家電ラボの徹底「本音」レビュー

自動ゴミ捨てで10万円を切るルンバi3+。上位モデルと比べてわかったメリット

家電プロレビュアー・石井和美が、レビューハウス「家電ラボ」で徹底的に試した「本音」の製品レビューコーナーです。
自動ゴミ収集機付きで10万円を切ったルンバ「i3+」を試してみた

そろそろ家にロボット掃除機を、と導入を検討している方にとって、やはりアイロボットのルンバシリーズは外せない選択肢になるだろう。ここ数年、ルンバもさまざまな新製品が発表されている。ロボット掃除機本体から自動でゴミを吸引し、まとめて溜めておける「クリーンベース」が付いたモデルなど、以前とは異なる賢さと便利さをあわせ持ったロボット掃除機に進化している。

ルンバは大きく分けてsシリーズ、iシリーズ、eシリーズ、600シリーズの4種類がある。その中でも売れ筋は、主にワンルームや1LDK程度の掃除にぴったりのリーズナブルな「e5」(直販価格は49,800円)だ。その上のモデルを選ぼうとすると、最大60日分のゴミを溜めておける自動ゴミ収集機「クリーンベース」が特徴の「i7+」となる(クリーンベース付きは142,868円。クリーンベースなしの「i7」は109,868円)。

クリーンベースに興味を持って選択肢に入れようとしても、この価格差はあまりにも大きく、さすがに15万円近い金額は出せない……という方も多いのではないだろうか。

そこにi7シリーズとe5の間を埋めるモデルi3シリーズが2月に発売された。クリーンベースが付属する「i3+」の価格は99,800円と10万円を切っている。i7+と比較すると約5万円の価格差があるが、一体何が違うのだろうか。実際に使ってみると、i3シリーズが得意とする部分や、どういった人におすすめかということなどが見えてきた。

左は今回ご紹介する「i3+」。中央の「s9+」はフラッグシップモデルで、Dの形をしておりルンバシリーズで一番高性能。右の「i7+」は地図を作成して次回の掃除に反映する学習機能を搭載

上位モデルとの大きな差は「マッピング」の有無

上位モデルと同様、i3シリーズはスマートフォンとの連携もサポートしている。無料でダウンロードして使用できるアプリ「iRobot HOME」では、曜日や時間設定による掃除のスケジュール管理や、スマートスピーカーとの連携も可能となっている。

i3シリーズと上位モデルとで大きく異なるのは、「Imprintスマートマッピング」機能の有無だ。i7シリーズとs9+はカメラを搭載しており、vSLAMナビゲーションで家の中の環境を詳細にマッピングし学習して記憶。掃除すればするほど学習して賢くなる。

作成した地図に沿って掃除するので無駄がなく、短時間で掃除が終わる。一番のメリットは掃除エリアや侵入禁止エリアをカンタンに設定できること。アプリに地図を登録しておくことで、見えない壁を作ってルンバを進入させたくない場所を設定したり、部屋を指定して「台所だけ掃除する」といった設定をしたり、細かく掃除エリアを決められる。

これはi7+が作成した地図。部屋ごとにエリアを区切り、進入禁止エリアは赤く囲っている。掃除エリアを指定できて便利だが、この機能はi3にはない

一方、i3シリーズはフロアトラッキングセンサーやジャイロセンサーなど、複数のセンサーを組み合わせることでカメラを使わずに移動し、本体の位置を把握している。掃除のたびにマップを作っていくので、地図を記憶することはできず、上位モデルと違って「エリア指定」ができない。違う見方をすれば、エリア指定などの機能が必要ない方には、i3シリーズで十分と言えるだろう。

我が家にあるi7+と本体を比較してみた。大きさなどはほぼ同じで、裏側も同じように見える。ただ、i3+にはvSLAMの窓がない。また、ゴム製デュアルアクションブラシの形状が少し異なっている。音が少し静かになっているので、改良されているのかもしれない。

左がi3+、右がi7+。フォルムはほぼ同じ。ただ、左のi3+にはvSLAM用カメラの窓がない
裏側もそっくり
ブラシは形状がごくわずかだが異なっている

さっそくリビング(12畳)、キッチン(5畳)、ランドリースペース(3畳)の3部屋を一度に掃除してみた。

汚れているところは何度も行き来してしっかりゴミを取りきる

リビングの隅、台所シンクの下、ランドリーの隅、テーブルの下、カーペット、畳カーペット、毛足の長いラグの上に擬似ゴミをまいて掃除をしてみた。

畳カーペットと毛足の長いラグに、細かい砂、猫のトイレ砂、人毛などをばらまいておく
畳カーペットは厚さが2cmほどある
他社製のロボット掃除機は引っ掛かることが多い、分厚いラグ
カーペットの角に引っ掛かるロボット掃除機も多い
部屋の隅にも擬似ゴミをまいた
ランドリースペースの一番奥にも擬似ゴミをまいておく。きちんとここまで来るのだろうか

