家電トレンドチェッカー
戦国時代のe-bikeドライブユニット、メーカー毎に走りはどう違う?
2018年10月16日 14:24
日本には入ってきたばかりですが、欧米ではすでに10年近い歴史を持つe-bike。出始めの頃のデジカメやスマートフォンと同様に、短いサイクルでモデルチェンジを繰り返して、各社とも戦国時代の様相で新しいドライブユニットを完成車メーカーに納入しています。クルマでいえばエンジン、パソコンならCPUに当たるe-bikeの中核部品がドライブユニットですが、メーカー毎にどのような違いがあるのでしょうか?
国内のe-bikeはミッドドライブ式が主流
まずは、モーターの搭載位置ですが、前輪ハブに搭載するフロントドライブ、クランクと同軸のいわゆるミッドドライブ、リアハブに搭載するリアドライブの3種類のドライブ方式があります。そのなかでも、今年発売された国内仕様のe-bikeの高級ラインナップは、ほとんどがミッドドライブ式を採用しています。
ミッドドライブ式のメリットは、約3kgと自転車全体の重量からすると大きな割合を持つドライブユニットを車体の中心の可能な限り下側に搭載し、乗り物としての運動性能を高めること。同時に、ペダリング軸に対してアシストを行なうことで入力に対して自然なアシスト感とレスポンスを実現し、スポーツサイクルとしての人馬一体感を向上してくれることです。
ミッドドライブ式のe-bike用ドライブユニットを展開しているのはヤマハ、ボッシュ、シマノ、パナソニック、そしてバーファンの5社で、国内市場のほとんどすべてを占めています。
まず、ヤマハですが「PW」「PWseries SE」「PW-X」の3種類のドライブユニットを国内展開しています。PWはマイルドで消費電力の少ないアシスト、PWseries SEはオンロードバイク向けの適度なアシスト量を持つユニット、PW-Xはe-MTBでの使用を考えたパワフルなヤマハのフラッグシップユニットという扱いになります。
昨年日本市場に参入したボッシュは、欧州では5種類のドライブユニットを投入し市場の方向を決める主要プレイヤーですが、国内にはActive Line Plusというドライブユニットのみを日本仕様として投入しています。最大トルクは50NmでヤマハのPWseries SEに近いアシスト出力感のユニットといえます。
シマノは欧州では「E6000」「E6100」「E8000」と3種類のドライブユニットを投入していますが、現時点ではE8000の日本仕様版であるE8080のみを国内市場に投入しています。定格最高出力は250Wで他社のドライブユニットと大きく変わりませんが、最大トルクは70NmとヤマハのPW-Xとアシスト出力感は近いモデルとなります。
このほかに、パナソニックは国内市場に「MSDU」と呼ぶドライブユニット内に2速の変速機を内蔵したモデルを投入しており、中国のバーファン製のドライブユニットは搭載メーカーに合わせてチューニングを行なっているなど、それぞれのメーカーが個性のあるユニットをすでに国内展開しています。
ドライブユニットも意識してe-bikeを選ぼう
ドライブユニットはそれぞれに乗り味が異なるので評価は分かれますが、ヤマハのPW-XとシマノE8080はアシストトルクの大きさはもちろん、レスポンスに優れた走りと、高いケイデンス数(クランク回転数)に対応。既存のスポーツサイクルユーザーなら気になるQファクター(ペダルとペダルの間の幅。広くなると綺麗なペダリングができない)についても考えられた設計となっています。そのこともあって、世界を見渡しても最高レベルのドライブユニットとなっており、国内仕様のe-bike購入を考えるなら、まずは試してみたいユニットであるというのが私の個人的な印象です。
その一方で、ボッシュの搭載モデルはシマノやヤマハよりも多くのブランド・モデルに採用されており、幅広いタイプの自転車の中から選ぶことが可能。特にトレックは2019モデルでインチューブ方式のバッテリーを採用したモデルを発表するなど、同様に注目に値します。
アシスト力も強ければよいというわけではなく、結局はスポーツサイクルなので走って楽しいかどうか、自分の用途に合っているかどうかが一番。バッテリーが動力源のため、アシストが強いということは同時にバッテリーの消費電力も大きいということになります。e-bikeの購入を検討するなら、自転車の形状(タイプ)だけでなく、ドライブユニットの違いにも注目して乗り比べてみるのが満足のいく買い物への近道でしょう。