家電レビュー
もしものために持っておきたい防災ライト比較。タイプの異なる4つを検証
2023年8月31日 08:05
夏から秋にかけて気になる台風。それにともない各地で起こった水害などのニュースも流れている。筆者はこれまで幸いなことに大きな災害で被災したことはないが、それでも日本に住んでいる限り、地震や台風、洪水など、自然災害に遭う恐ろしさからは逃げられないだろう。
我が家でも防災グッズを準備はしているが、改めて見直す機会がなかった。今回は、そんな防災グッズの中でも、被災時に持っていると心強いといわれる「ライト(照明)」を、選び直すことにした。
候補として挙がったのは、LOGOSの「ヘッドバンドライト」、ドウシシャの「HEXAR コンパクトLEDランタン UL3」、エレコムの「乾電池式LEDライト DE-KD03」、そしてパナソニックの「多機能でかランタン BF-BL45M」の4モデル。
この4モデルは、懐中電灯やヘッドライト、またはランタンなどと、それぞれ主な使用スタイルが異なり、本体サイズや重さもまちまちだ。
災害用といえば「災害用バッグに入れておかなきゃ!」と考えがちだが、ライトに関しては、夜中に被災した時には、まず初めに必要なもの。ベッドの横に常備しておいたり、キャンプに出かける際に持っていくなど定期的に使うことで、置き場所を忘れず把握できて、いざという時にバッテリー切れ……などということも避けられるかもしれない。
今回はそうした普段使いのしやすさも考慮しながら試用した。まずは、使っていくなかで、4機種にどんな違いがあるかの実感を含めてざっくりと表にまとめた。さらに次項より、各機の詳細な使い勝手などを記していく。
電源 | 照射範囲 | 重さ | ||
---|---|---|---|---|
LOGOS | USB充電 | メイン:超広い/サブ:狭く超遠くまで | 軽い | 3,980円 |
ドウシシャ | USB充電 | 広い | 軽い | 6,600円 |
エレコム | 単四形乾電池1本 | 狭く遠くまで | 超軽い | 3,480円 |
パナソニック | 単一形乾電池3本またはUSB給電 | 広い | 重い | 6,800円 |
周囲を明るく照らす、LOGOSのヘッドライト
LOGOS(ロゴス)の「ヘッドバンドライト」は、手元を広範囲に照らすメインライト(ワイド照射)と、狙った場所をピンポイントに照らすサブライト(スポット照射)を備えている。USB充電式で、点灯時間はメインライトが約3~10.5時間、サブライトが約16.5~22.5時間。充電時間は約3.5時間。充電端子はUSB Type-C。本体の重さは約80g。頭周りのサイズは約46~65cmに対応。防水性能はIPX4。
アウトドアブランドのLOGOSのヘッドライトとあって、かなり実用的。まず両手が空くので、キャンプはもちろん被災時などに、移動する際には懐中電灯型よりも安全だ。また一般的なヘッドライトとは異なり、2種類のライトを搭載し、それぞれ強/弱の2段階で明るさを切り替えられる。
頭(おでこ)に装着すると、複数のLEDチップを並べたメインライトが正面に配置されている。点灯させると、周辺に人がいる場合には注意が必要なほど、ものすごく強力な光が発せられた。その代わり、暗闇の中を歩く時には弱モードでも前方の広い範囲を明るく照らし出してくれて、今回のラインナップ中では最も心強いと感じた。一方のサブライトはさらに強力で、照射範囲の狭い光を遠くまで照らせる。
いずれのライトも弱でも十分に周辺を明るく照らしてくれる。これでフル充電時には、弱モードでも10.5時間または22.5時間も照らし続けられるのだから、災害時にも心強い。
アウトドアブランドのLOGOSの製品とあって、キャンプなどでも活躍する。試しに、昆虫採集やキャンプに行った時に使ってみた。
昆虫採集時に息子に装着させると、遠くまで強力に照射できるサブライトを多用していた。「よくそんな遠くのクワガタを見つけられるな」と驚くほど、20mくらい先にいる虫を照らし出して見つけていた。もしかすると「ヘッドバンドライト」のおかげかもしれない。一方のメインライトは、夜中にキャンプ場や草むらなどを歩く際に、足元の広い範囲を照らし出してくれるので安心して歩けた。
