e-bike試乗レビュー

軽い!! 速い!! アシストのカスタマイズも便利!! 新しいe-bikeを提案するスペシャライズド

新型e-bikeを日本市場へ次々に投入しているスペシャライズド(SPECIALIZED)。すでに3カテゴリ・合計15車種もあります!!!

具体的には、まずe-ロード「CREO(クレオ)」シリーズとフラッグシップe-ロード「S-WORKS CREO」。それからe-MTBの「LEVO(リーヴォ)」シリーズとフラッグシップe-MTB「S-WORKS LEVO」。そしてクロスバイクe-bikeの「VADO(ヴァド)」シリーズです。

世界最高級といえるe-bikeから手頃な車種まで幅広く揃っているわけですが、今回はその中でも身近で走行シーンを選ばないクロスバイクタイプのVADOに試乗してみることにしました。以降レビューをお届けしますが、その前にVADOシリーズの車種について少々。

VADOシリーズは4車種あります。それぞれ、「VADO SL 4.0」「VADO SL 4.0 EQ」「VADO SL 5.0」「VADO SL 5.0 EQ」です。写真と説明文でご説明します。

左がVADO SL 4.0、右がVADO SL 4.0 EQ。違いは、VADO SL 4.0 EQにはキャリア(荷台)とフェンダー(泥除け)あることです。価格はVADO SL 4.0が363,000円(税込)、VADO SL 4.0 EQが385,000円(税込)
左がVADO SL 5.0、右がVADO SL 5.0 EQ。これら2車種の違いも、キャリアおよびフェンダーの有無です。なお、4.0と5.0の違いは、5.0はより快適性や走行性能が高いこと。具体的には、5.0の車種は「Future Shock 1.5カーボンフォーク」を搭載しており、フロントホイールを支えるフォークがカーボン製で、ハンドルバーを支えるステム部分に独自のショックアブソーバー機構を内蔵しています。そのため4.0と比べると乗り心地がワンランク上という感じ。価格はVADO SL 5.0が462,000円(税込)、VADO SL 5.0 EQが484,000円(税込)

今回試乗したのは、このVADOシリーズ中でもっともお財布に優しいモデルのVADO SL 4.0です。ちなみに、車種名に付く「SL」は「スーパーライト=超軽量」の意味。メーカーは「他社のe-BIKEより40%軽い」と言っています。

VADO SL 4.0の重さは約15kg。他社のe-bikeは24~25kgのものが多い感じ。クロスバイクタイプのe-bikeで20kgを切る車種はあり、例えばコラテック「E-POWER SHAPE PT500」は19.5kg。快速系e-bikeとして定評のあるE-POWER SHAPE PT500ですが、それより5kg近く軽いVADO SL 4.0。はてさて、どんな走りをしてくれるのでしょうか?

VADO SL 4.0はどんなe-bike?

まずはVADO SL 4.0の概要から。どんなe-bikeなのかを、写真と説明文で見ていきましょう。

VADO SL 4.0はスッキリしたデザインのクロスバイクです。フレームはアルミ製
320Whのバッテリーがダウンチューブ(フロントホイールの手前にある斜めのフレーム)に内蔵されています。バッテリーはメーカーメンテナンス時以外は取り外すことはできません。バッテリーを完全内蔵型にしたことで、フレーム剛性を高めつつ軽量化にも成功しています。そしてパッと見、e-bikeとはわからないスムースなデザインになっています
ドライブユニットはスペシャライズド製の「スペシャライズド SL 1.1モーター」を搭載。ドライブユニット自体は約2kgという軽さです。ちなみに、この位置に搭載するタイプの一般的なドライブユニットは約3kg以上あります
充電は車体左側ドライブユニット斜め上のコネクタから。バッテリーが完全内蔵型なので、バッテリーだけ外して室内に持ち込んで充電することはできません。アシスト距離は、320Whの内蔵バッテリーだけで最長約130kmです。オプションのレンジエクステンダー(ボトルケージに装着できるバッテリー)で追加で最長約65kmの走行が可能となります
ハンドル周辺はこんな感じ。e-bikeらしからぬスッキリさ……と思ったら、ディスプレイが搭載されていません
VADO SL 4.0にはディスプレイの類はなく、基本的にはフレーム上部(トップチューブ上)やハンドル左側のボタンで、アシストのオンオフやアシストモード切り替えを行ないます。アシストモードは「ECO」「SPORT」「TURBO」の3段階。トップチューブ上のボタンにはLED表示があり、これによりバッテリー残量やアシストモードを確認できます。写真のボタンは、下ボタンが電源オンオフ、上(Sマーク)ボタンを押すとアシストモードがTURBOになります。上ボタンを囲むように点灯している3つのLEDがアシストモードを表し、無点灯がアシストオフ、1つ点灯がECOモード、2つ点灯がSPORTモード、全点灯がTURBOモードです。専用のスマートフォンアプリにより、このランプを常時非点灯の“ステルスモード”にすることも可能
ハンドル左側にアシストモード切り替え用ボタン
ハンドル右側にはシフター(ギアチェンジ用レバー)。ちなみにVADO SL 4.0のハンドル幅は68cmあるので、歩道を走ることはできません(歩道を走れる普通自転車は長さ190cm以下/幅60cm以下と道路交通法で定められているため)
アシスト機構の電源と連動する白色LEDヘッドライト付き。電源連動でなのでこのライトだけをオフにすることはできません
サドル下部には、やはり電源連動の赤色LEDテールランプがあります。これも単体でオフにすることはできません
サドルはスペシャライズド製「Bridge Sport」。適度な硬さでペダリングしやすく、お尻や股間が痛くなりにくい形状です
ギアはフロント1速(44T)×リア10速(11-42T)。変速系コンポーネンツはシマノDeoreです
フロントもリアも油圧式ディスクブレーキ(Tektro HD-R290)で、ハブはフロントもリアもスルーアクスル
タイヤはスペシャライズド製「Pathfinder Sport(700x38c)」
タイヤ表面は、中央がスリックタイヤに近く、両サイドに粗めのパターンが刻まれています。直進時には転がりやすく、カーブでは滑りにくいという構造
ペダルはスペシャライズド製「Commuter」。フラットでどんな靴でも踏みやすく、表面のザラつきで滑りにくい
フレームを見渡すと、まずシートチューブ(サドル下のフレーム部)とダウンチューブ(SPECIALIZEDロゴがあるフレーム部分)にボトルケージ取り付け用のネジ穴があります。他にも各所にネジ穴があり、キャリア類の取り付けがしやすそうです。ケーブル類はフレーム内を通す内装式で、外見的にもキレイ
フロントフォーク下部のネジ穴
フロントフォーク上部のネジ穴
チェーンステーにも汎用ネジ穴やキックスタンド取り付け用ネジ穴があります

