家電製品ミニレビュー
味、香りはもちろん、目と耳でも美味しいコーヒーが味わえる、日本唯一の電気式サイフォン
2017年6月26日 07:00
ガラス製のサーバー(フラスコ)とロートを用いるサイフォンは、美味しいコーヒーが淹れられるだけでなく、まるで理科実験のような視覚的な楽しさもあり、100年以上も親しまれているコーヒーメーカーだ。
家庭用サイフォンは、熱源にアルコールランプを用いるものが一般的。だが、ツインバードの「サイフォン式 コーヒーメーカー CM-D854」は、熱源に電気式のヒーターを採用している、日本で唯一の電気式サイフォンだ。
メーカー | ツインバード | |
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製品名 | サイフォン式 コーヒーメーカー CM-D854 | |
実勢価格 | 8,521円(Amazon) |
先に、サイフォンの仕組みを先に簡単に説明しておこう。
サーバーに水を入れてヒーターで熱すると、お湯が沸くにつれてサーバー内部の水蒸気が膨張し、蒸気圧の差でコーヒー粉を入れておいたロートへお湯が押し上げられ移動する。ロート内でお湯と粉を混ぜたあと、熱源を外せばあら不思議! 今度はフラスコ内の水蒸気が冷えて収縮し、ロート底に取り付けたフィルターで粉がろ過されながら、コーヒー液だけがフラスコに吸い込まれるように戻ってくる。コーヒーが抽出されていく過程が、つい見入ってしまうほど楽しい仕組みだ。
シンプルな構造。安心の日本製
1度に4杯分のコーヒーが淹れられる本製品の大きさは、255x180x325mm(幅x奥行x高さ)で、質量は約1.8㎏。クラシックなデザインにこだわったというだけに、レトロな雰囲気が漂う落ち着いたデザインだ。
ガラス製のサーバーとロートは、プロ仕様の製品も供給しているHARIO製のもの。サーバーとロートを密着させるロートゴムは今時の製品らしく、柔らかくて滑りの良いシリコン製だ。
400Wのヒーターが組み込まれた本体には保護枠、電源コードはマグネット式プラグが採用されており、安全面に配慮されている。本体の温度センサーはスイッチを兼ねており、サーバーを置くと電源が入り、外すと切れるシンプルな機能を搭載している。本体は、エボナイトのような質感の硬質なプラスチックに覆われている。
もちろん布製のろ過器、撹拌用の竹べらに、1杯約8gのコーヒー粉が計量できるスプーンも付属しているので、すぐに美味しいコーヒーが淹れられる。
ただし、使用する前に一つ、下準備が必要だ。付属のろ過器を10分ほど煮沸して、ろ過布の糊気やにおいを最初に取り除いておかなければならない。
コーヒーを淹れる時間がゆったりと流れる
それではさっそくサイフォンでコーヒーを淹れてみよう。慣れは必要だが作業自体は難しくない。コーヒー粉と水を準備して、ろ過器をロートへ取り付けておく。
ろ過器をロートに取り付けるのはたやすい。ろ過器のクサリをロートのパイプに通し、クサリを引っぱりながら伸ばし、フックをパイプのフチに引っかけるだけ。ろ過器がロートの中心に来るように調節する。
加熱と豆の計量
サーバーに水を注ぎ(最低2杯分)ヒーターに載せて加熱を始める。付属の計量スプーンでコーヒー粉を量りロートに入れ、はじめはサーバーに傾けた状態で載せ、お湯が沸くのを待つ(4杯分で10分ほど)。湯が沸きはじめるとロートのパイプからポコポコと空気が漏れはじめる。
ロートをサーバーに装着
サーバーの底から「コンッコンッコンッ」というノックするような音が頻繁に聞こえるようになった頃が、ロートをサーバーに挿し込むタイミングだ。挿し込むと間もなく、お湯が押し出されるようにロートに上ってくる。
1回目の撹拌で、粉全体をお湯に浸す
