家電製品レビュー
ヤマハのオールマイティe-bike「YPJ-TC」に荷物をたっぷり積んで、アップダウンのある奥多摩を走ってきた
2019年5月14日 06:00
ヤマハ「YPJ-TC」は街乗りから旅までオールマイティに使えるe-bike!!
電動アシスト付きのスポーツ自転車ことe-bike。続々と新車種が発売され、実際に購入した人も増えているようです。
ただ、車体もドライブユニットもスポーツ走行に耐えうる性能・耐久性があり、アシスト距離が100kmを超えるような大容量バッテリーを搭載するだけに、お値段はけっこーお高め。気軽に買える値段ではありませんよね。大雑把に言って30万円前後するe-bikeが多く、さらに高価な車種も少なくありません。そんな値段なので、かなり慎重に選ぶことになります。
ひとつ購入指針を挙げるとすれば、「どうせ買うなら徹底的に使い倒せるe-bike」という方向。幅広く使える車種ですね。そんな車種を考えた場合、筆者的にかなり魅力的に映るのがヤマハの「YPJ-TC」です。
上の写真のとおり、フェンダーやキャリアやスタンドがあるので、ちょっと実用車っぽい雰囲気のYPJ-TC。でも詳細を見ていくと、スポーツ走行も十分楽しめそうな仕様になっています。またアシストモードは4段階あり、それぞれ最大アシスト距離は91km(ハイモード)~237km(プラスエコモード)と、いろいろな用途・状況をカバーしてくれそうです。
このe-bikeを調べていると、なんかこう「日常使いもできる旅向けe-bike」って気がしてくるんですよね。長距離対応で、たぶん激坂も得意で、荷物もたくさん積めそう。日頃は「働くアシスト自転車」として使い、休日は裏道細道山道を通り抜けて遠くまで自転車旅ができる「旅のe-bike」として使えるよな~、と。
というわけで、実際にヤマハ「YPJ-TC」を借りて試走してみることにしました。以下、写真多めでレポートしていきます。
ヤマハ「YPJ-TC」って、どんなe-bike?
まずはYPJ-TCの概要から。前述のとおり、クロスバイクタイプのe-bikeですが、フェンダーやキャリアが標準装備であることから、日常使いとスポーツ走行の両方を視野に入れたオールマイティ志向のe-bikeです。
ちなみに、ヤマハは電動アシスト自転車の老舗だけあって、非常に多くの電動アシスト自転車がラインナップ。そのうちスポーツ走行向けのいわゆる「e-bike」は6車種で、「YPJシリーズ」としてラインナップされています。そしてそのうち4車種が2018年発売の最新世代YPJシリーズです。具体的にはMTBタイプの「YPJ-XC」、ロードバイクタイプの「YPJ-ER」、クロスバイクタイプの「YPJ-EC」、オールマイティモデルの「YPJ-TC」となります。
で、今回試すのがオールマイティモデルのYPJ-TC。まずは、どういうe-bikeなのか? 以下、写真と説明文で見ていきましょう。
といった感じのYPJ-TC。ひととおり見た段階での筆者的な雑感を申しますと、「やっぱりヤマハはわかってるなあ」ということ。このe-bikeの開発者が「あっ○○○の部分ですよね、○○○にすると使いやすくなるので、そうしておきました!」と言っているのが聞こえてくるかのようです。
持ちやすいバッテリーなんて当たり前、サイズ展開しっかりするのも当たり前、そのうえで、さらにしっかりユーザーのことをよく考えたつくりになっている感じがします。たとえば、e-bikeには必須となるディスプレイ(ヤマハだとコンパクトマルチファンクションメーター)は、バーハンドルやステムなどと高さが合っています。「メーターが上に出っ張ってるのお嫌でしょうから、そうしときました!」てな声が聞こえてきます。同様に、エルゴグリップだとか、アシスト用バッテリーを電源とした前後ライトとか、耐荷重が高いキャリアとか便利なサイドスタンドとか、「日常使いにもサイクリングにもお使いだろうと思って、そうしときました!」という雰囲気です。
さすが老舗。ていうか、ヤマハって世界で初めて電動アシスト自転車を発売したメーカーでしたね。乗る前から完成度が高い感じの車体です。
YPJ-TCで東京・奥多摩に行ってみよう♪
それでは、実際にYPJ-TCに試乗してみましょう。せっかく大容量バッテリー装備でアシスト距離が長く、レンジの広い18段ギアを搭載していて、パニアバッグまでお借りしたので、ちょっと距離を走りつつ、獲得標高(上った標高の合計)もそこそこあるコースを……東京の西端、奥多摩湖(おくたまこ)へ行ってみましょう。出発は青梅駅(おうめえき)から。
青梅駅から奥多摩湖までの距離は約29kmで、獲得標高は約600m。国道411号線を通り、行きは上りで帰りは下りの基調となりますが、わりとアップダウンがあったりするルートです。合計でだいたい60km走る予定。
