e-bike試乗レビュー

ヤマハ「YPJ-XC」はどこでも安心して走れるe-bike♪ MTBコースをガンガン走りたいっ!!

2020年モデルのヤマハ「YPJ-XC」

筆者には「あのe-bikeにもう一度乗ってみたいな~」という車種があります。「e-bike大賞2019」にも輝いたヤマハの「YPJ-XC」です。2018年7月18日発売のモデルですが、車体カラーを大幅に変更し2020年モデルとして2020年2月14日発売にされました。

ヤマハ「YPJ-XC」は、MTBタイプのe-bike(e-MTB)です。この新カラーは「マットブラック2」
メーカー名ヤマハ
製品名YPJ-XC
実売価格350,000円

ちなみに、ヤマハ製e-bikeの現行ラインナップは6種類。2018年に誕生した新世代として、MTBタイプのYPJ-XC、ロードバイクタイプのYPJ-ER、クロスバイクタイプのYPJ-EC、オールマイティモデルのYPJ-TC。それ以前のモデルとしてロードバイクタイプのYPJ-R、クロスバイクタイプのYPJ-Cがあります。

ヤマハのe-bikeことYPJシリーズの現行ラインナップは全6車種。自転車の主なカテゴリーを網羅しつつ、各車種に豊富なサイズが用意されているあたり、さすがのe-bike老舗メーカーです

さて、このYPJ-XCですが、以前にごく短時間だけ乗りました。去年の「レンタルe-bikeで観光したら京都の魅力を再発見!! 混雑も渋滞も無縁だから、穴場も定番スポットも自由に巡れて超快適♪」のロケ時です。ロケ終了後の帰り際に「サイクルベースあさひ洛西口店(らくさいぐちてん)」のレンタル用車体を十数分借りて試走。

すると、YPJ-XCには“魅了されるような走行感”がありました。「えっ何これ凄いかも!!!」みたいな。何が凄いのかって、そのアシスト感。他メーカーのドライブユニットのアシスト感とはけっこー違いました。非常にスムースな追従性がありつつ、とてもパワフル。「もっとじっくり走ってみたい!!!」と思いつつ、ほんの十数分の試走は終了。後ろ髪引かれつつ京都を後にした次第。

ちなみに、ヤマハのe-bikeに搭載されているドライブユニットはすべて自社製。ドライブユニットは、ペダルの踏み込みに応じてアシスト力を発揮するモーターやセンサーが集まった“e-bikeの中核部”ですね。ヤマハの現行ドライブユニットは3種あり、それぞれ「PW-X」「PWseriese SE」「PW」です。

PW-X
PWseriese SE
PW

それぞれザッとご説明しますと、PW-Xは、YPJシリーズのドライブユニットとしては最軽量かつハイパワーで、e-MTB向けに開発されたフラッグシップという位置付け。PWseries SEは、主にオンロードe-bikeを見据えた設計で、ヤマハの標準ドライブユニットといったところ。PWは消費電力を抑えたマイルド志向のドライブユニットというイメージです。

そして、フラッグシップのPW-Xは、現在のところYPJ-XCにしか搭載されていません。YPJ-XCはヤマハの最高性能ドライブユニットを搭載したe-bikeだから、“魅了されるような走行感”だったのかもしれません。ともあれ以降、2020年モデルのYPJ-XCについて見ていきたいと思います。

YPJ-XCはどんなe-bike?

