家電製品レビュー
同じ豆でも15通りの淹れ分けができる! 業界初の蒸気プレス方式コーヒーメーカー
2018年1月11日 07:00
コーヒーは抽湯温度と蒸らしの時間の組み合わせによって、苦味や酸味が変化し、味わいが変わる。テクニックを熟知したバリスタならいざしらず、家庭ではお湯の温度を調節するのさえなかなか難しい。そこで今回は、タイガーのGRAND X(グランエックス)シリーズの1つにラインアップされている「コーヒーメーカー ACQ-X020」紹介しよう。
メーカー名 | タイガー魔法瓶 |
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製品名 | グランエックス コーヒーメーカー |
型番 | ACQ-X020 |
価格(編集部調べ) | 21,384円 |
ACQ-X020の最大の特徴は、独自の蒸気プレス式「Tiger Press」システムを搭載している点だ。
蒸気プレス式は、コーヒー粉にお湯を注いで一定時間浸してから、蒸気で押し出して抽出するというもの。さらに、簡単なボタン操作で抽湯の温度は3段階、コーヒー粉にお湯を注いで浸す(蒸らす)時間は5段階から選べるのだ。抽湯と浸す時間を変えることで、1種類のコーヒー豆から15通りの味・風味が変えられ、好みの味も作り出せるという。
また、コーヒーの抽出量は240ml(2杯)、180ml(1.5杯)、120ml(1杯)、60ml(アイス用)の4種類の中から選べる。1度に抽出できる量は最大でも2杯という点から、少人数家族、またはパーソナル向けという位置づけだ。
落ち着いたデザイン
本体の大きさは226×199×298mm(幅×奥行×高さ)で、重さは3.1kg。モノトーンを基調としたキューブ型で、落ち着いたデザインだ。
ACQ-X020は大きく分けて、ふたユニット、シリンダー、水タンクの3点で構成されている。ふたユニットは、蒸気プレス式抽出の圧力を受け止めるのに十分な丈夫な造り。コーヒー粉を入れるシリンダーは着脱式で簡単に分解でき、チタンコートメッシュフィルターが採用されている。水タンクは簡単に着脱でき、目盛りもついている。
また、コーヒーを受けるカップの高さに合わせて、トレイは3段階の高さに変えられる。それぞれのシリンダーまでの距離は、上段が65mm、中段は85mmで、下段は105mm。利用するカップに合わせて高さを変えると、抽出中の飛び散りが抑えられる。なお、トレイを外した時のシリンダーまでの距離は118mmだった。
直感的な操作で抽出設定も簡単
抽出は15通りに設定できるが、操作は簡単だ。その前にコーヒーと水を本体にセットする。コーヒー粉を入れたシリンダーを本体にセットしてふたをパチンと閉め、水を入れたタンクを本体にセットするだけで準備はOK。
ボタン操作は、抽出量→湯温→浸し時間の順に選択し、スタートするだけで抽出が始まる。湯温と浸し時間は「∧」と「∨」ボタンで選択する。1度使えばあとは直感的に操作できるだろう。
また、シリンダーを正しくセットしないと作動しないよう、安全にも配慮されている。さらにオートオフ機能が搭載されており、約1分間操作しなければ電源が自動的に切れる仕組みもある。
ハンドドリップよりも美味しーい!
今回は味の違いも確認したいので、普段飲んでいる深煎りの豆に、もう1種類中煎りのものも加え、焙煎度が違う2種類のコーヒー粉を用意した。どちらもドリップ用に挽いた中挽きのものだ。なお、挽き方は中細挽き以上と指定されている。
まずは飲み慣れている深煎りのコーヒー粉をセットして、普段ハンドドリップで淹れているコーヒーと違いがあるか確認した。
抽湯は、普段は沸騰手前のお湯を使っているので95℃を選択。浸し時間はとにかくやってみないとわからないので、5段階の真ん中の60秒を選択した。
スタートを押してから40秒過ぎたぐらいで、少しだけお湯が粉に注がれた。その後少し過ぎてから「シュー!」という音が聞こえ、シリンダー内にお湯が注がれ、コーヒーが少しだけカップに落ちて来た。また時間を置いて「コポコポ」とお湯が注がれてコーヒーが少し落ちて、というのを数回繰り返した。
その後、またも「シュー!」という蒸気音とともに、シリンダー内のコーヒーが一気に押し出されるように出てから蒸気がゆっくりと止まった。コーヒーの雫が落ちきったあたりで「ピーピーピー」と終了音が鳴ってできあがりを知らされた。マグカップ(180mL)1杯のコーヒーを約4分30秒かけてできあがった。
一口飲んでまずびっくり! コーヒー豆はペーパーフィルターのハンドドリップで飲み慣れているものなのに、旨味が濃いのに爽やかで明らかに美味しい! 飲み込んだ後、鼻に良い香りがすっと抜け、口の中にほんのりとした甘さがふわりと広がる……。
ハンドリップでかなり上手に淹れていると自負していたが、それよりも一層美味しく、なんだか悔しい気持ち(笑)まで沸き起こってしまった。カップは特に温めなかったが、出来上がったコーヒーの温度は73℃でゆっくり飲むのには丁度良い温度だと感じた。
ACQ-X020は、蒸気圧をかけてチタンコートメッシュフィルターを通って抽出されるため、エスプレッソのような厚みのある味わいも特徴的だ。ペーパードリップでは抽出されにくい、コーヒー豆本来の油分も引き出し旨味が濃い。ブラックでいただく美味しさが際立つ満足の1杯だった。
抽出パターンを変えて飲み比べ! 同じコーヒー豆なのに、味が、風味が変わる!!