ちなみにモーションセンサーで、手でボタンに触れることなくオン/オフできる機能を備えている。この機能については、意図していない時にライトがオン/オフしてしまうことが多かった。そのため、特にいつ充電できるか分からない災害時や、何泊もするキャンプでは、ボタンを押して操作する方が確実なように思えた。手が汚れているときなど、必要な場合に使うとよさそうだ。
フル充電時の点灯時間が長い! 「HEXAR コンパクトLEDランタン」
ドウシシャ「HEXAR コンパクトLEDランタン」の「UL3」と「UL4」は、コンパクトさと明るさを両立した、懐中電灯。2モデルの違いは、本体サイズ(長さ)のほか最大照度とバッテリーの持続時間。
今回は小さい方の「UL3」を中心にレビューした。同機の本体サイズは33×75mm(直径×高さ)、重量は約63g。照射距離は約9m(フラッシュライトモード)。バッテリー容量は1,000mAh。充電時間は約2.2時間。
特筆すべきは、その点灯時間の長さ。小さい「UL3」でも、フル充電時には最長120時間の長時間点灯が可能だ(「UL4」は380時間)。いずれもUSB充電式なので、ナイトハイクへ毎週末行く人でも1カ月に1度フル充電しておけば、いざという時に「バッテリーがゼロだった!」ということはないだろう。
実際に使ってみると、まずは電源のオン/オフボタンが硬い点は気になるところ。親指全体で押すよりも、爪を立てて押した方がスムーズに操作できる。明るさについては、まっすぐに照射する指向性は高くない(スポットライトのようには照らせない)。それよりも広い範囲をまんべんなく明るくするように設計されている。本体前方に、電球色と昼白色の計7つのチップLEDが配置され、モードボタンを押すと7種類の点灯モードを切り替えられる。
本体後方には、カラビナが配置されている。このカラビナ型のパーツを折り畳むとスタンドになり、本体を自立させて、ランタンとしても使える。なおカラビナ型のパーツは、プラスチックなので、耐久性は期待できない。バッグなどに吊り下げやすいが、強い衝撃を加えると壊れる心配があるだろう。
昆虫採集ではあまり活躍しなかったが、キャンプへランタンとして持っていくのには良いと思った。食事や就寝時にテントに吊り下げておくと、空間全体を明るく照らしてくれるし、IP66の防塵防滴仕様なので、少し濡れるくらいであれば壊れる心配もない。また小さく軽量で、かつバッテリーがなくなる心配が少ない点は、災害時などには大きな安心につながるだろう。
防災救助笛を搭載した、エレコムのLEDライト
エレコムのLEDライト「DE-KD03」は、防災救助笛(ホイッスル)を備えた乾電池式の懐中電灯。単四形乾電池1本で使えて、連続使用時間は約6時間。
本体サイズは約27×29×128mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約37g。LED灯数は1個。
筆者宅では、ホイッスル単体を防災バッグの外側に取り付けているが、こうしてライトに搭載されているのは、とても良いアイデアだと思った。例えば地震の際に家屋に閉じ込められた時や、アウトドアの遭難時などは、光と音で自分の存在を外部にアピールできる。声を張り上げるよりも、笛を吹いた方が体力も消耗しないだろう。
照明としての性能は、高くない。本体の前方にチップLEDを1つ搭載し、ライトの明るさは約35lm。照射した先の中央部が少し暗くなるなど明るさにもムラがあり、周囲を見渡すのに最低限の明るさといった感じだ。
キャンプや登山で使用する際は、予備の扱いとすべきだろう。ただし予備という考えで持っていくのなら、USB充電式ではなく、単四形乾電池1本で使えるのは、良い選択肢となる。付属のネックストラップで、首やバックパックにぶら下げておけば良いだろう。またテントやタープの天井にも吊るしやすい。
一般的なペットボトルと組み合わせることで、ランタンとしても使えるのは便利。本体の先端が、ちょうどペットボトルの飲み口に挿せる大きさになっているのだ。ぴったりと固定できるわけではないが、少々の揺れであれば外れない。水などで満たしたペットボトルに本体を挿して、明かりをつけると、ランタンのように光が広がる仕組みだ。ちなみにIP44の防塵防水仕様なので、少々濡れても壊れることはない。
