家電ラボの徹底「本音」レビュー

どのタイプの血圧計を選ぶ? 手首式と2つの上腕式を家族で使って分かった違い

家電プロレビュアー・石井和美が、レビューハウス「家電ラボ」で徹底的に試した「本音」の製品レビューコーナーです。
タイプが違う3製品を試してみた

旦那の足が、象のようにパンパンにむくんで変色していた。痛みで歩けないとのことで引きずっており、「糖尿病?」「痛風?」と我が家で大騒ぎに。前々から症状は出ていたものの、なぜか隠してガマンしていたそうで、いよいよもう耐えられなくなったところで病院へ。

検査の結果、間違いなく痛風とのことだった。糖尿病に関する数値も高めだったが糖尿病とまではいかないという。さまざまな検査の結果、先生に一番危険だと指摘されたのは「血圧の高さ」だ。

日本高血圧学会によると、最高血圧135mmHg以上、最低血圧85mmHg以上が高血圧のめやすとなっている。旦那はなんと健康診断のたびに最高血圧は160mmHg以上、最低が120mmHg以上。病院でもかなり高い数値になってしまったらしい。「血圧手帳」を渡され、血圧を毎朝測定して記入し、毎日降圧剤を飲み、定期的に病院で診察を受けることを義務づけられた。

そんなわけで血圧計をすぐに買わなければならなくなったが、電子血圧計もいろいろなタイプがある。旦那が慌ててAmazonで購入したのは上腕式(カフ式)の血圧計だ。カフ(腕帯)を上腕部に自分で巻き付けるタイプで、売れ筋ランキング1位だったから選んだという。毎朝、せっせと計測して血圧手帳に書き込んでいる。

血圧があまりにも高すぎる! 結局、弱い降圧剤では効かず、どんどん強めのものを処方されるように……。そして字が汚い

今回購入したのは上腕式(カフ式)だが、家庭用の電子血圧計には、他にも手首で測定する「手首式」がある。さらに「上腕式」には、カフ(腕帯)式と、血圧計本体と一体化している筒型のカフに腕を通して測定するアームイン式がある。

そこで、実際に家庭向け血圧計3製品を試してみることにした。お借りしたのは上腕式(カフ式)のタニタ「上腕式血圧計 BP-224L」、手首式のパナソニック「手くび血圧計 EW-BW35」、上腕式(アームイン式)のオムロン「上腕式血圧計 HEM-1021」。それぞれ計測方法が異なるタイプだ。

医師がすすめる血圧計は、精度の高い「上腕式」が多く、日本高血圧学会も推奨している。日本高血圧学会によると「現在国内で販売されている医用の上腕式電子血圧計は、医療機器として民間の第3者認証機関により認証を受けているものであり、一定の正確性が担保されている」とのこと。

血圧計3タイプの使い勝手を中心に、実際に高血圧の旦那、標準の妻(私)、低血圧の娘で計測し、使いやすさや血圧数値の傾向をチェックすることにした。

メーカー名タニタパナソニックオムロン
製品名上腕式血圧計 BP-224L手くび血圧計 EW-BW35上腕式血圧計 HEM-1021
実売価格12,800円8,800円19,560円

タニタ「上腕式血圧計 BP-224L」はアプリで血圧を記録できる

上腕式(カフ式)の血圧計。人気があるタイプ

タニタ「上腕式血圧計 BP-224L」は、上腕式(カフ式)の血圧計だ。Bluetooth通信に対応し、対応スマートフォンにデータを転送できるため、アプリでデータ管理ができる。旦那は毎朝せっせと血圧手帳に手書きで記入しているが、これならスマートフォンを病院に持って行くだけで、計測データを先生に見せることができるのでとても便利だ。実売価格は12,800円。

液晶部分は大きく、見やすい
カフは取り外すことができる
上腕に巻き付けて使う。面ファスナーが付いている

電源は単三形アルカリ乾電池4本で、場所を選ばず、どこでも使える。電池寿命は約350回。本体サイズは93×144×57mm(幅×奥行き×高さ)で、本体質量は約228g。スタンドが付属しており、本体とカフを立てかけてコンパクトに収納できる。

カフは、取り付けが簡単な「クリップアームカフ」を採用している。巻き付けるタイプは装着しにくく、ズレてしまうこともあるが、クリップ式のカフは片手でカポッとはめて巻けるのでとても簡単だ。測定は素肌または薄手の下着を着た状態で行なう。

