e-bike試乗レビュー
内装ギア快適っ! バッテリー容量大幅アップ!! ミニベロe-bike「Vektron S10」を本格的カスタマイズ!!!
2020年11月27日 07:00
……愛車の「Vektron S10(ヴェクトロン)」をカスタマイズしたい……。そう、筆者のゴーストが囁いて止まらないんですっ!!!
Vektron S10はターンのミニベロe-bike。2019年初頭に試乗したら、その乗り味の良さに驚愕。筆者のミニベロ観を完全に破壊&再構築してしまった。そして物凄く欲しくなり、2019年半ばに購入。現在も非常に気に入って乗っています。
どうカスタマイズしたいのかといえば、内装ギアにしたい。内装ギアとは、後輪の軸(ハブ)の中にギアが内蔵されている変速機です。いわゆるママチャリなんかにも3段や5段の内装ギアが搭載されていたりして、ハンドル右グリップを回したりして変速します。
なぜ内装ギアに? アレってママチャリとかのギアなのでは? Vektron S10はスポーツ自転車だからマッチしないのでは? と、思いますでしょ。筆者もそう思っていたんです。
ですがッ!!! ライズアンドミューラーのミニベロe-bike「Tinker」に試乗したら、「えっこんな内装ギアなんてあるの!」と驚きました。
Tinkerで走ってみると、そのギアの使用感は他のe-bikeと同等。速くも走れますし、急坂もしっかり上れます。
そしてこのALFINEという内装ギア、すっごくスムースに変速できる。加えて変速時も走行時も音がとても静かで、ペダルを止めて惰性で走っている時はほぼ無音。スムースで静かでメンテナンス要らずで……この良さ、Vektron S10にも欲しいっ!!! というわけです
カスタマイズは自己責任、違法にならないように注意して
e-bikeのカスタマイズとなると、な~んとなく「法律違反にならない?」という気がしてきます。確かに、e-bikeはアシスト上限速度が24km/hと決まっているので、駆動系をカスタマイズしてそれ以上の速度が出るようにしたら道路交通法に抵触し、違法です。
では、ギアの交換はどうなんでしょう? これは車体(メーカー)によって異なります。
例えば車速センサー。Vektron S10の場合は、タイヤの回転数を検出して走行速度を算出しています。ギアを別のものに交換しても、タイヤの回転数から算出される走行速度は変わらないので、アシスト上限速度が変わることもありません。なので道路交通法に抵触せず、合法です。
ただ、車体(メーカー)によってはギア交換で最大アシスト速度が24km/hを超えてしまう場合も考えられます。なので、ギア交換して違法にならないかどうかは、販売店やメーカーに問い合わせて確認してみてください。
カスタマイズについてもう少し考えてみましょう。例えばタイヤ交換です。
基本的にはタイヤ周長(外周の長さ)が変わらなければ、タイヤ交換をしても最大アシスト速度は変わらず道路交通法には抵触せず、合法です。一方で、タイヤサイズを変更するなどしてタイヤ周長が長くなった場合、最大アシスト速度が24km/hを超えてしまう可能性があり、違法になる可能性があります。
Vektron S10の場合、タイヤサイズの変更は現実的ではありません。より大きなタイヤを装着するための空間的余裕がないからです。
しかし、同じ径のタイヤでもより太いものを装着すると、タイヤ周長が伸び、最大アシスト速度が24km/hを超える可能性があり、違法になる可能性があります。極端な話ですが、空気をパンパンに入れてタイヤ周長が少し伸びても違法になる可能性はあります。
タイヤ周長が変わったことで違法になるかならないかは、これもまた車体(メーカー)次第。完成車メーカーにより、24km/hギリギリまでアシストする設定にしていたり、24km/hよりやや低い速度をアシスト上限としていたり、それぞれ異なります。ので、タイヤ周長がどの程度伸びたら違法になるかは、車体(メーカー)の設定次第というわけです。
なので、タイヤ交換などする場合も、違法にならないかどうかを販売店やメーカーに問い合わせるのが無難です。なお、今回のVektron S10のギアカスタマイズについて販売店に問い合わせたところ、「自己責任にはなるが、特に問題ない」との回答をいただきました。
話を戻しましょう。Vektron S10のギア交換カスタマイズが違法でないことはわかりましたが、他に何か問題は起きるでしょうか?
