家電レビュー
タイガーの最上位炊飯器で炊きまくり16パターン! ご飯の美味しさに唸りっぱなし
2022年12月2日 08:05
日本人の主食の「ご飯」を、より簡単により美味しく炊き上げようと、炊飯器を製造するメーカーは工夫を凝らしてしのぎを削り、毎年のように心躍る炊飯器を発売している。そんな中から今回は、「タイガー魔法瓶100周年記念モデル」と銘打った最上位モデル「土鍋圧力IHジャー炊飯器 炊きたて 土鍋ご泡火(ほうび)炊き JPL-S100」を紹介しよう。価格はオープンプライスで、実売価格は現在121,000円前後。
最上位モデルだけに、基本メニューは15種類も選択できる。しかも白米炊飯だけでも火加減・食感が調整でき、70種類にも及ぶ銘柄炊き分けにも対応するため、選択肢は膨大になり、レビューするにあたり気が遠くなった。
だが、やはり色々炊きわけてみないことには始まらない! というわけで、白米の炊飯を中心に、銘柄炊き分け、無洗米など、様々な炊飯を試みた。さらに5.5合炊き炊飯器でありながら「一合料亭炊き」という少量に特化した炊飯機能も外せない。そこで、今回は合計16パターンを炊きまくって実際に味わった様子をレビューしていく。
どこから見ても美しい佇まいの炊飯器
実際に炊飯を始める前に、スペック的な情報を先に紹介しておこう。
加熱方式は、土鍋圧力IH・多段階圧力機構を採用している。本体サイズは約290×351×220mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約7.4kg。ふたはほぼ垂直に開き、その時の高さは約473mmとなる。炊飯量はメニューにより変化するが、最小0.5〜最大5.5合。最大消費電力は1,080W。
今回試用したカラーはスレートブラック。つゆ受けが無いため後ろ姿はスッキリ。艶を抑えた仕上げが、落ち着いた美しいた佇まいを醸し出す。後ろ姿が丸見えになるアイランド型のカウンターにも躊躇無く置けるだろう。カラーは他に、ミストホワイトがある。
内なべは波紋底の本土鍋で厚みは最大5mm。一般の土鍋よりも約2倍以上の強度だという。内なべの水加減の目盛りはくっきりと見やすく、洗米もできる。内側には、高温でも剥がれにくいフッ素コーティングを採用しており、5年保証を実現している。内なべの重さは1.1kgだった。
付属するものは、本土鍋のデザインに合わせた一合料亭炊き専用の中ぶたに、抗菌加工を施した自立するしゃもじ、麦めしにも対応する計量カップとなる。
内ぶたはマグネット式を採用しているので、軽い力で取り外しができ、本体のふたに吸いつくように取りつけができてとても扱いがラク。また、内ぶたは圧力用のボールの無いボールレス構造なので凸凹が少ない。
手洗いはもちろん食洗機・乾燥機に対応している。本体ふたの裏側に、風を土鍋内部に入れる「ハリつやポンプ」が組み込まれている構造だ。
この「ハリつやポンプ」があることで、加熱中に吹きこぼれそうになると内なべに風を送って、大火力を維持しながら吹きこぼれを抑制できる。風で吹きこぼれをコントロールできるようになったため、従来品よりも約1.5倍も長く1.25気圧の圧力を加えられるように進化し、お米の糊化をより促進させるという。
「ハリつやポンプ」は仕上げの際にも活躍する。蒸らし中に発生する過剰な熱と蒸気を取り除いて、ご飯のハリと弾力を引き出す機能も果たす。
かまど炊きのような火力を、風を利用して吹きこぼさずに維持。高い蓄熱性のある土鍋に圧力をプラスし、風を送って蒸らし時の水分を制御する。甘み・旨味・ふっくらとしたハリが揃う「美味しい」ご飯を炊き上げる、という「炊きたて」で炊いたご飯はこれ如何に!
