家電レビュー

ソニーの着るエアコンはホントに冷たい! 3世代目のレオンポケットを体験

ソニーが発売した第3世代のウェアラブルサーモデバイス「REON POCKET 3」。

ソニーが第3世代の“着るエアコン”こと「REON POCKET 3(レオンポケット スリー) RNP-3」を4月に発売しました。

冷感効果が高まり、内蔵バッテリーによる駆動時間もさらに長持ち。新しいREON POCKETと同時期に登場した専用ネックバンドや、メンズの長袖ビジネスシャツと一緒に体験レポートします。

今回はREON POCKETの“生みの親”であるソニーの伊藤健二氏と伊藤陽一氏を訪ねて、第3世代機が搭載した新機能「SMART COOL MODE」の詳細により深く迫りました。今年も暑くなりそうな夏に備えて、新しいREON POCKETを買うべきなのか? 真剣に検討する際のヒントになれば幸いです。

最新のサーモモジュールで冷却パワー向上。値段は据え置き

REON POCKETは携帯サイズのウェアラブルサーモデバイスです。専用ウェア、またはネックバンドを使って首元に固定します。

電圧をかけると発熱/吸熱(冷却)するペルチェ素子を組み込んだ本体の背面側ステンレスパネルが冷える/温まることで、冷温(RE/ON)感が得られます。風力により冷温感を作り出すデバイスではないため、正確には“着るエアコン”として例えるべきではありませんが、同様のデバイスが他にあまりないため、わかりやすくそう呼ばれたりもします。

温まったペルチェ素子を排熱するために内蔵するファンを回して、ハンディ扇風機のような使い方もできます。

REON POCKET 3の本体接触部分はステンレススチール製。頸部(首元)の位置に直接あてがいながら使います
本体上部にはペルチェ素子の冷却により発生した空気を逃がすポートがあります。ここから送り出される空気をハンディ扇風機のように使う「ファンモード」もありますが、吹き出し口が狭いことから涼感効果はやや低め

最初のREON POCKETはソニーのクラウドファンディングサービスである「First Flight」を通じて製品化され、2020年7月に一般販売されました。毎年改良を重ね、今回の3代目は昨年発売された2代目のREON POCKETから価格を14,850円に据え置きながら、ユーザーにとってうれしいいくつかの大事な性能向上を遂げています。

サイズは第2世代機と同様にコンパクト。冷却効果が最大約1.5倍向上、連続駆動時間が約2倍も伸びています。

「ペルチェ素子を新しいものに変えて搭載しました。電流の抵抗率が下がっているので、特にCOOL(冷たい)モードによる強度を3から4以上に設定した時により低い電流で冷却できるようになり、駆動時間を長く伸ばせました」(伊藤健二氏)

左から第3世代/第2世代/初代(クラファン版)のREON POCKET。外観とサイズは共通

内蔵バッテリーが長持ち。冷たさが長続きする

放熱フィンにも改良を加えたことで、COOLモードによる連続駆動時に本体が“ぬるく”ならず、冷たさが持続します。REON POCKETは初代機の発売後に実施したソフトウェアアップデートにより、パソコンやモバイルバッテリーに接続して、給電しながら冷温動作もできるようになりました。

REON POCKETを担当するソニーグループ株式会社の伊藤健二氏(右)と伊藤陽一氏(左)

USB電源に接続しながらの連続駆動は、ユーザーからの要望が多く寄せられたことから、いったん停止するまでのタイムリミットが1時間から8時間に大きく伸びています。WARM(温かい)モードは従来通り1時間の連続使用を上限としています。

内蔵バッテリーによる連続駆動はCOOLモードがレベル1の約4.5時間から、レベル4で約2時間。REON POCKET 2比ではそれぞれレベル1が約30分、レベル4が約1時間長くなっています。

USB Type-C経由でパソコンやモバイルバッテリーに接続。給電しながら長時間続けて使うことも

急速充電機能も使いやすくなりました。

「REON POCKETをできるだけ長時間使いたいという要望は絶えず寄せられていたため、第3世代機では電源まわりのシステムを刷新しています。昼の休憩時間中に1時間ほど充電すれば90%のバッテリーを回復できます」(伊藤陽一氏)