せっかく15パターンの設定ができるので、どのように味や風味が変化するかも試してみよう。
抽湯温度は3種全ての85・90・95℃に対し、浸し時間は最短の30秒、倍の60秒、そして最長の90秒の3種を組み合わせ、合計9パターンで抽出して味わった。この時、付属の計量スプーンは使わずに、豆をスケールできっちり10g正確に量り、抽出量は120mlで揃えた。
中煎り、深煎りとも9パターンを淹れてみたが、できあがったコーヒーを撮影して並べてみると、コーヒーの色の濃さは判別つかないほど同じような濃さでできあがった。ところが、一口飲んでみると、味や風味に明らかな違いが現れて驚いてしまった。
中煎り
温度だけの違いを言うと、85℃は爽やかな酸味で全体的に軽く、90℃は酸味に甘さが加わって味に厚みが増す。95℃は酸味がやや弱まって甘さが前に出てくるというのが、浸す時間を超えたおおまかな印象だ。しかし浸し時間によって、酸味や甘さ、苦味のバランスが微妙に変化した。
もともと深煎りが好きな自分のお気に入りは、[95℃+90秒]の組み合わせだった。甘さが前に出てきて酸味をふわりと包み込むような味わいがとても美味しい。一方「あれ?」と思ったのは[95℃+60秒]の組み合わせだった。同じ温度で30秒の違いなのに、酸味が甘さの邪魔をするかのようで、イマイチだったからだ。同じ温度なのに浸し時間で印象が大きく変わるのがとても興味深い。
深煎り
中煎りと同様に温度による大まかな違いは、85℃はさっぱりとした苦味が特徴的で後味に酸味がふわりと口の中に拡がる。90℃は香りが特に良く、苦味と酸味が同時に感じられた。95℃は心地良い苦味が口の中に拡がるというものだった。
浸し時間を変えるとやはり味や風味が細かく変わる。特に好きだったのは、[90℃+90秒]の組み合わせだった。苦味とほのかに加わる酸味のバランスが良く特に美味しかった。前項のマグカップで試した[95℃+60秒]よりも更に美味しいと感じられるコーヒーだった。一方で、[95℃+90秒]はえぐみが感じられて重く、カフェオレにしたくなった。
なお、低温の85℃で淹れたコーヒーは、一口目からクイッと飲めるが熱さも十分楽しめるコーヒーだった。
それぞれ9パターン、合計18パターンを飲み比べて感じたのは、生活のシチュエーションに合わせて味わいの違うコーヒーがいとも簡単に楽しめるという事だ。
スッキリと飲みたい目覚めの1杯、出かける前にスッと飲める1杯、休憩の時の1杯、夕食の〆の1杯、ゆったりと寛ぐ時の1杯と、1種類の豆でもボタン操作だけで、シーンに合わせて「淹れ分ける」ことが簡単に実現できる。ハンドドリップではこうはいかない。
手入れはちょっと面倒
ハンドドリップよりも美味しいコーヒーは味わえるが、後片付けは少々面倒だ。抽出後にシリンダーを取り出して、側面をパンパンと軽く叩いてもメッシュフィルター近辺にどうしてもコーヒー滓が残る。もちろん水で簡単に流せるが、シンクはどうしても汚れてしまうので、洗う際にはどうしても気を使う。
そこで、試しに1~2杯用のペーパーフィルターをシリンダーにセットし、20g(計量スプーン2杯)を240mlで抽出してみたが、今回用意した中挽きのコーヒー粉は問題無く抽出できた。手入れに時間がかけられない朝や、たて続けに抽出する必要がある時なら、ペーパーフィルターを活用するのもアリだろう。豆の油分は少なめになるとは言え、それはそれで十二分に美味しかった。
欠点とは言わないが、1度に抽出できる量は最大でも240mlで、1度使うごとにコーヒー滓の処理が必要だ。そして一般的なものよりも高価という点で、必ずしも万人向けのコーヒーメーカーとは言い難い。
しかし、シチュエーションに合わせて、1種類のコーヒー豆から違った味わいや表情の変化が楽しめ、簡単なボタン操作だけで、コーヒー豆が持つ本来の味わいが、追求・引き出せる楽しさがある。一般的なコーヒーメーカーでは得られない価値と満足感があり、何よりも本当に美味しいコーヒーが味わえる。
コーヒー好きの中でも、ストレートのコーヒーが好きな人には特にお勧めしたい。コーヒーへの探究心も刺激される一品として、コーヒーのある生活が、より豊かに、楽しいものになるだろう。