運転をスタートさせると規則正しいパターンで清掃していく。2種類のゴム製ブラシは、フローリングからカーペットまで、どんな床とも相性がよい。チリやホコリ、ハウスダストのような小さいゴミから、髪の毛や大きなゴミまで取り除く。

ダートディテクトテクノロジーによって、ゴミが特に多い場所を検知して集中的に掃除する。ゴミをまいた場所は何度も行ったり来たりしてゴミを取ってから、次の場所に移動していた。

ラグの上もしっかり上ってゴミを吸引。このラグはD型のs9+だと引きずってしまう
どんな角度からもスッと上っている
畳カーペットの上をキレイにしてから下りていった
隅もきちんと掃除
カーテンの奥まで掃除してくれるのもルンバの優れているところ
家具の足まわりも入り込んで回転しながらしっかり掃除
台所の少しくぼんだところも入り込める高さ
レンジ台の下へ入ってしっかり掃除
中に砂が入り込んで取れにくいカーペットも、何度も行ったり来たりしながら掃除

マップを見てみると、想像以上に掃除した間取りは正確だった。i7+で作成されたマップと比較しても、違いはほぼない。ゴミが多かった部分に表示される濃い緑のマークも実際と一致しており、ゴミを置いた場所をしっかり把握していることがわかる。残念ながら部屋の隅は少しゴミが残っているものの、多めに置いた猫のトイレ砂、微細な砂、髪の毛などはほぼ取りきっていた。

畳カーペットはお見事!
毛足の長いラグは猫のトイレ砂が少し残っていた
細かい砂が取れにくいカーペットもほぼ取れている
リビングの隅は少し残っている。こういう場所はs9+が得意
リビングと同様、ランドリースペースの角もゴミが少し残っていた

数回同じようにテストしてみたが、やはり隅のゴミだけは残ってしまうようだ。ゴミの量にもよるが、1回の掃除は毎回31~37分。なお、i7+はいつも22~23分で掃除が終了しており、隅のゴミもi7+のほうがしっかり取り切っていた。間取りをあらかじめ把握しているからか、無駄なく隅まできちんと移動しているのはi7+のほうだった。

左がi3+、右がi7+のマップで、ほぼ変わらない。i3+のセンシングもとても優秀だ。ゴミをまいたところもきちんと認識している

上位モデルより得意なことは「暗い場所でも迷わず完走」

マップを記憶できないi3シリーズは、何かの理由で持ち上げ、少し移動すると道に迷う傾向がある。リビングと台所で掃除中に本体を持ち上げて一時停止し、30cmほど離した場所に置いてから再度スタートさせてみた。

ずっと見ていたところ、どの部屋でもほぼ変わらず、きちんと掃除できているが、途中で止まってじっと悩んでいるような状態が増えた。また同じ場所を行ったり来たりすることも増え、掃除時間は55分と大幅に延びてしまった。

家庭ではモノが落ちていても気がつかなかったり、コードなどが引っかかったり、色々なトラブルが起こることもある。持ち上げて取り除いてから再スタート……といったこともあるかと思うが、i3シリーズの場合はなるべくこのような事態を避けるため、ロボット掃除機が掃除しやすい状態にしてからスタートしたほうがよさそうだ。実際にマップを見ると、いつもとは違う間取りに崩れていた。

左が通常、右が持ち上げて移動したマップ。マップが崩れているが、すべての部屋は一通りきちんと掃除されていた

i3シリーズのほうが優れているところもある。暗い場所で使用するなら、vSLAMを搭載したi7シリーズやs9+よりもi3シリーズのほうが正確に掃除できるのだ。vSLAMは主にカメラでまわりの状況を判断しているが、暗くなると正確に判断できなくなる。

