e-bike試乗レビュー

これからMTBを楽しみたい! 手ぶらでプロに学べて最高峰モデルにも試乗できちゃった!!

2024年の春頃にe-bikeの本格MTBを初めて借りて、その楽しさを知ってしまった筆者。あれ以来、MTBいいな~、オフロードをガンガン走ってみたいな~、という欲がふつふつと湧いてきた。

ということを話していたら、編集部から「手ぶらでプロに基礎を学べるMTBの試乗に行きますか」というお誘いが! もちろん2つ返事でOKし、向かった先は伊豆半島。道の駅「伊豆のへそ」と呼ばれるところにある「MERIDA X BASE」だ。

本誌でも過去に何度か紹介しているように、「MERIDA X BASE」は台湾を代表する自転車メーカーの1つ、メリダ(MERIDA JAPAN)が運営する世界最大級の体験施設。MTBはもちろんロードバイクやキッズバイクなどもレンタルでき、購入前にガッツリ乗って試したい、自転車旅を楽しみたいようなときに便利な場所だ。

さらに、ここでは元プロライダーをはじめとする経験豊かな講師による「ライディング講習」も実施している。筆者のようにMTBのことをあまり知らずちゃんと乗れるか不安な人から、もっと上手に乗れるように実践的なアドバイスが欲しい人まで、誰でも受講できるのだとか。

そんなわけで、MTBを乗りこなせるようになるべく筆者も実際に受講してみた。家電 Watch的にはe-MTBを紹介すべきなのかもしれないけれど、まずはフツーのMTBで基礎を学んでみよう、という主旨だ。どんな講習だったのか、その様子をお伝えしていきたい。

「MERIDA X BASE」なら手ぶらでOK、メリダの自転車をどれでも試乗できる

「MERIDA X BASE」の入口

MERIDA X BASEへのアクセスは、都心からだと新幹線と伊豆箱根鉄道の乗り継ぎで約100分、クルマだと90分以上が目安になる。ちょっと遠いなあ、と感じなくもないけれど、施設に一歩足を踏み入れるとかなりの広さで、そのインパクトだけで「はるばる来て良かった!」と思えるほどだ(隣接している道の駅でお土産がすぐ買えるのもいい!)。

施設本体まで、細長い通路のようになっている
看板やPOPがワクワク感を煽る

一部はかつて植物園の温室だったところを改修しているようで、シースルーな天井の建物にはコンパクトながらもきれいに整備された屋内パンプトラック(凹凸やカントのついたコーナーなどで構成されたダート路面の)コースがある。借りたMTBや持ち込んだ愛車のMTBで天候を気にせず走り込めるのだ(2時間1,100円。でも夏はサウナ並みに暑いので要注意)。

美しい屋内パンプトラック
めちゃくちゃ暑いけど

トラックのある建物を抜けてさらに奥へ進むと、すり鉢状のホールに数え切れないほどの自転車が並ぶ展示場へとたどり着く。MTB、ロードバイク、クロスバイク、e-bikeにキッズバイクなどなど、メリダのラインナップの多くが集結している。

遂にたどり着いた試乗車展示場
すり鉢状の屋内に大量の自転車が
手前に見えるように、e-bikeもちゃんとある
カッコ良さげなキッズバイク

ホールにある自転車は、ごく一部を除いてほとんどすべてが試乗可能とのこと。MTBについて言えば、数万円のエントリーモデルから標準価格約1,600,000円の最高峰モデルまで、「マジでこんなレンタル料金でいいの?」と思わず口をついて出てしまうほどリーズナブルな価格で借りられて、実走できてしまう。

MTBのラインナップも豊富

モデルのグレードによって料金は変わるものの、2024年8月現在、たとえば2時間レンタルなら(キッズモデルを除いて)2,750~3,850円となる。ほぼ1日中借りられる7時間のプラン(6,050~8,250円)や、1泊2日(9,350~13,750円)、あるいは2泊3日(13,750~18,150円)といったプランも選択可能だ。なお、プランによっては補償制度加入料金として1回レンタルにつき1,100円が必要。