余談ですが、筆者は実際にこのルートを何度か、普通のスポーツ自転車で走っています。その印象は「行きはだらだら長い上り坂が続いてわりとくたびれる、帰りは快速ダウンヒルで楽しいけど、たまにちょっと上りがあって怠い」みたいな。
ともあれ、以下に写真と説明文にて、YPJ-TCでの奥多摩湖サイクリングの様子を。率直な印象とともに書いてみます。
という感じで奥多摩湖に到着。ダムカレーを食べて青梅駅前へと戻りましたが、YPJ-TCのバッテリーはだいたい半分になっていました。奥多摩駅から奥多摩湖までの奥多摩むかし道走行は、考えてみたらけっこう急な坂が多かったような感じで、そこでやや多めにバッテリーを消耗したのかもしれません。
総じての印象としては、YPJ-TCはパワーもありつつ速いe-bikeという感じです。クロスバイクとしてバランスがいいのかも。細かいことを言えば、身長180cmの筆者の場合Lサイズがマッチするサイズで、今回試乗したMサイズはちょっと小さめだとは思います。ですが、小さめ自転車に乗ったときの「乗りにくさ」「ペダルを踏む力をロスしている感じ」がほとんどなく、快適に走ることができました。車体剛性も十分あり、重めの荷物&かなり重いライダーでも、シッカリきっちり走れました。
アシストの感じも非常に自然で好印象。「あっ、今、唐突にアシストが効いた!?」というような感じがなく、どんな場面でもだいたいスムーズにアシストがかかります。アシストの音も静か。奥多摩の鳥のさえずりや川が流れる音を邪魔しません。
あと、今回の走行では、フロントのギアはアウター(重いほうのギア)ばかり使った感じです。青梅駅前を出発したときは「上り坂だからフロントはインナー(軽いほうのギア)で軽くゆっくりと」と考えたんですが、アウターでもスイスイ進むので、アウターにしがち。多摩川から国道へ上がる激坂とか、奥多摩むかし道から国道へ出る激坂あたりは、フロントをインナーにした記憶があります。ともあれYPJ-TCの場合、このルートの登坂ならフロント・インナーはたまにしか使わない、という感じでした。
それと、ストップアンドゴー。信号などで一時停止したときは、その後の走り出しがラクです。まあこれはほかのe-bikeでも同じですが、こういうストップアンドゴーのラクさは上り坂であっても「少し停車して風景を眺めよう」みたいな気分にさせてくれます。「上り坂だし止まると疲れるからこのまま走ろう」とは考えなくなるのが、e-bikeのいいところですね。なお、YPJ-TCはそのギア比もあってか、信号待ちなどからの走り出しから3~4秒で時速20km/h以上に達します。交通の流れに乗りやすいので、車道での安心感があります。
標準装備のキャリアとフェンダーも良かったです。筆者は自転車ではわりとバックパックを多用しますが、荷物を体に担がなくていいのは、やっぱり快適。「どうせだからコレも持っていこう」「万が一のためにコレも携帯しよう」って気にもなります。重くてもアシストがあるから大丈夫ですし。
フェンダー(泥除け)は、やっぱりあると凄くイイ!! スポーツ自転車ですと「あーっ水たまり~減速ッ!」となりがち。フェンダーのないスポーツ自転車で水たまりを通過すると、タイヤが跳ね上げた水で足やお尻が濡れちゃう(どころか泥だらけになる)からです。奥多摩むかし道でいくつかの水たまりをYPJ-TCで通過して「あ~やっぱフェンダーいいわ~」と思いました。ついでに、当たり前ではありますが、どこでも自転車を自立させられるサイドスタンドも非常に便利です。
これはちょっと余談になりますが、帰宅して一休みしてから、何度か太ももが攣りそうになりました。その感覚は「サイクリングで脚がなくなった(脚の筋力を使い果たした)とき」と同じ。ていうか実際、帰宅時には筆者の脚がなくなっていたのでしょう。思い起こすと、青梅駅から奥多摩湖までの距離約29km・獲得標高約600mの上りを平均15~17km/hくらいのスピードで走っていて、普通の自転車だったら筆者的にはアリエナイというレベル。e-bikeとは言っても、けっこう脚力を消耗するので、運動にはなっているんですね。
てな感じのヤマハ「YPJ-TC」。日常使いにバッチリ実用的な装備がしっかりありつつ、スポーツ走行における性能も十分高い。ある程度の高速走行もでき、激坂にも強いのもいいですね。ホントにオールマイティに使えるe-bikeだと感じました。正直なところ、見た目がけっこうおとなしいので、ヤマハ「YPJシリーズ」の他の車種に目がいきがちかもしれません。でも、乗ってみるとYPJ-TCの汎用性の高さがよくわかりますので、ぜひ試乗してみてください♪