まずはYPJ-XCの概要から。主なパーツやスペックなどを写真と説明文で見ていきましょう。

YPJ-XCの2020年モデル。サイズはS/M/Lの3サイズで、全長はそれぞれ1810/1835/1865mm、全幅は3サイズとも740mm(ハンドル幅が600mmを超えて普通自転車に該当しない自転車となるため歩道走行は不可)。質量はSとMが21.3kg、Lが21.4kg
ドライブユニットはヤマハPW-X。バッテリーは36.0V/13.3Ahのリチウムイオン電池。専用の鍵により脱着可能で、バッテリーのみ室内で充電することができます。アシストモードと走行距離は、エクストラパワーモードで82km、ハイモードで87km、スタンダードモードで104km、エコモードで145km、プラスエコモードで210km
ギアは、フロント1速(36T)、リアが11速(11〜42T)。コンポーネンツはシマノSLX
YPJ-TCのギア周辺。YPJ-XC以外の現行ヤマハe-bikeは、このようにフロントが2速になっています
ハンドル周辺。左手でリアブレーキやアシストモード切り替え、フロントサスペンションのロックアウト操作、右手でフロントブレーキやギアチェンジ操作を行ないます
サドル高調節はクイックレバー式シートクランプで行ないます。サイズSが770〜935mm、サイズMが800〜990mm、サイズLが845〜1085mmの範囲で調節可能
液晶ディスプレイ(コンパクトマルチファンクションメーター)はステム左側に固定されています。ハンドル左側のスイッチユニット操作により表示を変更。トリップメーター、平均車速、最大車速、残りアシスト走行可能距離、バッテリー残量、ケイデンス、ペダリングパワーメーター、消費カロリー、時計、オドメーターに切り替えられます。スマートフォンなどへのUSB給電にも対応(端子はmicroUSB)。Bluetooth対応で、BLE機器とCSCPおよびCPPでの通信も可能。液晶ディスプレイはハンドル上方に出っ張らないように取り付けられています
タイヤは27.5(650B)×2.25でMAXXIS(マキシス)製。トレイル走行向けとして人気のあるARDENT(アーデント)です。フロントは油圧式ディスクブレーキでコンポーネンツはシマノSLX
リアタイヤも27.5(650B)×2.25。リアブレーキもSLX油圧式ディスクブレーキです。なお、ハブはフロントもリアもスルーアクスル
フロントサスペンションはROCKSHOX RECON GOLDで、トラベル量は120mm。サスの動きを止めるロックアウトにも対応し、フォーク左側下部のノブでリバウンドダンピング調整も行なえます
フロントサスペンションのロックアウト操作は、液晶ディスプレイ下部にあるレバーで行ないます

筆者の個人的な印象ですが、まずその見た目。2018年モデルのシルバー×ブルーのカラーから、全体的にマットなブラックになったのは好印象です。カッコイイ!!! 同時にバッテリー部がフレームとより自然にマッチしていて違和感が少ないのもいいですね。パーツも“よくあるe-MTBよりちょっと高いグレード”のものが採用されている。要所要所でオーナーに満足感を与えてくれるように思います。

凄くカッコ良く見えるんですけどっ♪

残念なのはドロッパーシートポスト非採用という点。ハードテイルe-MTBではありますが、本格的なオフロードコースもバッチリ走れると思いますので、乗車したままシート高を調節できるドロッパーシートポストはぜひ欲しかったところ。まあ、これは好みのドロッパーシートポストを後付けって感じでしょうか。

もうひとつ、バッテリーがインチューブタイプだったりしたら嬉しかったんですが、残念ながらフレーム上にマウントされているタイプ。このあたりは、車体自体が2018年モデルと同じなので仕方がないかもしれません。

パワーもフレーム剛性もバッチリ!!! どこでも走れるe-MTB♪

さてさて、早速ガッツリと試乗です。とりあえず川沿いのサイクリングコースを走って、さらにちょっとした未舗装路も走って……そうそう激坂も試したい。最終的にはMTBパークで本格的にオフロード走行も試してみたい。てなわけで、写真を交えつつYPJ-XCの走りの印象を書いてみたいと思います。

やっぱりカッコイイ2020年モデルのYPJ-XC。さぁ走っちゃうゼ!!!

まず舗装路を走ってみた印象ですが、意外なほど速いe-MTBだと感じられました。ペダルをガンガン踏めばどのe-MTBでもだいたい速く走れるわけですが、YPJ-XCの場合、まずフレーム剛性が十分高いのでペダルを踏んだ力が逃げないという感覚があります。走り出しから20km/hくらいまで5秒前後で到達し、さらにアシストが切れる24km/hまで滑らかに加速。

近場の川沿いサイクリングロードを走ってみましたが、即座に実感できたのはアシストのスムースさと力強さ、それから走りのシッカリ感が十分に感じられる車体剛性です

車重が比較的に重めでかつブロックタイヤを履いていますので、さすがに25〜28km/hあたりで巡航すると疲れてきますが、でも“自転車にうまい具合に走らされる”という感覚。スピードの乗りが良く、気分良く加速していけるので、e-MTBなのにグイグイと速度を上げていっちゃうという走行感です。

……これ、何かに似てる? と思い返したら、アレでした、YPJ-TCで走った時時の感じ。ヤマハYPJシリーズのうちオールマイティモデルがYPJ-TCですが、あの車種も気分良くグイグイ加速できるモデルだったと記憶しています。YPJ-XCはあの走行感にちょっと近い。

川沿いの未舗装路も走ってみました。どんな道でも快適に走れちゃうという楽しさはe-MTBの醍醐味です。舗装路ではフロントサスペンションをロックアウトし、未舗装路に入ったらロックを解除して凸凹道の振動を吸収。その使い分けを手元のレバーで行なえて便利です