ひとつ考えられるのが、車体が型式認定が外れることによる影響です。Vektron S10の部品を当初のものから別のものへ換えると、メーカーが取得したVektron S10の電動アシスト自転車型式認定から外れる車体となってしまいます。
この「型式認定」とは、自転車メーカーなどが電動アシスト自転車の型式について国家公安委員会の「認定を受けることができる」という制度。法的な取得義務はありません。大雑把に言えば「このe-bikeは国が違法でないと認めたe-bikeですよ」といった認定です。「怪しくない合法のe-bikeなんだね」と、消費者が安心して買えることを示している認定だと思います。
さて、型式認定から外れたVektron、その後に起きるかもしれない問題はなんでしょう? 例えばメーカー保証が受けられなくなることです。
今回のVektron S10カスタマイズの場合、内装ギア化するということで、後輪やドライブトレインコンポーネンツが大きく変更されます。場合によっては、ドライブユニットの高出力に耐えられずにスポークやホイールやチェーンが破損するかもしれません。そして転倒して怪我をするかもしれません。
そうなった場合、型式認定から外れている車体は基本的にメーカー保証が利きません。型式認定が外れた車体にトラブルが起きても、基本的にはメーカーは助けてくれない、ということです。これはe-bikeに限らず、普通の自転車でもモーターサイクルでもクルマでも同様のことです。
型式認定が外れた時に考えられるe-bikeオーナーの不利益は、可能性という話においてはたくさんあります。ハンドルを換えても、グリップを換えても、ペダルを換えても、それが「購入当初のもの(つまり型式認定を受けたもの)と同一のものではない」となったら型式認定から外れてしまいます。
なので、こういったカスタマイズをする場合は、技術力のある信頼できる専門店にパーツやカスタマイズ方法を吟味してもらうことが重要です。カスタマイズは他者の保証はない自己責任の行為です。もしかしたら起きるかもしれないトラブルは、結局自分にふりかかってくるわけですから、なるべく危険の少ないカスタマイズを行なってもらうことが非常に重要です。
そういうショップでギア交換などのカスタマイズを行なってもらえれば、後のトラブルにも対処してもらえるでしょうし、メンテナンスやさらなるカスタマイズも安心してお任せできます。e-bikeを扱っているショップなら、e-bike独特のトラブルにも対応してくれると思います。
技術力がある信頼できるショップを探し、そのショップと良好な関係性を保ちながら、カスタマイズやメンテナンスをお任せする。これが非常に大切だと思います。
ただし、そうしても、カスタマイズを依頼するのは自分。後にトラブルが起きてもやはり自己責任ということには変わりありません。
折りたたみ自転車・ミニベロ専門店「サイクルハウスしぶや」でカスタマイズ!!
技術力がある信頼できるショップ……ってなかなか見つけるのが難しいです。しかも今回のカスタマイズはe-bikeに対するもの。自転車とe-bikeの両方について知識がないと難しい作業になると思います。
で、筆者が選んだのは、都内でも有数の折りたたみ自転車・ミニベロ専門店「サイクルハウスしぶや」です。前出のミニベロe-bike「Tinker」の輸入総代理店を務めてもいて、e-bike関連仕事で何度か伺っていますが、e-bikeに関する知識・技術もバッチリのショップなんです。
良さゲなショップでしょ~。イイんですココ! ともあれ、早速相談に伺いました。
あっ田口さん、こんにちは~、いつもお世話になっておりますスタパですけど……あのぉ~Vektron S10のですねぇ、ギアをですねぇ、内装式にカスタマイズしたいんですけど。あっ、できる♪ えっ、Di2もあるんですか!!!
などとご相談を受けていただいた結果、Vektron S10に装着する内装ギアはシマノ「ALFINEシリーズ」の「Di2コンポーネンツ」の「ALFINE SG-S7051-11」に決定♪ Vektron S10が電動内装変速の凄いe-bikeに変身する予定ですっ!!!
ちなみに、Di2とはシマノの電動変速システムです。通常はレバー操作でワイヤーが引っ張られて変速しますが、Di2ではレバーやスイッチ操作により電動で変速可能。なお、Di2は「Digital Integrated Intelligence」の略です。
シマノの各種コンポーネンツにDi2対応モデルがありますが、ナンと内装ギアコンポーネンツにもDi2モデルがあってビックリ。内装ギアは停車時でも変速できて非常に便利ですが、電動化によりさらに容易に変速できますし、レバーの引き加減での変速ミスが起きることもありません。凄そう♪
ただ、お値段はそこそこしちゃいました。上の写真の11段の内装ギアだけの値段は、だいたい45,000円くらい。なのですが、これ以外にDi2シフター、ディスプレイ、バッテリー、モーターユニットなど内装ギアを実際に使うためのパーツがいくつも必要です。また、リアハブ部が丸ごと内装ギアへと交換になるので、ホイールをあらためて組み直す必要があります。もちろん工賃もかかります。
なので、な~んかあとちょっと足すと新車Vektron S10が1台買えるかも~的な金額に。でもいいんですっ!!! 愛車Vektron S10が凄いマシンになるから!!! そして名車Vektron S10も自転車であって、いい自転車には必ず「沼」が待ち構えているんですっ!!! 筆者、どうせなら前のめりで「沼」を楽しみつつ突き進みます!!!
