家電製品ミニレビュー

プロをも魅了するマウンテンバイク型の電動アシスト自転車「XM1」を街乗りしてみた

 昨年9月にパナソニックが発売したマウンテンバイク型の電動アシスト自転車「XM1(エックスエムワン)」。当初、発表会では初年度の販売目標200台としていた。その販売目標を、たった1カ月でクリアしてしまったという。

 というわけで、XM1を実際に借りて、主に街乗り用として使ってみた。

XM1
メーカー名パナソニック
製品名XM1(エックスエムワン) BE-EXM40
価格330,000円

 XM1は、電動アシスト自転車とはいえ、ガチでアウトドアを走るために設計されたマウンテンバイク。普段は都内(東京の東側)を、ちいさな小径のロードバイクで走っている筆者からすると、初めて乗った時の感想は「デカイ!」。フレームもタイヤも大きく、視線も高くなったように感じた。

 クルマで例えるなら、いつもは軽自動車に乗っているのに、いきなりランクルやハマーを街中で乗り回しているようなイメージ。タイヤ幅にもよると思うが、安定感が高い。ロードバイクでは気になる路面の亀裂や側溝の穴、車道と歩道の境目の段差などを、まったく気にすることなく走れた。

真横
前方
後方

 マウンテンバイク仕様の電動アシスト自転車は、これまでも他メーカーから発売されていた。ただし、バッテリーなどは一般的な電動アシスト自転車から転用したものと思われるものを採用している。転用したモデルでは、バッテリー形状が四角い箱。そのため、後輪の近く(シートチューブの後方)に配置されているものが多い。

 XM1が異なるのは、見た目にも大きく影響するバッテリーの形状を、フレームと一体化したかのように見えるよう設計されている点。設置位置はフレームの前方(ダウンチューブ)、前輪のすぐそばだ。前述の転用モデルと比べて自転車の重心を前方に持っていくことができ、乗った時の重心バランスが良いことに気がつく。

フレームと一体化させたようなバッテリー形状
重いバッテリーがフレームの前部に配置
鍵を回してバッテリー上部を手前に引くように抜き取る
バッテリーは外しても充電できるし、外さずに充電することも可能

 初めて乗った時は、汐留から神保町までの約4.5kmの行程。坂道と呼べる道はなく、ほぼフラットなエリアを移動した。

 電動アシスト機能はECO/AUTO/HIGHの3種類。それにNO ASSISTモードが用意されている。いずれのモードでも、時々乗るママチャリ仕様の電動アシスト自転車のように、グンッ! と前方から引っ張られるような加速はなく、ペダルを踏み込んだ分に比例して徐々にだけれど素早く自然に加速していく。

素早く自然に加速していく

 ECOモードでは発進から20-30mほどで時速18kmくらいに到達。HIGHやAUTOモードだと同じく時速20km超となる。ただ、そこからのスピードの伸びはなく、さらに加速したい場合は、アシストのない状態で加速するのと同じような頑張りが必要となる。無理なく加速した時の最高速は、時速28kmくらいだった。このあたりは、漕げばスゥ〜っと加速していく、例えばヤマハの「YPJ-R」などのようなロードレーサー型の電動アシスト自転車とは違う。

ハンドル左手側にモード切り替えなどができるスイッチを配置。左手親指で簡単に操作できる
アシストモードや走行距離、スピードなどはハンドル中央に設置されたディスプレイで確認できる

当たり前だが、上り坂もすいすい上れる

 普段、筆者は東京のゼロメートル地帯しか自転車移動しない。それでも、近所には上野の山があり、湯島の切通があるなど、本郷台地の東端(の崖下)に住んでいることを意識することも多い。例えば上野から編集部のある神保町までは、湯島→御茶ノ水を抜けた方が、距離が短いのだが……坂が嫌いなので秋葉原、岩本町に回り込んで通っている。

