家電レビュー
煙を気にせず燻製できる! オートなのに炭火焼き級の「けむらん亭」をフル活用
2022年6月15日 08:05
パリッとした表面に、ふっくらジューシーに仕上がった魚や肉の焼き物に、煙でいぶされ特有の風味が香る燻製(くんせい)はとても美味しい。だが、焼き物は調理の際に出る煙やニオイが部屋に残りやすく、家で作るのをつい敬遠してしまう方も多いのではないだろうか。ましてスモークチップを熱して煙でいぶす燻製を室内で作るのは、相当ハードルが高い印象だ。
ところが、まるで炭火を使った炉端焼き屋さんでいただくような美味しい焼き物に、香り高い燻製まで、煙やニオイを気にすることなくおウチの中で簡単・手軽にできる調理器具がある。それが今回紹介するパナソニックのスモーク&ロースター「けむらん亭 NF-RT1100」だ。直販価格は46,200円。
今回はけむらん亭を使って肉や魚、チーズなど様々な食材でローストや燻製を試した。普通にガスコンロなどで焼くのとは大きく違い、家でのごはんが各段にレベルアップ。ほとんど下準備をしなくても手軽に作れるメニューも多かった。具体的な使い方や便利なポイント、実際どれくらい美味しかったのかなどをお伝えしたい。
ニオイ少なく、煙を約90%カットするロースター
けむらん亭は、対流熱で調理するオーブンとは異なり、熱源の輻射熱で調理する「ロースター」と分類される。ロースターは素材から出る脂や水分を落としながら調理するため、もともと煙やニオイが少ないのが長所とされている。
その長所をより高める機能として、けむらん亭には14層の触媒フィルターと強制排気ファンを備えている。調理中に発生する煙やニオイを内蔵するファンで強制的に触媒フィルターに誘導し、ニオイや煙のもとを分解してから排出するため、ニオイは軽減され、煙は約90%もカットしてくれるのが大きな特徴だ。
ニオイと煙を減らすだけでなく、パリッとジューシーに仕上げるけむらん亭のヒーターは、食材を上下から挟み込んで調理する両面焼き。上部のヒーターは遠赤ブラックヒーターを採用。さらに庫内全体にセラミック備長炭の表面加工を施し、魚も肉も炭火で焼いたように仕上げてくれる。燻製は専用の容器にセットしたスモークチップを、下部のヒーターだけを使ってスピーディに加熱する。
引き出し式のトレイなので、奥行き55cmの台は用意したい
けむらん亭を使うには、安定性の良いしっかりした場所が必要だ。本体の大きさは450×355×185mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は5.7kg。扉付きの受け皿を約200mm手前へスライドさせて開閉するため、奥行き550mm以上あるオーブンレンジ専用台や、キッチンカウンターを利用したい。なお消費電力は1,300W。
付属物は「焼き網」と燻製用の「くんせい容器」と「くんせい網」の3つ。こびりつきにくいフッ素加工が施された焼き網は、焼き物、燻製に限らず調理中は常に使用する。いずれも載せるだけなので着脱は簡単。
キーを押すだけの簡単操作
ロースター調理も、燻製調理も、操作は本体正面の右側に集約されているキーで行なう。けむらん亭でできることは大きく分けて3つ。ロースターのオート、ロースターの手動、そして燻製だ。
キーの構成は、6種のマイコンオートメニューを選ぶ「オートメニュー」、その火加減(弱・中・強)を選ぶ「焼き加減」、燻製専用の「くんせい」、ロースターの温度(220・240・260・280・お手入れ)を選ぶ「温度/お手入れ」、タイマーの時間を設定する「<」と「>」、そして調理開始の「スタート」と、主電源の「電源 切/入」の合計8個。
はじめこそ、“ロースター”を指す文字が無いのにやや戸惑うも、数回使えばキーの目的が理解できるので、すぐに使いこなせる。