そして第3世代機では、USB給電中にCOOLモード史上最高強度の「レベル4+」が使えるようになりました。肌に触れる接触面の温度を約21~22℃前後まで冷やせるハイパワーモードです。

筆者も試してみましたが、さすがに冷たさがガツンときます。空調の効いた室内で「レベル4+」に設定して長く過ごすと首元がヒリヒリとしてきたほど。暑い屋外から室内に移動して、速やかに汗を引かせたい場面で使うと効果的かもしれません。

USB給電時に、COOLモードだけが使える新機能「レベル4+」。肌表面の温度を21~22℃前後のターゲットまで一気に冷やします

衣服内の温度を検知するセンサーを追加

REON POCKET 3は新たな内蔵センサーを活用して、ユーザーに最も心地よい涼感を提供します。続いて新機能の「SMART COOL MODE」を深く掘り下げましょう。

従来機のREON POCKET 2までは、ユーザーが好みの冷却温度を4段階からマニュアルで選ぶ仕様でした。新しいREON POCKET 3から搭載するSMART COOL MODEは、身に着けている人がいつも快適な温度で過ごせるように、行動や環境に合わせて冷却温度を自動調整する機能です。COOLモードのみに対応します。

REON POCKET 3には4つの温度センサーと加速度センサーが1基搭載されています。温度センサーは第2世代機よりも2つ増えました。各センサーがどのようなシゴトをしているのか、伊藤陽一氏が次のように説明しています。

5つのプリセットから選んだ冷却レベルに自動調節する「SMART COOL MODE」も、REON POCKET 3だけが使える新機能です

「加速度センサーはユーザーの行動を判別します。さらに追加した温度センサーのひとつを使って、REON POCKETのファンが吸気した空気から、身に着けている人の“衣服内の温度”を測定します。ユーザーが涼しい場所から暖かい場所に移動すると、衣服内温度センサーがこれを検知します。なるべく外気を多く取り込んだ方が衣服内の温度を正しく検知できるので、センサーの配置は何度も検討を重ねました」(伊藤陽一氏)

冷却プレートの裏にも2つの温度センサーが内蔵されています。1つはペルチェ素子の温度を拾うセンサーです。もう1つはペルチェ素子の温度変化による影響をなるべく避けられる場所に置いて、体表面の温度を計っています。2つのセンサーが計測したデータの差分を解析して、体の温度を正確に導き出します。

REON POCKET 3の分解図。新開発のサーモモジュールと改良された放熱フィンにより冷却効果をさらに高めています
REON POCKET 3は1つの加速度センサー、4つの温度センサーを内蔵しています

ユーザー好みの冷たさに賢く合わせる「SMART COOL MODE」

SMART COOL MODEを試してみました。モバイルアプリ「REON POCKET」を立ち上げると新設されたSMART COOL MODEの画面が現れます。機能をオンに切り換えると、冷却温度のメーターの上を「ターゲット温度」と書かれたゲージが上下に移動する画面になります。

REON POCKETアプリの画面。COOLモードに新しく「SMART COOL MODE」が追加されています

SMART COOL MODEでは、ユーザーの好みの温度を「ぬるめ/少しぬるめ/普通(おすすめ)/少し冷ため/冷ため」の5段階のプリセットから選べます。SMART COOL MODEを設定するとREON POCKET 3がどのように振る舞うのか、伊藤陽一氏に詳細を聞きました。

「OPTION」から好みの冷却レベルを設定します
REON POCKET 3の新機能「SMART COOL MODE」。アプリからSMART COOL MODEをオンにすると、REON POCKETが内蔵するセンサーにより集めた情報を元に、冷却レベルを常時「ターゲット温度」の範囲内に合わせ続けます

「人の肌の温度は通常は30℃前後といわれています。プリセットとして用意する『普通(おすすめ)』は、多くの方が心地よく感じられる26℃から27℃前後に冷却効果を調整します。ぬるめは29℃前後、冷ためは25.5℃前後にターゲット温度を設定したプリセットです。それぞれに多くの人々が快適に感じる温度を入念に検証した上で実装しています」(伊藤陽一氏)

SMART COOL MODEをオンにして冷却運転を一定時間続けた後に、ターゲット温度に到達するとREON POCKET 3は冷却をいったん停止します。再び肌の温度が上がってきたら冷却を再開します。動作に抑揚を付けた理由を伊藤陽一氏が次のように解説しています。

