家電製品ミニレビュー
コーヒーやお茶の味を決定づける温度調節が自在! 保温もできる電気ケトル
2018年3月2日 07:00
毎日楽しむコーヒー、紅茶、日本茶など、それぞれに適した湯温が簡単に設定できる電気ケトルが登場した。山善の「電気ケトル YKG-C800」だ。
メーカー名 | 山善(YAMAZEN) |
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製品名 | 電気ケトル YKG-C800 |
価格(編集部調べ) | 9,100円 |
YKG-C800は、100℃の沸騰はもちろん、1℃刻みで60〜100℃の細かな温度設定ができ、飲み物に適した温度が選びやすい6段階の温度もプリセットされている電気ケトルだ。温度設定はタッチスイッチをポンポンと触れるだけと簡単。しかもハンドドリップに有用な、細くお湯が注げて湯量も安定しやすい、細口のノズルが採用されている。
まずデザインが◎
本体の大きさは285×190×240mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは980g。ケトルはステンレス製で、565gと軽い。薄いステンレスに頼りない印象を受けるかもしれないが、コーヒードリップ中はケトルを持ち上げ続けるので、軽いのはむしろ好ましい。ケトルの表面の仕上げには光を乱反射するツヤ消しの塗装が施されており、落ち着いた雰囲気を醸し出す。
一方で、電源プレートには現代らしい仕掛けがある。電源を入れると漆黒の樹脂製プレートに、操作が一目瞭然のタッチ式スイッチがLEDバックライトで浮かび上がる。ギミック的な仕組みが盛り込まれつつも、電源プレートを壁側に寄せやすいように、コードの出し方に工夫があったり、底のシリコンで安定した設置ができたりと、使い手への配慮も忘れられていない。
一度に沸かせる水の容量は、コーヒーなら6杯分強の約800mL。ケトルの底にある温度センサーを正しく機能させるため、最低300mL、1℃単位で温度を設定するならケトルの半分まで水を入れるのを推奨している。
飲み物に応じた温度が簡単に設定できる
操作はとても簡単だ。まず、ケトルに水を入れて電源プレートへ置き、電源プレートの電源スイッチをタッチして操作パネルを起動する。この時、ケトルに入れた水温が表示される。
次に、目的に応じた加熱スイッチ「沸とう」「温度選択」「温度設定(+・−)」のいずれかにタッチして選択する。
「沸とう」なら、ワンタッチで100℃に設定される。「温度選択」はスイッチに触れるごとに60℃→70℃→80℃→85℃→90℃→95℃→60℃…と順番に選択できる。1℃単位で刻むなら、「温度選択」で望みの温度付近まで選択し、+・—の「温度設定」で加減すればいい。数回の操作ですぐに慣れるほど簡単だ。
選択が終わりプレートから指を離すと、設定温度表示が5回点滅し、「ピッ!」と鳴って加熱が始まる。この時、表示が設定温度から現在の水温表示に戻る。
コーヒー4杯分のお湯が4分弱で、設定温度に忠実に沸き上がる
ここから実際にお湯を沸かしてみよう。ここからケトルに入れる水の量は、コーヒー4杯分強の500mLで統一した。水温は15℃前後だった。
「沸とう」は、加熱が一気に進む印象だった。わずか3分48秒で100℃に達し、「ピッ!」と鳴って加熱が停止した。
「温度選択」の場合は様子が若干変わる。90℃設定ならば、80℃までは一気に加熱し(約3分経過)、それ以降は温度上昇を確認するかのように、火力の強弱が繰り返されてややゆっくり温度が上昇する。90℃に達した3分56秒で「ピッ!」と鳴って停止した。
プリセットされた温度選択と1℃単位温度設定時はいずれもこのような加熱になるが、500mLの加熱は4分以内に沸き上がった。
なお、どの加熱中でも、刻一刻と上昇する水温が表示される。加熱されている実感とともに、あとどのぐらいで沸き上がりそうか検討もつきやすく、待っているストレスを感じにくい。
沸き上がったお湯は、設定温度にかなり忠実だった。
ケトルの底に触れないように手持ちの温度計を吊るしたまま加熱、計測した。自動停止した時の水温は、どの設定温度でもほぼ一致!センサーはとても正確、と言っていいだろう。