クリップ式で、片手で腕にはめて固定してからカフを巻き付けられる。とてもラク
このような姿勢で終了するまで待つ

「開始/終了」ボタンを押してしばらくすると、カフがギュッと上腕部を締め付ける。ゆるんだ後に最高血圧/最低血圧/脈拍数/測定時の温度が表示された。2人分の測定結果(測定日時/最高血圧/最低血圧/脈拍数/測定時の温度)を過去90回まで記録できる。また、直近2回分の測定値を平均して表示する「平均値表示」機能がついている。血圧は変動が起きやすいため、日本高血圧学会の発行する高血圧治療ガイドラインで平均値を取ることが推奨されているからだ。

さらに、他にはない独自機能も搭載されている。室温が低いと血圧は上昇する傾向があり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる。そこで、安全で正確な測定のために室温が9℃以下であれば測定中止を促す機能が搭載されているのだ。特に冬はヒートショックで亡くなる方も多いので、「このアラートが表示されたら、部屋の温度を上げる」という行動に移すことができる。

測定中に脈間隔の乱れを感知し、マークでお知らせしてくれる機能も便利だ。不整脈の診断を判定するものではないが、頻繁に表示されて不安に感じたら、病院の先生に相談したい。

液晶画面が大きく、見やすい
このマークは脈間隔の乱れがあったことを示す。もう一度計測し直したほうがよい

クリップ式のカフは短時間で上腕に装着できる。ただ、正しい姿勢で装着し、測定するという条件のところで少々悩んだ。計測の際は、ひじの関節から2~3cm肩側になるようにカフの位置を決める。テーブルと椅子の座面高の差は25~30cmが理想で、カフの位置が心臓と同じくらいのところにする。カフの位置が心臓より低くなると血圧が高くなることがあるという。

何回かやってみたが、カフの位置が正解かどうか、わかりにくいと感じた。少し位置を変えるだけで血圧の数値が10mmHg以上ズレることもある。慣れていくうちに正しい位置がわかってくるが、最初のうちは少し戸惑うかもしれない。カフが少しズレていたり、猫背になったりすると血圧が急に高くなることがあった。

本体の表示は大きく、見やすい。2人分の記録もできるので、夫婦揃って血圧の管理もできる。また、アプリに測定結果を転送できるのも、わざわざノートに書き写す必要がなく、とても便利だった。

なお、スマートフォン連携ができるタニタの体組成計や活動量計などを組み合わせることで、血圧だけでなく、体重/内臓脂肪/脈拍などもトータルで管理できる。アプリで自分の健康状態を一元管理できるので、あちこち体の調子が悪くなってきている身としては、とても魅力的に感じた。

スマートフォンで連携。タニタのアプリをダウンロードしておけば簡単にBluetoothでデータを転送できる
本体で「記録1」か「記録2」を押し、「読み取り開始」をタップする
データを転送できる。転送済みのデータは重複することはない
最高血圧/最低血圧/脈拍を表示。「血圧」のみ、「脈拍」のみなどの選択ができる。体組成計などと組み合わせれば、「体重」などもこちらのグラフに追加できる
専用のスタンド付き
カフと本体をまとめて収納できる

パナソニック「手くび血圧計 EW-BW35」は手軽さが魅力

手の平サイズの手くび式血圧計

パナソニック「手くび血圧計 EW-BW35」は 2021年3月1日に発売予定の新モデル。手首で計測するタイプで、クリップのように挟めるので、片手で簡単に装着できる。基本的に上腕で計測する場合は裸もしくは薄着で計測するため、服を脱がなければならない場合もあるが、ちょっと袖をまくるだけで装着できるので、冬の寒い時期にとても便利だ。店頭予想価格は8,800円。

手首に装着して使用する

手首の付け根にあわせるガイドがあり、装着する位置も迷うことはなかった。

手首式は正しく測定するための姿勢がシビアだ。テーブルにひじをつき、手の平を上に向け、必ず本体と心臓の高さを合わせなければならない。腕を上げる角度が変わってしまうと、正確な数値は期待できないものらしい。

