家電製品レビュー

新ホットクックは、使いやすさ爆上がり! ラクラク低温調理&フッ素コート内鍋が便利

シャープ「ヘルシオ ホットクック KN-HW24F」

「ヘルシオ ホットクック」といえば、水を使わずに食材の水分だけで旨みの強い無水料理が作れる、シャープが誇る「水なし自動調理鍋」。初代モデルは2015年に発売され、それまで一般的には浸透しづらかった「電気鍋」という家電ジャンルの人気の火付け役にもなった。

そのホットクックが9月中旬に新モデルを発売する。発売が予定されているのは容量2.4Lタイプの「KN-HW24F」と1.6Lの「KN-HW16F」の2製品。発売前にKN-HW24F(オープンプライス/実売70,000円前後)を使って、ステーキやケーキ作りなど様々なメニューを試した。

気軽に低温調理。牛肉が理想的な仕上がり、サラダチキンも簡単

新型ホットクックで個人的に一番嬉しいポイントは「低温調理」をサポートしたこと。ホットクックは昨年までのモデルチェンジで無水料理や煮込み料理のほか、蒸し料理や炒め物、煮詰め調理などさまざまな機能を搭載したが、低温調理に関しては“完全サポート”とは言いがたかった。

KN-HW24Fは定格容量2.4Lタイプのホットクック。本体サイズは幅395×奥行305×高さ249mmで重量約6.1kg。定格容量1.6LのKN-HW16Fもある
ホットクックの特徴でもある、必要な時だけ飛び出して食材をかきまぜる「まぜ技ユニット」。新製品は無水調理のほか、煮物、蒸し、炒め、煮詰め、低温調理などの調理ができる

じつは従来製品でも低温調理メニューはあったのだが、温泉卵や手作り豆腐などの食材をそのまま低温加熱する調理レシピのみに対応。最近人気の「ポリ袋に食材を入れて低温でじわじわ加熱する」低温調理には使えなかった。これは、空気を含んだ袋が浮き上がり、蒸気口を塞ぐなどのアクシデントを想定していたためだ。そこで、新型ホットクックは内鍋に水を入れて袋に入れた食材を投入したあと、蒸しトレイをフタのようにかぶせることで袋の浮き上がりを防止する。

この袋を使用した低温調理機能がとくに活躍したのが「牛肉」だ。我が家で好まれる牛肉の理想的な中心温度は58℃前後なのだが、薄い肉だと中まで火が通り過ぎてパサパサ、厚切り肉だと中心がレアで血が滴る生肉になる失敗がある。ステーキにしろローストビーフにしろ、牛肉料理はなかなか調理が難しいのだ。

しかし、ホットクックであらかじめ低温調理「58℃」で2時間も加熱しておけば間違いなく中心まで美味しい加熱肉ができあがるし、長時間加熱しても58℃以上にならないので過加熱の失敗がない。低温調理したあとは、カンカンに熱したフライパンで肉の周囲を焼けば完璧な肉料理のできあがりだ。ちなみに、ホットクックの低温調理で使用できるのは耐熱温度100℃で厚さ0.06mm以上のジッパー付き食品保存袋となる。

低温調理の定番である「牛肉」を塩こしょうしてジッパー付き食品保存袋に入れて調理。このときスーパーで無料でくれる和牛の牛脂を入れるとアメリカンビーフなどの安い肉もしっとり美味しくなる
蒸しトレイをかぶせて「手動で作る」「発酵・低温調理をする」で「58℃」「1時間30分」を選択。温度は35~90℃まで、1℃単位で選択できる
できあがった肉にフライパンで焼き目を付ければ完成。分厚い肉なのに、しっかり中心まで火が通った理想的なできあがりになった
できあがったステーキを盛り付け。どこを切っても完璧な加熱! これぞ低温調理の力

ちなみに、ここでは手動で牛肉を調理したが、ホットクックにはローストビーフやサラダチキン、ツナなどの自動調理メニューもあらかじめ用意されている。とくにサラダチキンは便利で、時間があるときに作っておけばサラダにのせてもサンドイッチに挟んでも美味しい。今日の食事はすこし物足りないかな? と感じたときに一品追加するのに力になってくれる。しかも、ジッパー付き食品保存袋で作るので、少量残った場合も冷蔵庫にもどして保存するのが手軽だ。

サラダチキンは高タンパク低糖質でダイエットにもよく、いざというときにあると便利な作り置きおかず。写真はサラダチキンをアボカドとあわせてオープンサンドにしたところ

内鍋がなんとフッ素コートに! 既存ユーザーこそわかるこの便利さ

低温調理とともに筆者が便利に感じたのが内鍋がフッ素コーティングされたこと。じつは、従来のホットクックは内鍋がステンレス製。見た目はスタイリッシュなのだが、いかんせん食材がくっつきやすいのがネックだった。このため、従来のレシピではオムレツなどの焼き物レシピは内鍋にクッキングシートを敷くといった工夫が必要だったのだ。しかも、内鍋は金属タワシなどでは洗えないので、こびりついた食材を洗い落とすのも大変だった。

