家電レビュー

電気ガスいらずの炊飯器が簡単おいしかった!

タイガー魔法瓶「魔法のかまどごはん KMD-A100K」

関東大震災(1923年9月1日)からちょうど100年の節目となった2023年。タイガー魔法瓶から「魔法のかまどごはん KMD-A100K」が、Web限定商品として登場しました。

本品は新聞紙と着火器具(マッチやライター)を使って簡単にごはんを炊ける屋外専用の炊飯器。電気・ガス不要のため、キャンプやバーベキューはもちろん、災害等でライフラインがストップした時にも便利な防災グッズとして役立ちます。直販価格19,800円で予約を受け付けており、発送予定は12月下旬以降とのことです。

慣れれば簡単においしいごはんを炊けるというメーカーのうたい文句が本当なのか? 地方在住の筆者が発売前に本品を借りて、さっそく検証してみました。

燃料は新聞紙! 直火で絶品かまどごはんが炊きあがった

タイガー「魔法のかまどごはん」は、白米(3合)を新聞紙1部(見開き9枚・36ページ分)で炊飯できるのが特徴です。電気やガスを使わず、かまどの中に投入した新聞紙にマッチやライターなどで火をつけ、お米と水の入った鍋を加熱して炊飯する仕組み。

直火での炊飯は火加減が難しいのでは? まして、新聞紙に火をつけるだけで、ちゃんとごはんが炊けるのか? と半信半疑だった筆者は、とにかく説明書通りにやってみようと思い、作業を開始しました。なお、この炊飯器は火を扱うため、今回は庭や畑など自宅の敷地内で安全を確認しながら炊いています。

本品は、かまど、すのこ網、五徳(ゴトク)、鍋、蓋の5つで構成されるシンプルな作りです。組み立てる際は、まず、すのこ網を、かまど底部の溝に合わせてセットします。

向かって左上から時計回りに鍋、かまど、蓋、すのこ網、五徳
すのこ網はかまど底部の溝に合わせてセットする

すのこ網を置いたら、五徳の位置決め突起を縁の背面部に施された溝に合わせて乗せ、最後に、お米と水を入れた鍋をセットして蓋をすれば準備完了です。

五徳の位置決め突起を縁の背面部に施された溝に合わせて乗せる
お米と水を入れた鍋をセットして蓋をした状態

各パーツを正しくセットすると、鍋と蓋がかまどから少し浮いたように見えます。この形は本物のかまどと同じ構造で、おいしいごはんが炊きあがるポイントでもあります。

かまどの外に出ている鍋の上部は温度が低いですが、直火を使うかまど内は高温になるため、上下で温度差が生まれます。この温度差によって鍋の中で対流が起こり、ごはんの甘みとハリが引き出されるというのが、かまど炊きごはんのおいしさの秘密。

また、よりおいしくごはんを炊くために、研いだお米と必要な分量の水を鍋に入れ、そのまましばらく置いて吸水させるのも欠かせません。吸水時間は、夏場であれば30~120分、冬場は40~180分が目安です。

研いだお米と分量の水を鍋に入れてしばらく吸水させる

吸水中は蓋を閉め、鍋の中にゴミや虫が入るのを防ぎましょう。

蓋を閉めておくとゴミや虫が入るのを防げる

新聞紙を入れて火をつける作業を繰り返すだけのシンプルな工程

お米がしっかり吸水したら、いよいよ炊飯です。

加熱する時は、薪の形に整えた新聞紙を、かまど前面にある2つの投入口に交互に入れて火をつけます。

片側の穴に薪状の新聞紙を入れて火をつける、反対側の穴に新聞紙を入れて火をつける。この単純作業を繰り返すだけでおいしいかまどごはんが炊き上がるといいますが、果たしてどうなのか。

本品は1~5合炊きに対応します。筆者は手始めに2合を炊いてみました。白米2合を炊くのに必要な新聞紙は、見開き7ページ半(30ページ分)。あらかじめ、見開きページを縦半分にカットし、1枚1枚を薪状に整えます。

白米2合を炊くのに必要な新聞紙(見開き7ページ半・30ページ分)
見開きページを縦半分にカットする

取扱説明書によれば、新聞紙を薪のようにする時は、見開きの半ページを対角線で半分に折り、折り目を下側にして中央に集めるようにくしゃっとつぶしてから、半分に折り曲げて軽くひねり、15cmほどの長さに整えます。必ずしも、この折り方を守る必要はないでしょうが、燃料として適した形になります。