直感的に操作できるタッチパネル
メニューの選択や火加減などの設定は、フタ上部にあるタッチパネルで操作する。パネルに触れるとホワイトバックライトが点灯。文字も大きめでレスポンスも良く、視認性がとても良い。
選択するメニューによって操作は異なるので、ここでは一例として、白米の設定から炊飯スタートまでを紹介しよう。
白米を炊飯するなら[白米]をタッチ。するとパネルが切り替わり、ここで[銘柄指定]、[火かげん]、[炊きわけ]のボタンが表示される。それぞれを選び、パネル下にある[炊飯/無洗米]ボタンを押せば炊飯が始まる、といった具合だ。表示される時間は、炊きあがりまでの時間を表し、カウントダウン方式となる。
最後の設定は保存されるので、次回が同じ内容ならば[炊飯/無洗米]ボタンを押すだけで炊飯をスタートできる。
間違えた時は[←戻る]で最初からやり直せばいいだけなので、最初こそやや戸惑いがあるかもしれないが、数回操作したあとは直感的にできるだろう。
唸るほど美味しい白米炊飯。標準メニューでもツヤピカ
スペックや操作方法がざっくりわかったところで、いよいよ炊飯へと進もう。ここではいわゆる「白ご飯」を、炊飯量や食感を変えて比較する他、「炊きたて」の1合炊飯専用メニューなど、10パターン試す。
選んだお米は、近所のスーパーで購入した新米のコシヒカリ(洗米タイプ)。このコシヒカリを中心に様々な炊飯をした。
このレビューでは炊飯量は2合をメインにした。理由は、1度の炊飯量が2~3合(4〜6膳)の世帯が多く、また、様々な銘柄米の使い切りパックが、2合サイズのものが多かったからだ。一方で、今回レビューする「炊きたて」は、白米の場合は5.5合まで炊飯ができるので、後ほどその点もしっかりチェックする。
水量は一般的な炊飯の基本に則り、米1合につき200mlとした。内なべに洗米後に水をよく切った2合の白米を入れ、400mlの水を注ぎ入れたところ、水量は内なべのラインよりも少し下になった。今回はこの水量で統一した。この時はボウルとザルで洗米したが、もちろん本土鍋の内なべでも洗米できる。
まず基本の炊飯を試みた。ここでは「火かげん(おこげ)」は中の標準、5段階で設定できる「炊きわけ(ねばり調整)」は真ん中の標準のままで、銘柄指定もせず、保温もなしにした。[炊飯/無洗米]のボタンを押すと炊飯をスタートする旨のアナウンスがあり、炊きあがりまでの時間は“約51分”と表示された。炊飯の最初は浸水の時間に充てられる。その時の消費電力を計測してみると、38〜900Wあたりで行ったり来たりを繰り返していた。
スタートから27分後、表示が“約24分”となったところで「カタンッ!」と音がし、パネルには[圧力]と表示されて加圧がスタートした。その時の消費電力も可変するが、最大867Wだった。3分後の“約21分”で湯気がたっぷり出始め、徐々に炊飯の良い香りが漂ってくる。ときおり[ポンプ作動]が表示され、内なべに風が送り込まれているのがわかる。
加圧が始まってから12分後、“約12分”と表示された頃、[圧力]の表示が消えた。以降は湯気が出たり止まったりを繰り返す。あとは蒸らしの時間だ。この時も[ポンプ作動]が表示され風が送り込まれているようだ。時間通りに、8回のブザー音と「ごはんが炊きあがりました」という音声で炊飯終了した。
ワクワクしながらふたを開くと、盛大な湯気の中からふっくらと炊きあがったご飯が現れた。湯気は炊きたてご飯の良い香りがし、ご飯はツヤピカ! この時点でもう美味しい。
お茶碗に炊きたてのご飯をよそい、心落ち着けてから一口。甘い香りが鼻を抜け、ふっくらと甘くしっとりとしたご飯は、土鍋で上手に炊き上げたそのもの。もっちりとした噛みごたえと、芯までふっくらした炊きあがりに、心から美味しいと唸ってしまう。おかず無しで、一口、さらに一口と箸が進んでしまうほど美味しく、レビューを忘れて思わず幸せな気分になった。標準の炊飯で、しっかりご飯の美味しさを堪能してしまった。
ご飯をまだ熱いうちに全てさらった内なべには「おねば」がたっぷり付いていた。これはしっかり糊化された証拠だろう。
しゃっきり、もっちりを炊き分け。炊飯工程に大きな差
次は同じお米と水加減のまま、しゃっきりともっちりの「炊きわけ」を試みた。炊きわけは、「しゃっきり/ややしゃっきり/標準/ややもっちり/もっちり」の5段階で調整できる。すでに標準で炊飯したので、ここではハッキリと差がわかるように、「しゃっきり」と「もっちり」に設定してそれぞれで炊飯した。
