家電レビュー
DJIポタ電「Power2000」は家庭内常設にも便利 アップデートでさらに使いやすく
2025年8月15日 09:05
日本ではドローンで有名なDJIだが、空を飛ばないカメラもたくさん製品化しており、コンシューマー向けではアクションカメラのOsmo ActionシリーズやジンバルカメラのOsmo Pocketシリーズなどがある。またプロ用機器としてはシネマカメラや大型カメラ用3軸ジンバル、ワイヤレスマイク、映像トランスミッタ、屋外モニターなども製品化している。
考えてみればそのほとんどが屋外使用を前提としたバッテリー駆動製品であり、DJIの機材を使うには現場での電源共有は必須である。そうしたニーズもあってか、2024年4月にはポータブル電源として「DJI Power500」および「DJI Power1000」を製品化した。当時Power1000の方をレビューしたが、1,024Whという中規模容量ながらも屋外使用を前提とした作りに、なるほどそうきたかと思わせるものがあった。
それからほぼ1年後に発表されたのが、「DJI Power2000」だ。名前の通りPower1000の2倍となる2,048Whという大容量モデルである。ただ、サイズや重量は2倍までにはなっていないところがポイント。加えて、同容量の拡張バッテリー「DJI Power Expansion Battery 2000」を接続できるなど、大容量化も可能になっている。
今回はこのPower2000といくつかの周辺機器を事前にご提供いただき、およそ2カ月試用することができた。実際どのように運用できるのかをレビューしてみたい。
すべてを前面に集めた設計
Power2000の本体サイズ(ハンドル部含む)は、448×230×320mm(幅×奥行き×高さ)。幅と奥行きはPower1000と同じで、高さが10cmほど違うだけだ。積載しても収まりがいいようにという配慮だろう。重量は22kgとなっている。
Power1000もそうだったが、DJIのバッテリーの特徴は、すべての端子類を前面に集めるという設計思想である。狭い空間で背面をぴったり壁に付けたり、キャリアに乗せたまま使ったりするシチュエーションにも対応できる。
搭載ポートはAC出力4系統で、うち1つはNEMA(National Electrical Manufacturers Association、米国電機製造業者協会)L5-30になっている。NEMA L5は日本のコンセント形状への変換機が1,000円くらいで買えるので、全ポート使うことは可能だ。
AC出力は合計2,700Wで、同クラスのポータブル電源と比較してもかなり大きい。電力を多く使うホットプレートやスチームオーブンレンジが1,400Wくらいなので、特にアウトドア用とされていない一般調理家電も屋外で動かせるレベルだ。
USBポートはTypeーC×4、TypeーA×4とかなり多い。このうちTypeーC出力は140W×2、65W×2となっている。昨今はノートPCもUSB TypeーCを充電ポートに使うものが多くなっており、またスマートフォンも高速充電では100W程度を要求するものも出てきている。こうしたデバイスの充電にも対応できるのはありがたい。
SDCポートは2つある。SDCはあまり馴染みのないポートかもしれないが、DJI製品ではバッテリー充電器の端子としてよく使用されており、専用ケーブルを用いることでAir3シリーズ、 Mavic3シリーズ、Inspire3、Matriceのバッテリーを直結して急速充電できる。また、拡張バッテリーやソーラーパネルアダプターモジュールなど、SDCに繋ぐアクセサリー類も豊富に製品化されている。バッテリー側の目線でいえば、直流の汎用端子と思っておけばいいだろう。
AC入力は1つで、横のスライドスイッチで標準充電/高速充電に切り替えられる。標準では実測1,200Wくらいだが、高速充電では1,500Wに対応し、ゼロからフル充電まで114分となっている。また、ゼロから80%までは85分なので、フル充電にこだわらなければ1時間半以内に持ち出せる。
ソーラーパネルからの充電は、Power1000と同様に専用の「ソーラーパネル アダプターモジュール」を使用する。3系統のXT60端子から入力し、SDCポートへ出力するアダプタだ。ソーラーパネルからの最大入力は400Wとなっているが、SDCポートの入力キャパシティは1,800Wなので、400Wというのはソーラーパネルアダプターモジュール側の限界ということだろう。
採用電池は、多くのモバイル電源が採用するリン酸鉄リチウムイオン電池。4,000回の充放電サイクル後も容量の80%を維持し、約10年の寿命を提供する。
ボディ設計はやはりアウトドア仕様になっており、外装の構造設計は静的圧力による耐荷重で1トン。車載走行時の激しい揺れにも対応する。内部に26個の温度センサーを内蔵しており、過充電や過放電といった異常を検知して自動的に充放電保護を行なう。