同製品は、そういった数値のズレを防ぐために「手くび高さセンサー」が搭載されている。手首の高さを最初に決めて登録しておくと、その後は手首の高さをマークで知らせてくれる。測定姿勢を毎回誘導してくれるので、マークを見ながら位置を調整できる。

手くび高さセンサー。これを目安に高さを確認できるので、毎回同じ高さで正確に計測できる

計測中は、手首にギュッと強い圧迫感を感じる。上腕式と違い、手首を心臓と同じ位置に持ち上げた状態でしばらく動かずに固定しなければならないのは、少々面倒に感じた。

このように手首を持ち上げて計測する

本体は小さいものの液晶画面は大きく、クッキリとしていて見やすい。測定後は記録ボタンを押すことで記録される。今回の測定値が上段に、平均値(記録された測定値すべての平均)が下段に表示される。変化がひと目で分かるのは便利だが、他2製品のように直近2~3回の平均値と比較したい。

液晶は小さいが、文字が大きく、コントラストははっきり
「M(メモリー)」ボタンを押すと下に平均値が表示される

測定中に手や手首などが動いてカフに余分な圧力がかかったことを検知すると、「体動サイン」が点滅。測定中の脈の間隔が大きく変動すると、測定終了時に「脈間隔変動サイン」が点滅したあと、点灯する。

なお、測定データを記憶できるのは一人分(90回)。旦那と一緒に使おうと考えていたので、夫婦のデータを別々に記録できないのは残念だ。

電源は単四形アルカリ乾電池4本。電池寿命は約500回。本体サイズは89×64×34mm(幅×奥行き×高さ)で、本体質量は約116g。3製品の中では一番小さく、軽い。

持ち運びやすいので、出張や旅行時にもぴったりで、出先でも欠かさずに血圧を計測できる。収納時に場所をとらないのも魅力だ。

旅行時に便利なポーチも付属

腕を入れるだけの簡単計測、オムロン「上腕式血圧計 HEM-1021」

アームイン式。想像よりコンパクトだったので驚いた

上腕式でも、アームイン式のオムロン「上腕式血圧計 HEM-1021」は、筒状の本体に腕をそのまま入れるだけ。巻き付けたり、挟んだりすることがなく、手軽に測定できる。実売価格は19,560円。

電源は単二形アルカリ乾電池4本(別売)か、ACアダプターを使用する。電池寿命は約300回。本体サイズは179×246×211mm(幅×奥行き×高さ)で、本体質量は約1,600g(電池含まず)と、他の2製品と比較するとサイズは大きい。ただ、収納時は腕置きや本体の腕帯を閉じておけるので、それほど場所をとらない。

腕置きを閉じた状態
開いた状態
電池もACアダプターも両方使える

正しい姿勢をチェックしてくれる機能もわかりやすい。腕を通した可動式腕帯の角度から正しい姿勢がとれているかを判断し、画面で知らせてくれる。正しい角度になると、液晶表示部の黒色のマークが中央の黄色の部分に移動するので、そこで固定して計測する。正しい姿勢をとれているかどうかをひと目で確認できた。また、測定中は手を動かすとうまく測れないが、上腕部は広い範囲でしっかり押さえられ、安定感は抜群だ。手の甲まで置ける腕置きがあるので、動くことなく、リラックスして計測できる。なお、左右どちらの腕でも使用可能。

腕を置いてリラックスできる
肘を置く場所は決まっているので、そこだけ気を付ける
正しい角度かどうか、画面で教えてくれる

計測後は血圧値レベルが17段階(1目盛り=10mmHg)で表示される。血圧が家庭における高血圧の基準値「135/85mmHg」を超えていないか、すぐに血圧値のレベルをチェックできる。

さらに、朝(AM4~AM10時)、夜(PM7~AM2時)の平均値を個別にチェックできる「朝/夜平均」も搭載されている。朝の平均値が「135/85mmHg」以上の場合には「早朝高血圧」マークが点灯し、早朝高血圧の確認に役立つ。この表示は、脳卒中や心筋梗塞、突然死などが午前中に多く発生し、その原因の一つが早朝高血圧と考えられているからだ。

計測時は液晶が向こう側に倒れるので見にくい。終了後に腕を外してからこちら側に倒して見る
夜の平均値を表示してみた。朝はお日様マーク、夜は月マークが表示されるのでわかりやすい

