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毎日バスマットにのるだけで体重が分かる? 開発した程涛氏に狙いを聞いた

スマートバスマットを発表したissinの程涛氏

毎日の風呂上がりにのるだけで体重が分かるという、ユニークな「スマートバスマット」が登場。Makuakeで販売(応援購入)が開始されている。

開発したのは程涛(テイ トウ)氏。照明一体型のプロジェクターpopIn Aladdinや、花瓶のようなプロジェクターAladdin Vaseでも知られるpopIn代表を務める程氏が、自ら立ち上げた新会社であるissinの最初の製品として展開する。価格は16,980円だが、Makuakeでは18%オフの13,923円から購入可能。

スマートバスマット

なぜバスマットに体重計の機能を持たせたのか、開発のきっかけや、この製品で目指すことなどについて程氏に聞いてきた。

「体重計にのらなくなってしまう理由」に向き合う

今回Makuakeで支援購入が開始された「スマートバスマット」は、薄型の体重計の上部分がバスマットになっており、のると自動で体重が測定され、データがスマートフォンに送信されるもので、足を乾かす約3秒で測れるという。8人まで登録でき、家族でも使える。身長を入力しておけば、BMIの変化も分かる。

風呂上がりにのるだけで計測

スマホとの通信はWi-Fiで行なうため、毎回Bluetoothに接続する必要はなく、初回の接続設定にBluetoothを使う。専用アプリだけでなく、iPhoneの「ヘルスケア」アプリとも連携できる。

アプリに変化を記録

気になるのは「なぜバスマットと一体型なのか」だが、それは「風呂上がりに毎日のる習慣が既についているのがバスマットだから」。服を脱いだ状態の体重が、毎日ほぼ同じ時間帯で測定できるため、日々の体重の変化が分かりやすい。

製品開発に至ったのは、自身の健康診断の結果から体重を管理する必要を感じたものの、なかなか使い続けられる体重計に出会えなかったためだという。程氏は「私の場合、最初から(特定の製品を)作ろうと思って作ることはありません。既に良いものがあればそれを使います。いくら買っても自分のニーズが満たせなかった時、自分で作った方が早いのでは? と心境が変化することがあります」と語る。

それは照明一体型プロジェクターpopIn Aladdinの開発でも同様で、popIn Aladdinの場合は市販プロジェクターを8台購入した結果、自社で作ることにしたそうだ。今回のスマートバスマット開発の前には、市販の体重計を30台も買い、自宅で試行錯誤していたとのこと。

他社を含む「体重計」カテゴリーでみると、スマートフォンアプリで体重が管理できるモデルは珍しくはない。ただ、スマホで体重を管理して見るのが習慣になっているという人は、どれくらいいるだろうか?

同社のアンケート(n=1,200)によると、「体重計を買ったのに使わない理由」として挙がったのは、男性が「面倒くさい」、女性は「現実逃避」という回答だった。

体重計にのらなくなる理由のアンケート結果

程氏は「他社にもいい製品はいろいろありましたが、やっぱり(習慣として)のらなくなってしまいます。のらないなら意味がない」と指摘。

そこで、毎日のる習慣をつけるため、風呂上がりに必ずのるバスマットに着目した。ただし、バスマットを体重計にかぶせただけではマットの重みも体重計に加算されてしまう。そこで市販バスマットの中央を切り取って体重計をはめ込むようなデザインを試作したところ「妻がOKと言ってくれました。最初のジャッジは妻です。使いたくないと言われたら商品化はしません(笑)」といった経緯で、本格的に開発が始まった。

程氏が手作りした、スマートバスマットの原型となるもの

あえて体重のメーターを付けない

一見すると少し厚さがある以外は一般的なバスマットと同じで、体重計のようなデジタル/アナログ表示はない。スマホで体重が分かるとはいえ、「本体に表示がない」形にすることに迷いはなかったのだろうか?