保温がしたければ、プレート右上の「保温」スイッチに触れる。操作するタイミングは、温度設定後、加熱中、または加熱直後でもできる。保温スイッチが点灯から点滅に変わり、保温運転を知らせてくれる。
「保温」は、設定温度に沸き上がって一旦加熱が停止してからも温度を見張りつづけ、設定温度に近い状態を1時間自動で保ってくれる機能だ。ケトルを電源プレートから一旦はずしても、5分以内に戻せば保温運転が再開される。
持ちやすく、ハンドドリップに最適なお湯を簡単にコントロールできる
細口ノズルから出てくるお湯は、うねりがとても少なく、湯量のコントロールもとても簡単だ。ノズルの根元がケトルの底にあるためか、ケトルを多少傾けすぎても一気にバシャッとお湯が出てこない。いつでも確実に、注ぎたい所にお湯が落とせる。
これは、コーヒーをハンドドリップする際に大いに役に立つ。ドリップの際、「お湯はコーヒー粉の中心に、500円玉ぐらいの直径で「の」の字を描くように、真上から注ぐ」と言われているが、YKG-C800を使えば特別なテクニックも要らず、とても簡単にできる。
取っ手も掴みやすい。ケトルは薄いステンレス製なので、お湯が入っていると触れられないぐらい熱い。だが、取っ手を握っている指はケトルまで適度な距離があり、注湯も思い通りにできる。ケトル、取っ手、ノズルのバランスがとても良い印象だ。
温かい飲み物を簡単に、より美味しく、本格的に
温度設定も簡単で、思うようにお湯が注げるYKG-C800があれば、コーヒーや紅茶、日本茶をより本格的に美味しく楽しめるようになるだろう。
というのも、紅茶は沸騰したお湯があればいいが、本当においしいコーヒーや日本茶を淹れるなら、そう簡単にはいかない。抽出するお湯の温度がとても大切だからだ。
コーヒーを美味しく抽出するお湯の温度は、焙煎の深いフレンチ/イタリアンローストなら75〜79℃、シティ/フルシティローストなら80〜83℃、ミディアムローストなら84〜86℃と言われている。さらに、豆の挽き方にも応じて、低温で時間をかけてゆっくり、高温で素早く抽出、という側面まである。
茶葉の種類が豊富な日本茶はより複雑だ。玉露なら60℃、煎茶でも上級煎茶や深蒸し茶は80℃、普通煎茶は90〜100℃、新茶は70〜80℃、玄米茶やほうじ茶なら95℃とさまざま。美味しく淹れるためには、湯冷ましという手間は必須でその経験も求められる。
ところが、YKG-C800はその全ての要望に対応できる温度のお湯が、指先だけで一発でキメられる。湯冷ましのテクニックも温度計も要らず、お湯が沸いたらすぐに淹れられる手軽さがとても便利だ。
なお、加熱中の最大の消費電力は970Wだった。ケトルが加熱できる最大量(800mL)でも沸騰までに6分弱で、その電気代は1回約2.5円といったところ。ただし、加熱していない時も0.3Wの待機電力(最後の設定温度をメモリーしている)を消費しているので、コンセントに差し込んだまま毎日1回お湯を沸騰させた場合、1カ月の電気代は約80円と試算される。
ケトル自体は薄いステンレス製なので加熱中は熱くなるが、実際に使ってみて安全面にも配慮されている印象があった。最大量の水を沸騰させても、ノズルからお湯が飛び出すような事は一切起こらなかった。設定温度に達すると直ちに加熱が停止するので、蓋から蒸気が勢いよく立ち昇るのも僅かな時間だけだった。また、ケトルと電源プレートの接続部の径が40mmと大きく、プレート側の接合部は丸みを帯びているので、確実にセットしやすい。
オートオフ機能も便利だ。保温時は無操作が1時間経過したら自動で保温が解除され、待機モードに切り替わる。起動モード時、保温無しの加熱後、ケトルを取り外した場合、5分間に何も操作しなければ、こちらも自動的に待機モードになる。消し忘れを防ぎ、無駄な電力を消費しない仕組みがある。もちろん空焚き防止機能も装備されている。
唯一気になったのは、ケトルの蓋を取り外す時に、蓋が歪みそうなぐらい固い事だった。ペンチがあれば蓋のツメを調整できるが、熱湯を扱う製品だけにこの1点は惜しい! と思った。
それでも、正確な温度設定ができるYKG-C800は便利。しかも価格が手頃でデザインも良く、一度使い始めたら手放せなくなるほどの魅力が感じられる電気ケトルだ。コーヒーや日本茶をより美味しく、より手軽に楽しみたい人にこそ、是非手にして欲しい一品だ。