MTBに限らず、自転車の購入を本気で考えていて、どのモデルが自分にしっくりくるのか確かめておきたい、といったときにぴったりのサービスだろう。

100万円もするようなプレミアムモデルでも3,850円で2時間借りられる
ヘルメットとグローブも借りられる。手ぶらで行って試乗できちゃうわけだ
2024年8月現在の料金表。ハイエンドモデルもリーズナブルに試せる

初心者から上級者まで、1人1人に合った指導をしてくれる「ライディング講習」

自転車レンタルとは別に、MERIDA X BASEでは「ライディング講習」も実施している。しばらく自転車から遠ざかっていて不安がある人や、乗り慣れているけれどもっと上を目指したい人など向けに、元プロ選手だったりする講師が個人レッスンしてくれるというものだ。

マンツーマンでその人に合った指導をしてくれる「ライディング講習」

基本はマンツーマンで、その人の目的やレベルに合わせたレッスン内容となる。たとえば長く乗れるように疲れにくい乗り方を知りたい、自転車でダイエットしたい、ヒルクライムを速く走りたいなど、要望を事前にヒアリングしてきめ細かく対応してくれるのだそう。「ロードバイクはちょっと乗っているけれど、MTBは経験がないので初歩を学びたい」といった筆者のようなパターンもアリ。

スキルアップや目標達成を着実に目指せるのが魅力のこのライディング講習、MERIDA X BASEでレンタルした自転車が使えるのはもちろんのこと、自分が所有している別メーカーの自転車を持ち込んで受講するのもOKだ。料金は1回6,600円(初級講習1時間)からで、マンツーマンでこの料金はおトク過ぎる。気になるならぜひ一度問い合わせてみてほしい。

ちなみに、ライディング講習を受けるために今回筆者がレンタルしたのは、メリダのラインナップのなかではミドルクラスのMTBである「BIG.NINE TR LIMITED」(275,000円、2時間レンタル3,300円)だ。

今回レンタルした「BIG.NINE TR LIMITED」(手前)

ベーシックなフロントサスペンション付きモデルで、手元操作によりサドルの上げ下げが可能なドロッパーシートポストを採用し、重量は約13.3kgと、このグレードにしては装備が充実していて車体も軽めなのが特徴。MTBの基礎を学ぶのにバランスが良さそうだし、手の届きやすい価格なのもありがたい。

初級向けのライディング講習、まずはMTBの基礎から

この日、講師を担当していただいたのは、国内外のロードバイクやMTBのレースで活躍した元プロライダーの品川 真寛さん。プロ選手生活で培った技術、知識、経験をバックグラウンドに持ちつつも、専門的な事柄を丁寧にわかりやすく説明してくれるので、超初心者な筆者もすんなり理解できた(頭で理解できても身体がそれについていけるかは別だ!)。

講師を担当していただいた品川 真寛さん

初級講習ということで、最初は本当に初歩の初歩、MTBのハンドルの握り方やブレーキ操作の仕方からスタート。ハンドルは腕を真っ直ぐに伸ばして、というよりは、リラックスして外側からつかむ感じ。ブレーキレバー自体が短いこともあり、1本指か2本指で操作し、他の指でしっかりグリップを握るようにする。

ハンドルを外からつかむようにして、ブレーキレバーは1本か2本の指で操作

ハンドル周りの扱い方を覚えたところで、まずは座って乗った状態でのブレーキングの仕方を学ぶ。地面に置いたパイロンを目印に「ペダルを漕いで少し加速→空走→ブレーキ」で目標にぴったり止まれるようにする。リアとフロントいずれかのブレーキを使うパターンと、リアとフロント両方を使うパターンで、タイヤをロックさせることなく狙いどおりに止まる、のだが、これが意外に難しい。

路面状況や速度のちょっとした違いで握り込む加減も変えなければならず、地味ではあるけれども自分のセンサーやブレーキングの感覚をつかむのにいいトレーニングになりそうだ。

軽く加速して……
ブレーキ
狙ったポイントにぴたっと止まるのはなかなか難しい

次は、MTBの基本の乗車姿勢となる「ニュートラルポジション」。両足のペダルの高さを地面に平行にし、その上で立ち上がる。このニュートラルポジションを取り、車体の中央(ボトムブラケット付近)に重心を作るように意識しておくことでバランスが取れ、路面変化にも対応しやすくなるのだとか。

