家電製品ミニレビュー

東芝のフラッグシップ炊飯器「真空圧力」で、同じお米を炊き比べ&食べ比べてみた!!

 各社から2018年モデルの炊飯器が発売され始めている。東芝ライフスタイルのフラグシップモデル「真空圧力IH RC-10ZWM」を、さっそく試す機会を得たので、さまざまな炊飯モードを試してみた。同モデルの特徴は独自の「真空αテクノロジー」を搭載すること。この真空機能と、「圧力可変コントロール」を組み合わせた「合わせ炊き」により短時間でご飯を炊き上げられる。

角のない立方体に近いフォルムを採用した「真空圧力IH RC-10ZWM」

 さらに今回のモデルから真空ポンプがパワーアップ。従来モデルの0.6気圧から0.5気圧まで減圧できるようになったことで、より素早くお米に吸水ができる用になり、「かまど名人」コースや「白米混合」コースでの炊飯時間を大幅に短縮できるようになっている

メーカー名東芝ライフスタイル
製品名真空圧力IH RC-10ZWM
価格(編集部調べ)13万4514円

 ではまず、外観と機能面から見てみよう。本体サイズはW245×D328×H228mmで、質量は約7.2kg。一般的な炊飯器のサイズだ。本体にハンドルはないが、底部分に手をかける凹みがあり、両手で抱えて運べるようになっている。

正面から見たところ。蓋を開くボタンなども全て天面のため、非常にシンプル
つるっとした右側面。底部の凹みに手をかけられる
左側面に排熱口や各種情報を表示。目立つ場所に置く場合は、左側を壁に寄せたい

 操作パネルや、ふたオープンボタンは天面に配置。大型液晶タッチパネルを中央に配置し、その周辺に「炊飯」や「そくうま」などの5つのダイレクトボタンが並んでいる。さらには画面をタッチして、炊飯モードやお米の種類を変えられる。

大きな液晶タッチパネルを配置した本体

 続いて内釜だ。「真空圧力IH RC-10ZWM」ではかまど形状の「備長炭かまど本炭釜」を採用している。鍋底が60度の傾斜がある丸底になっているため、炊飯時にお米が対流しやすいのが特徴。また、内釜自体の背が高く、口の部分が狭まっているため、吹きこぼれしにくく、沸騰状態をキープできる。内釜の素材は熱伝導性に優れた厚肉アルミニウムと、発熱性の高い鉄とステンレスを採用。内側には熱伝導性をさらに高められるダイヤモンドチタンコートを、外側には備長炭入り遠赤外線コートティングが施されている。

蓋を開けたところ。内釜の上部空間が大きいため、フタ部分が分厚い
500トンの力でアルミとステンレスなどを高圧成型する独自の溶湯鍛造製法で作られた内釜
内釜以外で本体から取り外せる部分。内蓋と蒸気口。これらは炊飯ごとに洗う

かまど名人コースの最短時間は28分

 では早速ご飯を炊いてみよう。購入時のプリセットでは「エコ炊飯」モードになっているので基本となる「かまど名人」コースに切り替える。この切り替えは、画面の「かまど名人」ボタンをタッチするだけと簡単だ。「かまど名人」コースでは食味を「しゃっきり」から「もちもち」まで11段階で調整できる。このとき、「しゃっきり」にセットすると、気温や水温の影響は受けるが、最短約28分で炊ける。標準コースによる炊飯時間としては他メーカーの炊飯器と比べても非常に早い。ただし、食味設定を「おすすめ」にすると炊飯時間は38分に、「もちもち」では48分へと長くなる。

 まずは「かまど名人」コースでしゃっきり、おすすめ、もちもち、それぞれに炊いたご飯を食べ比べてみた。今回炊いたのは平成29年栃木県産のコシヒカリだ。

 「しゃっきり」で炊くと粒感が非常に強く、あっさりした味。甘みはあまり感じなかった。ご飯自体の味は弱めなので、カレーや丼ものなど、強めのおかずと合わせたい食味だ。

「かまど名人」コースで、食感を最も「しゃっきり」に設定して炊いた。炊飯時間は約28分
非常に粒感が強い、やや硬めの炊き上がりだった

 一方で「もちもち」は一粒一粒ではなく、ご飯がある程度まとまってもちっとした食感を生み出している。甘みも引き出されており、ご飯自体の味も「しゃっきり」と比べると強く感じられた。「おすすめ」は、設定では中間だが、個人的には粒感の方が強めで、やや「しゃっきり」寄りの印象。ご飯の味は出ているが、もっちり感は弱め。このため、もっちりした食感が好みの筆者は、2つほど「もちもち」寄りにした方がちょうどよかった。

逆に「もちもち」に設定して炊いたご飯
甘みが強くなっており、ご飯粒は柔らかく。弾力も感じられた

甘みを引き出す独自機能「甘み炊き」

 東芝だけの炊飯機能となるのが「甘み炊き」コースだ。これは「かまど名人」コースと比べて、ゆっくりと加熱することで沸騰までの時間をかけて、甘みを引き出すコース。メーカーによると約30%甘みが増すという。実際に「甘み炊き」も試してみた。

 「甘み炊き」の「おすすめ」で炊いたご飯は、「かまど名人」コースの「もちもち」よりもご飯の味は強く、しっかりとした甘みが感じられた。それでいて、もっちり感は抑えめで、粒感もある。「真空圧力IH RC-10ZWM」のポテンシャルを真に発揮できるのはこの「甘み炊き」コースだと言えそうだ。なお、「甘み炊き」コースでは3段階で食味の設定ができる。