ところが、新モデルの内鍋はフッ素コートでとにかく食材がくっつきにくい。

従来のホットクック内鍋(1.6Lタイプ・写真左)とフッ素コートされた新内鍋(写真右)

試しにチーズがカリカリに焼ける「じゃがいものガレット」を作ってみたところ、内鍋にはまったく食材がくっついていなかった。ちなみに、このホットクック専用フッ素コート内鍋(2.4L用TJ-KN2FB、1.6L用TJ-KN1FB)は別売りもされるらしいので、こびりつきに悩んでいた既存ホットクックユーザーは、鍋だけでも新しくするとよさそうだ。

ジャガイモの千切りにベーコン、チーズを焼き上げたホットクック公式レシピ「じゃがいものガレット」。ビールが止まらない美味さ
これまでなら内鍋にチーズがこびりついて大変なことになっていたが、フッ素コート鍋だとこの通りこびりつきがまったくない

ちなみに、レシピに「内鍋に多めにバターを塗る」とあったスポンジケーキをバターを塗らずに焼いたところ、さすがにこれは一部こびりついてしまった。しかし、ぬるま湯でサッと洗えば簡単に汚れが落ちる。この汚れの落ちやすさも、従来にはなかったフッ素コーティングならではのメリットだ。

ホットクック公式レシピの「スポンジケーキ」。小麦粉、卵、砂糖、バターで作る素朴な味。少々くっついたが自宅用ならこれくらいは許容範囲かも?
レシピ通りにバターを塗らなかったので生地が少々こびりついてしまったが、お湯をかければスルリと落ちる

内鍋のほか、地味にモデルチェンジしていたのが付属品の「蒸しザル」だ。従来モデルでは平たい皿形の蒸しザルだったのが、新モデルでは昨年発売されたコンパクトタイプ(KN-HW10E)と同じ深さのあるザル型になった。従来の平皿型だと豆や小芋などの食材が転がりやすく扱いにくかったが、ザル型になったことで蒸し料理が格段にしやすくなっている。

左が従来モデル(1.6Lタイプ)、右が新モデルの蒸しザル。豆などの細かな食材を蒸すときに便利になった

このほか、新モデルは新機能としてホットクックユーザーのコミュニティ「ホットクック部」の一部投稿レシピを「COCORO KITCHEN」レシピサービスからダウンロードできるようになった。ダウンロードできるのはシャープが検証したレシピのため「自分が投稿したレシピをすぐダウンロード」というわけにはいかないが、今後どんどんダウンロードできるレシピが増えそうなのは嬉しいポイントだ。

筆者が確認した8月24日時点では、ホットクック部のレシピは12種類ダウンロード可能。今後どんどん増えることを期待したい

多くある電気調理鍋のなか、なぜホットクックなのか?

じつは、我が家は初代ホットクックを自腹で購入、その後も2018年モデルのKN-HW16Dを愛用している。数ある電気調理鍋のなかでホットクックを選んだ理由は、なんといっても他製品にはない「まぜ技ユニット」の存在が大きい。まぜ技ユニットが加熱中必要なタイミングで食材を適度に混ぜるため味が均一になるほか、粘度のある煮込み料理でも焦げ付きにくい。他社製の多くの電気調理鍋はカレーを作る際に「ルーは具材を加熱後に投入する」という2段階方式を採用しているのに対し、ホットクックが最初からルーを投入できるのもこのためだ。

このまぜ技ユニットの制御もなかなか賢く、たとえば「牛肉のすね肉のワイン煮」を作る場合はすね肉の形が残るように優しくかき混ぜる。一方「かぼちゃのポタージュ」などの場合は、具材全体を潰すような動きをする。さらに、里芋の煮っ転がしなら、芋が煮えてない前半は強くまぜ、柔らかくなる後半は優しくまぜる。このあたりの細かな制御は長年「混ぜる」研究をしているシャープならではの技術だと感じる。

牛肉の塊が箸でつまめるほどホロホロのできあがり。なのに、牛肉やにんじんの形は崩れていない。まぜユニットの優秀さがわかる結果に
カボチャやタマネギなどでつくる「かぼちゃのポタージュ」。加熱前はタマネギなども形が残っている
まぜ技ユニットによりミキサーにかけていないのにこの滑らかさに! 食べると少しツブツブ感はあるが、それもまた美味

また、ホットクックシリーズは圧力調理には対応していないが予約調理ができるのもポイントだ。これは、食材が腐敗しないように温度管理しつつ、最大15時間先に料理を仕上げることができる機能。朝に肉や魚などの食材をホットクックに放り込めば、腐る心配をすることなく夜に仕上げることができる。意外にこの機能を搭載した電気鍋は少ないので、個人的に推したい機能のひとつだ。

倉本 春