改めて簡単な操作の流れをここに紹介しておこう。
【ロースター・オート】
パネル右上にある「オートメニュー」は、調理する食材に合わせて、火力、温度、時間がおまかせでロースター調理を実現させる。メニューは、生・姿焼き、つけ焼き、切身、とり肉、干物、焼きいもの6つ。
操作は「オートメニュー」を押してメニューを選び、必要に応じて「焼き加減」キーで火力を設定し、「スタート」を押せば調理が始まる。
【くんせい】
「くんせい」キーを押して 弱め・強め を選ぶ。次に「タイマー」で時間を設定し、「スタート」キーを押すだけだ。タイマーは最大30分まで、1分刻みで設定できる。くんせいモード時は、下ヒーターのみが稼働する。
【ロースター・手動】
ロースターに戻るが、温度と時間を自分で設定する手動調理にも対応している。操作は「温度/お手入れ」キーを押して、220・240・260・280℃の中から温度を選択。次に「タイマー」で時間を設定し、「スタート」で調理を開始する。
付属の取扱説明書には、それぞれのモードで調理するレシピが多数掲載されている。さらに、応用にも役立ちそうな食材に対応した調理時間や温度設定の目安、調理や下ごしらえのポイントもまとめられているので、ロースター調理や、燻製調理に馴染みが少なくても心強い。
使い方の概要がわかったところで、ここからいよいよ様々なロースター調理と燻製にチャレンジした様子をレポートしていく。
オートで自分史上最高の照り焼きと、干物の焼き魚を堪能
【鶏肉のゆずこしょう照り焼き】
まず飛びついてしまったのが、オートメニューのレシピの最初に掲載されている、鶏のもも肉を使った「鶏肉のゆずこしょう照り焼き」だ。
というのも、タレに漬け込んだ鶏肉をガスコンロとフライパンで調理すると、火力が強すぎれば焦げつき、弱すぎると今度は(時間がかかって)肉に火が通り過ぎてパサついてしまったりと案外難しい。調理中に出る脂の拭き取りも必要なため、火加減と肉の火の通り具合に常に気を払いながらコンロの前につきっきりになる。
しかもレシピは、テリヤキソース等のとろみを使った「テリ」ではなく、肉から出る脂を落としながら焼いてできる「照り」。いわゆる炭火焼きを使う炉端焼き屋さん仕様のあの照り焼きだ。それがオートで調理できるとなったら、試さずにはいられない。
もも肉の下準備は簡単だ。脂を取り除いたり、肉の厚みを均等にするような作業は要らず、もも肉の皮にフォークやナイフでザクザクと穴をあけ、柚子胡椒などの調味料を合わせたタレに15分漬け込むだけで済む。
次に焼き網をトレイに載せ、その上に漬けた鶏肉を載せてトレイを閉めれば準備は完了だ。
調理は「オートメニュー:とり肉」、「焼き加減:弱」を選択し、「スタート」キーを押し、あとは放っておいて焼き上がりを待つだけだ。
スタートボタンを押すと同時にファンが作動。パネルには調理時間は点滅しながら20分と表示されていたが、マイコンの検知がすぐに終わり、表示は16分の点灯へと変わった。表示は分刻みのカウントダウン式だ。
しばらく経つと脂が落ち始め、その脂が跳ねて下ヒーターに触れる度に煙が庫内に上がる。だが、扉にはパッキンがついているので煙は漏れ出さず、本体後部の排気口から調理中の香りはしても、煙は目視できないほどクリーンなのが見事。排出される匂いは強くなく、「あ、香ばしい匂いが漂ってきた」という印象。
調理スタートから16分が経過し、ピーピーピーピーーーと終了ブザーが鳴った。トレイを開けると、ここで初めて香ばしい香りがワッと立ち上り、ジュージューと音を立てた見事なきつね色に焼き上がった鶏肉が現れた。
調理中のファンの音や時折脂が焼けるような音は聞こえていたが、扉を開けて初めて音と香りが一気に開放。見事な鶏肉を目にし、思わずおおおおおっと声を上げてしまった。