YPJ-XCのアシストモードですが、アシストが弱い順に、プラスエコモードで210km、エコモードで145km、スタンダードモードで104km、ハイモードで87km、エクストラパワーモードで82kmとなります。プラスエコモードやエコモードは非常にマイルドなアシストですが、短い坂などではアシスト力をしっかり実感できます。スタンダードモードやハイモードだとけっこう力強いアシスト力が感じられます。

タイヤはMAXXIS(マキシス)のARDENT(アーデント)で、トレイル走行向けとして人気があります。でもこれ、空気圧をやや高めにしておくと、舗装路でもよく回って速く走れるタイヤかも、という印象も残りました

どのアシストモードでもアシスト力のかかり方が非常に滑らか。唐突に「グイッ」と力が加わるような感覚がない。違和感がなく自然かつスムースにアシスト力が発生しているという感じです。

他社のドライブユニットだと、種類やモードによっては「これはちょっとアシストが出しゃばり過ぎ」とか「アシスト力の出方が唐突なので何だか怖い」と感じることがありますが、YPJ-XCのドライブユニットであるPW-Xにはそういう不自然さが非常に少ない。ペダルを踏むと即座にアシスト力が加わる感じはするのですが、それが急激過ぎないという印象。アシスト力発生のレスポンスは速いけど、アシスト力が一気にドガンと出ている感じではなく、なんかこう人間の筋肉のような力の出方とでも言いましょうか、そんな自然さがあります。

登坂もしてみよう、ということで奥多摩方面も少々試走。国道など舗装路の急坂ならタンダードモードあたりで十分ラクに上がれちゃいます。激坂はハイモードやエクストラパワーモードで対応。息が上がることなくどんどん登坂できます

そんなアシスト力の出方について、メリットを強く実感できたのがエクストラパワーモード。最大のアシスト力が発揮されるアシストモードです。

例えば凸凹や石があったりする未舗装路を走る場合、障害物をちょっと越えるにはより強いアシスト力があるとスムースなので、エクストラパワーモードを使います。凸凹や石がある道を走る時、誰もが自然にそうしていると思いますが、状況に応じてペダルを踏んだり、一瞬踏むのをやめたりして、車体をコントロール。障害物を一気に乗り越える時はペダルを強く踏み、ハンドルを少し切って向きを変える時は一瞬ペダルを踏むのを止める、みたいな。

奥多摩むかし道にて。このポイントに来る前に、未舗装路のアップダウンとちょっとした未舗装路激坂登坂がありますが、YPJ-XCだと不安なくクリアできます

そういうペダリングと車体コントロールが、YPJ-XCのエクストラパワーモードだと、非常に小気味よく行なえるんです。人力の自転車とほぼ同等の繊細なペダリングができる。でもアシスト付きで、ペダルを踏めば即座かつ滑らかに力強い推進力が生まれます。また、ペダルを踏むのを止めた瞬間に、そのアシスト力がスッと消える感覚。

状況の悪い未舗装路で、レスポンスと力強さと繊細さを併せ持つアシストが使えると、もう凄〜く走りやすい。急に自転車の運転が上手くなったかのような気分に。繊細に自転車をコントロールできつつ、しかしアシスト力はたっぷり使えるので、そう感じるのだと思います。

YPJ-XCで実際に悪路を走ってみると、悪路の“攻略”が楽しい。河川敷脇の未舗装路にあったりする岩とか砂利とか流木とか、そういうシチュエーションにどんどん挑戦したくなったりもします。

舗装路も未舗装路も何でも来いのYPJ-XC。探検気分で知らない道をどんどん進みたくなるe-bikeです

……というコトは、YPJ-XCは絶対MTBコースとか楽しいゾ!!! MTBパークに行くしか!!! ていうか絶対行く!!! 明日行く!!!

と、勢いづいたところで、まさかの……新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言。不要不急の外出を自粛する必要があります。YPJ-XCでMTBパークは……まあ不要不急っすよね。残念〜。

あぁ早く安心して外出できるような世界になって、YPJ-XCでMTBパークを走ってみたいなあ。YPJ-XCにある程度じっくり試乗でき、YPJ-XCの“魅了されるような走行感”の正体がだいたい見えてきた筆者は、再び「やっぱりあのe-bikeにもう一度乗ってみたいな〜」とYPJ-XCを想うのでした。

ともあれ、他のe-MTBとは一味違う素敵な走行感があるYPJ-XCですので、機会があればぜひ試乗してみてください。なお、ヤマハ公式サイトからYPJシリーズに乗れるレンタルショップ試乗車のあるショップを探すことができます……が、新型コロナウイルスの影響で休店しているところが多いようです。くっそ〜新型コロナいずれ絶対ブッ殺(以下自粛)。

スタパ齋藤