軽い!!! 速い!!! 軽量スポーツバイクに軽量ドライブユニット搭載の意義とは?

早速、試走です♪ VADO SL 4.0の試走を準備していて最初に感じたのは「軽いっ!!!」ということ。VADO SL 4.0の車重は約15kgで、人力自転車のクロスバイクよりも3~5kg程度重いのですが、e-bikeのクロスバイクとしては最軽量の部類。

筆者は何台もe-bikeで試走してレビューを書いてきましたが、通常は都内でe-bikeを受け取り、クルマで運んで自宅へ持ち帰っての試走です。e-bikeをクルマに積み下ろしするわけですが、どのe-bikeも持ち上げるにはなかなか重い。しかしVADO SL 4.0はスイッと軽々積み下ろしできて驚きました。

この軽いe-bikeで試走したのは、東京都の多摩湖(村山貯水池)外周のサイクリングロードです。ダム付近から左回りで走り始め、序盤は少々アップダウンがあり、半周を過ぎると下りが多くなる感じの舗装路です。

走り始めは、ダムの下からダムの上まで、ちょっとした激坂の短距離ヒルクライム。軽いギアにしてアシストモードは最強のTURBOにして走り始めると、グイグイと力強く上っていきます。ドライブユニットの「スペシャライズド SL 1.1モーターはトルクが薄い」と聞いていたので「非力なのかな??」と思っていましたが、これならフツーに激坂攻略もできそうです。

サイクリングロードに入ってペダルを踏み出すと、走りは軽快そのもの。速いですっ、VADO SL 4.0 !!! 走り出しからアシストが止まる24km/hまでの加速は「凄い」とか「驚いた」という感触はあまりなく、確かに他社製ドライブユニットと比べるとトルクが薄いと言えば薄いのかもしれません。

ですが車体の軽さにより、スピードのノリが非常にいい。ペダルを回す速さに対していつも過度ではない適切なアシスト力が加わるというイメージで、自分が健脚になったような気分がありつつ、とてもペダルを漕ぎやすい。そして、車体剛性の高さやタイヤの転がりの良さもあり、乗ったスピードが落ちにくい。

フレーム剛性やハンドリングも好印象。路面を足で踏んで前に出るような気分で強いペダリングをしてもパワーロスがないという感覚で、スピードに乗った時は安定的に直進します。でもカーブでは思った方向へスイッと曲がれる。スポーティーな走りが楽しいVADO SL 4.0です。

ドライブユニットからの音は、ECOモードやSPORTモードではまずまず静かという印象で、TURBOモードにすると若干モーター音が大きめに聞こえてくるという感じ。ただ、路面がちょっと荒いと、モーター音よりロードノイズのほうが気になる程度なので、わりあい静かなドライブユニットだと思います。

ところで筆者、この日は久々のライドなのでした。今年の梅雨は雨だらけだったことと、梅雨の後半は自粛強化ムード再びって感じで、1カ月くらい自転車に乗れていませんでした。