基本となるニュートラルポジション

また、MTBにおいてはバランスを取るための身体の使い方、つまりは乗車した状態で身体を前後にどれだけ自在に動かせるかも重要だ。たとえば後ろに身体を移動することでリアタイヤの荷重を大きくしてリアブレーキの効きを高めることができ、障害物を乗り越えるときのフロントアップもしやすくなる。

身体を後方に移動させることでリアブレーキの効きを高めることが可能

反対に、前方に身体を移動することで、これも障害物をクリアするときのリアアップにつなげやすくなる。こうした方法で前後タイヤの荷重をコントロールできるようにすることで、凹凸や勾配のあるコースでの対応の幅が広がるはずだ。

ここまで極端に身体を前方に投げ出すことはないかもしれないけれど、前後や上下の重心移動を柔軟にできるようにしておくことが大事、らしい

バランス感覚を磨くには、8の字走行やスタンディング(スティル)の練習も効果的、と品川さん。前者の8の字については、パイロンなどを適当な間隔で置いて、それを目安に走ると良さそう。パイロンを中心に回ったり、インで入ってアウトから出たり、もしくはアウトから入ってインから出たり、片手離しで同じことをやってみたりなど、いろいろなパターンで試すのがオススメ。

2つのパイロンを中心に8の字を描くように走る

後者のスタンディングスティルは、ニュートラルポジションでその場から動かずに立ち続けるというもの。どちらの足を前にするか、ハンドルをどちらに切るかに関わらず、どのパターンでもまんべんなくできるようになりたい。8の字も含めて、これらは広いスペースが必要ないので日常的に練習できそうだ。

スタンディング(スティル)は自宅の駐輪場スペースでもできるので、日課にしてもいいくらい!

「プッシュ」と「プル」でMTBにおける荷重の大切さを学ぶ

ブレーキングや乗車姿勢、8の字などの基礎的な乗り方を身に付けたら、次は屋外のパンプトラックへ。MERIDA X BASEから数百メートル離れた河川敷にメリダの管理する練習用コースがあるので、そこで本格的なオフロードライディングが楽しめるのだ。

メリダが管理する河川敷のコース

……と思ったら、6月にあった豪雨で水没して流されてしまい、荒れ果てた状態になってしまっていた。8月に整備し直す予定とのことで、講習当日の7月はパンプトラックのコブがなだらか、かつ雑草も伸び放題。原則コース使用不可となっていたものの、今回は品川さんの判断のもと一部を使用できることになった。現在はすでに整備も終わっているのでコースも使用できる。

初級者として、ここで学ぶ重要なポイントは「プッシュ」と「プル」の動作。そのために必要なものとして「レディポジション」というものがある。ニュートラルポジションから姿勢を低くして「構え」の状態にするのがレディポジションで、こうすることでたとえば急坂のような路面変化があったときにも、腕の伸び縮みでバランスをとって(重心を崩さずに)対処できるようになる。

路面状況に応じたアクションを取りやすくなる「レディポジション」も基本中の基本

それを踏まえて、コース内の凹凸がある場所、たとえばコブが連続して続くパンプトラックではどのように走ればいいのだろうか。凹凸が大きいセクションではペダルが漕げない(漕ぎにくい)ので、そのままでは急減速してしまう。ペダルを漕ぐ以外の方法でスピードを維持、もしくは加速して、スムーズにクリアしていきたいところだが……。

そこで、コブに向けてはレディポジションをとり、フロントタイヤがコブの上り坂に入ったときは次第に腕を縮めるようにしていく「プル」の動作を行なう。そして、コブの頂上を乗り越えて下り坂に入ったときは腕を伸ばす(ハンドルを斜め下に押しつける)ようなイメージで「プッシュ」する。