「しゃっきり」の炊きあがり時間は「標準」と変わらず約51分で、「もっちり」は53分と炊飯時間が変わる。
炊飯前にわかるのは、炊きあがりまでのたった2分の差のみだが、炊飯の様子を観察したところ、圧力のかけ方が大きく異なるのがわかった。
「しゃっきり」はとうとう圧力はかからなかった。一方「もっちり」は、“約25分”で圧力がスタートし“約12分”でストップ。つまり加圧は13分と、「標準」よりも1分長く圧力がかかっていたことになる。
炊きあがった食感、見た目、香りなどを比較してみよう。
「しゃっきり」の炊きあがりもやはりツヤピカ。ふっくらと炊きあがっている、香り、甘さともに軽く、口の中でパラッと粒離れよくほぐれる印象だった。噛みごたえは米粒の粒状感がありさっぱりとした印象が強い。
対して「もっちり」は「標準」よりもよりふっくらで柔らかく、モチっとした食感が強い。お粥を炊いている時のような甘い香りがより強く、噛むと米粒の輪郭を感じながらも、歯ごたえはふわっと柔らか。噛み進むとねっとりに近い食感に変化する。
ご飯をさらった後の内なべにもその差は現れる。「しゃっきり」のおねばは少なく、厚みも薄いのに対し、「もっちり」は多く、分厚い。「しゃっきり」「標準」「もっちり」と並べてみると、その違いが視覚的にもわかるほどだった。
ここまで3種類の炊きわけをして、それぞれがとても美味しいが、はっきりとした違いが感じられた。「標準」はバランス良くオールラウンドな印象で、お弁当にも向く炊きあがりだった。しゃっきりはお刺身や魚、丼ものやカレーにとても合いそう。もっちりは濃い目の味付けのおかずにも負けないご飯の深い味わいが楽しめる。食事のおかずに合わせて、水加減は全く変えずにタッチ操作だけで炊き分けが簡単にできるのはとても便利。色々試して、好みを探る楽しさもあるだろう。
炊飯量を変えて炊く(1) 標準1合と「一合料亭炊き」
次は同じお米を使って炊飯量を変えて炊飯した。炊きわけや火加減は標準のまま、先に1合で炊飯し、その後メニューの[一合炊き]と比較した。
標準設定のままで、まず白米1合炊飯を行なった。炊飯量にかかわらず、炊きあがりまでは51分と、2合時と同じのままだ。違いは加圧の時間が2合時よりも1分少ない11分だった。
炊きあがりはお見事。5.5合炊きの炊飯器なのに、炊きあがった様子はカニ穴までできており、1合だけでもふっくら。2合炊いた時と大きな差が感じられないほど、甘い香り、ふっくら感、いい粘りが揃い、水っぽさも感じられなかった。いただいてみて、わざわざ専用の一合炊きが必要なのかしらと思うほど十分美味しかった。
続いて一合料亭炊きと称する[一合炊き]で炊飯する。このメニューは0.5合から1合に特化したものだ。炊飯時、本土鍋に中ぶたを用いて、5.5合炊きの内なべ空間を物理的に1合炊きに最適な空間に小さくする。
標準の1合と同じ白米と水を入れて中ぶたを載せ、メニューから[一合炊き]を選択して[炊飯/無洗米]ボタンを押してスタートする。炊飯時間は53分と表示された。なお、[一合炊き]は、[火かげん]の調整以外、炊きわけと、後に行なう銘柄指定には非対応だ。
炊飯が始まって残り時間が“約27分”で圧力がスタートし、“約12分”でストップした。加圧時間は15分で、標準1合時よりも4分長かった。
炊きあがって中ぶたを取ると、その様子は標準1合よりも、粒がさらにふっくらして見える。いただいてみると、一口めから口いっぱいに甘みがふわりと広がり、もっちりとした粘りにふっくらでありながらコシのある噛みごこちが非常に良い。
標準1合も十分に美味しかったが、一合料亭炊きは粒の芯までふっくらとしており、あきらかにその上をゆく印象だ。なんと言っても、ご飯の美味しさがより際立ち、一膳をおかず無しで軽くパクパクいただいてしまうほど本当に美味しかった。また、常温に冷めたものも食べ比べてみると、一合料亭炊きの方がより甘みが強く、米粒にハリがあり、冷めてもより美味しかった。
標準1合でも十分美味しいと思っていたが、[一合炊き]をいただいてみてハッキリと、コレは専用メニューになって然り。間違いなく、ご飯それ自体がごちそうになるメニューだと実感した。
炊飯量を変えて炊く(2) 最大炊飯量でも美味しく炊ける?