給水時間を伸ばしてしっかりと水を吸わせてお米の持つ甘味を引き出せる
ご飯粒もやや大きくなっているようにも見える

 その他の白米用のコースとしては、初期設定の「エコ炊飯」と、独立したボタンを装備する「そくうま」がある。「エコ炊飯」は消費電力を抑えて炊飯するコースで、優先順位は味よりも消費電力となっているためあまり使うことはなさそうだ。また、「そくうま」は24分で炊けるいわゆる早炊きコースだが、「真空圧力IH RC-10ZWM」は通常のかまど名人コースでも十分に速いため、あまり差が無く、「そくうま」も使用する機会が限られそうだ。他メーカーの炊飯器のような10分ほどの短時間で炊けるコースがあるとよかったように感じた。

玄米デビューに最適な「白米混合」

 「真空圧力IH RC-10ZWM」が搭載するちょっと面白い機能は、玄米と白米を混ぜて同時に炊く白米混合コースだ。通常の炊飯器で白米と玄米を混ぜて炊くと、白米コースでは玄米が固くボソボソになり、玄米コースでは白米がべちゃべちゃになってしまう。しかし、「真空圧力IH RC-10ZWM」の「白米混合」コースでは、食感を悪くすることなく上手に炊けるよう、チューニングが施されている。

 白米と玄米の比率は、2:1、1:1、1:2で選べる。そこで玄米食デビューに最適な白米の多い2:1で 炊いてみた。

玄米と白米を混ぜて炊く、白米混合炊き。メニューから玄米を選び、画面下の「白米混合」を選択。その後、白米と玄米の比率を決めて、その通りにお米をセットして炊く
白米2:玄米1はわずかに玄米の食感があるが、匂いなどはほとんどなく、これから玄米食を始めようという人に最適だ

 玄米の存在感が非常に大きいため、白米2で炊いても、食感ははかなり玄米寄り。とはいえ白米のもちもち感が加わるため、玄米のボソボソ感が苦手という方でも比較的食べやすい印象だ。個人的には白米1:玄米2で炊いた混合ご飯は、玄米ご飯との差をあまり感じなかったので、それなら栄養重視して玄米だけで食べてもいいかなと言う印象だった。

 個人的に気になっていたのが、麦ご飯だ。最近ではもち麦や押し麦が比較的簡単に入手できるため、それらを玄米に2、3割ほど混ぜて炊くだけ。麦のプチプチとした食感がご飯に加わり、それでいて白米と比べても違和感なく食べられた。玄米食は苦手だが、食物繊維や栄養分を取りたいという方には、麦ご飯が向くだろう。

市販の小分けになったもち麦50gを、ご飯3合に追加して炊飯した麦ご飯
もち麦の食感が加わり、風味豊か。白米と比べてもそれほど大きな変化なく食べられる。これでも食物繊維の摂取量は大幅に増える

 これらの白米以外の炊飯コースも、操作パネルから簡単に選ぶことができ、水加減も分かりやすかった。圧力と真空機能によって、吸水効率が向上するため、白米以外も美味しく炊けた。

真空ポンプを使った保温機能も特徴の1つだが

 「真空圧力IH RC-10ZWM」が搭載する真空αテクノロジーでは、吸水時以外に保温時にも真空機能を活用できる。「真空保温」機能では内釜に残る空気を追い出し密閉することで酸化によるご飯の黄ばみや水分の蒸発を抑えられる。この機能により、白米では最大40時間、混合ご飯や玄米、雑穀ごはんなども最大12時間、匂いや乾燥を押さえながら保温できるとしている。

 実際に白米を長く保温してみたが12時間までは大きな変化を感じず、おいしく保温できていた。ただし、個人的には12時間以上を経過するとやや乾燥が進む印象だ。筆者は内釜にかまど本羽釜を採用した2016年モデルの「RC-10ZWK」を日常的に使っているのだが、本体サイズがコンパクトになったからなのか、残念ながら保温性能は下がってしまったように感じた。

写真は炊飯後、14時間経過した「かまど名人:おすすめ)で炊いたご飯。匂いや色の変化はないが、やや乾燥が始まっている。長期保温する場合は、わずかに水加減を増やしておくといい。

 とはいえ大手メーカーの炊飯器の中でも保温機能が高いのは事実。同等クラスの保温機能を搭載するモデルはそう多くはないため、家族それぞれがご飯を食べる時間が違う場合など、保温性能を重視する場合は候補となるだろう。

炊飯時間の早さや玄米混合など便利な機能が魅力

 「真空圧力IH RC-10ZWM」は東芝の炊飯器の最上位機種だけに白米が美味しく炊けるのは当然のことだといえる。「甘み炊き」コースはおすすめで約63分と炊飯にかかる時間は長いか、お米の旨味を引き出して美味しく炊ける。さらに日常的には、好みの食感のご飯を素早く炊けるのが魅力。それは白米だけではなく、玄米などにも対応しているのがうれしい。

 ご飯の食感が「しゃっきり」から「もちもち」まで11段階で選べて、さらに甘みを引き出したご飯も選べるのが「真空圧力IH RC-10ZWM」の特徴。ご飯の美味しさだけでなく利便性も追求した炊飯器なのだ。

コヤマタカヒロ

フリーランスライター。1973年生まれ。学生時代より雑誌ライターとして活動を開始。PC、IT関連から家電製品全般までに造詣が深く、製品やビジネスを専門的ではなく一般の方がわかるように解説するスタンスで執筆活動を展開している。近年は、デジタルとアナログ、IT機器と家電が交差、融合するエリアを中心に取材活動を行なっている。雑誌やWebに連載多数。企業のアドバイザー活動なども行なっている。 Twitter:@takh0120