挑戦しました。最初、レシピの分量より多めにかぶを入れたことで火の通り具合が甘くなってしまったため、5分加熱を延長したらちょうどいい具合に。分量を守らないと自分で調整する必要が出てくるので、臨機応変に見極めましょう。

かぶは湯煎で調理したとは思えないほどとろりとした仕上がりになった
きんぴらごぼうはごぼうとにんじんのシャキシャキした食感が少し残っているのが良かった

煮込み料理やケーキ作りにも使える

EL-KA23は、パック調理以外にも、「カレー/シチュー」「スープ」「煮物」「米調理」「温度調理」「無水調理」メニューを搭載しています。たとえば、豚の角煮を作るなら、「温度調理」を使って下茹でをし、その後「煮物」コースで煮込むといったことも可能です。

下茹では100℃で15分に設定すると約35分でできる

普段、筆者は下茹でが面倒でつい省略しがちだったのですが、これならほったらかしておくだけなので面倒さが軽減されたように感じました。煮込みは1時間20分行なうのですが、沸かしに約20分かかるので、実際は1時間40分程度かかります。下茹でから考えると2時間15分かかるものの、予約調理にも対応しているので、下茹でを前日の夜にしておき、翌日の朝に煮込みを予約しておけば、帰宅後にアツアツの角煮が食べられますね。

きちんと手間をかけたぶんだけ、トロトロの角煮が完成した

これまでさまざまな電気調理鍋を使ってきましたが、初めて挑戦したのが「バスク風チーズケーキ」です。オーブンはあるもののほとんど使っていない筆者。内鍋に材料を入れて焼くだけなので、これならできそうだと思い作ってみました。

カラメルソースを別鍋で作って底に入れ、その上にケーキの生地を流し込む

「温度調節」キーを押して100℃にして、1時間20分に設定すれば、約1時間30分で完成します。焼き上がったケーキをお皿に置くと、思いのほか柔らかい仕上がりに。しかしご安心を。ラップをして冷蔵庫でひと晩寝かせれば、まるで売り物のようななめらかな口当たりのバスク風チーズケーキが完成しました!

焼き上がりはべちゃっとしていたが、冷蔵庫で冷やすことでしっかり固まる

もちろん、オーブンでもおいしい仕上がりのケーキが焼けるとは思います。しかし、予熱をしたり、焼き加減をチェックしたりといった手間を考えると、お菓子作り初心者でもここまでクオリティの高いケーキが作れることには驚きました。

レアチーズケーキとベイクドチーズケーキの中間のようなしっとりした生地になった

自動調理なべ EL-KA23は最初に書いた通り33,000円と、比較的購入しやすい価格帯となっています。とはいえ、完全な料理初心者の人が使うには少し検討する必要があるかもしれません。なぜなら、内蔵メニューの種類が限られており、自分でレシピを探して温度と時間を設定する必要があるからです。もちろん、付属のレシピブックやウェブ上のレシピを参考にできるので、買ったその日からすぐに使い始められます。

料理をほったらかしで作れることで、空いた時間を活用できるのが電気調理鍋のいいところ。自動調理なべが生活に溶け込めば、時間の使い方も上手くなれるかもしれません。

今西 絢美