気を取り直して盛り付け、一口。美味い、美味すぎるッ! 文字通り皮はパリッと、中はジューシーーーーーッ! 遠赤効果か、肉の厚いところもちょうど良く火が通り、肉はふっくらで柔らか。柚子胡椒の風味が効いて、こんなに美味しいものがおウチで、しかも「おまかせ」でできちゃっていいんですかッ!? もう最高です。撮影が済んだあと、熱々をぺろりとたいらげてしまった。
【さんまの干物】
ロースターといったら、やっぱ焼き魚でしょう! というわけで、次に調理したのは、年中手に入りやすい、長さ32cmのさんまの干物だ。内臓処理が施されて開きになったものは、処理も要らず、すぐに焼いていただける。
だが、ガスコンロのグリルで調理する場合、ちょっと気を抜くと尾びれを焦がしてしまったり、火を通しすぎて身が固くなってしまったりと、こちらも調理中は気を使う。
干物を焼くのは下準備も要らず、とにかく簡単だ。焼き網の上に干物を並べ、トレイを閉じるだけでオシマイ。頭の先と尾びれが網から少しはみ出すも、トレイは問題なく閉じられた。
あとは電源を入れ、「オートメニュー:干物」を選択し、「スタート」を押すだけでもう調理が始まる。焼き加減はオートメニューを押した時に、あらかじめ「中」が選ばれるので、今回はそのキーには触れなかった。
調理がスタートすると同時にファンが作動し、「14分」と点滅して表示されたあと、マイコンが作動して「12分」の点灯へと表示が変わった。あとは焼き上がるまで待つだけで、その間に他のこともできる。
14分で焼き上がり、トレイを引き出すと、これまた見事にジュージューと音をたてて焼き上がったさんまの干物が現れた。感動的でさえある仕上がりに、やはり思わず声が漏れてしまった。頭も尻尾もしっかり焼けているのに焦げ付いていない。返してみると裏側の皮は見事にパリッと、丁度いい焼き色がついていた。
いただいてみると、身はハリがあり、しかもふっくら。皮はパリッと香ばしく、頭と骨、尾びれだけを残してぺろりと平らげてしまった。いわゆる魚の美味しいお店でプロが焼いてくれたような、見事な美味しい焼き魚を堪能してしまった。しかもオートで。今まで我が家ではガスコンロの片面焼きグリルで焼いていたが、軍配は迷いなくけむらん亭!
ロースターのオートメニューで2品作ったが、どちらもお店でいただくような出来栄えで、仕事そっちのけで美味しくいただいてしまった。調理時間もガスコンロを用いた場合と大差なく、何よりスタートキーを押した後は、付け合せを用意したりと別のことができるので、全体の料理の時間も短縮できた。
燻製の下準備はアルミホイルを駆使する
次はロースターの手動へと続きたいところだが、ここからけむらん亭で作る燻製を紹介しよう。手動を一旦スキップするのは、掲載されているレシピの中に、手動のロースターで調理してから燻製するものも含まれるからだ。手動ロースターの説明は、そのレシピを作る項で補足する。
燻製は、付属の「くんせい容器」と「くんせい網」を使う。それ以外に、アルミホイルと好みの燻製チップを別途用意する。アルミホイルは市販のものでOK。燻製チップはチップの大きさが約5mmのものを選ぶ。今回は香りの異なる4種を用意した。約47g入りで300円ほどだった。
燻製調理の準備は、くんせい容器にチップを敷き、調理する食材に応じた方法でアルミホイルと合わせたくんせい網を置く。掲載されているレシピで使用するチップの量はどれも12gだ。アルミホイルの合わせ方は、水分や脂が落ちやすい食材なら網の下から巻きつけ、網の目から落ちやすい食材なら載せる、といった具合。レシピのそれぞれにホイルをどの方法で用いるか説明がある。
