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大雨のダウンヒルでシマノ最新電動コンポ「XTR」を試乗したらスゴすぎた。いつかe-MTBにも!!
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- シマノセールス
2025年6月27日 09:00
自転車パーツといえばシマノ。筆者の自転車には後付のシマノパーツがゴリゴリに装着されています。なので、そんなシマノ製品の「絶対に注目の新しいものを試せるよ」という編集部からの誘いがあれば、乗らないわけにはいきません。
詳しいことをあまり尋ねることなく、連れられてきたのは、長野県にある富士見パノラマリゾート。季節は夏に近づきつつある6月ということで、当然ながら雪は1ミリもなく、スキーができるわけでもありません。というか、前夜からずっと雨が降り続いており、当日の予報では強雨や雷雨になるかもしれないとも……。
そんな悪天候のなかでシマノのスタッフの方がせっせと並べていたのが、MTB用コンポ「XTR M9200」シリーズ(以降、XTR)を装備したMTBでした。およそ7年前に登場したXTR M9100シリーズの後継となる最新モデルです。
e-bike Watch的に、今回のモデルチェンジにおける一番の注目ポイントは、電動化されたフルワイヤレスの変速機「Di2」システムでしょう。ロードバイク用のDi2については、筆者自身試したことはないものの評判の高さはよく耳にします。そのMTB版となるXTRがどんなものなのか、Di2初体験の筆者ではありますが、試乗できるということなので、実際に走らせて確かめてみることに。
……って、この大雨の中? 山の中で?? しかもダウンヒル??? なんかヤバそうな予感しかしませんが、最新の電動コンポを試せるのなら、やってやりましょう!
新しくなった「XTR」とは?
スキー場の中腹あたりに向かうリフトにMTBを載せて、のんびりゆらゆらと上っていきます。身体を叩きつける雨の勢いはますます激しくなり、標高も不安もどんどん高まってきますが、到着までは少し時間がかかるので、ここで最新のXTRについて簡単に紹介しておきたいと思います。
XTRは「シリーズ」と称しているとおり、複数のパーツからなるMTB向けのコンポーネンツ群です。たとえば電動シフトのDi2システムについては、シフトスイッチの「SW-M9250IR」と、ワイヤレスリアディレイラーの「RD-M9250」のセットで実現しています。
他には、ブレーキシステムとしてレバーの「BL-M9220」とキャリパーの「BR-M9220」などがあり、クランクセットの「FC-M9220」、カセットスプロケットの「CS-M9200-12」、さらにはホイールやハブ、ペダルもシリーズとしてラインナップ。
従来モデルのM9100シリーズなどと混在させて使用できる部分もありますが、新開発の低粘度ミネラルオイル仕様となっているブレーキ周りについては、オイルシールの違いなどから新旧の混在は避けるべきとしています。いずれにしろ、新シリーズをフル装備することで車体のポテンシャルを最大限に発揮できることは間違いありません。
電動シフトシステムを詳しくチェック
今回主に試す電動シフトシステムについてもう少し詳しく紹介したいと思います。まずはシフトスイッチの「SW-M9250IR」から。
シフトスイッチは標準的にはハンドル右の手前側に取り付ける形になっていて、ちょうど親指が届くあたりにある2つのパドル(ボタン)でシフトアップ/ダウンを切り替えられます。パドルの向きは工具を使って調整でき、ライダーの好みに合わせた操作性を実現可能です。
パドルは1段階押し込むことで1段変速、そこからさらに押し込んでもう1段変速できる構造。機械式(ワイヤード)のシフトスイッチにも同様の機能を持つものがありますが、XTRでは押し込み続けると連続的に変速することも可能です。
これらのシフト動作については、スマホアプリと連携することで設定をカスタマイズできます。パドルの横にはもう1つボタンがあり、サイクルコンピューターなど他の外部機器と連携して、その機能を実行するショートカットボタンとして利用できるようにもなっています。ハードウェア的にもソフトウェア的にも、ライダーの好みに合わせられるというわけ。
次に、シフトスイッチと連動するワイヤレスリアディレイラーの「RD-M9250」。こちらは2つのモデルが用意されていて、一般的なサイズのロングケージ(10-51Tカセットスプロケット用)、もう1つがミドルケージ(9-45Tカセットスプロケット用)となっています。
ただ、おそらく多くのMTBユーザーにとってメリットがあるのはミドルケージのほう。本体が縦に短くなっている分、路面とのクリアランスを大きく取ることができ、衝突・破損のリスクを減らせるからです。
