家電製品レビュー
ソニーの「着るクーラー」は、目立たず“自分だけ涼める”のがイイ
2020年8月12日 08:00
夏を涼しく過ごすアイテムとして人気の、持ち運べる扇風機「ハンディファン」は、今年も多くのモデルが発売されている。これに続く新しいトレンドといえるのが「着るエアコン」や「着る扇風機」だ。
そのカテゴリーの中でも注目の一つが、首元を冷やす“着るクーラー”こと、ソニーの「REON POCKET(レオンポケット) RNP-1A」。7月1日から一般販売が開始されており、価格は13,000円。昨年のクラウドファンディングで一足早く入手した筆者は、家の中や外出先などで愛用している。この製品のポイントは「着けていても周りからほぼ気づかれず、すぐ涼感を得られること」だ。
いい所は「とにかく目立たず涼める」
いよいよ夏真っ盛り。エアコンが効いた部屋や電車は涼しいが、いったん外に出ると、その気温や湿度の差だけでぐったりしてしまうことも少なくない。そうした場合もできるだけ快適に過ごすことを目的に開発され、注目されているのが、首かけ型などのウェアラブルな(身に着けられる)空調機器。手ごろな価格のハンディファンに比べると高価な場合も多いが、ウェアラブルだと両手が自由となり、かつ高い冷却効果が見込める製品も多く登場している。
その一例としては、“ファンがついた服”や、首かけ型の超小型扇風機など、涼しく過ごすための個人用グッズが特に数多く発売。家電 Watchのニュース記事でも新製品が登場するとアクセス数の上位に入り、注目されているカテゴリーだ。
その中で、今回紹介するソニーのレオンポケットの特徴は、とにかく「小さく目立たない」こと。シャツの背中(首元)部分にあるポケットに専用機器を入れて着ることで、周りからはほとんど気づかれず、ハンズフリーで涼しくなれるというのがメリットだ。また、冷たくするだけでなく温めるモードも用意するため、夏以外の時期にも使える。
暑がりな筆者は、エアコンが動作して周りの人があまり暑そうにしていない部屋でも汗をかいてしまうことは多い。そういった時も、自分のためにエアコンを強くしてほしい、とはなかなか言い出しにくいケースもある。そこで、あまり大げさな見た目でなく涼めることができればと思い、購入した。
ペルチェ式+ファンの組み合わせ
レオンポケットが涼しくする仕組みは、電気を通して冷却する「ペルチェ式」のパッド部と、風を出す「ファン」の2つを組み合わせたもの。スマホアプリでそれぞれの強度を好みで調整できるほか、お気に入りの組み合わせを登録しておけば、すぐ呼び出せる。
ペルチェ式は、パソコンのCPUや、小型冷蔵庫の冷却などで使われている方式。冷却(COOLモード)だけでなく温めること(WARMモード)も可能で、これを使って一年中使える点は、ハンディ扇風機との違いでもある。
基本的な使い方は、「専用のシャツのポケットに入れて首元を冷やす」のと、「手に持って特定の部位にあてる」の2通り。専用シャツは別売で、ホワイトとベージュの2種類がある。これはインナーウェアのため、ホワイトの方が汎用性が高そうだが、その上に白いシャツを着る場合はベージュのほうが目立たないだろう。専用シャツの価格は1,800円。
実際に、レオンポケットを専用シャツに入れて着てみた。このシャツは東レインターナショナル製で、形状はVネック。素材は、ポリエステル90%、ポリウレタン10%。着心地は軽く、肌触りもさらっとしている。綿などのシャツに比べて汗をかいても速乾性があり、伸縮して体にもフィットしやすい。
首の後ろ側にポケットがあり、そこにレオンポケット本体を入れる。白いパッドが付いた側が首元に当たるように、上からスポッと入れるだけ。ボタンや面ファスナーなどで留める仕組みではないが、歩いたり小走り程度では落ちる心配はなかった。
これはあくまでインナーシャツなので、上からシャツなどを着る必要があるが、ソニーによれば、ピッタリした服よりは、風が通るようなゆとりのある衣服が良いとのこと。熱を吸収しにくい白など淡い色を着用するよう推奨されている。
スマホ操作だけで、さりげなく自分だけ涼める
主な操作は、Bluetoothで接続したスマートフォンのアプリ「REON POCKET」から行なう。一度ペアリングすれば、以降はスマホからでも起動できるため、本体の電源ボタンを押さなくてもいいのは便利だ。
冷たさは、「OFF/1/2/3」と、「BOOST」(2分間の時間制限付き)が設定できる。ファンの強度は3種類で、COOL動作中はOFFにはできない。なお、COOL使用中は、風量を最小にするのがおすすめだそうで、風量を大きくすると電池の持続時間が極端に短くなるとのことだ。