Di2内装11スピードVektron S10、完成♪
日にちがちょっと流れ、Vektron S10カスタマイズが完了しました。「Di2 INTER-11 Vektron」です。どんなふうに変わったのか、写真と説明文で見ていきましょう。
電動内装ギアの使い心地については、ある程度走り込んでからレビューしたいと思いますが、とりあえず数キロ走ってみての印象は……もうサイコーです!!! 変速はスムースだし、音も静かっていうかほとんど聞こえないし、走行中にペダルを止めたときもラチェット音とか全然出ないし、非常にいい気分で走れます。
それと、外装式ギアと比べると、ギアがガキッと抜けるとか、入りにくくてガチャッガチャッと鳴り続けるとか、そういうのがほぼない。うっかり踏力をかけつつ変速してしまうと多少ガチャガチャと音が出たりすることはあるんですが、通常はほぼ無音か小さくカチンと鳴る程度で変速できる。とても快適です。
あと、チェーンが、たぶん、非常に外れにくい点。チェーンは一定の軌道を回っているだけなので、外れるタイミングがまずないというか、外れようがないというか、そんな印象です。
さらに、メンテナンス性が良い点。チェーンおよびテンショナーの汚れ取りと注油だけで済むので、メンテナンスがラクです。
ただ、デメリットもあり、ひとつは内装ギアの定期的なメンテナンス。ALFINEの場合は、2年に1度もしくは5,000km走行毎に1度、注射器のような器具を使って内装ギア内部のオイルを交換するという作業が必要になるそうです。車体に後輪が付いた状態で作業できるそうですが、オイルの入れ替え時にオイルの色を吟味したり、あるいはオイルを抜く力加減があったりと、やはりプロに任せたい作業です。内装ギアはメンテナンスフリーと思われがちですが、実際はこのような定期メンテナンスが必要です。
もうひとつ、内装ギアはそこそこ重いこと。やはり外装ギアのほうがトータルで軽量です。が、そこはe-bike。電動アシスト力がありますので、気にならない重さの差だと思います。
ちなみに、カスタマイズ前後で、ギア比もちょっとイイ感じに変わりました。カスタマイズ前のギア比は1.6~4.7でしたが、カスタマイズ後のギア比は1.4~5.6となり、登坂がよりラクになり、スピードがより出るようになりました。
いや~、内装ギア、イイっすわ~! 人力自転車だと重さがすこ~し気になるとは思いますが、e-bikeなら内装ギアのほうがいいんじゃないかと思うほど。大満足のカスタマイズとなりました♪
ボッシュの外付けバッテリー容量が1.67倍に!!! さらに3.3倍にッ!!!
ボッシュ製ドライブユニット用のバッテリーに大容量タイプが加わる、って知ってました? 具体的には、インチューブタイプとして容量約625WhのPowerTube 625が、外付けタイプとして容量約500WhのPowerPack 500と容量約400WhのPowerPack 400が新たにラインナップされます。2020年末に発売予定。
Vektron S10のバッテリーは、外付けタイプで容量約300WhのPowerPack 300です。で、新たに出てくる外付けタイプバッテリーの最大容量品が、容量約500WhのPowerPack 500。従来品比で容量約1.67倍。
かなりの容量アップですが、驚くのが、PowerPack 300もPowerPack 500も(PowerPack 400も)、容量以外は全部完全互換。Vektron S10をはじめとする、ボッシュ外付けバッテリー使用の各e-bikeで、従来より容量が1.67倍に増えたPowerPack 500を使えちゃうんですっ♪
もうひとつ、ボッシュのドライブユニットは、容易にバッテリーをデュアル化することができます。必要なのはデュアルバッテリー用ケーブルとソフトウェア的な設定だけ。
しかし残念ながら、日本ではこのデュアルバッテリー用ケーブルは発売未定です。う~ん、Vektron S10に新型PowerPack 500を搭載して、さらにそれがデュアルバッテリーだったら……と一瞬夢が膨らんだのになぁ。実に残念。
と思ったら、特別にダブルバッテリー用ケーブルと2本の新型PowerPack 500を使わせていただけることに♪ Vektron S10のバッテリー容量が、PowerPack 300→PowerPack 500になることで、約1.67倍に!!! さらにPowerPack 500×2本同時使用で約3.3倍にッ!!!
早速試してみました♪ 以下、写真と説明文で新型バッテリーPowerPack 500の威力をご紹介いたします。
もし「デュアルバッテリーVektron S10で今日中にバッテリーを使い切りなさい」と言われたら、「できませんスミマセンごめんなさい」と秒で謝る自信で満タンの筆者です。いや~大容量バッテリー凄い。デュアルバッテリー恐るべし。
でも、バッテリー搭載感はフツーです。無理して搭載しているという感じはまったくナシ。普通に自転車を使えます。
新型バッテリーPowerPack 500×2本でデュアルバッテリーだと、Ecoモードで413km、Tourモードで179km、Sportモードで179km、Turboモードで157kmの航続距離がありますので、毎日Vektron S10で走る人でも、充電の頻度がかなり下がりますよね。電池残量をあまり気にせず走れるe-bikeとして、かな~りツカエル感じがしました。
やはりバッテリー容量は正義ですね♪ 日本でも早くデュアルバッテリー用ケーブルが発売になることを期待する筆者なのでした。
てな感じのVektron S10カスタマイズ。まだまだカスタマイズしてみたいところがありますので、また改造したらレポートします♪