家電レビュー
灼熱ドバイで検証! ソニーの着るエアコンで暑夏を乗り切れる?
2025年6月17日 08:05
“着るエアコン”としても広く知られるようになってきたソニーのウェアラブルサーモデバイスに、今年はパワフルなフラッグシップの「REON POCKET PRO(レオンポケット プロ)」が誕生しました。
冷温部面積が約2倍に拡大したことにより冷感効果がアップ。内蔵バッテリーによる連続動作時間も伸びてタフになった新モデルを、灼熱の大都市であるドバイに持ち込みました。日本のこれからの暑い夏を想定しながら体験した「プロの実力」をレポートします。
夏本番直前! 35℃超えのドバイでPROを検証
今回、暑い場所でREON POCKET PROを試すため、筆者は日本から約7,500km離れた中東のアラブ首長国連邦(UAE)にまで飛行機で約11時間をかけて向かいました。たどり着いた場所はUAE最大の都市・ドバイ。例年5月から日中の気温が30℃を超え、真夏の7月~8月には40℃以上にも到達する暑さの厳しい地域です。
アラビア半島は広く砂漠に覆われているため、さぞかし気候は乾燥しているのだろうと筆者は想像していました。ところがドバイはペルシア湾に隣接しているため、海から湿った風が吹き込んできます。ゆえに雨量が少ないのに年間を通して高温多湿。5月下旬ごろから夏本番に向けて徐々に湿度が上がっていました。
筆者は今回、ただ暑いからという理由だけでドバイを取材場所に選んだわけではありません。日本と同じ時期にUAEでもREON POCKET PROの販売がスタートしたからです。
ドバイ最大のショッピングセンター、ドバイ・モールのソニーのショップでも5月下旬からREON POCKET PROが店頭に並んでいました。価格は799ディルハム(AED)でした。2025年5月時点で1ディルハムは約40円だったので、日本円に換算すると約3.1万円です。
中東地域では各国が規定する規格により専用アクセサリーの「REON POCKET TAG」が使用できないため、本体と専用ネックバンドのパッケージモデルのみの販売になります。店舗の方に聞いたところ「発売直後からREON POCKET PROの売れ行きは絶好調」だと話していました。
筆者は本機の詳しい機能や使い方を速報レポートの中で紹介しています。ただこの時は東京で、天候の穏やかな4月下旬から5月前半までの時期に試していたので、よりパワフルになったプロの冷感パワーをまだ伝え切れていない歯がゆさを感じていました。これからREON POCKET PROの購入を真剣に検討する方々に、夏本番を想定した本気のテストレポートが参考になれば幸いです。
冷感モード最強「レベル5」の実力
筆者がドバイに滞在した3日間は毎日気温が35℃を超えていました。初日の最高気温は41℃。日中の湿度も70%を超える日がありました。最近の真夏の日本によく似た気候でした。
ドバイの街中は日本よりも若干強めにエアコンが効いていることから、テストは主に屋外で行ないました。
REON POCKETシリーズは熱中症対策、あるいは激しいスポーツを行なう時に身に着けて使うためのウェアラブルデバイスではありません。なので直射日光の影響を避けるため服装にも気をつけて、合間に休憩を挟みながらテストを行ないました。REON POCKET PROの冷感パワーが強化されたからとはいえ、やはり屋外では日陰を見つけて移動したり、他の熱さ対策と併用すると高い効果が期待できます。
最初に気になる冷感効果から手応えを報告します。
REON POCKET PROは本体に2つのペルチェ素子を内蔵するDUALサーモモジュール構造を採用しています。冷温部の面積が約2倍になり、肌に触れるプレートが「く」の字のシェイプであることから、首もとにぴたりと触れます。2つのペルチェ素子に強弱の抑揚を付けながら交互に動かすことで「冷たさ慣れ」を防ぎます。
屋外気温が35℃、湿度が60%を超えてくると、冷感モードは最もパワフルな「レベル5」 がやはり心地よく感じられました。5月に試用した時にはレベル4が冷たすぎると感じたものですが、真夏の暑さではやはりレベル4かレベル5で心地よい冷たさを感じました。
とはいえマニュアルモードで「レベル5」に固定すると、バッテリーの持続時間が満充電から約5.5時間となり、レベル4の約10時間に比べると約1/2にまで短くなります。仕事で1日中外にでかける日には、なるべく間に充電を挟まずにREON POCKET PROを長い時間使いたいものです。そこで活躍するのが「SMART COOL」モードです。
REON POCKET PROにはペルチェ素子の温度と、装着している人の体表面の温度を測るセンサーが内蔵されています。「SMART COOL」モードに設定すると、複数センサーと独自のアルゴリズムによりユーザーの行動と温湿度、周囲環境の温湿度などの条件を推定して、最適な冷却レベルに自動調整。消費する電力を抑えながら冷感効果が最長15時間まで持続します。
「SMART COOL」モード時のバッテリー持ちは優秀でした。就寝中にバッテリーをフル充電にして、筆者は朝8時に朝食会場に向かうところから本体を装着して過ごしました。朝10時台にホテルを出て観光を楽しみ、夜に戻ってからREON POCKETアプリに表示されるバッテリー残量のアイコン表示を確認すると残りが約1/3でした。
運転モードは「SMART COOL」にして、あとはAUTO START/STOPもオンにしておけば、カフェに立ち寄って本体を着脱する時にデバイスが一時停止をしてバッテリーの浪費を防いでくれます。