網の準備ができたら食材を網の中央部に置いて、燻煙を容器内にしっかり留めるようにアルミホイルをくんせい容器の上からかぶせ、容器のふちに沿って隙間ができないように密着させながら巻き込んで閉じる。けむらん亭で燻製を作る際、この作業は毎回必須となる。また、食材の厚みは網を置いたくんせい容器内よりも低い、25mmまでとしている。
そして、ホイルで密閉された容器をけむらん亭に入れ、あとは前述したとおり、「くんせい」キーを押して「弱め」または「強め」を選び、タイマー時間を設定して、スタートキーを押すだけだ。「弱め」と「強め」は燻製の香りをやわらかくつけるかしっかりつけるかなので、好みによって使い分ける。
なお燻製は、冷燻(長期保存)・温燻(保存を延長)・熱燻(高温短時間で香り付け)の3種類あるとされている。けむらん亭の燻製調理は、「弱め・強め」のどちらを選んでも「熱燻」となる。高温短時間で燻香をまとわせ、食材の油分を残してジューシーに仕上げるタイプの燻製が作れる。
ちょっと説明が長くなってしまったが、いよいよ燻製調理へと進めよう。「くんせい」の強弱や時間はレシピに則って行なった。
既製品とまるで違う! 自分で作る燻製の美味しさは格別
まずは燻製メニューの中から、下準備の簡単なものを中心に紹介しよう。
【ささみ】
燻製調理でレシピから最初に選んだのは、鶏のささみだ。下準備に生のささみに塩をふって10分置き、表面の水気をキッチンペーパーで拭き取ったものを網の上に置き、容器をホイルでピッタリ覆う。容器をけむらん亭にセットし、「弱め:タイマー19分」で調理する。
調理を開始してから約4分経過したころからファンが作動し始める。11分過ぎた頃にスモークが香ってくるが、排気口からは拍子抜けするぐらい煙はでてこない。
19分後にブザーが鳴って調理は終了した。容器からアルミホイルを注意しながら外すと、少しの煙と蒸気とともに燻製の香りがブワッと立ち上がり、ツヤツヤの、見るからにふっくらとした想像以上に美味しそうなささみの燻製が現れた。
調理中に落ちる水分などはアルミホイルがしっかり受け止めてくれるので、熱されたチップはサラサラのままだ。
燻製されたささみをいただいたが、肉の中心までしっかり火が通っており、ふっくら、しっとりで驚くほどジューシー! 鼻から燻製の香りが抜けて、肉には甘みさえ感じられる。調味料は塩だけで風味豊かなささみの燻製が味わえた。真空パックされた既製品のものとはまるで比較にならないほど美味しかった。
ここから、食材の下準備の簡単なものを一気に燻製していこう。
【うずら卵】
市販のうずらの卵を利用するうずらの卵の燻製は、下準備、網へのホイル使いはささみと同じ。「強め:タイマー19分」でしっかりと色と香りのついた燻製うずら卵ができあがった。ウィスキーオークチップの甘い香りが卵にマッチ。お酒の肴にもピッタリな味わいだ。
レシピにはこの燻製うずらの卵をポテトサラダに合わせるアレンジメニューも紹介されている。食べ慣れたポテサラが燻製うずらの卵で簡単にグレードアップ。それをレーズン入りのロールパンに挟んだところ、これがめっちゃイケる。燻香がレーズンの甘みをより引き立たせ、一瞬で平らげてしまった。
【ソーセージ】
本来はじっくり焼いて仕上げる「レモン&パセリソーセージ」を購入し、燻製調理を試みた。下準備はパッケージから出して水気を拭いて並べるだけと簡単。「強め:タイマー15分」で完成だ。皮がパリッと、中はふっくらジューシーな仕上がりに大満足。普段からいただいているソーセージが、ブレンドのチップの燻香がレモンとパセリの爽やかな風味を一層引き立たせ、より美味しくいただけた。
このソーセージをサンドにしても美味しかった。冷めた燻製ソーセージを挟んでも、パクっと一口食べただけでも香りが立ち、食欲が増す。
【ちくわ】
