e-bike試乗レビュー

海、空、飛行機、鉄道、工場……多摩サイ出発の都市部e-bikeサイクリングへ!!

ある日、e-bike部メーリングリストにて清水氏が「こういう場所を巡るサイクリングってみんなあんまり興味ないですかね? 個人的には好きで、多摩サイ混んでるときとか飽きたときとかに巡るんですが」というメッセージとともに送ってきたのが、上の写真。うっ……コンビナート地帯!!!

そんなん興味あるに決まってんじゃないスか!!! と、即座かつ前のめりに反応した筆者でした。

清水氏いわく「道によってはトラックやダンプも走ってますが、案外見どころがあるので、よければご案内しますけど」と。「行く行く絶対行く!!!」と、また秒で反応した筆者なのでした。

そしてコンビナート地帯e-bikeサイクリング決行。多摩川の河口付近、羽田空港や川崎浮島付近を巡るサイクリングです。清水氏は「人力自転車でも巡れますが、ひととおり巡ると50~70kmくらいの距離があります。見物して楽しめる地点も多いので、ストップ&ゴーが頻発しますし、橋の上とか風の強いエリアもあるから、やはりe-bikeが快適でいいですね」といいます。

そろそろ新しいe-bikeが欲しいなあと思っている筆者なんですが、それもあって今回はXROSS(クロス)のe-MTB「DX512A」に試乗しつつのサイクリングです。特徴的なハンドル形状に興味津々。

XROSSはe-bike専業の国内メーカー。2013年からe-bikeを発表し続けています。XROSSブランドe-bikeは現在9車種ありますが、そのうちの一車種がe-MTB「DX512A」。ハードテイル(サスペンションがフロントのみ)の“アドベンチャーツアラー”です。どこでも走れる冒険向けe-bike
これがDX512Aのハンドル。う~ん斬新。一見突飛ですが、手への負担が少なそうです
ちなみにドライブユニットはハイエンドモデルのシマノSTEPS「E8080シリーズ」を搭載しています

多摩川サイクリングコースを軽く流し脚慣らし

スタート地点は、神奈川県川崎市にある多摩川交流センター(Googleマップではココ)。まずは多摩川サイクリングコース(多摩川サイクリングロード)を少し走ります。“多摩サイ”で知られるサイクリング向けの道です。

多摩川交流センター前。多摩川サイクリングコース脇にある多目的スポットで、トイレやシャワーや休憩スペースがあったり、飲み物が買えたりします。目印になるのでサイクリストの待ち合わせ場所にもなっています
多摩川交流センターのすぐ東にある多摩川大橋。多摩川を挟んで神奈川県と東京都に分かれています。橋の上からは富士山も
多摩川の向こうに冠雪した富士山が見えました
多摩川サイクリングコース(左岸/東京側)からの眺めはこんな感じ。空が広い!! 対岸には、高くそびえ立つ赤白のポールが見えますが?
アール・エフ・ラジオ日本(1422kHz)の川崎幸放送局送信空中線だそうです。つまりラジオ放送用のアンテナ(Googleマップではココ)。この右隣には川崎競馬場の練習馬場があります
また少し走ると、おっ、古めかしい建造物が
あらカッコイイ橋! 大師橋です(Googleマップではココ)。この橋を渡って川崎側に行くと、川崎大師があります
徐々に河口に近づいてきます。川幅が広くなってきました
釣船店もちらほらと
そして多摩川サイクリングコースの東京側・河口側の端にあたる旧穴守稲荷神社の大鳥居に到着(Googleマップではココ)。スタート地点から約8kmです
すごい大きな鳥居を想像していました

なーるほど、どこも景色がイイからつい停車して眺めたくなります。こういう観光サイクリングには、やはりe-bikeがいいですね。ストップ&ゴーし放題でも疲れません。河川敷や橋の上は風が強いことも多々ありますし

でも、単に多摩川サイクリングコースを走っただけのような……と思ったら、ここからが「お楽しみ」なんだそうです。大期待!!