程氏は“見た目が普通のバスマットである”重要性を強調し「(本体で)体重を表示する必要はありません」と言い切る。先ほどのアンケートでも、体重計にのらなくなる理由に「現実逃避」とあったが、もし体重を表示する機能がついていても「それは使わずにスキップする」声があったためだという。「本体に表示することよりも、10年、20年、30年とデータをためられて、いつでも見られるのが重要なこと」と程氏は説明する。

また、「バスマットを使う時に、動作を増やす(体重を確認する)のは良くない。もしデータが良くない結果になった場合にストレスになってしまう。それは避けたいです」と程氏は話す。

マットにのると、毎回必ずスマホに通知されるわけではないのもユニーク。「データを見てほしいのではなく、変化があった時に知ってほしい」と程氏が話すように、設定したモードに合わせて通知されるタイミングが違うため、「健康維持」や「ダイエット」「成長の確認」など、家族それぞれの目的に合わせた使い方ができ、使い続けやすいというわけだ。

スマホ通知の例

通知の一例としては、体重そのものではなく変化した量だったり、BMIが変化した時など、モードによって通知の内容が異なる。チャイルドモード時は、年齢や身長を入力しておくことで、一般的な数値とどれくらいの違いがあるかを確認しやすくなる。そのほかにも、遠くに住む親などの変化を確認できるリモートモードを開発中だという。

もう一つ、このスマートバスマット開発で追求したのが薄さ。「体重計」ではなく「バスマット」であれば、浴室に比べて大きな段差があると使いづらくなってしまう。

そこで、珪藻土マットを手掛ける複数のメーカーからサンプルを送ってもらいテストしながら素材などを選定。当初はマット部分と体重計を合わせて厚さが24mmになっていたところを、4月9日時点で20mmまで薄型化。最終製品に向けて、さらに薄くするための工夫を続けているという。

なお、珪藻土マットは以前、他社の一部製品において安全性が問題視されたケースがあったが、本製品では第三者機関で成分検査を行なった結果アスベストは検出されず、安心して使用できるとのことだ。

マット部分はソフトな素材で、外して洗濯機で丸洗いできる。取り替え用の珪藻土マットも3,280円で販売される。

バスマットとして薄さを追求

本体はUSB経由で充電でき、コードレスで利用可能。1回の充電で最低でも3カ月以上、できれば6カ月ほど利用できるかを検証中だという。付属するUSBケーブルも長めにして、洗濯機のコンセントから届くような長さにするとのことだ。

なぜpopInではなく新会社issinなのか?

今回スマートバスマットを製品化したのは、既に一定の知名度を得たpopInではなく、あえて新しい会社であるissinなのはなぜだろうか? 理由として程氏は「popInの場合は間違いなく利益追求が必要。issinは個人の会社であり、赤字にならなければやります」と説明する。

issinは程氏が100%出資した会社であり、社名は程氏が自身の子供の名前から付けたもので「子供のようにこの事業を育てていきたい。利益追求よりは、やりたいことをやります」と語る。大切な家族の名前を付けた会社の第1弾ということからも、思い入れの強さがわかる。

開発にあたり、素材メーカーや工場などとのやり取りも、基本的に程氏がひとりで担当。現在もpopIn代表を務めながら「週末の遊び」のような感覚でissinのスマートバスマットの開発を続けているという。本当に自分が欲しい、必要なものを作っていることから、遊びといっても姿勢は真剣そのものだ。

パートナーとなる企業を探すときも「私の発想を説明して、その反応で相手も興奮しているのが分かるような会社でないと難しい。ビジネスとしてだけの対応ではなく、共感できる相手を見つけることからスタートし、時間をかけて探した」と振り返る。

Makuakeで製品化を進めたことについて程氏は「サポートの手厚さ」を挙げている。これまで海外のクラウドファンディングも利用してきた程氏にとって「温度差が天と地」と感じるほどだったとのことだ。

応援購入は6月29日まで受け付けており、出荷は10月の予定。今後、アプリをアップデートすれば機能追加ができるのもスマート製品ならではの特徴で、新しい試みとして妊娠中の体重変化を確認できる専用モードなども計画されている。出荷に向けて現在も改善を進めているとのことで、その仕上がりに期待したい。