ですが、VADO SL 4.0で久々に走ったら、サイクリングロードにて前方を走る人力自転車に次々と追いついてしまう。そのくらい“すぐにスピードが乗るe-bike”なので、途中から「狭いサイクリングロードで前走者を抜くのは危ないな」と思ってサイクリングロード外側の車道を走りました。

総じて、やはり車体の軽さがこの“快速さ”に寄与しているのだと思います。何だかんだ言っても、結局は自転車において軽さは正義なんですね?。軽いに越したことはない。

ただ、VADO SL 4.0で軽快に走るには、ちょっとした心得が必要だと思います。スポーツタイプの人力自転車に乗っていれば当たり前のことではありますが、適切にギアチェンジしないと思うように快速に走ってはくれません。

簡単なことですが、例えば軽めのギアで走り出し、そこから加速する時も軽めのギアでペダルの回転数を高めにして、そしてスピードが乗ってきたらやや重め?重いギアにする、という操作です。走行中にペダルを回す回転数(ケイデンス)を一定に保つことも、やや速いスピード域で長時間走るためには大切。そんなスポーツ自転車の基本を当てはめたうえでVADO SL 4.0に乗ると、とっても快速なクロスバイクe-bikeとして楽しめると思います。

逆に、そういったギアチェンジをせずに漫然とペダルを踏んでいるだけだと、「なんかこのe-bike、ちょっとパワー不足?」という気分になるかも。そういう観点ではVADO SL 4.0のドライブユニットのトルクは確かに薄いです。でもある程度高いケイデンスで走るにおいては、十分パワフルで実用的なドライブユニットだと感じられます。

このe-bikeに搭載されたドライブユニット「スペシャライズト SL 1.1モーター」の最大トルクは35Nmです。ボッシュやシマノのドライブユニットは70Nmや80Nmだったりして、「スペシャライズドのドライブユニットは低トルク」ということになります。

ただ、スペシャライズト SL 1.1モーターも他社製ドライブユニットも、定格出力は似たような値。スペシャライズドの場合は240Wです。

出力(W)は「トルク×ケイデンス÷10」で概算できますが、これが意味するところは「スペシャライズト SL 1.1モーターは高ケイデンスでアシスト力を出すドライブユニット」ということになります。ペダルをくるくる回して快速で走る軽いクロスバイクには、確かにこういうドライブユニットが最適であるように思います。

というわけで、そのあたりの使いこなしにちょっと慣れが必要なVADO SL 4.0。でも非常に軽く、スポーツ自転車の扱い方がそのまま通用し、スポーツ自転車経験者ほど楽しく遊べる軽量なe-bikeだと感じられました。軽い車体に軽いドライブユニットを組み合わせたことで新たな“持ち味”になっているのだと思います。スペシャライズド、さすがです。

MISSION CONTROLでサイコン&ドライブユニットのカスタマイズ!!!

VADO SL 4.0には、e-bikeによくあるディスプレイが搭載されていません。ソレってちょっと不便じゃない? と筆者は思いました。

VADO SL 4.0などスペシャライズド製e-bikeの場合、他社e-bikeではディスプレイで対応いることをスマートフォンアプリで行ないます。「MISSION CONTROL」というアプリです。

このアプリを使うと、例えば走行中の各種データを見られる。走行速度や走行距離、経過時間やバッテリー残量などです。地図表示も可能。

また、容量160Whの追加バッテリーであるレンジエクステンダーを装着した場合、このアプリから「どういうふうにバッテリーを使うか」を設定できます。例えばメインのバッテリーとレンジエクステンダーを協調動作させたり、先にレンジエクステンダーから使ったりといった設定が可能。

それからこのアプリからは、バッテリーを「どの程度残してライドを終えるか」も設定できます(SMART CONTROL)。行きは登坂で帰りは下り坂だから30%くらいバッテリーを残して折返し地点まで行くとか、帰りはアシスト任せにしたいから折り返し地点でバッテリーをたくさん残しておこうとか、そういう計画のもとにバッテリー消費パターンを設定可能。

さらには、なんとドライブユニットの特性をチューニングすることも可能!!! ECO/SPORT/TURBOの3つのアシストモードで、それぞれどのくらいのアシストとするのかなどを、ライダーが任意に決められます。

凄いですよね!! ここまで“ユーザーにイジらせてくれる”というのは。そしてバッテリー容量をどう利用するかも微調整できる。こういう部分まで他のメーカーとは違う方向性を打ち出しているスペシャライズドです。

人力スポーツ自転車派のスタンスで考えると「車体が軽くてバッテリーが切れても軽快に走れるe-bikeで、アシストなんかも好みの設定にさせてくれ」と思うのではないでしょうか。e-bikeでとにかくラクにというスタンスだと「大トルクと大容量バッテリーと長いアシスト距離が大切」という考え方になりがちかもしれません。スペシャライズドのe-bikeは前者にとてもよく向いていると、このVADO SL 4.0を通じて感じた次第です。

スタパ齋藤