本製品は「5.5合炊き」なので、最大量の炊飯も試してみた。この炊飯量を試した理由は、昔使っていた5合炊きの炊飯器に感じた経験からだ。その炊飯器で2~3合の量を炊飯した時はとても美味しかった。だが最大量の5合で炊くと、炊きあがった内なべの上の方はお米が立って美味しくても、鍋底の方は内ぶたの水滴が溜まって水っぽくふやけていたり、味も今ひとつということがあったのだ。
お米を5.5合計り、基準の水量を入れて「標準」で炊飯。炊飯スタート時は“約51分”と表示されていたが、圧力がかかる直前に炊飯時間が延長され、実際には60分ほど炊飯時間がかかった。炊きあがってふたを開けると、内なべギリギリまでご飯がせり上がっていた。表面はツヤピカでいかにもふっくらとしている。
普通ならざっくりかき混ぜるところだが、今回は内なべの中央から真下へ半分のご飯を取り除き、断面の様子を観察した。そして、表面の外周、表面の中央、そして鍋底と、部分部分のご飯の見た目を比較し、食べ比べてみた。
まず驚いたのは、炊きあがった直後でも鍋底には水滴などでふやけたご飯が全く見当たらない。しかも表面、鍋肌付近、底面とどこのご飯を見ても一切潰れておらず、粒が揃いお米が立っているのはお見事! 表面外周、表面中央、鍋底から取り出したご飯を並べてみても、それぞれの違いがわからないほど、均一に見える炊きあがりだった。
それぞれをいただいたが、2合炊飯時にいただいたものと差がわからないほど、どの位置のものもとても美味しかった。炊飯量を増やしてもお米がしっかり対流した証拠と言えるだろう。このようなところにも、大火力を維持する強みが現れているのではないだろうか。
4つの銘柄を炊き分け。無洗米も深い味わいに
炊きたて JPL-S100の1つの特徴である「銘柄指定炊飯」を4種試してみた。ここでは無洗米の炊飯にも触れよう。
用意した銘柄は、ここまで使用した“甘みと強い粘り”が特徴の「コシヒカリ」と、“コシヒカリに改良を施したリーズナブル”な「あきたこまち」の他、無洗米の銘柄2合パックの“白い粒が特徴でしっかりとした粒感と粘りが両立している”という「雪若丸」に、“低アミロースで粘りが強く、柔らかでツヤが特徴”の「ゆめぴりか」の合計4種類。
銘柄設定は先にも触れているがとても簡単だ。銘柄のキーはパネルの[白米]を選択して現れた画面の[銘柄指定]をタッチし、その次に現れる画面から選ぶ。コシヒカリ、ゆめぴりか、あきたこまちはすでに専用ボタンがあるので、選択して[決定]をタッチして設定。雪若丸はプリセットされていないので、[No.指定]をタッチして現れる次の画面で、取扱説明書の「銘柄炊きわけ一覧表」に記載されている雪若丸の番号「64番」を、[時]と[分]を利用して数値入力し、[決定]する。
また、炊飯スタート時、洗米の必要なコシヒカリとあきたこまちは、[炊飯/無洗米]ボタンを1回押すだけだが、無洗米のゆめぴりかと雪若丸は[炊飯/無洗米]を続けて2回押す。これでパネルに[無洗米]のマークが表示されて無洗米モードの炊飯が始まる、といった具合だ。無洗米炊飯を選択すると、炊飯時間が銘柄によって数分伸びる。
話は前後するが、炊飯量は2合パックに合わせて4種類全て2合で統一している。また、無洗米炊飯の注意点は、内なべにお米と水を入れたあとに米が水面に浮かないように軽く混ぜてから炊飯ボタンを2回押すことだ。
銘柄指定した場合、炊飯時間と圧力をかける時間はそれぞれ異なった。コシヒカリの炊飯時間は51分・加圧は12分。あきたこまちの炊飯時間は63分で・加圧は11分、無洗米のゆめぴりかの炊飯時間は55分・加圧は9分、無洗米の雪若丸の炊飯時間は65分・加圧は10分となった。