ちくわは水気が出にくいので、アルミホイルは無しでOK。チップは燻製チップのスタンダードといわれるヒッコリーを使用した。「弱め:タイマー15分」で完成。できあがった燻製ちくわは、ヒッコリーのクセの少ない燻香で、ワンランクアップのちくわが楽しめた。
せっかくなので、ちくわのド定番の「きゅうりちくわ」を作った。燻製の香りがきゅうりの青臭さを和らげる美味しい一品となった。お酒のアテにも副菜にも、どちらでも楽しめる。
【たらこ】
一口大にカットされたたらこを燻製した。アルミホイルは網の上に敷き、その上にたらこを並べる。燻製チップは同じくヒッコリーを使用。「弱め:タイマー15分」で完成。カットされたたらこのためか、思ったよりも中までしっかり火が通り過ぎたかもしれないが、たらこ独特の臭みが燻香で被われた印象で、旨味がアップ。お酒のアテはもちろん、お弁当にも一つ入れてしまった。
【6Pチーズ】
市販のカマンベール入り6Pプロセスチーズは6個を一度に燻製できる。アルミホイルを敷いた上に並べ、「強め:タイマー17分」でスタート。おつまみを想定して、燻製チップはウィスキーオークを使用した。できあがった時に少し中身が溶け出してしまったので、冷ましてチーズが固まってから取り出した。冷めてもしっかりと燻香が感じられるスモークチーズは、市販のスモークチーズとはひと味もふた味も異なる美味しさだった。
【プチトマト】
なんと生のプチトマトも燻製できる。アルミホイルを巻いた網の上に、洗って水気を拭き取ったプチトマトを並べたら、「弱め:タイマー12分」で調理。燻製チップはプレーンなヒッコリーを使用した。できあがりのプチトマトは燻製した色はほとんどわからない。だが、加熱されたプチトマトはより甘さが増し、しかも燻香がよりその甘さを引き立てる。そのままでも美味しいが、パスタやサラダにも応用したい一品となった。
次は、パナソニックのWebサイト内にある「燻製道士 監修」のレシピ に紹介されている2つから紹介しよう。どちらも下準備が要らず、簡単に作れる2品だ。
【梅干し】
くんせい網の上に梅干しを載せてホイルでふたをし、「強め:タイマー14分」で調理する。チップは香りが梅干しに負けないであろうチェリーを使用した。いただくと、燻香がまず鼻に抜け、爽やかな酸味が口の中で広がる。お酒も進みそうな燻製料理の一品だ。焼き魚に添えてもアクセントになり美味しかった。
【餃子】
市販のチルド餃子を燻製で仕上げる一風変わった一品。使用したチップはブレンドで、「強め:タイマー20分」で調理した。できあがった餃子はきれいな飴色が付き、皮のフチがパリパリと食感が良い。中の餡はとてもジューシーに仕上がり、肉の旨味に燻香が加わりとても美味しい。餃子を飲み込んだあとにも香りがまたふわっと抜ける。ビール好きにはたまらない肴になるだろう。おかずの一品として、ごはんと一緒にいただいても美味しかった。
【くんせい調味料】
取扱説明書のレシピにあった中で「くんせい調味料」も気になった。本来は複数の食材を混ぜない方がいいとあったが、どれも火力も調理時間もチップの量も同じなので、あえて粗塩、味噌、粒こしょうの同時調理を試みた。
粗塩、粒こしょうを5g、味噌は30gそれぞれをアルミ製カップに入れ、網の上に並べて「弱め:タイマー15分」でスタート。チップはチェリーを使用。できあがった粗塩も粒こしょうも口にすると燻香がふわっと広がる。粒こしょうは辛味がまろやかになった印象だ。味噌は水分が飛び、焼き味噌とは全く違う香ばしさが新鮮だった。調味料なら同時調理でもよさそうな印象があった。
燻製粗塩と挽いた粒こしょうをベーコンエッグでいただいたが、コレが美味い。半熟の黄身にありがちな特有の生臭さがフワリと燻香に被われて気にならなくなった。燻製感のあまり感じない市販のベーコンも、燻製こしょうを振りかければ一瞬で風味がアップする。