またホイッスルは防犯にも使えそう。日没時間の早い冬などは、子供の学童バッグに付けておきたいし、女性が持っておくと心強く感じられるかもしれない。
ただし連続使用時間が約6時間と短めなので、常に予備電池を用意しておきたい。
停電になると自動点灯するパナソニックの「でかランタン」
パナソニックの「多機能でかランタン BF-BL45M」は、調光調色やUSB入出力機能を備えている。本体サイズは約160×110×175mm(幅×奥行き×高さ)、電池を含む重さは約800g。
箱から開けた時には「でかっ!」と思ったほど、本体サイズは大きい。明るさは最大800lmだが、懐中電灯のように前方を明るく照らしだす……というようには設計されておらず、広い空間を明るく照らしてくれるイメージ。例えば夜中に森の中や洞窟を探検するのには全く向いておらず、広い食卓を一台で明るくするのに向いている。懐中電灯ではなく、思いっきりランタンなのだ。
家族で大きなテントでキャンプをする時には、同機を持っていくと良いだろう。また「今夜は停電があるかもしれない」という、台風や嵐の接近時には、同機をUSBケーブルで自宅コンセントに接続しておくと良い。本体を消灯しておいても、停電を検知すると、自動で点灯してくれるからだ(停電時はUSBで給電されないので、乾電池は必要)。
操作は、本体のタッチセンサーで行なう。ライトの頂上部をポンッポンッと2回タップすると点灯/消灯し、長押しすると明るさを調整できる(調光)。光の色を変えるには、本体側面のセンサー部をタップする。慣れないうちは「あぁ……ボタン操作が恋しい」と思ってしまったが、慣れればタッチ操作でも支障はない。また、本体側面には上記の操作方法が記されている。ただし、できれば暗闇でも読めるように蓄光シールなどにしてほしかった。
被災時に役立つ機能は、もう1つある。USB Type-Aの出力ポートを搭載し、モバイルバッテリーとして使えるのだ。その際は、電池容量2,700mAhクラスのスマホを、使用する乾電池によるが、同社のエボルタNEOであれば約1.5回充電できるという。
複数のライトを防災向けに用意しておきたい
被災したことがないので体験談は語れないが、防災用のライトは複数タイプを用意しておくと良いと思う。
例えば今回のレビューでは、バッテリー内蔵の充電式と乾電池式の2タイプを使った。防災用としては、可能であれば2タイプを持っておいた方がいいだろう。例えば乾電池式であれば予備電池があれば、停電していてなおかつモバイルバッテリーなどがなくても、すぐに明かりを灯すことができる。さらに避難場所で乾電池が補充できるかもしれない。一方で、充電式であればモバイルバッテリーやポータブル電源を常に用意しておけば、すぐに充電できる。
ほかは好みの領域になるだろう。例えば台風が頻繁に通る地域に住んでいるのなら、停電を検知して自動点灯してくれるパナソニックの「多機能でかランタン」は、本当に心強いだろう。一方で、単一形乾電池3本が必要……つまり本体が重い同機を、避難時に持っていけるかは状況によるだろう。避難を前提に考えるのなら、別のライトも用意しておきたい。
個人的に次に持っておきたいと感じたのはLOGOSの「ヘッドバンドライト」。両手が空くので、移動時に安全だ。またスポットライトと広範囲を照らすライトの2種類を切り替えられるのもうれしい。
その一方で、点灯時間がもっと長いモデルがほしいという人もいるだろう。そうであれば、ドウシシャの「HEXAR コンパクトLEDランタン」をメイン機として用意しておくのも良いと思う。ただし、スポット的な光がないため、移動時を考えると一抹の不安が残る。
そうであれば、同機とエレコム「乾電池式LEDライト DE-KD03」の2台を持っておくと良いだろう。光の質が悪いとはいえ、それは読書や作業をするのには向かないという意味で、手元はもちろん遠くまでしっかりと明るく照らしてくれる。
どんな災害が最も想定されるのかや、近所に避難場所があるのか、何人で避難することになりそうかなどを考えて、よりフィットするライトを選びたい。