ディレイラー本体の形状としても、前方からの衝撃を受け流すようなデザインになっているのに加え、側面から衝撃を受けた際には内側に引っ込み、モーター動作によってすぐに元の位置に戻るしくみも取り入れています。これにより強いペダリングに耐えられる剛性と、衝撃を逃がす柔軟性を両立させているとのこと。
電源は充電式の専用バッテリーです。310mAh容量のリチウムイオン電池は、いったん満充電にすると、一般的なライディングで競合製品を100km超上回る最大340kmもの距離で稼働し続けるとしています。しっかり保護された形でディレイラー内に挿入されていますが、脱着は片手で簡単に行なえ、取り出したバッテリー自体はかなり軽量でした。
ちなみに、このRD-M9250はあくまでもMTB向けのパーツ。e-MTB用のリアディレイラーとして「RD-M9260」というものがラインナップしていますが、今のところ海外市場のみでの販売となっています。日本国内での販売は残念ながら予定されていないのだそう。
XTRとともに大雨のダウンヒルコースへ
というわけで、MTBと筆者を乗せたリフトが終点に到着しました。天候は相変わらずの雨。麓よりも強く降っており、すでに全身ずぶ濡れですが、ここからが本番です。撮影係の編集スタッフと一緒に、どんよりした顔でまずは初心者向けのダウンヒルコースに向かいます。
ダウンヒルは文字どおり下りがメインですし、特に筆者のようなスピードを出さない初心者だとシフトチェンジする機会はあまり多くありません。ですが、試しにシフトアップ/ダウンしてみると、あっという間にその気持ち良さのとりこになってしまいました。
パドルは軽い力で操作でき、コリッと押せばサクッと瞬時にシフトチェンジが完了します。押し心地としてはかなりのショートストロークで、次々に切り替えていける小気味良さはクセになりそう。
機械式だとシフトチェンジ時に(とりわけシフトダウン時は)指先で力加減の調整が必要だったりしますが、電動ワイヤレスなXTRではそんなことに気を使う必要はありません。緩い下りや平坦で加速するときも、唐突に現れる上りでも、必要に感じたタイミングでパドルを押せばよし。空走時間を最小限にし、ペダリングを無駄に休ませることなく、スムーズに走り続けられます。
そして、シフトアップとダウンの両方で、ダブルアクション(2段変速)や長押しによる多段変速ができる点は、ダウンヒルでの有効性を強く感じました。路面状況が頻繁に変化する山道では、そもそも1段ずつ変速していくのでは間に合わなかったりするからです。
下っていたと思えば、次の瞬間には上りになり、すぐに再び下る、みたいなことが繰り返されるなか、加減速を上手に切り替えていくためにはこの2段変速や多段変速は不可欠。軽々と、狙ったタイミングでコリコリとシフトチェンジしていけるXTRは、コースをクリアするのにイッパイイッパイで、シフトにまで気を回しにくい初心者にこそ必要なアイテムに思えます。
そして、本題からは少し逸れますが、もう1つ驚いたのはブレーキ性能の高さでした。
何度も書いているとおりこの日は大雨で、当然のことながらダウンヒルコースも全域に渡ってウェット。水たまりは説明するまでもなく、コースに沿って川のように流れているところもあれば、ヌルヌルのダート路面も、大きめの石がテッカテカになって転がっているようなところもありました。
慌ててブレーキをしようものなら一瞬でタイヤを滑らせ転倒し、怪我を免れないコンディション。しかしアップデートされたXTRのブレーキシステムは非常にコントローラブルで、タイヤが滑り出す直前のところを容易に探って見極めることができ、その場面における最大限の制動力を発揮させられます。
見るからに滑りそうな濡れた岩の上であっても恐れることなく減速できたのは、自分自身でもびっくりしました。「こんな路面で走ったら確実に転ぶぞ」と震えながらのスタートでしたが、いつの間にかそんな恐怖はどこへやら。
試乗したMTBの素の車体性能の高さもありそうですが、あまりの悪天候で当初は「1本走ったら終わりにしたい……」と弱気だったのに、麓にたどり着くやいなや「次、もう1本行きましょう!」とかえって元気になっていました。雨天のダウンヒルでも1日中遊んでいたいと思えるほどで、XTRのスゴさ(とダウンヒルの楽しさ)を思い知らされた気がします。
新XTRを装着したe-MTBの登場に期待大!
ワイヤレスリアディレイラーのe-MTB用モデルが国内販売を予定していない、というのは返す返すも残念ではありますが、電動シフトをはじめとするXTRの性能と、それによるライディングの楽しさ、快適さは確実に筆者の記憶に刻まれました。さらに進化したe-MTBが各メーカーから登場することに期待したいところです。
(提供:シマノセールス)