コブを乗り越える前は「プル」のイメージで、乗り越えたら「プッシュ」

これをスムーズにこなすことで、ペダルを漕がなくてもスピードを落とさず、むしろ加速することも可能になる。そのうえで、リアタイヤがコブの下り坂に入ったときにペダルを通じて下半身で「プッシュ」することにより、さらに加速力を増すことができる。つまり、腕によるプル&プッシュと、脚を使ったプッシュ(厳密には脚でもプルを意識するのかもしれない)を組み合わせて走るわけだ。

コブをクリアするたびにどんどん加速していく品川さんのお手本となる走り

いきなり腕と脚の両方を使おうとすると混乱するので、最初は腕のプル&プッシュから試すも、なかなかタイミングが合わない。5、6回走ってうっすら感覚をつかめた気がしたので、次に脚も使おうとしたら完全にちぐはぐな動作になってコブの途中で止まってしまった……。

プッシュするタイミングで合図をもらいながら走るも、うまくできない!
うまく! できない!

おそらく10回以上往復して、一応は見られる程度の走りにはなったようだけれども、この1時間の講習のなかでプッシュやプルをモノにするのは自分には難しかった。時間をかけて何度も練習する必要がありそうだ。

遂にオフロードコースを走る! けど、やっぱり基礎がまだ足りないかも

冠水して砂などが流されてしまったオフロードコース

最後は、雑草伸び放題で通常より難易度が上がっている気がしないでもないオフロードコースにチャレンジ。おそらく筆者のスピードに合わせて先導してくれている品川さんの後ろから、ここまでで学んだニュートラルポジションやレディポジション、プッシュとプルの動作を応用して(いるつもりで)必死に追いかける。

一本橋を頑張って走る
きつい! けど楽しい!

楽しいことは楽しい。でも、学んだことが全然活かせていない消化不良感もある。ジャンプポイントが1つか2つあったけれども、ちっとも気持ち良く飛べない。基礎だ、基礎がまだまだできていない! そんな思いをさらに強く感じさせられたのが、実は編集部がもう1台レンタルしていたメリダのフラッグシップモデル「BIG.NINE 10K」(1,595,000円)で、最後の1周を走ったときのことだ。

わずか8kgというフルカーボンの超軽量な車体で剛性感が高く、しかもマスが中央部に集中していて重心が低く感じるせいか、荒れた路面で暴れやすくなるわけでもない。初心者のはずの筆者でもミドルクラスとの違いにはっきり気付ける。これはたしかにスゴい車体だ。しかし、その圧倒的性能のおかげで無茶な扱いをしてもさらっと走れてしまうので、乗り方がどんどん雑になっていくのが自分でもわかる。

約160万円のMTBでも走ってみたけれど……

車体のポテンシャル頼りになってしまって、なんとかポジションとかプッシュプルとか、全部頭から吹っ飛んでしまう。これではいけない。筆者のレベルでいきなり約160万円のMTBを与えられても、まともに乗りこなせないのはわかった。その意味ではミドルグレードくらいがちょうどいいのかもしれない。やはり基礎、基礎が全てを解決するのだ……! と強く思わされた1日だった。

MTB、もっと乗りこなしてやるぞ!!

当日は35℃を超す酷暑だったこともあり、コースを数周したところで講習は終了となった。本当はもっと走っていたかったけれど、筆者の場合、ロードバイクとかトライアルバイクとかエンジン付きのバイクとかも一応経験しているので、特に乗り方の基本は共通しているところもあるように感じつつ、それらをあらためて頭で理解できたのはすごく良かったなあ、と思った次第。

後半のポジションの使い分けやプッシュとプルの活用は、まさにMTBならではの新鮮な経験だった。一朝一夕にはそうそう身に付かないようにも感じるけれども、いつかは使いこなしてやりたい、MTBをもっと乗りこなしたい、という気持ちがますます高まってきた。

このあたりの基本をマスターできれば、車体重量が大きくなるフルサスモデルやe-MTBに乗ったときにも少なからず助けになるはず。これからどんな風にMTBを楽しんでいけるのか、ワクワクが止まらない!

日沼 諭史

モバイル、ガジェット、エンタープライズ系サービス、旅行、クルマ、バイク、オーディオ&ビジュアルなどなど、なんでも書くライターみたいなことをやっている人。