燻製味噌はシンプルにもろきゅうとしていただいた。やはり燻香がきゅうりの青臭さを覆い、味噌をちょっとつけるだけで十分美味しい。今回は試さなかったが、甘めの味噌ダレの材料としても紹介されている。
続いて、「ロースター」と「くんせい」の合せ技を紹介しよう。ロースターで下焼きしてから、さらにひと手間の燻製を加えた美味しいもの2つを作った。
【甘塩さけの燻製】
まず、甘塩さけをロースターの「オートメニュー:切身」、「焼き加減:弱」で焼く。焼き上がったら網にのせ、室温で約20~30分冷ましておく。下準備といっても、オートメニューで焼くだけなので簡単だ。スタートした時は12分だったが、実際は10分で焼き上がった。すぐにでも食べたい気持ちをぐっと抑えるのに苦労するほど、もう十分美味しそうだ。
あとは、これまでの燻製方法と同じように、くんせい容器にチップを敷き、ホイルを下から巻いたくんせい網の上に十分冷ました焼きさけを載せ、容器をホイルで覆い、くんせいの「弱め:タイマー14分」でスタートした。燻製チップはブレンドを使用。
できあがった甘塩さけの燻製はパッと見では燻製されたとはわからない、普通の美味しそうな焼きさけだ。だが一口いただくと、フワリと燻香が鼻にぬけ「おっ!」と声が出る。燻香が加わり、普段の焼きさけとは一味違った美味しさだ。身はふっくらしっとりで、皮はパリッと仕上がっている。皮の燻香が特に香ばしくてより美味しかった。お惣菜で購入した焼き魚にも応用できそうだ。
【手羽中燻製】
こちらもロースターで一旦焼いてから燻製するレシピだ。パナソニックHP内の 「手羽中燻製」 の「燻製香がお手頃な手羽中をごちそうに変身させます」という説明に惹かれて作ってみた。
下準備は手羽中に塩・こしょうをし、焼き網に並べて手動「温度220℃:タイマー12分」でローストする。手動といっても、「温度/お手入れ」キーで温度を選び、タイマー時間を設定するだけの簡単な操作でできる。
手動で肉類を焼く場合、他のレシピを見ると250℃前後のものが多い点から、220℃の設定は肉に火を通す程度の温度だとわかる。実際に焼き上がったものは、皮にまだ脂が残る、焼き色がほとんどつかない状態だった。焼き上がった手羽中の粗熱を取りながら燻製の準備に入る。
燻製は今までと同様だ。下焼きした手羽中を、下からアルミホイルで巻いたくんせい網の上に並べ、くんせい容器をホイルでしっかり覆う。くんせいは「強め:タイマー14分」でスタート。燻製チップはブレンドを使用した。
できあがった手羽中燻製は見るからに美味しそうッ! 身はふっくらと盛り上がり、鶏皮は脂が抜け、艶やかできれいなきつね色に仕上がった。
一口いただき、「あ、コレ、ごちそうだ! レシピの謳い文句どおりだ!」と唸ってしまった。見た目どおりに肉はふっくらでプリっとした食感。鶏皮は脂を少し残しつつパリッとした仕上がりで、身が骨からツルッと簡単に外れるほど火の通りは完璧。塩とこしょうの味付けだけなのに、燻香が加わるとこれほどまでに滋味深い味になるものかと驚きながら、手が止まらない。とても美味しい。
けむらん亭の燻製調理は、もともと食材の厚みが制限されているため、生の食材でも調理時間は20分以内にできるものばかり。燻製チップとアルミホイルさえあれば、煙をまるで気にすること無く、思い立ったらすぐできる気軽さが大いに魅力だ。後始末も簡単なので、連続の燻製調理も現実的な印象だ。
燻製したものは、できたてはもちろん美味しいが、冷めても燻香がしっかり感じられやはり美味しい。作ったものを一度に盛り付けてみたが、コレがなかなか壮観だ。豪華なお酒の肴としても、ホームパーティの前菜としても素敵!
