難波賢二のe-bikeアラウンド

e-bikeを快適に楽しむための“初心者向け”必須アクセサリー【後編】

 前回はスポーツサイクル初心者向けに、e-bikeに乗るための必須アクセサリー「ヘルメット」「サングラス」「グローブ」について取り上げましたが、ここではステップアップ編として、より安全に快適にe-bikeを楽しむためのアクセサリーをご紹介します。

メンテナンスに必要なアクセサリーを揃えよう

 まずメンテナンスで必要なアクセサリーはフロアポンプ(空気入れ)です。e-bikeに限らず自転車を所有すれば、空気は自宅で入れる人がほとんどでしょう。特にスポーツサイクルの高圧タイヤの空気は、すぐに圧が下がってしまうため、乗る前に必ず規定空気圧にセットする必要があります(MTBタイプは数日なら調整なしでも大丈夫ですが)。タイヤサイズや体重によって空気圧が異なるため、e-bike購入時にショップで空気圧について教えてもらいつつ、フロアポンプも購入するのがベストでしょう。また自転車専用に設計された六角レンチ(自転車の規格はミリ)セットも揃えておくと、簡単なネジの増し締めができて便利です。

自転車専用に設計された折りたたみツールを持っておくのが理想ですが、自宅に常備しておくツールと携帯ツールを共通化するという方法もあります。その際は写真のようなビット交換可能なラチェットツールを使用すると、六角レンチとプラスマイナスのドライバー、そして自分の自転車に合わせたサイズのトルクスなどの特殊工具もまとめて入れておけるので便利。写真は筆者が使用するPBのINSIDERというモデルですが、多くのメーカーから似たような製品が発売されています。ただし携帯性という意味では自転車専用に開発されたツールには及びません

 アクセサリーによって値段はピンキリですが、ヘルメット、サングラス、グローブ、フロアポンプ、六角レンチセットの5点で2~5万円程度の予算を見ておけば、しっかりしたものが入手できます。

トラブル回避&予防のためのアクセサリー

 目の前に見える山を越えて、さらにその先までe-bikeで目指すような場合には、さらに必要なアクセサリーが増えます。まず自転車でいちばん多いトラブルはパンクです。パンク修理を学び、その修理ツールを携帯することは必須です。

 タイヤレバー、タイヤパッチ、携帯用ポンプがあれば修理は可能ですが、私はパンクしたチューブは再利用せずにスペアチューブと交換しています。一度パンクしたチューブはもう一度パンクしやすく、そもそもパンクする頻度もそんなに多くありません(筆者の場合は3,000~5,000kmに一回くらい。乗り方やフィールドで異なりますが)。ゴム製品は新しい状態のほうが乗り心地や性能面で優れるため、交換してしまうというのが理由です。

パンク修理用品も少し長距離を走るのならマストのアクセサリー。パンクツールのパンク修理パッチは、接着剤が既にパッチに塗られており、修理時間が短くなるので便利。チューブごと交換してしまう方法もあります

 パンク修理やチューブ交換の方法は、プロショップで行なっている講習会に参加して学ぶのがよいでしょう。修理に自信のないうちは、複数のスペアチューブを用意したり、パッチも多めに持って行くと安心です。また当然ですが、自転車はチェーンが切れては走行できません。e-bikeの多くで専用に設計されたチェーンが装着しているとはいえ、万が一のトラブルに備えてチェーンコネクティングピンと、チェーンカッター付きの工具を携帯しておけばより安心でしょう。

 そしてe-bikeといえど、サイクリングの発汗量は相当なものになります。まったく水分補給しない場合は、驚くほど早く脱水症状が現れますので、水分補給用のボトルとボトルケージがあると安心で快適です。e-bikeで主流の外付け式バッテリーの場合は、ボトルケージを1つしか装着できないモデルが多いのが現状です。しかし、インチューブ式バッテリーのe-bikeは2本装着可能なモデルが多いので、2つのボトルケージを装着して、1つは修理ツール類を入れておくのもオススメです。

ロードバイクでは軽量化を意識したカーボンケージの使用が定番ですが、数gの軽量化はe-bikeには無意味なのでホールド性に優れたアルミ製のボトルケージがオススメ。写真はPROボトル。メーカー希望小売価格1,500円(税抜)
万が一のトラブルに備えて修理ツールはしっかり携帯しておきたい。修理用ミニツールやタイヤレバーなど、最初に揃えておきたい必需品のセットなども充実しています。写真は携帯ツールのPROカプセルコンビパック。メーカー希望小売価格5,000円(税抜)
ボトルケージは、ウォーターボトルを入れるだけでなく、ツールボックスを入れる用途でも使えます