半ページを対角線で半分に折る
折り目を下側にして中央に集めるようにくしゃっとつぶす
半分に折り曲げて軽くひねる
15cmほどの長さに整える

なお、新聞紙をつぶしすぎると燃えにくくなるので注意が必要です。かまどの投入口に入る程度の大きさであれば問題ありません。

これを繰り返して、白米2合を炊くのに必要な新聞紙の薪15本を完成させました。

白米2合を炊くのに必要な、新聞紙で作った薪は15本

燃料作りを終えた後は、いよいよかまど炊きです。

かまど炊きの注意点として、本品は「直火使用」「屋外専用」であり、室内やテント内では使えません。加熱中は炎が上がったり、煙やニオイが発生したり、灰が舞ったりするため、屋外であっても場所を選ぶ必要があります。

ご近所に迷惑がかからないようなスペースを確保できる広さの庭があるなら、そこでも使えると思いますが、火災のリスクがあるので使用する前に十分注意しましょう。

住宅密集地や、ベランダ、バルコニーなどでの使用はおすすめしません。炊飯時は周囲に着火しそうなものがないかを事前に確認しておくことも大切です。今回、火を使う作業は自宅の敷地内で、周りの安全を確認しながら行ないました。

屋外であっても場所を選び、周囲に着火しそうなものがないかをチェック

安全が確認できたら、かまど正面向かって右側の投入口に新聞紙を1つ入れます。奥まで入れたら、ライターやマッチなどの着火器具を使い、新聞紙の手前に着火。着火器具は、熱源と手元の距離を確保できる、チャッカマンなど火口が長いタイプのライターがおすすめです。

火がついて1分30秒経過したら、反対側の投入口に新聞紙を入れ、同じ要領で火をつけます。

かまど正面向かって右側の投入口に新聞紙の薪を奥まで入れ、手前に着火する
初めに入れた新聞紙に火がついてから1分30秒が経過したら、反対側の投入口に新聞紙を入れて着火する

以後、同様の作業を新聞紙の薪6本分繰り返します。

ここまで要した時間は約9分(1分30秒✕6本)、残りの薪は9本です。6本目に火をつけて1分30秒経過したら、残り9本のうち8本を1分間隔で交互に投入していきます。時間の計測には、スマートフォンのタイマーやストップウォッチ機能が便利。

ちなみに最後の1本は、蒸らし用に使う薪として残しておきます。

時間の計測にはスマートフォンのタイマーやストップウォッチ機能が便利
最後の1本は蒸らし用に残しておく

最初から数えて14本目に着火したら、そのまま10分待ちます。その後、最後の1本を投入口に入れて着火し、ごはんを蒸らします。

5分ほど蒸らせば炊飯完了。炊き上がったら蓋を開けてごはんをほぐし、余分な水分を蒸発させます。この時、全体が熱くなっているので、必ず軍手を着用して作業しましょう。

軍手を着用して蓋を開ける
ごはんをほぐして余分な水分を蒸発させる

蒸らし終わって蓋を開けると、ツヤのあるふっくらした白いごはんが炊き上がっていて感動しました。おこげもできていて、見た目から既においしそうなのです。

実際に食べたところ、その期待を裏切らず、甘みとハリのあるおいしいごはんを楽しめました。筆者の子供たちも「電気炊飯器のごはんと味が違う。直火で炊いたごはんの方がおいしい」と大絶賛。

量を増やして炊いたらどうなるのかと、4合炊き(見開き10枚・40ページ分の新聞紙が必要)も試したところ、変わらずおいしく炊きあがりました。

甘みとハリのあるおいしいごはんが味わえる

これで、難しい火加減もなく、初心者でも失敗せずに簡単においしいごはんを炊けることが証明されました。

電気もガスも使わず、新聞紙1~2部と着火器具さえあれば炊飯できる手軽さも魅力。キャンプやBBQなどのアウトドアシーンはもちろん、いざという時の防災グッズにもうってつけだと思いました。

炊き込みごはん・湯沸かし・煮込み料理にも使える!

タイガー「魔法のかまどごはん」は白米炊飯のほか、炊き込みごはんや湯沸かし、煮込み料理などにも使えます。

炊き込みごはんは、白米炊飯と同じ要領で作れます。ただし、炊けるのは白米3合分まで。また必要な新聞紙の枚数が、見開き1~2枚程度多く必要な点が異なります。

炊き込みごはんも白米炊飯と同じ要領で作れる

筆者が栗ごはんにチャレンジしたところ、栗のホクホク食感とほのかな甘みを味わえる、おいしい一品が完成しました。栗拾いができるキャンプ場で、収穫したばかりの栗を使って栗ごはんをかまどで炊いて食べるのもおすすめです。

栗もホクホクに仕上がる

さらにミネストローネ作りにも挑戦してみました。煮込み料理も白米炊飯や炊き込みごはんと手順は一緒ですが、蒸らし時間は不要。

ミネストローネ作りでは、具材をたっぷりと、容量ギリギリまで入れたので、ひとまず白米5合炊きに必要な新聞紙の量(見開き11枚・44ページ分)に、見開き1枚をプラスして薪を24本作成。白米炊飯と同じ要領で加熱しました。

煮込み料理にも対応

最後の薪を入れた後、火が消えてから中をチェックしましたが、食材にややかたさが残っていたため、新聞紙見開き4枚(薪8本)を追加して加熱。そうしたところ、中まで火が通って、おいしいスープができあがりました。

煮込み料理は使用する食材の切り方、分量などによって加熱時間が変わるので、何度か試してコツをつかむ必要がありそうです。

煮込み料理を上手に作るにはコツをつかむ必要がある

丸洗いできてお手入れ簡単!