誰もいない!! 羽田空港周辺サイクリングが愉快

大鳥居から羽田空港方面へ向けて再度走り出します。多摩川河口沿いの道ですが、物流のトラックは少々走っているものの、人けが非常に少ない! 「我々以外誰もいない」ということが多かったりします。でも迫力ある風景が広がっていたり、迫力あるものが現れたり。意外なほど愉快に走れます。

大鳥居の先にはソラムナード羽田緑地というスポットが(Googleマップではココ)。トイレがあったり展望テラスがあったり。けっこうキレイに整備されていますが、平日だからか人がほとんどいない! 不思議な爽快感があるスポットです
右には多摩川河口が。川沿いの遊歩道を歩くこともできます(Googleマップではココ)。左に見えるのは多摩川スカイブリッジ。隣の島と行き来できるようになる橋で、2022年に開通予定だそうです
ホントに人がいません(Googleマップではココ)。このサイクリングは平日でしたが、土日も人やクルマが少なめでオススメだとか
多摩川左岸河口を走って行くと、左手に羽田空港、前方には東京モノレールが見えます
東京モノレールを間近で見ることができます。一種の絶景に感謝のポーズをとる筆者(Googleマップではココ)。ちなみにこの道、歩道は広く、自転車道もあります。でも、だれもいな~い!
東京モノレールはわりと頻繁に通過しますので、撮影スポットとしても楽しめそうです。モノレールが頭上近くを通過するポイントもあります(Googleマップではココ)
こんな感じで、閑散としているけれど走りやすい道が続きます。とても爽快!

さらに前進。すると「えっ? ココって、通っていいの?」という雰囲気があるトンネルに突入しちゃいました。もちろん通っていいんですが、誰もいないし、ちょっとドキドキする感じ。環八通りなのだそうです。Googleマップではココからトンネルに入り、ココに出て行く感じ。トンネルの上には滑走路などがあるようです。

トンネルを過ぎて左に曲がると「ここは羽田空港内部なのか?」と思うほど、空港の施設が間近にあるエリアに出ました。東京モノレールの「新整備場駅」です。

東京モノレールの「新整備場駅」前(Googleマップではココ)。周囲はすべて空港関連の施設ですが、実際は空港外となる場所です。こんなところまでサイクリングで来ることができる!
フェンスの向こうは空港内。飛行機が見えますが、もっとよく見えるスポットも多々あります
真横に空港の施設を眺めつつサイクリング(Googleマップではココ)
飛行機がたくさん見えます
離着陸する飛行機も頻繁に見ることができます。望遠レンズ持ってくればよかった!

クルマで来ると通り過ぎるしかなかったりする道でも、自転車だとちょっと寄って見物するようなことが可能。羽田空港付近は自転車で通れる道が意外に多いので、航空ファンにとっては非常に楽しいサイクリングになるかもしれません。空が広大だし、道が広いし、誰もいないし。

対岸から羽田空港を眺めてみる

今度は羽田空港の対岸、多摩川の河口部右岸にある公園に行ってみることに。浮島町公園というところ(Googleマップではココ)。わりと穴場の公園で、飛び交う飛行機や大型船をゆっくり眺められるそうです。

羽田空港付近、来た道を引き返します
大師橋を通り、多摩川を左岸から右岸へと渡ります
橋を渡ったら左に曲がり、多摩川堤防の上の道に入ります(Googleマップではココ)。広くてきれいな道。ここも多摩川サイクリングコースです。人がほとんどいなーい! 左側は河川敷で、降りていくこともできます
遠くに羽田空港が見えます。この道をまっすぐ進み、途中で右折し(Googleマップではココ)、しばらく進んで「キングスカイフロント入口」交差点(Googleマップではココ)を左折。浮島通りを4km弱進むと浮島町公園です
浮島町公園のすぐ近くには高速道路の入口が。このすぐ左が公園です
コンパクトながらも開放感のある海沿いの公園です
対岸には羽田空港が。障害物がないので飛び交う飛行機が見やすい♪ やっぱり望遠レンズ持ってくればよかった!
飛行機が頻繁に行き交いますので、e-bikeと飛行機のツーショットも容易に撮れます

ところで、もう25kmくらい走っています。スポットとスポットの間を快速移動という感じなので、けっこう運動している感じ。ですが、今回試乗したXROSSのe-MTB「DX512A」が非常に快適。ゴツめのe-MTBなんですが、軽快に走れるし取り回しも良好。

DX512Aの詳細については公式サイトをチェックしていただければと思いますが、“アドベンチャーツアラー”と名付けられたとおり、“走破性が高い旅向けe-bike”だと感じられます。

