年末特別企画

炊飯器が当たり年! 大好きな“硬めごはん”が充実してきた【私の2022】

今年は様々な炊飯器のごはんを試食しました

2022年は炊飯器の当たり年でした。超個人的な感想ですが。コロナ禍になってこの2年間、試食付き炊飯器発表会はほぼ行なわれず、われわれ家電ライターは味も分からずに新製品を紹介するという苦行になってしまいましたが、2022年は晴れて解禁。

パナソニックが製品開発期間を2年に延長したため今年は最上位機の新製品発表はありませんでしたが、他の主だったメーカーは全てハイエンドを新モデルに刷新、さらに新規参入やリベンジもあって非常に賑やかな1年でした。

西と東のメーカーで感じる炊き上がりの違い。アジアからの参入も

西の圧力系メーカー、象印マホービンとタイガー魔法瓶はもちもちプリプリで噛むほどに甘みがあふれる安定の美味しさ、東の非圧力系メーカーの三菱電機は香り高くシャッキリさっぱりで噛む楽しさを味わえる逸品。どのモデルもとても美味しい炊き上がりでごはんが進み、炭水化物抜きダイエットを諦めざるをえない(笑)。

象印の「炎舞炊き NW-FA10」
タイガーの「炊きたて 土鍋ご泡火炊き JPL-S100」

中でも筆者イチオシが日立。圧力系メーカーながら、西の象印、タイガーとは全く違う食感。東のメーカーらしく硬め。日立では「外硬内軟」と呼んでいて、ごはんの表面は硬いけど、中は柔らかいという絶妙な食感。噛んだ瞬間にそれは分かります。最初にハリのある歯ごたえが来て、次にプリッとした柔らかさが来る。粘り気が少ないので口に入れた瞬間にごはんがばらけ、口いっぱいにごはんの香ばしさと甘い味が広がるのもいい。今年は新米コース搭載と保温性能がアップし、さらに筆者好みに進化しています。

日立「ふっくら御膳 RZ-W100FM」
京都の老舗米屋・八代目儀兵衛の職人の技を取り入れ、粒の輪郭と米の甘みが際立つ「外硬内軟(がいこうないなん)」

22年国内炊飯器業界2大ニュースがティファールの新規参入とバルミューダのリベンジ発売でした。ティファールは取っ手の外れるフライパンなどの調理用具だけなく、日本市場で電気ケトルを普及させた立役者であるほか、「クックフォーミー」という電気圧力鍋をいち早く市場投入するなど、キッチン家電も積極的に展開しています。実は、東南アジアを中心に海外では25年も前から炊飯器を発売してきましたが、お米の国、日本では今回が初参入となります。

ティファールの食感も硬め。日本は白米だけで食べるのに対して、アジアは何らかの調理を加えるため硬めにごはんを炊くのが一般的。だからなのか、ティファールはやっぱり硬め。日立より硬めに感じました。とはいえ、不快な硬さではありません。しゃっきりするするした表面でベタつきがなく、口の中で簡単にばらけます。パラパラチャーハンみたいな感触。口の中でお米の形がはっきりと感じ取れ、噛みごたえがあります。香りが高く、噛むごとに中から甘みが滲み出てきます。

ティファール「ザ・ライス 遠赤外線IH炊飯器 5.5合」
しゃっきり食感の仕上がりでした

一方のバルミューダ。5年前、「蒸気炊飯」という聞き慣れない方式を引っ提げ、鳴り物入りで初参入した同社でしたが、結果的にはヒットはしませんでした。「美味しく炊くには水の量をシビアに計るなど美味しさのストライクゾーンが狭く、万人受けする味ではなかった」と同社関係者。確かに食べた感想は「うーん? ん?」ってな感じで、不味くはないけど、決して「美味い!」というものではありませんでした。その反省の下、さまざまな細かいチューニングを経て再登場した「BALMUDA The Gohan」は、5年前とはまったく別物に仕上がっていました。

バルミューダ「BALMUDA The Gohan K08A」

こちらも食感は硬め。しゃっきりタイプで、口の中ですぐにばらけます。特徴的なのが、米本来の味を楽しめること。ブランド米それぞれの特徴が表に出やすい炊き上がりとなっているのです。含水量の高い「ゆめぴりか」はもちもち寄りに、逆に「つや姫」はしゃっきりして粒立ちを楽しめる。おかず不要、ごはんだけで何杯もいける。掛け値なく美味しい。さらに、玄米は糠臭さが全くありません。食感も芯が残るような硬さもなく、べちゃっとするほど柔らかくもなく、絶妙。健康のためにと我慢することなく、毎日食べられる美味しい炊き上がりでした。これには驚いた。

バルミューダも粒立ちの良さが特徴的

メーカーそれぞれの個性が際立ち、面白くなってきた

思い起こせば2006年。三菱電機が内釜に本物の炭を採用したモデルを発売したことで始まった高級炊飯器ブーム。当時、10万円を超える高級炊飯器市場を支えたのが中高年だったことから、それ以降、もちもちとした柔らかめのごはんが一般的になっていきました。圧力炊飯を採用するメーカーが多いのも、「もちもち」派が優勢となった一因でしょう。

三菱電機の現在の「本炭釜 紬 NJ-BWD10」

しかし今年、日立に続いてティファール、バルミューダと硬めごはん派が増えたことが時代の移り変わりを感じます。あるメーカー関係者曰く「コンビニごはんに慣れた若者は硬めのごはんを好む傾向にある」とのこと。お弁当もおにぎりも、コンビニのごはんはしゃきり硬めですものね。そうした若者の舌に合わせるように、炊飯器も硬め派のモデルが増えてきたのでしょうか。

東北出身の筆者は硬めごはん派なので、硬めごはんのメーカーが増えるのは喜ばしいことです。で、日立、ティファール、バルミューダ、どれが一番と聞かれたら、僅差で日立。というのも、前述した保温性能の問題がここで出てきます。ティファールは12時間程度の保温ならば変化はないけど、それ以上となると徐々に乾いて硬くなっていきます。バルミューダはそもそも保温機能がありません。それに対して、日立は24時間超えて30時間経ってもツヤツヤして硬くなることはりません。すごい。

本来、味の面でも電気代の面でも長時間保温は推奨すべきことではなく、炊き立てで余ったごはんは冷蔵するなり冷凍するなりして、食べるときにレンジでチンしたほうが美味しく、電気代も安く済みます。ですが、ズボラな我が家はそれが面倒(笑)。家族の皆が少食なため、2合炊いても1日で消費しきれないのです。なので、長時間保温でも味や食感が落ちない、日立の炊飯器は我が家にピッタリの1台なのです。

家電ライターなんて職業をしているとよく「美味しい炊飯器はどれ?」と聞かれますが、味、食感の好みは千差万別。筆者が一番美味いと思ったものが、他の人はそうは感じないなんてザラ。だから、これまでは他人にメーカーそれぞれの特徴を説明するのがなかなか難しかったのですが、今年はメーカーによる傾向がはっきりと分かれ、他人に説明しやすくなりました。炊飯器市場がより面白くなった年といえます。

全国各地の農協は積極的にブランド米を開発し、毎年、新しい銘柄が出てきています。それぞれ個性豊かで、食感や味が全く異なるから驚きです。最高の炊飯器で最高の米を食べ、日本人に生まれた喜びを噛みしめようではありませんか。

近藤 克己