炊きあがったそれぞれをいただいた。
甘みが強いコシヒカリ
銘柄指定で炊きあげたコシヒカリは、炊きあがりはツヤピカで、香りが標準時よりも甘く強い。いただくと、コシヒカリの特徴の甘みと粘りがよりはっきりと感じられ、鼻から抜ける香りがより強い印象だった。本当に美味しくて、ご飯だけで一膳堪能してしまうほど。炊飯時間は標準炊飯と変わらないので、コシヒカリなら銘柄炊きを推したい。
小粒のあきたこまちもふっくら炊きあがる
あきたこまちは標準炊飯よりも12分も長い炊飯となった。炊きあがった様子はツヤピカで、コシヒカリよりもスッキリとした味わい。粒がやや小さい印象のあきたこまちだが、銘柄炊飯した場合は粒の小ささは特に感じないほど、ふっくらと炊きあがった。土鍋炊飯らしい、お米の甘さ、心地良い粘りもしっかりと引き出された印象だ。お弁当にして冷めたものも、モチっとした食感が感じられ、美味しくいただけた。
しっかりとした粒感の雪若丸
まず白くピッカピカに輝く炊きあがりに目を奪われる。いただいてみると、パッケージには“食感はやや硬めでサラサラとモチモチの中間、食味はあっさりと甘いの中間”とあったが、甘みが思いのほか強く、粒が大きくしっかりした粒感。それでいてふっくらで適度な粘りがあって美味しい。おねばもしっかり感じられ、香りもとても良い。炊飯時間は標準よりも14分も長くなるが、是非銘柄指定で炊飯したい。
いつものゆめぴりかも一際美味しく
低アミロースで食感がモチっとして柔らかで粘りが強いという特徴が十分に引き出されていた。いただいている最中から甘い香りが鼻から抜け、柔らかで食べやすいのにお米の輪郭がわかる歯ごたえも良い。それでいて、もち米のような心地良い粘りが感じられ、美味しさが際立っていた。
かつて無洗米は何度かいただいたことがあったが、粘りが弱く、なにかあっさりで、やっぱり洗米タイプの方が美味しい、という印象が残っていた。ところが炊きたて JPL-S100の銘柄指定で炊きあげたところ、そのイメージは払拭されてしまった。雪若丸とゆめぴりかのいずれも、内なべにおねばが残るほど、粘りがグッと引き出され、深い味わいをどちらにも感じられた。え、これ、無洗米? と思うほどとても美味しかったのは嬉しい発見だった。
ここまで炊飯量や炊きわけに銘柄指定、そして一合料亭炊きの一合炊きと、10パターンの白米炊飯を試してきた。食事の中心となる主食のご飯が、さまざまな炊き方を選んでも、それぞれがとにかく美味しいのを実感した。
白ご飯以外も見事! 炊き込みご飯は贅沢な美味しさ
白ごはんの次は雑穀や麦めし、炊込みご飯など、白ご飯以外を6パターン試そう。
雑穀や麦めしももっちり
雑穀や麦など白米に追加して炊飯するものは炊飯前に混ぜ込まず、洗米した白米の上にのせて炊飯するのが本土鍋を用いた炊きたて JPL-S100のルールだ。
ここでは、雑穀も麦も計量済みで小分けパックされた手軽な市販品を利用した。水量の調整は商品に記載された作り方に則った。
なお炊きたて JPL-S100は最大5.5合炊飯ができるが、雑穀は最大3合、麦めしは1割なら3.5合、3割なら3合までの炊飯ができる。したがって、この項の白米の量も2合に統一している。
【雑穀ご飯】
雑穀の炊飯は白米と変わらない。洗米したお米に基準の水を内なべに入れ、その上に雑穀をのせて炊飯するだけだ。ここではコシヒカリを使っているので、銘柄指定で炊飯した。炊飯時間は51分で、加圧は12分だ。
白米の上に雑穀をのせただけで炊飯したが、雑穀の色が白米全体についていた。さっくりと混ぜ合わせてからお茶碗によそった。雑穀の色をまとった白米もツヤピカで、香りも良い。