手動ロースターも美味しい
燻製の項でも触れたが、温度とタイマーを設定する手動ロースターも美味しいものが簡単につくれる。取扱説明書にはメインのおかずになるような肉・魚介・野菜を使ったレシピが紹介されている。その中からいくつか作ってみた。
【マカロニグラタン】
一般的にオーブンで作るホワイトソースを使ったマカロニグラタンも紹介されていたのでさっそく作ってみた。具材の鶏肉、玉ねぎ、マカロニを調理し、ホワイトソースを用意し、グラタン最後の工程である「オーブンで焼く」を、手動「温度280℃:タイマー10分」で焼いた。
できあがったマカロニグラタンは、焦げ目もしっかりつき、グツグツと音を立てて煮えたぎるほどアツアツだ。上下のヒーターで挟み込んで焼き上げるので、オーブンよりも早く焼き上がる印象だった。
バター、パン粉、粉チーズを載せたところは程よく焦げ、サクッと香ばしい。鶏肉もマカロニもプリッとした食感があり、ソースが口の中にとろりと広がる。久しぶりに作ったが、出来合いのものとは比べ物にならないほど抜群に美味しい。
【豚ロースの西京焼き】
市販品の豚ロースの西京漬けを購入。パッケージから出して焼き網に並べ、手動「温度240℃:タイマー15分」で焼いてみた。レシピにあった「豚肉の利休焼き」の設定をそのまま応用した。
焼き上がったのでいただくと、肉はしっかりと火が通りやわらか。脂身の脂が落ちて、カリッとした食感が香ばしくとても美味しい。西京焼きはフライパン調理だと脂が周囲に跳ねやすく、味噌を使っているのでどうしても焦げ付きやすい。一方、けむらん亭での調理はそんなストレスも無くラクラクに調理でき、しかも美味しい。もちろん煙にも悩まされない。
【焼きりんご】
レシピには焼きリンゴも掲載されていた。一般的にはりんごをまるごと使うが、けむらん亭で作る場合は半分に切ったものを使う。芯をくり抜き、そこにグラニュー糖5g(小さじ1)、バター5~10gを詰めて下準備は終わり。
アルミホイルを敷いた器に入れて、手動「温度220℃:タイマー30分」で焼き上げた。上ヒーターとの距離を考慮して、器の底からりんごの切り口まで高さ5cm以下に収めるよう注意する。
焼き上がったものをアイスクリームと合わせていただいた。アツアツの果実は、柔らかくもシャリッとした果実感があり、キャラメリゼされた焦げがいいアクセントになって、アイスクリームとの相性もバッチリでとても美味しい。オーブンで作るりんご丸ごとの焼きりんごも美味しいが、けむらん亭の焼きりんごも大いに気に入った。
【フライの温め直し】
フライの温め直しもけむらん亭で美味しくできる。手動ローストのレシピに沿って、コロッケ3個を手動「温度260℃:タイマー8分」で温めた。
温める前のコロッケの衣は、水分を吸ってシメシメで、指で押したら簡単に凹むものだった。だが温め直したコロッケの衣は、揚げたてのような鮮やかなきつね色に覆われ、トングで掴んでも、形が崩れない硬さにカリッとした感触が手に伝わり、おっ! となる。
いただいてみると、衣はサックサクで軽い食感で、中はアツアツほくほくで、しかも瑞々しい。まさに揚げたてそのものの仕上がりに驚き、思わず「うまーい!」と声が出てしまった。一回り小さくなった印象はあるが、香りも良く、見事に美味しい。
今まで、ガスコンロのグリル、電子レンジ、オーブントースターでフライの温め直しをしたことがあったが、もう後戻りできない。けむらん亭の温め直しがダントツで美味しかったからだ。
手入れは思いの外簡単