特に好印象なのがハンドル形状とフレーム形状(ジオメトリ)、それから重心。まずは手がラクなんですね。状況に応じてさまざまな“ハンドルの握り方”ができる。手を自由に置けるので手や腕や肩が疲れにくい。

XROSSのe-MTB「DX512A」。2021年2月に登場したアドベンチャーツアラーで、ドライブユニットはシマノSTEPS「E8080シリーズ」(定格出力250W/最大トルク70Nm)。バッテリーにBT-E8010(500Wh)を採用し、アシスト継続距離は140km(ECO)~95km(HIGH)。シマノDEORE XTを中心としたコンポーネンツを搭載し、ワイドレンジの12スピードでさまざまな走行シチュエーションに対応。価格は482,900円
独自形状のハンドルバー「XROSS ADVENTURE BAR」を採用。ハンドルを交換して本格MTBスタイルにすることも可能
通常のハンドルポジション
中央手前を握った様子
中央奥を握った様子
こんな手の置き方もできます

不思議な外見ですが、とても実用的なハンドルバー。アップライトからやや前傾まで、ライディングポジションの幅も広いです。

走ってみるとわかりますが、車体サイズのわりにはクイックに旋回するのもイイ感じ。これはドライブユニットやバッテリーの位置やフレーム形状からくるものだと思いますが、思う方向にバランスよく進んでくれるというイメージです。低速でもそういうことができるので、乗車時の扱いやすさが際立ちます。

それとワイドレンジの12スピード。今回の試乗では軽いギアはあまり使いませんでしたが、登坂が得意でありつつ、スピードもそこそこ出せるe-MTBだと思います。

また、ちょっと不思議なのが「よく転がる」ということ。スピードが落ちにくいという印象がありますが、ブロックタイヤだし……ナゼ? って感じです。ハブがいいんでしょうか。ともあれ、平坦な街中をスムーズに走って行けて快適です。

もうひとつ、ブレーキがガッツリ効く。ブレーキレバーは軽い力で操作でき、コントロール性もよく、イザというときの急制動が危なげなく確実に行なえるという印象がありました。でもパーツを見ても(まあ高級なパーツではありますが)ほかの同価格帯のe-MTBと大きな違いはないのに……ナゼ? これも不思議です。

それら要素が複合したからか「体が疲れにくいe-bikeだな」と感じました。今回は久々に50km以上走行し、後半は太腿が軽く攣りそうになりましたが、でも肩や腰や背中などにはあまり負担は感じられませんでした

ともあれ、いろいろな点で「ほかのe-MTBとは一味違う」という印象になったXROSSのe-MTB「DX512A」。機会があればぜひご試乗なさってください。

[写真で見るXROSS「DX512A」]

何もかもスケールが違う! コンビナート地帯を観光サイクリング!

公園で飛行機を見つつ一休みしたら、今度はコンビナート地帯をサイクリング。公園を含んだ島のようなエリアは「浮島町」と呼ばれるひとつの町で、その大半がコンビナート地帯です。物流のトラックが行き交う目貫通りである「浮島通り」は交通量が多いですが、脇道に入るとグッと交通量が減り、また道幅も広いので、ゆったりとサイクリングを楽しめます。もちろん、数々の工場を眺めつつ♪

まずは前出の浮島町公園の南側にある、南北に走る通りから(Googleマップではこの通り)。清水氏いわく「このエリアは工場少なめですが」とのことですが、いきなりソレっぽい工場が。人は見えませんが工場は稼働しています。そして大きい。目の前にある建物は8階建のようです。全部コンビナート的な施設
フェンスに遮られて見えにくい場所も多いですが、工場自体の数がすごいので、走っていると「ステキな建物」をいくつも見られます
もくもくと上がる……水蒸気? なにを作っているんでしょう?
通りの端は行き止まり。川崎港廃油処理場の入口まで行けます(Googleマップではココ)。広々した海が見える。写真にはありませんが、風の塔(川崎人工島/東京湾アクアラインのトンネル換気塔)が見えたりも

ほかの通りに移動してみます。コンビナートの敷地や道路など、どれもスケールが大きいので、隣の通りまで移動するのにけっこう走ることになります。でも、普段はまったく見慣れない建物だらけなので、「なにあの建物!」「すごい巨大さ!」という感じで楽しく観光できます。

