老師オグチの家電カンフー

2023年は違いがわかる人の「サードウェーブ炊飯器」がダバダーっと出てくる予感

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
炊飯器のサードウェーブになるか? バルミューダ「BALMUDA The Gohan」

年末なので来年のトレンド予測などしてみます。2023年は「サードウェーブ炊飯器」に注目が集まるでしょう。

サードウェーブ炊飯器って何? サードウェーブ、つまり第3の波で、炊飯器の歴史の転換点になりうる潮流です。もちろん、サードウェーブコーヒーになぞらえて作った言葉です。

コーヒーのファーストウェーブは、流通の発達により大量にコーヒーが消費されはじめた時代、セカンドウェーブはスターバックスに代表される深煎りコーヒーの時代。日本でもシアトル系コーヒーショップが席巻しました。

そして、サスティナビリティを重視した豆選びと、豆本来の味わいを引き立てる浅煎りのムーブメントがサードウェーブコーヒーです。意識高いコーヒーショップが続々とオープンしました。

炊飯器の場合は、昭和の時代に一気に普及したマイコン制御の炊飯器がファーストウェーブ、熱源にIHを使用し圧力をかけて炊くことで、ごはんの粘りと甘味を引き出す圧力IH炊飯器がセカンドウェーブにあたります。

そして、非圧力系で粒立ちが良く、お米本来の味が楽しめるよう進化したのが、サードウェーブ炊飯器というわけです。

内釜と外釜の間に水を入れる「BALMUDA The Gohan」。この水が水蒸気となりお米全体にまんべんなく熱を加える

お米による味の違いもはっきりと分かるので、お米の銘柄選びも楽しくなります。サードウェーブコーヒーとの共通点にお気づきいただけたでしょうか。

具体的な製品としては、バルミューダ「BALMUDA The Gohan」の新モデルやティファール「ザ・ライス 遠赤外線IH炊飯器」が2022年に登場しました。両社は昔からの炊飯器メーカーではない新興勢力であり、偶然にも「ごはん対ライス」の対決になっています。

「BALMUDA The Gohan」の新モデルは、前モデルに比べて火力をアップ、外釜の蓄熱性や蒸気口の構造を見直すことにより、しっかりとお米に火が通り、誰が食べても美味しさを感じられる炊飯器になっている
こちらはティファールの「ザ・ライス 遠赤外線IH炊飯器」

これらの炊飯器では、しゃっきりとして粒立ちが良いだけでなく、甘味やうま味もごはんのなかにしっかりあり、噛むほどに美味しさが感じられるごはんが炊けます。非圧力の炊飯器は甘さがないから嫌いという人も、機会があれば試食してみてください。

「BALMUDA The Gohan」で炊くと適度な噛みごたえがあり、お米の品種ごとの違いもしっかり感じられる。まずは和食や卵かけご飯のようなシンプルな料理で味わってみてほしい

円安やロシアのウクライナ侵攻の影響で小麦粉が値上がりし、国産のお米が見直される中、おうちの炊飯器を買い替えるのもオススメです。また、これらの炊飯器で炊いたごはんは冷めても美味しく、お弁当やおにぎりにも向いています。節約や節電にもつながると考えれば、お財布の紐も緩むかもしれません。これまで炊飯器を作り続けてきた国内メーカーがどう迎え撃つのかにも注目です。

「BALMUDA The Gohan」は、玄米も上手に炊ける。圧力鍋で炊くほどやわらかくはないが、しっかり火が通っており、適度なやわらかさと玄米本来の味わいが感じられる
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>