肉や魚を焼けば、庫内には脂が飛び散り、ヒーターにもそれは付着する。燻製をつくれば、燻煙の香りが庫内に残ってしまう。次の調理を気持ちよく行なうにも、庫内の手入れは定期的に行ないたい。
庫内の手入れはとても簡単だ。というのも、庫内は「触媒入りのセルフクリーニングコート」で被われ、熱せられると触媒が飛び散った脂を分解してくれるからだ。庫内を熱する方法は、「温度/お手入れ」キーを押して「お手入れ」を選択し、「スタート」するだけでOK。タイマーが働き、庫内を高温で空焼きしたあと20分で自動停止してくれる。
さんまの干物を焼いた庫内は、鼻を近づけると魚臭さがはっきりとわかり、ヒーターにも庫内のいたるところにも脂が飛び散っていた。そこで「お手入れ」の空焼きを実行したところ、庫内壁面についた染みのようなものはやや残っても、ニオイは見事に感じられなくなり、ヒーターにこびりついていた脂もほぼ落ちていた。
また、「お手入れ」中も触媒ヒーターとファンが働くので、脂が高温で焼かれて庫内が煙っても排気口から煙が目視できないほどクリーンなのはありがたい。煙が出てこないので、ちょっとでも臭いが気になったらすぐ手入れできる気軽さがいい。
調理中に落ちる脂や肉汁を受け止める受け皿は特に汚れる。それでいてパーツの中では特に大きくて一見扱いが大変そうに思えるかもしれない。だが、受け皿についたガラス窓は引き上げるだけで簡単に外せ、ガラス窓のシリコン製のパッキンも同様に簡単に取り外せるため、洗うのはとても簡単だった。
ステンレス製の受け皿もガラス窓も、凹凸が少ない形状なので、洗剤をつけたスポンジでササっと汚れが落ちた。また、焼き網はフッ素加工が施されているので、焦げついた食材がこびりついていてもスポンジで軽くこするだけで汚れがスルッと簡単に落ちた。もちろん、くんせい容器とくんせい網も丸洗いできる。
調理中飛び散る脂もニオイも、たいした苦労無く気軽にお手入れできるように工夫が施されているのは、日々使う調理機具だけに嬉しい。
煙やニオイを気にせずに、とびきり美味しい焼き物と手軽な燻製が手に入る
けむらん亭のロースターを使った実感として、これまで敬遠しがちな焼き物や魚調理を気軽にウチで楽しめるようになった。オートも手動も煙やニオイを気にせずに、調理が始まればあとは任せっきりにできるのはとても便利。それを上回る魅力として、まるで美味しいお店で提供されるような、本格的な味わいを家庭で堪能できる点を挙げたい。大げさだが、おウチごはんの満足度と幸福度がグンと上がる喜びは特筆すべき点だ。
燻製調理は、一度に調理できる量は必ずしも多くはなく、食材の厚みの制限はある。だがそのぶん調理時間は短く、思い立った時にパパっと作れてしまう気軽さは魅力的だ。燻香をまとわせるだけで、食べ慣れたものがワンランク上のごちそうへ変化する驚きとともに、真空パックされて時間が経過した既製品では得られない美味しさが味わえる新鮮さがある。
14層の触媒フィルターと強制排気は確かに効果的だった。ロースター調理も燻製調理も、煙は目視できないほどクリーンで、ニオイも抑えめ。いつまでも部屋に残る消えないニオイに悩まされることも無く快適だ。また、手入れも簡単なので、いつでも気持ち良く調理が始められる。
設置場所にそれなりのスペースを要し、近頃の調理器具に見られるような映えを演出するようなデザイン性は望めないかもしれない。だが、使うほどに手放せなくなる、実直さと実用性が備わった調理器具なのは間違いないだろう。心の底から「美味しい!」といえる喜びを、家庭で手軽かつ確実に手に入れられるのが「けむらん亭」の大きな魅力と断言できる。おすすめだ。