「ユーザーにアンケート調査を行なったところ、冷たさに慣れてしまうと冷感を感じなくなるという声が多く返ってきました。冷感慣れを防ぐために、SMART COOL MODEではターゲット温度の前後で動作に抑揚を付けました。動作を長く止めてしまうと快適さが失われるだけでなく、デバイスの冷却効率も下がります。抑揚感のバランスを最適化することにも腐心しました」(伊藤陽一氏)

取材の際に、筆者も測定器とセンサーを使ってSMART COOL MODEの精度をチェックする機会を得ました。涼しい屋外から室温を30~32℃前後に設定した部屋に入ると、衣服内の温度が上がり、REON POCKETアプリのターゲット温度のゲージも上昇します。少し経つと「普通(おすすめ)」の範囲内の少し冷たい側にゲージが落ち着きました。心地よい涼しさが感じられます。測定器の肌温度も26℃から27℃前後を指しています。

REON POCKET 3の冷却部にセンサーを装着して、筆者の体表面温度の変化を計測しました
SMART COOL MODEが「普通(おすすめ)」のターゲット温度(26~27℃前後)に賢く合わせます

自動着脱検知「AUTO START/STOP機能」がとても便利

SMART COOL MODEを使うと、毎度スマホを取り出してREON POCKETの快適温度を手動で調整する手間から解放されます。多くのユーザーが期待していた便利機能です。

さらにREON POCKET 3から追加された「AUTO START/STOP機能」を併用すると、スマホからREON POCKETをオン/オフする操作が要らなくなります。

アプリや本体によるREON POCKETの動作切り換え操作が不要になる新機能「AUTO START/STOP」がとても便利です

AUTO START機能は冷却部がユーザーの肌に接触して、体温を検知した時に動作を開始するように設定されています。バッグやポケットに入れている時に誤作動が発生しないよう、加速度センサーによりREON POCKET 3の本体が首元へ縦にセットされたポジションも検知しているそうです。

REON POCKET 3の本体を裏返してテーブルの上などに置くと、AUTO STOP機能によりCOOL/WARMモードが停止します。伊藤陽一氏によると、本体をネックバンドに装着したまま、少し傾けてテーブルの上に置いた場合でも約3分が経過すると自動で動作を停止するとのことです。

従来機と同様に、REON POCKET本体の電源ボタンを2秒長押ししてCOOL/WARMを止めることもできますが、本体を着脱する動作が電源管理と連動するので、筆者としてはいよいよREON POCKETの「スマート感」が極まった手応えがあります。

首元のフィット感を高めた新「NECKBAND 2」

REON POCKETは3世代に渡る進化を遂げてきましたが、本体のデザインは冷温部をステンレススチールに変更した第2世代機からほとんど変えていません。ソニーの伊藤健二氏はその理由を次のように話しています。

「徐々に拡充される豊富なアクセサリーを、REON POCKETの世代を超えて活用してもらいたいからです。専用ネックバンドだけでなく、外部パートナーが商品化している様々なREON POCKET専用ウェアなどアイテムとの互換性も確保しています」(伊藤健二氏)

新しい「NECKBAND 2」を装着したREON POCKET 3
右側が初代のREON POCKET専用ネックバンド

第3世代のREON POCKETと同日には、新しい専用ネックバンド「NECKBAND 2(RNPB-N2)」も発売されました。第2世代機と同時に発売された初代専用ネックバンド(RNPB-N1)から、2点の重要な改良が加えられています。

1つは首に掛けるバンドの「開く角度」が調整できるようになりました。伊藤健二氏によると、初代のネックバンドを発売した後に、ユーザーから異なる体格、肩の形状(なで肩/いかり肩)に合わせて角度を調整したいという要望が多く寄せられたことからこの機能を加えたそうです。内部に精度と耐久性の高い蛇腹状のジョイントパーツを入れて曲げ固定を可能にしています。

NECKBAND 2から左右のバンドが開く角度をそれぞれに調節できるようになりました。いかり肩/なで肩のユーザーも身に着けやすくなっています

もう1つの変化は舟形のケースの周囲が高さを増したことです。この形状を採用した背景には「体にぴたりとフィットする機能性肌着を身に着けたときに、REON POCKETの吸排気口がシャツにより塞がれてしまい、冷却効果が落ちることを避ける」狙いがあったといいます。手に持って比べてみても、新旧ネックバンドの重さはほとんど変わっていません。