 ボトルケージが1つしか装着できない場合は、サドルバッグやハイドレーションバッグを用意して修理ツールや用品を入れておくのもよいでしょう。サドルバッグはその名のとおり、サドル後方に装着する小さなバッグで、修理ツールやパンク用品を入れておくのにちょうどいいサイズです。ハイドレーションバッグは、背中に背負うコンパクトなバッグで、5L程度の収納容量と水分補給用のウォーターバッグを装備しています。水を入れると重くなりますが、アシスト付きで快適なe-bikeですから、走行距離や時間に応じてウォーターバッグを併用するのもよいでしょう。

筆者が普段使用しているハイドレーションバッグはOSPREYのRAPTOR 10というモデル。ヘルメットホルダーやツールバッグも装備されており、とても便利。登山用品店などで購入することができます。ほかにも定番のCAMELBAGやモンベル、そしてシマノなどからもハイドレーションバッグは発売されているので、好みに合わせて選びましょう

e-bikeでロングライドを楽しむのに便利で快適なアクセサリー

 e-bikeに乗り慣れてきて、バッテリーの性能を最大限に活用して乗りたい。1泊2日で出かけたい。こうしたサイクリングでは、峠も含む長距離を走ることになります。そんな時にサイクリング専用のシューズを履くと、より快適にロングライドを楽しむことができます。とりあえず短距離を乗ってみよう、e-bikeを始めてみよう、といったケースであれば、つま先が露出せずに踵がカバーされているシューズで十分です。

 ただしロングライドでは、サイクリング用に設計されたソールが硬めのシューズが快適です。スポーツサイクルにはスキーのビンディングのようなビンディングシステム(シマノのSPDというシステムが圧倒的に有名です)があります。シューズとペダルを固定することでペダリング時にペダルを引き上げる力を使えるようになり、キレイで高効率なペダリングが可能になります。脱着にはコツが必要なので、購入時にショップで脱着方法を習うのがよいでしょう。さらにサイクリング専用に設計されたソックスを履くと、より快適に走行できます。一般的なソックスは蒸れやすく、サイクリングではくるぶしが特有の動きをするため、専用に設計されたものでないと、ペダリング時に不快な感覚になりがちです。

少し長距離を走るなら、ビンディングペダルの使用も考慮したい。MTB・フィットネスカテゴリーでシマノのSPDは圧倒的なシェアを持つ事実上のスタンダード。写真は片面フラットペダル、片面SPDというタイプのペダルPD-T8000
スポーティー過ぎないカジュアルタイプのSPDシューズも用意されています。写真はシマノCT-5.自転車を降りた後も歩きやすく、商業施設やレストランへ気兼ねなく入っていけるデザインが特徴。メーカー希望小売価格は12,000円(税抜)

 また、坂を上って高所に向かうと、100mごとに約0.6℃気温が下がっていきます。e-bikeなら気楽に1,000m程度の坂を上れてしまうので、麓では汗が出るほど暑かったのに、下る時には寒くて手がかじかむようなことも普通に起こります。高所に向かうのであれば、サイクリング専用に設計された透湿防水用のウインドブレーカーなどの防寒アクセサリーは必須装備といえます。

サイクリング専用設計のウインドブレーカーなどの防寒アクセサリーも用意しておくと安心。ボントレガーのウィンドブレーカーは反射素材が使用されており、必要に応じてベンチレーションを開放することができるので蒸れずに快適。写真のモデルは国内未発売
ロングライドでは、標準装備のフロントライト以外にも、別途テールライトを装備したいものです。テールライトは法律で定められた装備ではないが、クルマからの視認性と安全を考えると、重要な存在。最近はデイタイムライトとして活用する動きも出ています。ボントレガーの充電式ライトIon Pro RT(16,400円・税抜)とテールライトFlare R City Rear Bike Light(4,800円・税抜)は、ワイヤレストランスミッターを使用して手元でコントロールすることも可能

 e-bikeで走るようになって、山を越えて、もっと遠くに行きたいと思ったならば、必要なアクセサリーを順番に揃えていくのも楽しいものです。誰にでも初心者の時期はありますが、それは一生に一度しかないものです。ぜひ、安全で楽しいe-bikeライフを送ってください。

難波賢二

国際派自転車ジャーナリスト 1979年生まれ。20年近く昔のe-bikeの黎明期よりその動向を取材してきた自転車ジャーナリスト。洋の東西を問わず自転車トレンド全般に詳しく世界の自転車業界に強いコネクションを持つ。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られる。