ぷーこの家電日記
第598回

まるで帰省のテイクアウト。実家の両親が遊びにきた
2025年12月5日 07:05
東京在住の我が夫婦、2人とも福岡出身だ。もともと帰省するのは大体年に1回か2回だった。
夫の両親の体調問題や介護問題などが出てきたここ数年は夫が福岡に帰省する回数が増え、私も時々同行したりしなかったり。2人とも仕事してるし時間は有限だし、帰省というものが若い頃のようにお気楽なものでもなくなってきた。
帰った時にやらなきゃいけないことをバタバタこなして戻ってくる夫はぐったり疲れている。「帰省中に2人で遊びに行く」なんてこともほぼできなくなった。
親も子もそんなお年頃なのである。私の両親はまだ元気。でも私はその状況に甘えて、時々電話をするくらいで何もできていない。一番大変だった時と比べると、今年は少し時間ができたので、9月の連休辺りに夏季休暇を取って久々に夫婦で私の実家に行こうと計画していた。ところが、夫が仕事やなんやで忙しくなってその計画も頓挫。
そこで、「帰るのが難しいなら、来てもらおう!」ということで、両親に「11月くらいに1週間ほど遊びに来ない?」と打診してみたら、二つ返事で上京が決まった。
私には3つ年上の兄がいて、兄家族も関東に住んでいる。なので両親が東京に遊びに来たことは数回あるけれど、今までは泊まっても大体2泊程度だし、ホテルに滞在することばかりだった。
ホテル以外に初めて滞在したのは2年前の秋。結婚50周年のお祝いも含めて、エアビー(Airbnb)で3ベッドルームある部屋を借りて招待し、兄家族も誘ってプチ旅行を楽しんだ。
兄の子が産まれてすぐにコロナ禍に入り、両親は孫にもほとんど会えていなかったので、一緒に楽しい時間を過ごせてとても良かった。我が夫婦は添乗員のような付き添いである(笑)。
その旅行の最終日は我が家に泊まってもらった。そういえば実家を出てから一人暮らし含めて25年ほど、両親が私の家に泊まったのはその時が初めてだった。
たった1泊だったけれど、居心地は悪くなかったようで楽しんでくれていたし、「えー? 泊まっていいの?」とウキウキした感じで言われて初めて、別にホテルに泊まりたかったのではなく気を遣ってホテルに泊まっていたということに私は気付いたのだ。
50年近く家族をやってきて未だに知らないことだらけ(笑)。そんなことを経て、今回初めて8泊というちょっと長めの滞在だったのである。
両親が初めてなら私も初めて。「どこに連れて行く?」とか、「ご飯は外食? 作った方がいい?」「見えるところだけじゃなくてちゃんと掃除しておかなきゃだな」とか、何からどう進めたらいいのか分からず、自分から誘っておきながらちょっと緊張した。
色々計画立てなきゃと思いながら、結構バタバタ忙しくしていたので、結局ほぼノープランのまま当日を迎えてしまった。
空港まで車で迎えに行き、初日はそのまま我が家に直行。途中で事故渋滞などもあり、予定より随分遅くなった。
急いでお風呂に入ったら早速宴会の始まり始まり。帰ってゆっくり準備する時間もなかったので、買っておいたお刺身とすき焼きというメニューで豪華に簡単にご馳走。
滞在期間中どこに行こうかという話はもちろん、どうでもいいお喋りに花を咲かせ、たくさん飲んでたくさん食べた。
帰省したわけじゃないのに、実家で過ごしているような気分で不思議。でも帰省した時はいつも私はお客さん状態で、母の手料理を食べて常に補充されている冷えたビールを飲むばかりなので、もてなし慣れていない。
「明日からのご飯どうしようかなー」なぁんてぼんやり考えていたが、それは杞憂だった。まさかの母が全て切り盛りしてくれたのだ。
休日は夫も含めて日帰りで色々観光に出かけたけれど、帰ったら母がご飯を作ってくれる。朝起きたら朝ごはんができているし、平日は私たち夫婦が仕事なので、昼間は父と2人で軽く出かけつつも、15時前には帰ってきてごはんの準備。
部屋に篭って仕事をしていると、美味しそうな香りが漂ってきてお腹が空いてくる。仕事が終わってお風呂に入ったらもう後は飲むだけ食べるだけ。
ビールは毎日買って補充してあるし、ごはんがたまらなく美味しい。家事もしなければ買い物にも行かない私は1日200歩も歩かない生活で完全に肥育されている(笑)。「私出荷されるのかな」と思ってしまうほど、なぜかゲストにもてなされてばかりだった。
母が作っているから当たり前なんだけど「お母さんの味だー!」と泣きそうになる美味しさ。私も涙腺が緩いお年頃なんだから危険!
「これ、秘伝のタレよ。何にでも使えるから分量書いておいた」と母の味を伝授してもらったり、母が料理する姿を見ていたり、もう完全に実家状態で申し訳なくなるのだけど、「色々食べさせてあげようと思ってたのよ!」と母は言ってくれる。
あぁ、これは完全に場所を変えただけの帰省だ。
私が少しは親孝行したいと思っていても、さらに上を行く両親にはもう全然敵わない。
まだまだ元気と思っていても、両親共に70代後半。ずっといつでもこんな風にやっていける訳ではない。ありがたい幸せを噛み締めつつ、忘れないように、そして元気なうちにもっと会って、色々出かけたり一緒に食べたり話したりと時間を過ごしていけたらいいなぁとしみじみ思ったのだ。
ノープランだった割には、兄家族と水族館へ行ったり、日帰りで日光に行ったり。皇居も行ったし浅草も楽しんだ。
登録有形文化財を見るなぁんて名目で銀座のライオンビルでビール飲んだり、月島でもんじゃ焼き食べたりも。平日同行できない間も、両親2人で巣鴨へ行ったり迎賓館に行ったり、動物園に行ったりと、結構近場で観光も楽しんでくれたようだ。
あっという間の8泊9日の旅。私は全く移動していないし日常に戻っただけなのに、ちょっぴりホームシックにかかっている、まさに不思議な帰省体験だったのでありました。