またバッテリー管理システム(BMS)ボードにはコーティングが施され、インバーター内部には樹脂を充填するポッティング保護が施されている。これにより水の浸入や結露といった水周りのトラブルを防止。標高5,000m級の環境でもユーザーが安心して使用できるようになっている。
拡張バッテリーの「DJI Power Expansion Battery 2000」も見ておこう。これはPower2000と同じタイミングで発表された拡張バッテリーで、容量はPower2000と同じ2,048Wh。横幅と奥行きは同じで、高さは230mmとなっている。つまりサイズ的にはPower1000と同じだ。
これも前面の右上に端子とディスプレイが集まっているが、端子はSDCポートが2つあるだけ。付属ケーブルでPower2000に繋ぐと、拡張バッテリーとして認識される。Power2000ではこれを最大10台連結できるので、容量的には11倍まで拡張可能ということになる。
ちなみに同時に発表されたPower1000 V2でも、この拡張バッテリーを接続できる。ただし、こちらは最大5台まで。
キッチンに常設して実際に運用
Power2000には専用アプリが提供されており、遠隔で操作できるほか、アプリでしか設定できない機能もある。7月下旬にはファームウェアアップデートが行なわれ、新たに「エナジーセイバー」機能が追加された。
これはピーク料金時間とオフピーク時間を設定し、その時間帯ごとにバッテリーの挙動を変えるという機能だ。具体的には、ピーク時間中はACから充電せず、放電のみを行なう。ACからの充電はオフピーク時間に限られる。
つまりオフピーク時に充電し、ピーク時に放電するという使い方だ。本来なら電気料金の安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電するのがベストだろう。ピークとオフピークで電気料金が変動するのは電力小売事業者に多い。一方、主幹電力会社では深夜電力の割引プランなどは縮小傾向にあり、新規加入は終了しているところも多い。
筆者宅は主幹電力会社と契約しており、特に深夜料金などのプランには加入していないが、この機能を上手く使って、調理家電のせいでブレーカーが落ちるという問題を解決している。
例えば電子レンジと炊飯器にプラスして、電気フライヤーなどを同時に動かすと、合計ワット数が2,000Wを超える。通常、日本の家屋では、1カ所のコンセントから15A(1,500W)以上出せないように設計されており、これを超えると部屋単位のブレーカーが落ちる仕組みになっている。
以前からこの問題で困っていたが、2,700W出せるPower2000を間に挟むことで解決した。以前のバージョンでは、AC入力が繋がっていると、AC出力は入力値を超えられないという制限があった。つまりAC出力はAC入力の単純パススルーになってしまうため、1,500W以上出せなかったのである。
だが、ピーク時間帯内ではAC入力が自動的にカットされ、出力専用になる。このため調理時間帯には問題なく2,700W出せるというわけだ。
一方、このアップデートで、以前あった「カスタムバックアップリザーブレベル」の設定がなくなってしまった。これは系統電力とソーラー発電を組み合わせた場合に、ソーラーからの充電に備えてどれくらいマージンを空けておくかの設定だ。
この機能はPower1000 V2には引き続き搭載されている。その代わり「エナジーセイバー」機能は今のところ搭載されていない。遅れて搭載されるかもしれないが、1000系と2000系で機能を分けていくということなのかもしれない。
動作音は、充電せずバッテリーから出力している時はほぼ無音だ。出力が1,500W近くになるとファンが回り始めるが、それ以下ではかすかにファンが回る音が聞こえる程度である。一方、ACからの充電時は、低い「ファー」というファン音が聞こえる。音も小さく、耳障りな音域ではないのでそれほど気にならない。
アウトドアユースでも強み
Power2000で想定されているユーザーは、電源が取れない場所での長期ロケを行なう撮影クルーや、車中泊をしながら長期間移動する旅行者など、Power1000系では足りないという人たちだろう。堅牢性や静音性といった特徴から、キャンプ、ドライブ、車中泊など電力を使いながら一昼夜過ごすようなヘヴィユースに対応できるところがウリである。また容量やサイズの割には大出力なので、調理家電を屋外で使いたい人は注目だ。
拡張バッテリーを使えば最大22,528Whまで拡張できるので、系統電力に頼らないオフグリッド生活、という利用も視野に入ってくる。ただ、容量は拡張できても最大出力2,700Wであることは変わらないので、一般家庭で使う電力量としてはちょっと小さい。100V換算では27Aなので、1人暮らしであればなんとか対応できる、といったところだろうか。
DJI Powerシリーズは屋外持ち出し用として出発したが、Power2000はファームアップにより、家庭内常設という方向性も見えてきた。大出力と容量のバランスが取れた、用途の広いモデルといえるだろう。