お湯が上がりきる頃、付属の竹べらで粉をお湯に押し込み、粉が均等にお湯に浸るようにする。この作業が1回目の撹拌だ。
お湯がロートに上がりきるとサーバーからの水蒸気でボコボコとたぎるが、何もしないで30〜60秒放置する。これが、粉からコーヒーがお湯に溶け出す時間となる。時間がきたら、サーバーをヒーターから降ろす。
2回目の撹拌で、粉のガス抜きをする
ヒーターからサーバーを降ろすやいなや、2回目のかくはんを手早く行なう。混ぜると言うよりも、粉に含まれている炭酸ガスを抜き、抽出がスムーズに行われるのを促すのが目的だ。粒の大きな泡が、白っぽいきめ細かな泡になったら2回目の撹拌はおしまい。
コツをつかめば、味が安定
今回使ったコーヒー粉は、ローストがやや深めの中挽きのもの。何度か作っていく中で、幾つか美味しく淹れるコツのようなものが見えてきた。
1つは、ロートを挿し込むタイミングだ。あっという間にロートにお湯が上がる場合は温度が高すぎで、苦味も雑味も強くなる印象だった。反対に1分以上かかるのは温度が低すぎなのか、できあがりもイマイチ。ロートはサーバーの底から響く「コンッコンッコンッ」という音によく注意し、慣れるまでは、お湯が上がりきってからコーヒー粉を投入してもいいだろう。
一般的に雑味の無い美味しいコーヒーを抽出するお湯の温度は90℃前後と言われている。サーバーのお湯がスーッと淀みなく上がった時の温度はちょうど90℃。上がりきるとロート内はまるで沸騰しているかのようにボコボコと湧き上がるが、そのまま60秒以上経過しても、温度は93℃だった。温度センサーがコーヒー抽出に適切な温度をしっかりコントロールしているのだろう。
もう1つは、2回目の撹拌の時、むやみに混ぜすぎない方が美味しい。白っぽい泡が見えたらそこですぐに手を止めた方が、雑味の少ないコーヒーに感じられた。また、サーバーにコーヒー液が戻る時、粉がろ過器の上にこんもりとドーム型に積もり、頂上に泡が集中した時は特に美味しかった。
また、同じ豆を使用しても放置する時間で、味、風味が調整できるのもサイフォンの利点だろう。そこで2回目の撹拌前の放置時間を、30秒と60秒で試してみた。
30秒は、コクと酸味、甘さのバランスが良く、爽やかでキレも良い。ブラックでいただいてとても美味しかった。少し冷めて来た頃には、ふくよかな甘さが際立ちこれまた美味しい。60秒は、厚みが増し、酸味がやや強調された印象だった。それでも後味は思いのほかスッキリ。カフェオレなど、ミルクとの相性もとても良かった。
コツをつかみ使い方に慣れてしまえば、味のばらつきの少ない美味しいコーヒーが味わえるだけでなく、自分の好きな味へ変化、追求も楽しめる。ハンドドリップや一般的なドリップ式のコーヒーメーカーでは得にくい魅力がサイフォンにはある。
手入れはちょっと面倒
美味しいコーヒーが味わえるサイフォンだが、手入れは「ラク」というわけには行かない。使い終わったら、ロートを手のひらて軽くパンパンと叩いて粉を捨て、水で洗い流す。サーバーはハンドルから外して、それぞれを中性洗剤で洗う。いずれもガラス製なので、割らないよう注意が必要だ。
特に気をつけなければならないのは、ろ過器の手入れだ。洗剤は一切使わずに丁寧に水洗いをし、冷水につけて冷蔵庫で保管する。布が乾燥すると、コーヒーの脂肪が酸化してニオイの原因になるからだ。付属の竹べらも水を吸うので、こちらも水洗いだけにしておく。
コツも手入れも必要なサイフォン方式は、たかがコーヒーのために面倒に感じるかもしれない。されど、である。昔ながらの製法に則って道具を使いこなし、薫り高い美味しい1杯のコーヒーを丁寧に淹れる。そんな手間ひまをかけるのはむしろ、暮らしの中に豊かで贅沢な時間をもたらしてくれるのではないだろうか。