一般的に、木炭や薪を使う直火調理は後始末がやや面倒ですが、燃料に新聞紙を使用する本品は、片づけの手間がかかりにくいのも特徴です。

本品の後片づけをする時は、熱が冷めてから蓋・鍋・五徳を取り外し、かまど内に残った灰の火が完全に消えているかをチェック。火が消えていない場合は、そのまま消えるまで待ちます。かまど破損の原因となるため、火がついたままだからといって水をかけるのはNGです。

熱が冷めてから蓋・鍋・五徳を取り外し、火が完全に消えているかをチェック

灰の火が消えていることを確認できたら、かまどの上に新聞紙をかぶせて投入口までしっかり覆います。その状態で蓋をするようにひっくり返して、灰とすのこ網を取り出します。

かまどの上に新聞紙をかぶせる
かぶせた新聞紙で全体を覆いながらひっくり返す
灰とすのこ網を取り出す

すのこ網を取り出したら、残った灰だけをそのまま新聞紙で包み、水をかけて濡らします。

残った灰を新聞紙で包み、水をかけて濡らす

水をかけながら、灰の入った新聞紙を縮めていくと、最終的に野球ボール程度の大きさになりました(白米2合炊き/新聞紙見開き7枚半を使用した場合)。廃棄するゴミの量が少ないのも本品の良いところ。ゴミを持ち帰らなければならないキャンプ場で使う時も重宝しそうです。

なお、ギュッと絞りすぎると新聞紙が破れて中身や黒い水が出てくるので気をつけましょう。

ゴミは野球ボール程度の大きさ

タイガー「魔法のかまどごはん」は、灰の後始末だけでなく、各パーツのお手入れも簡単でした。

蓋および鍋の内側はスポンジのやわらかい面、鍋の外側と五徳はスポンジの研磨粒子の部分を使い、水あるいはぬるま湯で洗ってすすぐだけで、汚れが落ちました。

蓋および鍋の内側はスポンジのやわらかい面で水洗いする
鍋の外側と五徳はスポンジの研磨粒子の部分で水洗いする

鍋の外側はススが付着して真っ黒でしたが、スポンジの研磨粒子部分でこすっただけで、元通りきれいになってびっくりしました。

ススが付着した鍋の外側
スポンジの研磨粒子部分でこすっただけで、元通りきれいになる

蓋、鍋、五徳は使用のたびにお手入れします。かまどとすのこ網は、汚れが気になった時に水洗いすればOK。どのパーツも、洗った後は十分に乾燥させましょう。

スタッキングしてコンパクトに収納できる!

タイガー「魔法のかまどごはん」は、パーツを重ねてコンパクトに収納・保管できるのもうれしいポイント。

かまどの中に、すのこ網、五徳(炊飯時と反対になるように上下を反転させる)、鍋の順番で収納していくと内部にすっぽり入ります。最後に蓋をかぶせればスタッキング完了です。

パーツを重ねてコンパクトに収納・保管できる

ちなみに、蓋の取っ手部分を下側にして、蓋の内側が上を向くようにかぶせると、高さ18cmほどになり、よりコンパクトに収納できます。

本品をスタッキングした状態で手持ちの電気炊飯器(5.5合炊き用)とサイズを比較したところ、ほぼ同じくらいの大きさに感じましたが、奥行きがない分、やや小さめの印象。キッチンのシンク下収納スペースに、ほかの調理器具と一緒に収納できるほどでした。この程度の大きさであれば、持ち運びも苦にならないでしょう。

電気炊飯器(5.5合炊き用)と同じくらいの大きさ
キッチンのシンク下収納スペースに、ほかの調理器具と一緒に収納できる

何よりも、新聞紙やライターといった身近なものを使って、おいしいかまどごはんを炊けたのが、よかったところです。

直火を使うため、調理中は目が離せませんが、かまどに丸めた新聞紙をくべる、火をつけるなど、普段できない作業を経験できるのも本品ならでは。安全に火を扱えるスペースを確保することが大事ですが、それをクリアできれば、便利に使えそうです。

炎のゆらぎ、立ち上る煙、すき間から出てくる蒸気、白米の炊けるニオイなどで五感も刺激され、電気炊飯器とはひと味違ったごはんを味わえるのも、魅力に感じられました。

電気炊飯器とはひと味違ったごはんを炊く楽しさを味わえた
野本 美樹