 だがXM1であれば、そんな坂道も難なく越えられる。実際に坂道を上ってみると、HIGHやAUTOであれば急坂も、ホントに楽勝。

上り坂もすいすいと上っていく
まったくストレスなく上っていける

 XM1の撮影時には、同じ編集部のメンバーに代わりに乗ってもらった。普段はそれほど自転車に乗らない彼でも、すいすいと坂道を上っていく。そこまで行かなくてもいいよ、って言っても声が届かない距離まで走り去ってしまう。

「これはラクっすねぇ〜」と顔色1つ変えずに坂道を進める

平地ならNO ASSISTでも走れる10段ギアシフトを搭載

 ママチャリ型の電動アシスト自転車と大きく違うのが、外装10段シフトの変速機が搭載されていること。車体重量21.8kgに加えて自分の体重も乗るので、ラクに走れるとは言えないが、NO ASSISTモードまたはバッテリーが切れた状態でもギアを変速させれば、それなりに快適に走れる。

シマノのコンポーネント「SLX」を採用
リア10段変速

 足周りについて、フロントにサスペンションを搭載している。とても便利なのがハンドルの右手側に、サスのロックまたは解除ができるスイッチがあること。走りながらでも簡単に有効/無効を切り替えられるので、段差などが多い所では即座に有効にすることもできる。

 ちなみに今回は、街中のアスファルト道しか走っていないので、サスペンションは常時ロックしていた。サスペンションを効かせれば乗り心地は良くなるが、ペダルを踏み込んだ力が、高効率でタイヤに伝わらないような気がするからだ。街中では、ダートな道を走る機会もないので、あまり使う機会がなかった。

 ブレーキはフロント/リアともにディスクブレーキ。こちらもシマノ製が採用されている。借りていた期間に雪が降ってきたが、そうしたパーツが濡れるシーンでもブレーキがよく効く。ブレーキの効きが安定している上に、電動アシストのおかげで初速もラクで速く、信号が赤だったり一時停止の交差点だったりしても、イラッとすることなく迷うことなく停止できるのは電動アシスト自転車の良い点だろう。

フロントサスペンション
ハンドルの右手側にサスペンションのロック/解除スイッチを配置
フロント/リアともにディスクブレーキを採用

結局のところ、街乗り用バイクとしてはどうなのか?

 今回、XM1を一週間借りていた。返却時には約9kmの道のりを一気に走ったが、このくらいの距離でも体力も神経も消耗せず、疲れることなく走れて良いなと感じた。もちろん坂道がある道のりでも、気兼ねなく行けるので、都心部を横断する時にも活躍してくれそうだ。

 使ってみて困ったのは、自転車の大きさ。うちにはチャイルドシート搭載の電動アシスト自転車が1台あるが、それと同等もしくは以上に、駐輪場に置きづらい。特に駅(上野)の駐輪場だと、両脇に停められていて1台分しか空いていないところに自転車を停めようとすると、ハンドルが邪魔して入れられない。いつも小径ロードで、そんな場所にもヒョイッと気軽に入れているせいもあるが、けっこうなストレスだった。

 結果、街乗り用としては、現在使っている小径ロードから乗り換えることはないなと思った。ただしXM1は、そもそもダートコース、もっと言えばダウンヒルで力を発揮する自転車。それを街乗りしただけで判断するのは酷というもの。

 借りている期間中に近所の自転車にタイヤの空気を補充しに行ったことがあった。これまで何度も利用している自転車屋だが、いかにも職人さんという風情のご主人とは、今まで話しを交わしたことはなかった。そんなご主人が、XM1を店の中から見たようで、パンク修理に来ていたお客さんを放って店の外に出てきた。

 「それXM1ですよね?」と筆者に話し掛け、「あ……そうですけど……」とモゴモゴと答えると、「いいですよね、その自転車」とかぶせるように言ってきた。店主は実際に借りて乗ったとのことで、何が良いのか聞くと引き続き他の客を放ったまま熱心に説明してくれた(その時に聞いた話は、上の原稿を書く際の参考にさせてもらった)。こうしたプロが、目をキラッキラさせながら「いい自転車だ」と言わせてしまう自転車なのだから、きっとXM1は良い自転車なのだろう。次はXM1が得意とするダートコースを、ガシガシと走ってみたいものだ。

河原塚 英信