e-bike試乗レビュー
初めてのドロップハンドル車にオススメ! グラベルロードe-bikeのミヤタ「ROADREX 6180」
2020年3月19日 00:00
全部で何車種あるのか把握し切れないほど選択肢が激増中のe-bikeですが、ドロップハンドルを装着したタイプに限ると、実はそれほど数が多くありません。そんな中から、今回はミヤタの「ROADREX(ロードレックス) 6180」をピックアップし、100kmオーバーのロングライドに連れ出してみました。
メーカー名 | ミヤタ |
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製品名 | ROADREX 6180 |
実売価格 | 299,000円(税抜) |
太いタイヤを装備したグラベルロードe-bike
ロードバイクの中で世界的なトレンドになっているのが、“グラベルロード”と呼ばれるジャンルです。“グラベル”というのは未舗装路のこと。最近、北米では舗装路のメンテナンスコストの高さから未舗装路が増えているらしく、そんな道を快適に走れるように誕生したのがグラベルロードです。ロードバイクのようにドロップハンドルを装備しながら、タイヤは太めで、凸凹のある未舗装路も安定して走れる設計になっています。
「ROADREX 6180」でユニークなのは650B×45Cというサイズのタイヤを装着している点です。650Bというのは27.5インチホイールと同径で、一般的なロードバイクに装着される700C規格のタイヤより少し直径が小さいサイズ。ただ、タイヤが45Cと太いので、その分直径も大きくなり、700×30Cのタイヤとほぼ同径になっています。
e-bikeに詳しい人なら車名からも想像できるでしょうが、搭載するドライブユニットはシマノSTEPS「E6180シリーズ」。シマノSTEPSの中ではミドルレンジのグレードで、250Wの出力と最大60N・mのトルクを発揮するユニットです。組み合わせられたバッテリーは公称容量418Wh(36V/11.6Ah)と大容量の「BT-E8014」です。
コンポーネンツはシマノ製の「Tiagra(ティアグラ)」グレードで、変速はリアのみで10速。ブレーキも同様に「ティアグラ」の油圧式を採用。制動力が高く、握力に自信がない人でも安心して止まれるだけでなく、雨天時でも制動力が変わらないのがメリットです。車重があるe-bike(「ROADREX 6180」の車重は47cmサイズで18.1kg、53cmサイズで18.3kg)の場合、油圧式ディスクブレーキが付いているほうが、絶対に安心です。
100km超のロングライドで性能を実感
今回のテストライドは、こちらの記事でもレポートした編集部のある東京・神保町から宇都宮までの餃子ライド。そう、100kmオーバーの道のりに怖気づいて、一番ラクに走れそうな「ROADREX 6180」を選んだのです。
100km以上のロングライドだと、ハンドルを握る位置や乗車姿勢を変えられるドロップハンドルのモデルが絶対に良かったのと、「ROADREX 6180」は前傾姿勢がきつ過ぎず、ロングライド向けのジオメトリーであることを知っていたからです(ちなみに同行したe-bike部・清水氏はフラットハンドルにフェンダーやキャリアまで付いたメリダ「ePASSPORT 400 EQ」でしたが……)。
実は、今回のライドに出かける前から「ROADREX 6180」には結構期待していました。ミヤタが輸入しているメリダブランドには「SILEX(サイレックス)」というグラベルロードがありますが、写真を見る限り「ROADREX 6180」とはほぼ同じフレームジオメトリー。「サイレックス」シリーズはグラベルロードの中でも登坂性能に定評があるので、その設計が悪かろうはずがありません。そこにシマノSTEPSのドライブユニットが組み合わされるのですから、大して上りもない宇都宮まで行くのなんて余裕だろうと高を括っていました。
唯一、気になっていた点は18.3kgという車重でした。オフロードパターンの太めのタイヤが付いているので、ロードバイクのような軽快な走行感がどこまでキープされているのだろうと。ですが、編集部を出て江戸川に向かうルートを走っていると、そんな重さはまったく感じません。むしろ、これまでに乗ったe-bikeの中でも出足の加速はかなり鋭い部類。
