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ジェームズ・ダイソンさんに聞いた「サイクロンではない掃除機」何がすごいの?

ダイソン創業者兼チーフエンジニアのジェームズ・ダイソンさん

ダイソンが5月22日より発売した、新たな仕組みのコードレススティック掃除機「Dyson PencilVac(ペンシルバック) Fluffycones SV50 FC」。同社ならではのサイクロン式でもなく、かつての主流でいま見直されつつある紙パック式でもない、新たな方式だ。

まず印象的なのは、ペンシルバックという名の通り、スリムなスティック状の本体と、先端のユニークな円すい形状のブラシ。新しいモーターにより“世界で最もスリム”とする直径38mmを実現し、従来のダイソン掃除機に比べると、部屋においても目立ちにくいシンプルなデザインになっている。決して広くない日本の住環境や掃除習慣を研究して開発したとのことで、世界に先駆けて日本で初登場した。

Dyson PencilVac Fluffycones SV50 FC

発表に合わせて、創業者でありチーフエンジニアのジェームズ・ダイソンさんが来日して自らプレゼンテーションを実施。製品に込めた思いを語った。

髪の毛がからむ問題の解決と新モーター

「日本で新しいテクノロジーを発表するのは大好き」と語るダイソンさん。今回の新製品ペンシルバックについて、まず触れたのは「髪の毛がからむ問題」と、スリムさを追求するために開発した「新しいモーター」だ。

新開発のコンパクトなモーター
500円玉と同じくらいのモーター直径

ローラーブラシ「Fluffycones」を裏返すと、中には円すい状のブラシ(コーン)が4本配置されている。毛がらみ防止のために左右非対称な円すい型のブラシを採用している例は、既存のダイソン「毛絡み防止スクリューツール」や他社製品にも存在するが、今回のFluffyconesがユニークなのは、円すいブラシ4本を並べて中央側が太く、外側が細い形だ。

円すい状のコーンが4つ合わさったFluffycones
Fluffyconesが完成するまでのプロトタイプも展示された

長い髪の毛を吸った場合、一般的な左右の直径が同じ円柱形ブラシだと、吸った場所に巻き付いてしまうことはよくある。新ブラシは回転しながら髪の毛が径の太い内側から細い外側へ流れるように移動し、最終的に側面からまとまった毛がポロっととれる仕組み。このとれた毛のかたまりを吸うという2段構えで、髪の毛のからみを防ぎながら掃除が続けられるわけだ。

ゴミ捨てしているところ。髪の毛のような細長いゴミもまとまって捨てられていた

本体のスリムさは、新開発のモーターによって実現。ダイソン最高速の毎分14万回転するモーターは500円玉と同様の直径28mmで、本体は直径38mmの最もスリムなデザインを実現した。これによりソファの下など低いところもフラットに寝かせて奥まで掃除しやすくなっている。なお、直径38mmという太さは、ちょうどダイソンのヘアドライヤーと同じで、人間工学に基づいて設計されたもの。

家具の下など低い場所も、完全にスティックを寝かせて掃除できる
ダイソンのヘアドライヤーなどと同じ直径38mm

重量は1.8kgで、コードレスのスティック掃除機としては標準的ながら、重心が上ではないこともあって、実際に手で持ってみても動かしやすく、手でつかむ場所も特定のハンドルではなく上下の好きな高さで持てるため、体格が大きい/小さいことにより持ちにくくなることも少なそうだ。

この動かしやすさは、前述したヘッドの形状も理由の一つ。4つあるブラシのうち前方の2本は手前側へ、後方の2本は奥側へ回転する反転構造により、前後どちらにも動かしやすく、ヘッドが浮いているような軽快な操作感を可能にした。

狭い場所もヘッドを動かして掃除しやすい、浮かぶような操作感を実現。前後に備えたライトでホコリも見える化
スタンドもコンパクトで、インテリアにもなじみやすい

なお、ペンシルバックは新モーターによる高い吸引力で、運転時間は最長30分(Fluffycones利用時は20分)と一般的な日本の家をカバーするものの、「最もパワフルな掃除機が欲しい」「広い家のため、より長い時間を掃除に使う」人には、現在のサイクロン式の最上位モデル「Dyson V12 Detect Slim」が推奨されている。

今回のペンシルバックは「掃除をより手早く済ませたい」「髪の毛のからまりなど手入れに時間をかけたくない」「置き場所をなるべくとりたくない」といった、これまでの掃除機とは違うものが欲しい人に、より歓迎されそうな製品といえる。

ダイソンが考える「スマート家電」とは

もう一つ注目したい点は、ダイソンの掃除機で初めてスマホにつながる「スマートクリーナー」であること。

スマホとBluetooth接続すれば、フィルターの手入れ時期や、掃除の方法などがアプリから案内される。また、アプリでは運転モードの初期設定も変更でき、通常推奨されるエコモードのほか、強モードのどちらで掃除を始めるかをあらかじめ設定できる。

ダイソンで初めてアプリ連携のスマート掃除機に

ダイソンさんは、今回のスマート化の取り組みはあくまで第1弾としており、スマート家電のこれからの価値として挙げたのは「バッテリーの管理」。よりムダのない効率的な家電の使い方などをアシストしてくれることにも、今後期待できそうだ。

スマート化がさらに進化していくと、ユーザーインターフェイス(UI)の改善にもつながるという。「航空機のパイロットのように500個のボタンを押さなくても、非常に複雑な操作ができるようになります」とこれからの理想的な姿を示した。

今回、日本の家に最適化したともいえるペンシルバックを発表したことについてダイソンさんは、日本のユーザーにとっても「究極の小型化」といえる形を実現したことを強調。

より効率的なモーターやバッテリー、より少ない材料で作れることなど、小型化は環境面でもよい傾向としてとらえ、今後もよりコンパクトにするための進化を続けていくと語った。

今回の来日では京都を訪ねると語っていたダイソンさん