難波賢二のe-bikeアラウンド

e-bikeは街ブラにも最適!! オリンピック競技場や東京の各地をサイクリング

 サイクリングには絶好の季節となりました。先日はキャンピングカーにe-MTBを積み込んで信州を満喫してきましたが、今回のe-bike部は都内をゆったりサイクリングすることに。というのも、e-bike部に新たなメンバーとして家電 Watch編集部の鄭さんが加入したからです。今年の春に東京に来たばかりで、自宅とオフィスの通勤、近所の簡単なサイクリングばかりで、じっくり東京観光をしたことがないそうなので、e-bikeの最新モデルで都内を走ってみました。

e-bike部に新メンバーが加入! 今回は東京をe-bikeでサイクリング

ヨーロッパでは「みんな」でe-bikeを楽しむ

 e-bikeの本場ヨーロッパでは数年前から、本気のサイクリストをはじめ、e-bikeで初めて自転車に乗った初心者も、平日はオフィスや学校への通勤・通学にe-bikeを使っています。そして、週末は散歩感覚で街中のカフェや公園に出かけるスタイルが大流行しています。「本気のサイクリストがそんなことする?」と思われるかもしれませんが、誰が乗っても坂道をラクラクにこなせるe-bikeならば、家族やカップル、友人たちと出かけるのに最適で、ちょっと長めの散歩にもちょうど良いのです。

最近、ヨーロッパではe-bikeで緩く散歩する人が増えています
シニアのご夫婦もe-bikeで観光を楽しんでいます
都市部のガイドツアーではe-bikeが大活躍というかスタンダード
ロードバイクに乗った旦那さんとe-bikeに乗った奥さんが、丘の上の高級レストランまで走ってきてランチ。なんていう風景も日常
ベテランサイクリスト同士でも、e-MTBで散歩がてらに山間の村を流しながら観光という風景も日常

 e-bikeという単語を初めて耳にする読者の方に簡単に説明しますと、e-bikeとは、スポーツ走行向きの電動ドライブユニットを搭載するスポーツタイプの自転車のことです。クロスバイクやMTB、ロードバイクなど、新モデルが続々と登場しており、例えばシマノSTEPSのドライブユニットは、全11ブランド26車種ものモデルに搭載されています。

e-bikeには、専用開発された電動アシストドライブユニットが搭載されます。写真はヨーロッパでも高い評価を受けているシリーズの日本仕様シマノSTEPS「E8080シリーズ」
サイクルコンピューターにはアシストモードやアシスト力、バッテリー残量や走行距離などを表示
e-bikeには大容量のバッテリーも搭載。写真は504Wh(36V/14Ah)で100km以上の長距離走行が可能

 さて、東京みたいに交通量の多い大都市で、そんなヨーロッパのような走り方はできるのでしょうか? 答えはイエス。普段は通らない坂道や裏道も、e-bikeのアシストがあればラクラクですから、都会の裏路地を縫うようにストップ・アンド・ゴーを繰り返しながら走ると、今までの自転車ではあり得なかった快適な散歩、もとい散走ができます。そして、馴染みのあるエリアでもe-bikeならではの新たな発見があります。

普段はあえて通ろうと思わない坂道もe-bikeならラクラクなので、交通量もこのとおり

 来年はいよいよ東京オリンピックが開催されますが、筆者は東京オリンピック時の移動ツールとしてe-bikeを提案しています。これは競技会場をホッピングするためだけでなく、開催期間中にもの凄い混雑が予想されるクルマや電車での移動を避けて、e-bikeならではの「自分だけの快適ルート」を作ろうという意味もあります。ということで、e-bike部の新メンバー鄭さんと一緒に、新しい東京を発見するサイクリングへ出かけてみました。