日が落ちた19時30分、i7+で部屋全体を掃除してみたところ、地図がひどく崩れていた。明るい場所ではきちんと隅々まで掃除できていたi7+だったが、明らかに掃除ができていない。一方、20時14分から始めたi3+は全く問題なく、明るいときと同じようなマップを残し、終了している。

i7シリーズを夜間に使用する場合は、各部屋の電気をつけておく必要がある。暗い場所でも使いたい場合は、i3シリーズのほうが有利だ。

暗くなってからi7+で掃除したところ、マップは原形を留めていない状態に……
i3+は真っ暗な状況でもきちんと掃除できている

クリーンベースがあれば、本体の面倒なゴミ捨てをしなくてすむ

ルンバシリーズは本体にダストボックスがあり、そこにゴミを溜めていく。2019年に自動ゴミ収集機のクリーンベースが登場するまで、毎回ゴミを捨てなければならなかった。せっかくロボット掃除機で部屋をキレイにできても、ゴミ捨てだけは人力で毎回やっていて正直面倒だったが、その手間からも解放された。掃除のたびに本体から自動でゴミを吸い上げ、クリーンベースに内蔵されている紙パックに排出する。この紙パックには、最大60日分のゴミを溜めておくことができるのだ。

クリーンベースのフタをパカッと開けると紙パックが見える
満杯になったら取り出すだけ。吸引口が閉じられる機構で、ゴミを見なくてすむ
本体のダストボックスも外すことができる
ダストボックスは小さめなので、クリーンベースなしだとほぼ毎回掃除が必要となる

紙パック式なので、溜まったらそのままポイッと捨てればよい。AllergenLock紙パックは花粉やカビなどを99%封じ込める。さらに吸引口は引っ張ると閉じる仕組みになっており、ホコリが空中に舞うことがないうえ、汚いゴミを目にすることもない。

掃除後も、ブラシに髪の毛などが絡まりにくいのでお手入れもほぼ必要なく、ダストボックスのケアもほとんどすることがなくなった。なお、交換用の紙パックは直販価格で2,178円(3枚入り)。

便利で手放せないクリーンベースだが、気になるのは本体から吸引する時の音がかなり大きいこと。早朝や夜間の使用はためらう大きさなので、毎回掃除後に吸引するのではなく、「クリーンベースへの吸引は14時」といった設定ができるようになると嬉しい。

ライフスタイルによって使いやすいモデルは変わる

我が家にはルンバシリーズ最上位モデルのs9+(186,780円)もある。Dの形をしており、吸引力も高く、隅までよくゴミを取ってくれる。ただ、愛用している円形のラグに上ることができず、引きずってしまうのであまり使用していない。ペットも飼っていないので、そこまでの吸引力は必要としない我が家にとってはオーバースペックといった印象だ。特にブラシが大きいせいか音が大きいのも、在宅ワーク中にルンバを走らせている我が家のライフスタイルには合わないと感じている。

結果、我が家でずっと使い続けていたのはi7+のほうだ。Imprintスマートマッピングは「台所だけ掃除」といったエリア指定もよく使っていて、とても便利だ(この機能はs9+にも搭載されている)。

今回試したi3+は、掃除性能は高いものの、たくさんコードがある場所などを進入禁止エリアにできないのは、少々不便に感じた。ペットを飼っている方は水飲み場などを手軽に禁止エリアに設定できるi7シリーズやs9+のほうが便利に感じるかもしれない。特に気をつけていただきたいのは、マンションなどの段差がほぼない玄関だ。靴を置くスペースと廊下の段差が少ない場所では、廊下の縁を乗り越えてしまい、落ちて戻れなくなる場合がある。こういったスペースがある家では、やはりエリア指定機能が欲しいところだ。

ただ、2LDK程度の広さまでで「エリア指定は必要ないし、毎回フロア全体をキレイに掃除してくれれば問題ない」という方には、上位モデルのvSLAM機能はオーバースペックに感じるかもしれない。夕方から夜間の留守中に使用する方は、電気を消していてもしっかり清掃してくれるi3シリーズのほうが使いやすいというメリットもある。価格差もあるので、その機能が本当に必要かどうか、ライフスタイルに照らし合わせて比較検討していただきたい。

個人的にはi3シリーズのファブリック調デザインがお気に入り。真っ黒やゴールドは、高級感のあるインテリアには馴染むが、我が家のようなカジュアルな家では少し浮いてしまう。i3シリーズはやさしい印象でホコリや傷も目立ちにくく、部屋に馴染んでいる。

デザインは「i3」シリーズが一番好み

購入するならクリーンベース付きがおすすめ!

i3シリーズはクリーンベースがないモデルもあるが、選んでいただきたいのはクリーンベース付きのi3+だ。ルンバはしっかりゴミを取るので、すぐに本体のダストボックスがパンパンになる。本体のゴミ捨てをこまめにしなければならないが、それがなくなるだけで本当にラクになる。予算と間取りやライフスタイルに合わせて、最適な1台を選んでほしい。

石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

http://kaden-blog.net/