いただくと、コシヒカリの甘みと粘りに様々な16種類の雑穀のコクが見事に融合。食感も楽しく、滋味深く美味しいので、思わず噛みしめながらいただいてしまった。身体に良いものを摂っているという充実感も広がる。
残った雑穀ご飯に軽く塩を振りおにぎりにし、10時間後の翌日にいただいた。もっちりとした食感があり、コシヒカリの甘さと雑穀の風味がしっかり感じられて冷めてもとても美味しかった。
【麦めしもち麦ご飯】
洗米した2合のコシヒカリに基準の水を入れ、その上に市販の個包装されたもち麦50gを2本(100g)、ならしながらのせる。300gのお米に対し、もち麦100gなので3割麦めしとなる。
もち麦50gに対し100mlの水を追加するとパッケージにあったが、内なべの3割麦のラインをかなり超えてしまいそうなので、内なべの「麦めし3割」のラインを少し超えるぐらいに調整した(麦100gに対し、水180ml)。
炊飯は、パネルから[麦めし]をタッチし、次の画面で[もち麦]選び、[炊飯/無洗米]を押して炊飯をスタート。もち麦の炊飯時間は、押麦よりも3分長い65分となる。
炊飯が進み、炊きあがりまで“約25分”で加圧がスタートし“約6分”で圧力表示が消えた。約19分間の加圧は白米炊飯に比べて長い。炊きあがりのもち麦の様子はふっくらツヤツヤ。白米の粒が潰れないように大きく混ぜてから、お茶碗によそった。
いただいてみるとこれがとても美味しい! かつては麦でかさ増し的なイメージがあったが、これはもう1つのメニュー。毎日いただいても飽きが来ない美味しさだ。もっちりと粘りのあるコシヒカリに、プリッとふっくらのもち麦が加わり、食感の楽しさも味わえる。見た目もツヤピカで香りも良く、白米同様に心地良い咀嚼ができる。積極的に豊富な食物繊維が摂取できる美味しいメニューになるだろう。
市販の素で見事なおこげの炊き込みご飯
次はやはり外せない炊き込みご飯だ。炊き込みご飯の最大炊飯量は3合まで。取扱説明書に、具は1合に対して70g以下としているが、今回は個人的に気に入っている「材料」と「だし」が別々に包装された市販品を利用。米はあきたこまちを選んだ。2合に基準の水を内なべに入れ、3合用の炊き込みご飯の材料とだしの2/3を加えた。
メニューを選ぶ際に、ここで痛恨の大きなミス。炊き込みご飯の専用メニューがあるのに、取扱説明書を読み誤って[白米]で炊飯してしまった。ごめんなさい。
……と、炊き込みご飯の紹介は止めようかと思ったが、具材に火の通った市販品を使ったため[白米]メニューでも見事に美味しい炊き込みご飯ができたので、[白米]の応用編としてその様子を紹介しよう。
炊き込みご飯は、だしが焦げたところが特に美味しいので、[火かげん]を最も強い3番目を選び、もっちりとした食感を出したいので[炊きわけ]を4番目の「ややもっちり」を選び、炊飯へと進んだ。炊飯時間は銘柄指定のあきたこまちに近い、約60分と表示された。圧力は、炊きあがりまで“約34分”でスタートし“約17分”で表示が消えた。約17分間の加圧で、炊きあがりに何一つ問題は無かった。ご飯はツヤがあり、鍋底にはキレイな“おこげ”が付いていた。全体を軽く混ぜ合わせ、茶碗によそう。
いただいてみると、だしを吸ったご飯はもっちりふっくらで良い粘りがあり、具材とよく馴染む。米の芯まで心地良い弾力がありとても美味しい。おこげは少しカリッとした食感で香りよく、風味良くぺろりといただいた。結果オーライで恐縮だが、市販品を使うなら[白米]メニューでもとても美味しい炊き込みご飯が味わえる。