新しい東京を発見するサイクリングへ

ヨーロッパのe-bikeカテゴリーで人気のモデルをチョイス

 現在、ヨーロッパのe-bikeカテゴリーで流行っているのが、やや太めのタイヤにフロントサスペンションを装着するモデルのe-bike。日本のクロスバイクカテゴリーのe-bikeよりも「快適志向」で人気となっています。石畳の多いヨーロッパの街中では、太めのタイヤのほうが乗り心地もグリップも優れるため快適で、公園のちょっとした未舗装路なども余裕で走ることができます。クルマで例えるなら、SUV的な使い方ができることが人気の理由です。日本ではサイクルスポット初のe-bike「eVITA(エヴィータ)」が、そのカテゴリーのe-bikeで、ほかにも各社が2020モデルで同様の新モデルを投入しています。

左がサイクルスポット「eVITA」、右がメリダ「ePASSPORT TK 600 EQ」

 鄭さんが乗るもう一台は、こちらもヨーロッパで大流行のステップインe-bikeというカテゴリーのメリダ「ePASSPORT(イーパスポート) TK 600 EQ」。日本の電動アシスト軽快車に似た形状ですが、フレームの作り自体が根本的に異なるうえ、「eVITA」同様にシマノの新型ドライブユニットのシマノSTEPS「E6180シリーズ」を搭載。見た目からは想像できないほど快適で、驚くほどスポーティーな走りとハンドリングを実現しています。

 そして、フレームを跨いで乗り降りできる点も特徴です。このタイプは、ヨーロッパでは高齢者や女性だけでなく、本格的なサイクリストにも受け入れられ始めています。

フレームを跨いで乗り降りできるメリダ「ePASSPORT TK 600 EQ」
[写真で見るメリダ「ePASSPORT TK 600 EQ」]

東京都心をe-bikeで街ブラ

 神保町のインプレス編集部を出発し、皇居、有楽町、市ヶ谷、麻布、青山、六本木など馴染みのある都心を巡ってみます。やはり都心はひとつ裏側の道に入ると、クルマ通りが少なく、静かで、坂ばかりの裏道が広がっています。

東京オリンピックで、ウェイトリフティング競技場になる有楽町の東京国際フォーラム
気軽に乗り降りできるので、e-bikeをちょっと押して見物に行こうという気になるのも、新しい感覚です

 そしてe-bikeで走ると、意外なほど緑の多い公園や見たことのない景色と出合えます。実際に徒歩で巡るには遠すぎますし、人力のスポーツサイクルではストップ・アンド・ゴーや坂道、乗り降りなどが億劫で、寄り道できなかったスポットにも気軽に立ち寄れます。徒歩でもクルマでも、スポーツサイクルでも味わえないe-bikeならではの散歩気分。

坂道もラクラクなので、麻布界隈も余裕で立ち寄り
街を練り歩く気分でe-bike散歩
e-bikeなら今まで行けなかった場所へ行けます
実は都心には知られざる緑があふれる公園がいっぱい

 今回連れ出した2台は、どちらも新型ドライブユニットのシマノSTEPS「E6180シリーズ」を搭載。シマノが国内展開しているドライブユニット3種類のうち中間グレードにあたるモデルですが、トレッキング&シティライドを考慮して開発されただけあって、シマノSTEPS「E8080シリーズ」と比べると格段に静かなのが印象的。都市部に存在する坂道ならば、どこでも余裕なアシスト力です。

都心の美術館巡りにe-bikeを使ってみるというアイデアもあります。上野や六本木界隈のこじんまりとした美術館は、徒歩だと意外に遠いうえに坂があることも多いのでe-bike散歩が一番
鄭さんもあっという間に坂の上り下りに慣れて笑顔に。でもこの坂、実は20%ぐらいの斜度があります

 東京タワー周辺や麻布といった街中は、意外とキツい坂道が連続します。鄭さんも最初は少し不安な様子でしたが、そこはe-bike。あっという間に慣れて不安も吹き飛んだようです。そして、坂道の上り下りとe-bikeの乗り降りを繰り返して会話をしながら、散歩するのはあらためて新鮮な感覚です。