まだ出発したばかりなので、極力脚の力は温存するつもりが、気分良く加速しているとあっという間に30km/hに達していて、後ろを走る清水氏との差がかなり広がっていきます。あちらの車重は、約6kgほど重く、ドライブユニットも最大トルクが40N・mの「E5080シリーズ」なので、当然といえば当然なのですが……。アシストが切れる24km/hを超えてもあまり重さを感じることもなく、「ROADREX 6180」がかなり“速い”ことを実感した序盤でした。
ただ、江戸川に出てからは攻撃的な北風に向かわねばならないため、苦闘が始まります。詳しくは前述の清水氏のレポートを読んでいただきたいのですが、風対策でドロップハンドルの下ハン(ハンドルの湾曲した一番低い部分)を握り、前傾姿勢を取っても思うようにスピードが出せません。ただ、そんな状況でもペダルさえ回していれば、進んでくれるのがe-bikeの凄いところです。
強風と寒さを少しでも凌ぐため、河川敷のサイクリングロードで北上することを諦め、市街地の国道を進む作戦に切り替えましたが、ありがたいと感じたのが650B×45Cという太めのタイヤ。車道の左側を走っていると、場所によって砂利が吹き溜まっていたり、トラックの交通量が多い車道では大きな轍ができてアスファルトが盛り上がっている箇所があったりと、かなり舗装が荒れているところも走ります。そんな場所でも「ROADREX 6180」は安定した走行が可能。日本国内では舗装がキレイな場所が多いせいか、海外ほどグラベルロードが売れていないようですが、こんなシーンではタイヤの細いロードバイクより、太めのタイヤが付いていて安定志向のグラベルロードのほうが安心して走れます。
もう1つ、今回「ROADREX 6180」を選んで良かった感じたのはハンドル形状です。ドロップハンドルでいろんなポジションが取りやすいので、同じ姿勢で走り続けることによる疲労を分散できるのに加えて、ハンドルがちょっと上にアップしている形状なので、過度の前傾姿勢を強いられません。しかも、リラックスして握れるハンドルの一番上の部分が平らに加工されているので、握りやすく疲れにくい。あと、油圧式ディスクブレーキは、疲れてきたライド後半でも力を使わずに止まれるので助かりました。
出発前はカタログでのアシスト可能な距離がECOモードで105kmと、今回の走行距離に対して微妙に足りないのが不安要素でした。ですが、実際に走ってみると途中から風に対抗するためNORMALモードを使っていたにも関わらず、110kmを走って残走行距離は40km(ECOモード)とかなり余裕がある結果に。残念ながら、宇都宮の餃子を食べることはできませんでしたが、「ROADREX 6180」の性能を検証するには十分以上のライドになりました。
ドロップハンドルデビューに最適な車種かも
その後は自宅の近所でも乗り回してみたのですが、ロングライドの序盤でも感じた出足の軽さは上り坂でも有効で、結構な激坂でもスイスイ上って行けます。シマノSTEPSには「E8080 シリーズ」という最大70N・mのトルクを発揮するドライブユニットも存在しますが、ヒルクライムを得意とする車体との組み合わせもあって、そこまでのトルクが欲しいと感じる場面はありませんでした。
ドロップハンドルのわりにハンドル位置が高く、アップライトな乗車姿勢なので、街中でも気軽に乗り回すことができます。太めのタイヤは安定感も高く、初めてドロップハンドルの自転車に乗るという人には最適な選択肢なのではないかと思います。
“グラベルロード”と聞くと、「オフロードは走らないし……」と考えるかもしれませんが、太いタイヤは段差の多い街中でもありがたく感じるもの。細いタイヤはエアボリュームが少なく、きちんと空気圧の管理をしないとパンクしやすかったりしますが、太いタイヤですとそこまで気を遣わなくていいのもメリットです。未舗装路を走るかどうかに関わらず、30km/h程度で巡航するような走り方には適しているのです。
そして、この特性はe-bikeとの相性も良好。アシストが24km/hで切れるe-bikeは30km/h以上での速度の走り方にはあまり向いていませんが、グラベルロードの速度域にはちょうどいいのです。街乗りやちょっとしたお出かけから始めて、慣れてきたらロングライドや田舎道を走りに連れ出す。そんな使い方が「ROADREX 6180」にはピッタリです。そして、出かけた先でちょっとしたグラベルに出会ったら、臆せず入り込んでみると新しい世界が開けるかもしれません。