なお、[炊き込み]メニューは[火かげん]の調整ができるだけでなく、中ぶたを使う[一合炊き]にも対応している。恐縮だが、ここでも誤って[白米]の[一合炊き]で残りの具材を使って炊飯してしまった。それでも、一合炊きで炊きあげた炊き込みご飯は、さらに贅沢に感じられるほど美味しかったのを付け加えておきたい。
せっかくのレビューなのに重ねがさね申し訳ない。今回はもともと材料に火が通った市販の素を使っているため[白米]メニューで美味しく炊飯できたが、生の具材を使うなら、迷うことなく[炊きこみ]メニューを選んでくださいね。
玄米もぷっくり、モチっと炊ける
本土鍋を採用している本製品は、もちろん玄米メニューも装備している。玄米の最大炊飯量は3.5合。意外なのは、炊飯時に圧力を使わない点だろう。その分、浸水から炊きあがりまで80分の時間を要する。白米と比べると随分長い炊飯時間に感じるが、普通に土鍋で炊くのであれば浸水に5〜6時間以上は必要なので、たとえ80分かかっても洗米してすぐ炊飯できるのは便利だ。
玄米の水量は、玄米1カップに対して1.6倍の約300ml。もちろん内なべには玄米用の目盛りもあるので簡単だ。玄米炊飯の量は2合とした。操作はパネルの[玄米]をタッチし、[炊飯/無洗米]のボタンを押せばスタート。浸水する時間も必要無く、あとは炊きあがりを待つだけだ。
炊きあがった玄米は、圧力無しでもぷっくりと炊けていた。また土鍋で最適な強い火力でうまく炊きあげた時に見られる「カニ穴」までできていた。鍋底から返しながらほぐすと、パラリとムラ無く上手に炊けていた。
いただくと、玄米なのにパサパサ感は抑えられ、粒は大きめでツヤもある。口に入れた時から粘り気が感じられ、プチッと噛めば中はモチっ! 咀嚼していくにしたがい、ほのかな甘味が広がり美味しい。米の6倍の食物繊維を摂れる玄米を美味しく、より手軽に普段の食事に取り入れられそうだ。
おかゆもおまかせで滋味深い味わい
メニューを使った炊飯の最後におかゆを炊いた。炊飯量は、全がゆなら0.5〜1.5合、水をさらに多く入れる五分がゆなら0.5合までだ。今回はコシヒカリを0.5合使った「全がゆ」にした。水量は内なべ内の「おかゆ・全・0.5」目盛りに則った。
全がゆ、五分がゆにかかわらず、操作はパネルから[おかゆ]をタッチし、[炊飯/無洗米]のボタンを押すだけだ。おかゆだと圧力は作動しない。炊飯を開始すると、炊飯時間は約59分と表示された。
炊飯が始まり、残りの時間“約20分”の頃、おかゆの甘い香りが部屋に広がり始める。そして表示時間通りに炊きあがった。
一口いただいてほっこり。なんともホッとする味だ。全体にあっさりとした仕上がりで、ほんのりと優しい甘み、滋味深い味わいが口にふわりと広がる。塩を加えずとも、おかゆだけでとても美味しい。米粒は歯を使わずにふわっと崩れるほど柔らかく、多めの水分にこっくりとした甘さが滲み出ている。0.5合の全がゆは2人いただくのに十分な量になるが、あまりにも美味しくて撮影後にすっかりたいらげてしまった。
なお、今回は予約炊飯を行なわなかったが、おかゆも予約炊飯ができる。ときには朝粥を楽しむのもオツだろう。予約炊飯は「早炊き」と「炊込み」以外のメニューに対応している。
保温機能も十分。12時間置いてもみずみずしい
様々な炊飯を行なってきたが、最後の最後は12時間の保温をした様子をレポートしよう。保温の設定は、炊飯メニューが並ぶパネルで行なう。炊飯前に設定していなくても、炊飯が終わってから保温を選択することもできる。
銘柄指定であきたこまちを2合炊き、炊きたてと保温12時間後のものを食べ比べてみた。炊きあがった白米を底からざっくりと返し、内なべの中央に寄せて保温した。