東京タワーの麓の坂がキツいことは知っている人は多いと思いますが、e-bikeなら平らな所を走っているよりむしろラクです

 自転車は普段は一人で走ることが多い乗り物だけに、「東京タワーってこんなに近かったんですね♪」「あっちに日本庭園が♪」「こっちに坂道が♪」「国立競技場が完成している。スゲー!!」と、都市部のサイクリングに会話が加わるだけで新しい体験となるのです。中高生時代に自転車通学していた人なら、友人とおしゃべりしながら通学したあの楽しさが戻ってくるといえば分かりやすいでしょう。

いつの間にかほぼ完成している新国立競技場。e-bike散歩ならば、「ちょっと見てみよう」と動いて、いろいろな場所に寄れます
そして乗り降りが簡単なので、いろいろ遊べます。本当にこれは新しい発見
自転車を難しく考えずに緩く楽しめる、本当に楽しい乗り物がe-bikeです

e-bikeなら身近なエリアに秘密スポットを作れる

 今回のサイクリングであらためてe-bikeの魅力を再発見しました。「ランチどうしようか~?」「天気も良いし何か買って公園で青空ランチでもいいね♪」など会話している最中に、『ライフ クリエーション スペース OVE』というカフェがあるんだけど、どう? 鄭さんと清水氏に伝えると、「オシャレなカフェ~♪」「自転車関係の店なら行かねば!! おもしろそうだし!!」ということでランチのお店が決定。

 ここは南青山でシマノが運営する“自転車のあるライフスタイル”を提案しているコンセプトストアで、今まで何度もイベントで訪れたことがありますが、今回のように散歩のついでに立ち寄ったのは初めてで新鮮な気持ちになりました。

シマノが運営するカフェだけあって自転車の持ち込み可能。鍵も不要
いろいろなサイクリング情報が入手できる情報発信基地にもなっています
軽いジョギングぐらいの運動量にはなります。普通にお腹も空きますが、誰も疲れてないので、ほら笑顔
健康で豊かな暮らしを提案している施設なので、食事のメニューもヘルシーながら、ボリュームも満足度も高い

 カフェには自転車をそのまま持ち込んで、ヘルシーなおいしいランチをいただけます。もちろん、サイクリングウェアのままでも気兼ねすることもありません。都心の裏路地散歩の中心的立地なので、e-bikeでルートを決めずに街を探訪して、ついでに立ち寄って休憩するといった使い方もできますね。

撮り鉄しか知らないであろう、都心の秘境スポットにも自転車と徒歩で簡単にアクセスできます
都心にはまだまだ知らない緑やスポットがあります

 ちなみにドイツでは、仕事帰りに少し寄り道して夕日を眺めたり、カフェでコーヒーを飲んたり、リフレッシュしてe-bikeで家に帰るという使い方をする人が多いのです。今回は帰り際に北の丸公園に寄ったのですが、偶然にも美しい夕景にも出合えました。「すごいキレイ♪」「下に見える首都高は何度も走ったけど、ここからこんな美しい夕景が見えるなんて……!!」とe-bike部一同で感動するほど。

ヨーロッパでは仕事帰りに丘を上ってリフレッシュするのがブームですが、日本で探しても、そういうスポットはたくさんありそうです

 駆動用バッテリーで点灯するライトやリフレクターがフル装備されているe-bikeならば、少し日が暮れても安心。今回も思わぬ偶然で発見した都心のカフェや数々の景色がありましたが、自分だけの秘密のスポットをe-bikeで見つけて、毎日を彩ってみるというのがe-bikeの楽しみなのかもしれません。

難波賢二

国際派自転車ジャーナリスト 1979年生まれ。20年近く昔のe-bikeの黎明期よりその動向を取材してきた自転車ジャーナリスト。洋の東西を問わず自転車トレンド全般に詳しく世界の自転車業界に強いコネクションを持つ。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られる。