確かに、ファンの風よりはパッド部の冷たさのほうが効果が大きい。もし服にファンが付いた作業着などをイメージして使うと、レオンポケットの風はかなり控えめに感じるだろう。一方でペルチェ素子のパッド部は、ONにするとその瞬間からすぐ効果がはっきり分かる。例えるなら、冷感のシップ薬を背中に貼った時のヒヤリとした感覚が、ずっと続くような印象だ。
ファンの風は涼しいというより生ぬるさも感じたので、逆に回さなくてもいいような気もしたが、COOL時はOFFにはできない。風量を上げると動作音も大きくなるので、こちらは補助的な役割と考えた方がよさそうだ。
最大強度のBOOST状態だと、氷とまではいかなくても、まるで冷水に浸した濡れタオルがぬるくならずに冷たいまま続いているようにも思えるほどの冷たさ。筆者は問題なく使えたが、人によってはその部分だけ冷たすぎると感じるかもしれない。
肌にあたるパッドのサイズは5.5×4.5cm(縦×横)程度のため、さすがに全身が涼しくなるほどではない。しかし、体の中でも冷たさを感じやすい首筋部分に触れていることで、即効性がある。エアコンの代用ではなく、外に長くいる時などの暑さを素早くしのぐには、大きな役割を果たせると思う。
何より、着けていても目立たないため、仕事中などに使っていても周りから「この人は自分だけ涼んでる……」と気づかれにくいのがこの製品ならでは。会社の机にUSBファンなどを置いて使うのはちょっと、と思う人にも手が出しやすい。なお、筆者が装着していて人に気づかれたのは、同じくレオンポケットを使用している友人から指摘された時くらいだった。
シャツに装着するだけなく、前述したように手に持って体の部位にタッチして使うこともできる。肘の内側や額、首の側面などの部分にあてると、すぐに冷たさが伝わるのでおすすめだ。
冷却/温熱の動作時間は約2時間。ただし、安全のため、連続使用30分になると停止する。なお、本体は防水仕様ではないため、激しい発汗を伴う運動には使用しないよう案内されている。
「MY MODE」をうまく使って冷感をさらにアップ
アプリ画面の「ハート」アイコンをタップすると、MY MODEという設定画面になる。これは、WARM→停止→COOL→停止→WARMのように、繰り返し動作を最大30分続けられるというもの。
夏にわざわざ温かくする必要はあるのか? と思いながらも、試しに使ってみた。WARMもCOOLと同様に一瞬で効果がわかるが、WARMからCOOLへ切り替わった時は、単にCOOLをONにした時よりもギャップが大きいせいか、冷たさがより強調される。この使い方も意外に悪くない気がした。家のシャワーなどにある“ゆらぎ”(自動で湯温を上下する機能)とも似ているのかもしれない。ただ、WARMを使わずにCOOLだけを一定間隔で使うこともできるので、好みに合わせて設定するといいだろう。
なお、アプリを使わない「クイック起動」も用意。本体ボタンを約2秒長押しすると開始。LEDが緑に点灯する。停止は約2秒間の長押し。
そのほか、自動で調整するAUTOモードもある。温度状態や行動(停止/歩き)を感知して、適切な温度で動作するというものだ。外出先などで、いちいちアプリを設定する手間が取れない時などは、このモードにしていると、特に不満なく使えた。
例えば会社内にいて、階段の上り下りが伴う部屋の移動をした場合、最初は強度が1だったのが2にアップして、席に戻ってしばらくするとまた1に戻るという具合。これを自動でやってくれるため、いちいちスマホを操作する必要がないのは楽だ。
おおむね満足しているのだが、気になる点もいくつかあった。一つは、充電しながらは使えないこと。約2時間という使用時間は、一時的な使い方ならいいが、外出先などでずっと使うには物足りない。できれば手に持って使う時などに、モバイルバッテリー給電でも動作したら、利用の幅がもっと広がるのではと思う。
また、装着できるシャツが今のところ専用品だけしかないのも寂しい。Vネックだけというのは、仕事用のシャツスタイルなら問題ないが、それ以外は利用シーンが制限される。アパレルメーカーなどから、別のバリエーションが出てくれるとうれしい。
なお、パッド部が傷つきやすいため、持ち運びに気をつかう必要があることも注意しておきたい。専用のポーチがあるため、使わない時はこれに入れておくのが安心だろう。
これらの点を差し引いても、買ってよかったと思える製品ではあったため、今後も使い続けようと思っている。
初めて使う前は、一部を冷やすだけで本当に意味があるのかと心配もあったが、一瞬で冷たくなることにより、確かに効果は感じられた。さすがにこれだけで“エアコン代わり”とまではいえないものの、急場をしのぐのに助かることを実感している。
会社や家のエアコンだけでは物足りなくて、もう少しだけ涼しく/温かくしたいという人や、首かけ/手持ちのファンなどを使うのは気が引ける人などに、おすすめしたい。