また、10分以内に測定した直近3回分の「平均値」、8週間分の「週平均」も表示。2人分のデータを90回分本体に記録できる。

本体は少し大きめだが、腕を差し込むだけで計測できるうえ、正しい姿勢へも誘導してくれるため、一番手軽に使いやすかった。アームイン式は毎日朝晩計測するような使用頻度の高い方におすすめしたい。

高血圧、標準血圧、低血圧の3人で計測

高血圧(旦那)、標準(私)、低血圧(娘)の3人で2回ずつ計測を行なってみたが、バラツキは少なかった。パナソニックの血圧計は最高血圧が少し高めにでる傾向があったが、大きな差ではない。

2回ずつ計測してまとめた表。大きな差はなかった

太っている旦那と標準の娘では、使い勝手の面で差が出た。旦那はオムロンの血圧計が若干きつめ。内側のカフの直径がギリギリだった。腕がこれ以上太くなってしまったら、このモデルは使えないだろう。対象腕周は17~32cm。筋トレで鍛えて腕が太い方は入らない可能性もあるので、こちらの血圧計を希望する場合はあらかじめ腕まわりを計測しておいたほうが安心だ。

旦那には少しきゅうくつだったらしい。対象腕周は17~32cmなので、腕が太い方は事前に計測を

逆に娘は腕が細く、タニタやパナソニックのカフはベルトが大幅に余ってしまい、留めにくそうだった。娘にとっては、一番簡単にできてラクなのはオムロンの血圧計とのことだ。体格によっても、使いやすさは変わってくる。

腕が細い娘はベルト部分がかなり余ってしまい、邪魔そう

家族でこのように定期的に血圧を測ると、生活習慣を改めるよい機会になりそうだ。旦那は強めの降圧剤を飲んでもこの数値……。もっと血圧を下げられるような、健康的な生活習慣を心がけなければならない。

16歳の娘は献血に行くことが目標。以前、誕生日を迎えてすぐに献血センターに行ったものの脈がとれずに断られてしまった。最高血圧が90mmHg以上にならなければ献血ができないとのことなので、この結果から健康的に血圧を上げるために何をしたらいいのか、調べると言っている。

旦那の血圧がかなり高かったので、驚いた娘から「しょっぱいものばかり食べるからだよ!」と怒られていたが、その通りだと思った。

手軽さ、大きさ、計測のしやすさなどのバランスを考え、自分にぴったりの1台を見つける

正しく測定するには時間帯を決め、毎日同じ時間に行なうのが理想だ。旦那は「朝起きてトイレに行き、その後すぐに2回測定」と病院から言われており、毎朝計測している。毎日計測しなければならないような方は、自分に合った計測しやすいタイプを選んでほしい。

今回の3製品で、試す前に一番不安だったのは手首式だ。というのも、手首の解剖学的特性から動脈の圧迫が保証されない場合があるため、日本高血圧学会が推奨していないからだ。ただ、今回試したパナソニックの手首式血圧計は、他の2製品と数値についてはほぼ同じだった。血圧値は計測時の姿勢や位置でも大きく変わるが、装着場所のガイドや正しい手の位置を教えてくれるセンサーなど、同製品はきちんとケアしている。数値的にも他2製品と大きな差はなかったので、安心して使えそうだ。

オムロンの血圧計も、正しい位置を知らせてくれるガイドがあるのでわかりやすかった。計測時の姿勢によって大きく血圧結果の表示が変わることもあるので、このようなガイド機能があるとありがたい。

また、タニタのようにスマートフォンに連携して管理できるのも、過去の数値を把握したい方におすすめだ。我が家の旦那のように、定期的に病院で先生に数値を見せなければならない場合は、手帳に毎日記入するよりもスマートフォンを見せるだけのほうがラクだ。汚い字で書き込まれた手帳を見せられるよりも、先生も助かるのではないだろうか。定期的に病院で血圧の報告をする必要があるのならば、こういった付加機能にも注目したい。

なお、計測時間はタニタが50秒前後、パナソニックが45秒前後、オムロンが30秒前後。最も短時間で計測できるのはオムロンの血圧計だった。

それぞれ使い勝手や付加機能が異なるので、自分に合った血圧計を選んでほしい。

血圧計にもさまざまな種類がある。使う目的や頻度に合わせて最適な1台を選びたい
石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

http://kaden-blog.net/