「SMART COOL」には、それぞれに多くの人々が快適に感じる温度を入念に検証した上で実装された5つの冷たさ設定のオプションがあります。筆者は寒がりなので、いつもはオプションを弱冷方向に設定していますが、ドバイのように暑い場所で弱冷設定にしてしまうとアプリの画面に「強めに冷却中」というアラートが出続けました。よほど苦手でなければ、真夏の間は少し冷却強めで使う方が良さそうです。
強冷モード時の動作音は気にならないのか
REON POCKET PROは大型の冷却ファンを搭載したことから、動作音がREON POCKET 5(2024年発売のスタンダードモデル)と比べて最大約50%低減しています。真夏の環境でも静かに使えるのか検証しました。
再び冷感モードをマニュアルで「レベル5」に固定して試したところ、35℃を超える屋外では数分ほど経つとファンノイズが聞こえてきました。元から動作音がとても静かなファンなので、屋外を歩いているぶんには周囲に迷惑をかけることはなさそうなノイズレベルです。ファンが回っている状態で静かなカフェに入ってみましたが、ファン音は店内BGMにかき消されてしまう程度でした。冷却レベルを下げたり、「SMART COOL」に設定すればファン音も低くなりました。
REON POCKET PROは本体のボタンから冷温感モードの切り替えや、マニュアルのレベル変更ができるようになりました。慣れてくると本体を装着したままボタン操作ができるようになるので、例えば屋外からカフェに移動した時、「SMART」ボタンを押してすぐにマニュアルから自動運転に切り替えることも可能です。
今回のテスト中、REON POCKETアプリを入れていた筆者のiPhone 16 Proは画面にいつも「iPhoneを冷やしなさい」という趣旨のアラートが出続けるほどオーバーヒート気味になっていました。こんな時にもiPhoneはバッグに入れて冷ましながら、REON POCKET PROはアプリではなく本体のボタンから操作できることがありがたく感じられました。
装いは夏のビジネスカジュアルと好相性
夏場の服装でREON POCKET PROを上手に着こなす方法について模索してきました。
REON POCKETシリーズは、専用のネックバンドを使うと首もとにしっかりと固定できます。新しいPROのネックバンドは中軸にワイヤーフレームを配置したメカニカルフレキシブルチューブに、肌触りのよいシリコンを被覆したものです。手で曲げて形を整えれば、首もとにしっかりとフィットするポジションが見つけられると思います。
筆者は「Tシャツ1枚」と「襟付きの長袖ワイシャツとジャケット」を着る2つのパターンでREON POCKET PROの夏場の着こなしを試しました。
基本的には専用ネックバンドでしっかりと固定すれば、どんな服装でもREON POCKET PROの装着感は安定しました。ただTシャツ1枚のみの場合、バックパックを背負ったり降ろしたりするたびにシャツが着崩れして、この時にREON POCKET PROのプレートが肌から離れて浮いてしまうことがありました。襟つきで、生地もやや厚めのシャツの方が着崩れしにくく、デバイスのポジションも固定されました。
ジャケットを羽織ればいっそう安定しました。日本の場合、夏のビジネスカジュアルの装いがREON POCKET PROと好相性になりそうです。
普段着の場合も、襟もとの締まり具合をボタンで調整できるシャツやポロシャツの方が、REON POCKET PROの専用ネックバンドの装着状態が安定すると思います。
より薄型のREON POCKET 5と比べるとどう違う?
筆者は今回、ドバイへREON POCKET PROのほかに、2024年発売のREON POCKET 5も持ち込んでPROとの冷感効果を比べてみました。結果、体感的にもやはりDUALサーモモジュールを搭載するPROの方が、より明らかな冷たさが持続する手応えを得ました。SMART COOLモードを活用すれば、フル充電後からほぼ1日中使えるバッテリーのスタミナ性能が確保されていることも大きなアドバンテージです。
対する従来モデルREON POCKET 5の良いところは、より薄型コンパクトで持ち運びに優れているところです。ソニーストア、または全国の家電量販店などに展示されている実機を試着してみることをおすすめします。大きめのREON POCKET PROが自分の体格にも合わないという方は、十分に高い冷却効果を備え、動作音も静かなREON POCKET 5で心地よく過ごせると思います。
今回の滞在期間中、女性にもREON POCKET PROの装着感について感想を聞くことができました。やはり細身の方だと専用ネックバンドで調整しても、首もとでややダブついてしまったようです。筆者の妻に試してもらった時にも同じ感想が返ってきました。フィット感が安定すれば、おそらくデバイスの重さも気にならなくなると思います。細身の人向けにSサイズの専用ネックバンドが、アクセサリーのラインナップに加わるといいかもしれません。
日本に限らず、中東にアジア、欧州の夏も毎年厳しさを増しているようです。今年、REON POCEKT PROは中東地域ではUAEのほかサウジアラビア、バーレーン、カタールで販売を開始したとのこと。ヨーロッパも昨年から展開するイギリスのほかフランス、ドイツ、オーストリア、スペイン、イタリアに展開します。
アジアはREON POCKET 5を展開する香港、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムに台湾が加わります。これから世界各地でREON POCEKT PROを身に着けて歩くユーザーに出会えそうです。
もう一つ感じたREON POCKETメリットとして、飛行機で旅をする時に機内が少し肌寒く感じられたらREON POCKET PROを温感モードで使うと心地よく過ごせるのがわかりました。出張や旅行のパートナーとしてもREON POCKETシリーズは頼りになるアイテムです。