浮島通りにある交差点のほとんどが「コンビナートっぽい交差点名」になっていて興味深い
あっこの線路の向こう側が良さそう。え? 「浮島町駅」って……ここって駅なんですか? 線路しかありませんけど……謎です
線路の向こうの道へと入っていくと、さっそくありました! パイプだらけの建造物
そこをサイクリング。ちょっと珍しい光景かも。でも、たま~にサイクリストがいたりします
工場をバックにe-bike写真。おっ、XROSS「DX512A」、こういう場所ではとくにサマになるかも
ちなみにこの通り、こんな雰囲気です(Googleマップではココ)。見通しが超イイので安心感とともに走れます
線路や鉄道も多い。変わったカタチの車両が多く、鉄道好きでなくても楽しめます
貨物列車がけっこう走っていたりも。工場の間で物資を運んでいるんでしょうか?
真っ直ぐな線路
こちらはドラマのロケ地としても知られる「いつくしま跨線橋」(Googleマップではココ)から見た風景。線路をまたぐ橋で、自転車で通行することができます

海底トンネルを通ってむこうの島へ♪

先ほどまでは浮島町というコンビナートの島をサイクリングしてきました。このエリアにはほかにも似た島があり、別の島から浮島町を眺めることができるそうです。徒歩で通れる海底トンネルがあり、そこを使って別の島に行ける。海底トンネル? ちょっとおもしろそう!

目指す島は「東扇島」(Googleマップではココ)。「千鳥町」(Googleマップではココ)という島に、東扇島へ続く海底トンネル入り口があります。写真は千鳥町の千鳥公園(Googleマップではココ)から東扇島を見たもの
ここが海底トンネル入口(Googleマップではココ)
「海底トンネル歩道入口」とあります。歩道なので自転車は押し歩き
階段を数十段下ると、こんな感じのまっすぐな歩道があります
ずーっと歩く感じ
トンネルの長さは約1km。出口までけっこう遠い
海底トンネルから出て東扇島に到着(Googleマップではココ)。写真の左端に見えている建物付近に、先ほどの海底トンネル歩道入口があります
島には船が係留されていたり、公園があったり
東扇島の「わんわん広場」(Googleマップではココ)から、コンビナートがあった浮島町を見た様子。海沿いのコンビナート地帯であることがよくわかります

ん~興味深い。島から島への海底トンネルの約1kmを、e-bikeを押して歩くのはちょっと疲れます(とくに階段の上り)。でもトンネル内の雰囲気も、島からほかの島を見た感じも、なんだか異次元。非日常的なおもしろみがある体験ですので、ご興味あらばゼヒ!

予想外に充実した工業地帯サイクリング♪ 次回は夜景で!!!

観光したり島に渡ったりしていたら、そろそろ日が傾いてきました。途中、川崎大師に寄りつつ、今回のライドは帰途となりました。

総じて満足度の高いサイクリングでした。初めて見る風景がたっぷり。工業地帯は道も広いし、道を選べばクルマも少ないし、サイクリングの穴場かもしれません

日が傾いてきました。そろそろ帰途へ
川崎大師もチラリと見物

帰途、清水氏いわく「そうそう、工場とか多摩川サイクリングコースとか、夕景や夜景もけっこうイイんですよ」と。あ、確かに良さそう。日暮れの工場とか夜間の工場とか、ぜひ見てみたいですね?。次回はぜひ、トワイライトライドやナイトライドを!

清水氏による別の日の写真ですが、夕暮れのコンビナート地帯。なんかエモーショナル!
海沿いの夕暮れも雰囲気たっぷりですね
夕焼けの多摩川サイクリングコース
日没直後の多摩川サイクリングコース

いいですね~いいですね~、夕方から夜のサイクリング。装備や安全に十分気を遣う必要がありますが、たぶんとても美しい風景を見られるハズ。また、こういた都市部のサイクリングだと、すぐエスケープできるのもいい。トイレが点在していますし、コンビニなどで補給も容易だし、万が一怪我をしてもすぐに手当できるのも都市部ならでは。また近々、e-bikで都市部でのサイクリングを楽しみたいと思います

スタパ齋藤