従来のネックバンドでも事足りるという方には、新しいネックバンドの発売後にも一部店舗で扱われるようです。また従来のREON POCKETを新しいNECKBAND 2に装着して身に着けられるように、互換性も確保しています。

ソニー純正ビジネスシャツは着心地と機能性を徹底追求

5月19日にはREON POCKETの新しい専用アイテムとして、ソニー純正の襟付き/長袖ビジネスシャツ(RNPL-B1)も発売されます。色はホワイト。サイズはM/L/XLの3種類があります。価格は7,700円。

REON POCKET対応のビジネスシャツも発売されます

生地は身頃が綿100%で、前身頃の裏側は綿55%、ポリエステル45%でシワが付きにくくして、裏地にポリエステル100%のメッシュを追加しています。REON POCKETは首元に接触させて使うことで冷温感が得られるデバイスであることから、「ビジネスシャツもインナーウェアを着ないで直接羽織れることが大事な条件のひとつ」だったと伊藤健二氏が話しています。

「通気性にも優れるメッシュを裏地に加えたことで着心地を高め、肌が透けることも防いでいます。背面の首元にREON POCKETを固定するためのポケットはシャツの外側にデザインしました。これによりデバイスを装着した時に襟のまわりが突っ張らず、ネクタイをしめても着心地が損なわれません」(伊藤健二氏)

REON POCKETを収納するポケットがシャツの外側にあるので、ネクタイをしめても首元が窮屈になりません
肌触りの良いメッシュ状の裏地。肌を透けさせない役割も果たしています

筆者もREON POCKETビジネスシャツを試着してみました。サイズはLです。表地はさらっとした手触り。裏地も肌に擦れることがなく、インナーを着ていなくても不快感はありません。ただ、裾をタックインして着ないと季節によってはお腹が冷える感じがします。「慣れ」だとは思いますが。

ネクタイをしめても首まわりが窮屈な感じはしません。ただ、シャツの上からタイトなジャケットを着てしまうとREON POCKETの排気口が塞がれてしまうので、COOLモードでの使用中に服の中に熱気がこもることがありました。夏場にREON POCKETの冷却効果を最大化するためには、屋外を歩く時にはジャケットを手で持ちながら歩き、室内ではジャケットを脱いで過ごすスタイルがベターです。

専用シャツにはREON POCKETに装着したUSBケーブルを通すためのゴムループと、反対側の端子を露出させてモバイルバッテリーにつなぐためのスリットも設けました。屋外でも長時間に渡ってREON POCKETを使う予定がある方は、別途モバイルバッテリーと1m前後のUSBケーブルをそろえましょう。USBケーブルはREON POCKET側がL字端子のものであれば、襟元でケーブルが突っ張らないのでおすすめです。

モバイルバッテリーを装着する場合、端子部がL字型のUSBケーブルがあると比較的快適に身に着けられます
シャツの裾にはUSBケーブルを引き出す小さなスリットを設けています

ソニー純正のREON POCKET対応インナーウェア(RNPS-C1VA)は販売が継続されます。純正品以外のビジネスシャツなどを着てREON POCKETを使いたい時のために、数枚備えがあると心強いアイテムです。

夏冬の節電にも活躍

第3世代のREON POCKETは、SMART COOL MODEとAUTO START/STOPの機能を搭載したことで、スマートデバイスとしての進化がひと皮向けました。最新世代機を使ってみて、筆者も冷感効果がより長く持つ手応えをしっかりと感じました。本機があれば連日30℃を超える日本の暑い夏に堂々と立ち向かえそうです。

昨今の世界情勢の影響により、これから特に真夏と真冬の時期に私たち一人ひとりが節電に協力する意識の共有が求められます。電力消費がピークを迎える時間帯に、REON POCKETを上手に併用すれば部屋のエアコンの設定温度を穏やかめに調整できます。デジタルガジェットによる生活の「ひと工夫」を凝らせば、電気料金の節約にもつながりそうです。ユーザーの体調管理に加えて、家計の負担解消にもREON POCKETがひと役買ってくれるかもしれません。

山本 敦