12時間後、ふたを開けた瞬間フワッと蒸気があがる。さすがに炊きたての時のような甘い香りは立ち上らないが、長時間保温したようなニオイは感じられず、ご飯も黄色っぽさはほとんど感じられなかった。その温度は70℃前後で十分にアツアツだ。
いただいてみると、米粒はやや硬くなった印象はあるが12時間後とは思えないハリとツヤもある。もっちりとした食感はそのままで、米の甘みが感じられて十分に美味しくいただけた。前夜に炊いて保温しても、長時間保温したとは思えないほど、朝食にお弁当にと十分美味しくいただけるだろう。保温は「おかゆ」以外のメニューに対応している。
汚れにくく使い勝手がいい
様々な炊飯を繰り返して感心したのは、とにかく周りが汚れないのだ。炊飯直後も保温後も、ふたを開けた時に水滴があまり落ちないので、炊飯器周辺はもちろん、土鍋外周にあたる本体の上枠にも水滴がほとんど落ちない。落ちてもサッと拭き取れるほど少しだけなので、キレイな状態を簡単に保ちやすい。炊飯中に吹き出す蒸気は細く、蒸気孔周辺も汚れにくい。日常的なお手入れは、使用後に内なべと内ぶたの洗浄と、本体は拭き取る程度でOKだ。
さらに、抗菌加工を施した自立するしゃもじの使い勝手がすこぶる良い。ご飯がくっつきにくいだけでなく、内なべの鍋肌の曲面にピッタリと沿い、柔らかいご飯を潰さずに底から返したり、よそったりできる。大変細かな点だが、毎回気持ちよく使えた。
また、今回は保温も試したが、食べきる量の炊飯ならわざわざ保温は要らないと感じた。というのも、内なべは蓄熱性の高い本土鍋で、一合炊き用の中ぶたが付いているので、本体から出して食卓の上に置くおひつのように使える。食事が終わるまで、内なべだけでも十分温かいご飯をキープしてくれたからだ。
目新しいと思ったのは、差し込みプラグを抜いている状態でも現在時刻や予約時刻などを稼働・記憶する電源となる「リチウム電池」を自分で交換できる点だ。今までは内部電池が切れると、修理扱いで交換する手間があったが、本製品は自分で簡単にできる。こういうのはありがたい。また、本体底には内なべに風を送る「ハリつやポンプ」の吸気孔と、IHヒーターの熱を排出する排気孔があるので、定期的にホコリやゴミを取り除こう。
最大の欠点は……美味しすぎる!
タイガーの最上位機種だけに、気軽に購入できる価格ではない。だが、炊きたて JPL-S100で炊きあげたご飯をいただけば、イヤでもその価格に納得せざるを得ないだろう。レビューのために集中して何度も炊飯を繰り返してはいただいたが、香りが良く、米の芯の芯までふっくらと炊きあがったご飯に毎回感動し、つい誰かを呼び寄せて振る舞いたくなるほど美味しかったからだ。
そんな自分はどちらかというと“硬めのゴハン”が好きなのだが、本製品はむしろその逆の“ふっくらやわらかめのご飯”。にもかかわらず、ふっくらなのにハリがあり、柔らかなのに嚙み心地が良いので、食べ進むにつれどんどん好きになってしまった。「硬め派」を返上しても構わないと思うほど、美味しさに感服してしまうくらい説得力があった。
最大の欠点は、おウチでいただくご飯が美味しすぎるため、外食で「ライス」をいただくと、「ああ、コレが『炊きたて』で炊いたご飯だったらどんなにいいか……」と、つい思ってしまうところだろうか。
タイガー「炊きたて 土鍋ご泡火炊き JPL-S100」は高価。だが、手に入れたその日から、いつもの食事が御馳走へ変わってしまうほど、美味しいご飯が堪能できる。自宅で食事をする満足感と充実感に、幸福感までもがドッカンと高まることだろう。ご飯好きの方には最大限にお勧めしたいのが、タイガーの「炊きたて」だ。