e-bike試乗レビュー
e-MTBでダウンヒルへ! 富士見パノラマリゾートは"挑戦"したい初心者にもちょうどいい絶妙コース
2025年7月31日 09:05
シマノのMTB用新型コンポーネンツ「XTR」のお披露目があった日の前日、下見というわけではないけれど、実は同じ富士見パノラマリゾートに来ていた筆者。目的はe-MTBでダウンヒルに初挑戦することです。
YouTubeなどで海外のダウンヒルレースはたびたび見ていて、その狂気的な映像に「めっちゃ怖い」と「めっちゃ楽しそう」という2つの感情がごちゃまぜになったりしつつ、いつかはダウンヒルをやってみたい、という憧れはずっとありました。
でも、近場にそんな山はなかなかないし、あったとしても「山の上まで自転車を運ぶのって辛すぎんか?」などと思っていました。が、遂にその夢が実現することに!
5,500円ぽっきりで無数のダウンヒルコースが走り放題
長野県にあるスキー場の富士見パノラマリゾートは、雪のない4月から11月のグリーンシーズンは「富士見パノラマリゾート MOUNTAIN BIKE PARK」となり、ダウンヒルやトレイルライドを楽しめるコースに様変わりします。平日は4人乗りのゴンドラが、休日はそれに加えて2人乗りのリフトが稼働し、MTBを乗せて一緒に山の上まで楽に移動できるのです(正確な運行スケジュールは公式サイトにあるので事前にチェックしておきましょう)。
ゴンドラだと頂上まで行くことができ、すべてのダウンヒルコースを走ることが可能。1日に何度でも利用できるゴンドラ1日券は大人5,500円で、他に3回券(同4,700円)や1回券(同1,900円)、さらにはシーズン券(同62,000円)があります。今回は初めて、かつ昼過ぎからのスタートということで3回券を選びましたが、朝から遊ぶなら1日券がおトクそうです。
それはそうと、ゴンドラやリフトにMTBを乗せられる、というのを見て、「なるほどそういう手があったかー」と感心した次第。筆者が長年思っていた「山の上まで自転車を運ぶのって辛すぎんか?」という疑問はあっさり氷解しました。これならスタート地点へ行くまでに疲れてしまうこともないし、コースを走ることに100%体力を注ぎ込めそうです。
さて、富士見パノラマリゾートはゴンドラやリフトのある麓から頂上までの標高差が700メートル以上もあります。その間のスキーゲレンデ内外にダウンヒルコースが縦横無尽に張り巡らされている、というようなイメージです。コースは主に初級・中級・上級の3つのレベルに分けられていて、途中にあるいくつかの分岐地点でルートを選んで下ることができます。
たとえば、最初は腕試しで初級コースをたどり、ちょっと物足りないかな、と思ったら中級や上級のコースに入る、といったことも可能になっています。番号が振られたルートは計16あり、分岐地点でルート変更できることも考えると、無数のコースバリエーションを楽しめるというわけ。
初級コースとは到底思えないハードさに音を上げるも……
しかし、筆者のような初心者がいきなり中・上級コースに入るのはおすすめしません。というか、コースの入口から軽く中をのぞき込むだけで、きっと恐怖を覚えることでしょう。
上級コースともなると、冗談のように狭くて急な下りに、冗談のように極端な段差、そして荒々しく転がる岩、岩、岩。まさしく、深淵をのぞくとき、深淵もまたあなたを……みたいな地獄(主観です)が続いているのが見えます。本能的に「これは入っちゃだめなヤツだな」というのが分かるので、自然と初級コースへと足が向かうはず。
そんなわけで、初心者らしく初級コースからスタートした筆者。しかし、最初のうちこそなだらかな平坦や緩い下りが続くものの、それはあくまでもウォーミングアップだと言わんばかりに急速に道が狭くなっていきます。転んだらタダでは済まない砂利道に、容赦なく連続する段差、ちょっとでもバランスを崩せば谷底に真っ逆さまな崖っぷちも……。
本当にこれ、初級コースなの? とガクブルしながら、スピードを抑えて慎重に走らせていきます。e-MTBの車体の重さによる操りにくさも、もしかしたら怖さに多少は関係していたのかもしれません。想像以上の激しさに、中間地点で途方に暮れそうになって、3回券じゃなくて1回券で良かったのでは? なんてぼやきつつ、麓までなんとか無事に下りることができました。
ちなみにこの日、やや雲が多いながらも雨は降っておらず、気温は低すぎもしなければ高すぎもしない、はっきり言って超快適なコンディション。せっかく3回券にしたのだから、せめてもう1回は走りたい、ということで再びゴンドラで頂上へと向かいます。
少しの背伸びが、e-MTBの理解を深めるきっかけに
こうして諦めずに走ったのが良かったのでしょうか。1回目は緊張で怖く感じていたところもあったのか、2回目は序盤をリラックスして難なくクリアでき、分岐地点では「中級コースにチャレンジしてみようか」と考えるくらいまで気持ちに余裕が出てきました。
そして、この中級コース(とルートの都合で上級コースの一部)を走るという選択が、意外にも効果的でした。当然ながら相当に厳しいコース設計です。初級より一段、二段は道幅が狭くなりますし、前輪の直径と同じくらいあるのではないかと思えるほどの段差がたびたび現れます。え? 普通に無理では? なんて泣き言を言いたくなる場面もしばしば。
なのですが、それらをクリアした後、終盤に初級コースに戻ってみれば、明らかに世界が変わって見えた……というと少し大げさですが、怖さを一切感じなくなっていました。荒れた路面も、滑りやすそうなバーム(バンク付きのコーナー)も、むしろ踏み込んでいけちゃいます。
ダウンヒルにおけるe-MTBは、どうしてもその車体の重さがライン取りに影響してしまうように思います。軽快に段差をクリアしていく、というわけにはいきませんし、タイヤはしっかりグリップしてくれるものの、慣性が大きくなるので制動距離は長くなりがちです。
その分スピードは控えめに、慎重に走る必要がありますが、中級コースの激しさに慣れたことで自分のe-MTBの限界というものが少し理解できた気がします。これくらいなら突っ込んでいける、これくらいなら滑らない、転ばない、こういう姿勢を作れば安全に段差がクリアできる、などなど。それによって、ライディングがますますおもしろくなってきました。
e-MTBともっと仲良くなりたいなら、ダウンヒルが効果的かも
MTBやe-MTBの経験がまだまだ浅い筆者ではありますが、そんな風にe-MTBの走らせ方について急速に理解が進んだのは、ちょっぴり危険と隣り合わせなエクストリームスポーツのダウンヒルだからこそ、なのかもしれません。e-MTBは車体が重い分、安定感もあるわけで、無理をしない限りは比較的安全に楽しめる、というメリットもあるのではないでしょうか。
だからといっていきなり中・上級コースに行くことはやはりおすすめできないのですが、初級コースを走り切れたなら、中級コースもそこまで怖がる必要はありません。自然の中を駆け抜け、ゲレンデを横切る初級コースの大パノラマ感は最高。そして、中級コースの難関エリアをスムーズに走り抜けたときの達成感は何ものにも代えがたい。初心者ながらもe-MTBを100%フルに楽しめている、と実感します。
その意味で、富士見パノラマリゾートのコース設計は絶妙のバランスと言えるかも。みなさんも、もし自分のe-MTBとまだ仲良くなりきれていないなあ、と感じるようなら、一度ダウンヒルにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。まずは初級コースを、それでも余裕がありそうなら中級コースに挑んでみることで、e-MTBとの一体感がますます強くなるはずです。




























