2024年5月21日に発表されたキャノンデールの新しいe-bike「Trail Neo 4(トレイルネオ4)」。ハードテイル(リアサスペンション無し)のe-MTBで、価格は399,000円。
キャノンデール「Trail Neo 4(トレイルネオ4)」。サイズはSM、MD、LGが用意されています。カラーは写真の「Quicksand」のみ Trail Neo 4はキャノンデール初のe-MTBで、この車種の登場によりキャノンデールはミニベロからグラベルロードまで各カテゴリーのe-bikeが揃ったことになります
キャノンデールのe-bikeは4カテゴリー・6車種となりました。各車種ともサイズ展開が比較的に豊富です 実は筆者、キャノンデールのe-bikeを2台持っています。「Topstone Neo 5」と「Compact Neo」です。
キャノンデール「Topstone Neo 5」はグラベルロードバイクタイプのe-bike。ロードバイクの軽快さを備えつつも、砂利道なども走れる走破性があります。そしてこのe-bike、速い! キャノンデール「Compact Neo」はミニベロタイプのe-bike。コンパクトなので扱いやすく、シティライドからポタリングまで幅広く楽しめます。外見はカワイイ感じですが、実は軽くて速い! アシストをオフにしていても速いです また、キャノンデールのペダルバイク(人力自転車)のクロスバイク「Bad Boy 1」も持っています。さらに10年以上前に初めて乗った本格的なアルミフレームロードバイクもキャノンデール「CAAD10 1 DURA ACE」(CAAD10 1 DURA ACE)でした。
キャノンデール「Bad Boy 1」はクロスバイク。キャノンデールの“レフティ”(フロントフォークが左側のみの構造)で、内装ギア・ベルトドライブ・チューブ内LEDライトなど非常に個性的な装備です。そしてこのクロスバイクも速い! こちらはキャノンデール「CAAD10 1 DURA ACE」というアルミフレームロードバイクです。これも速かった! 筆者が乗ったり持っていたりするキャノンデールのバイクに共通するのは「速い」ということ。もちろんライダーが頑張ってペダルを踏む必要はありますが、乗っていると不思議と「速く走っちゃう/速く走りたくなっちゃう」という乗り味なんです。ライダーに思わず走らせてしまう不思議な走行感。フレームの設計なのか、ジオメトリーなのか、よくわかりませんが「速いバイク」が多々あるキャノンデール。……でもそのぶん体力も持っていかれます。
そろそろe-MTBが登場するんじゃないかなーと、なんとなく気になっていた筆者です。そんなタイミングでe-bike部・清水氏が「キャノンデールから型式認定通過直後のできたてホヤホヤe-bike借りたんですが、乗ります? まだ1台しか試乗車ないらしいです」と。……それが、Trail Neo 4でした。
GW直前にインプレスに届いたキャノンデールの大きな箱。コレって? あっ! 見たことないe-bike! 乗ります乗ります乗らせてください! というわけでさっそく試乗することに。以下にTrail Neo 4のレビューをお届けしますが、ザックリとした印象を申しますと、このe-bikeも速い! そしてキビキビした操作感も印象的です。またトレイル的なオフロードも走ってみましたが、そこでもパワフルで軽快に走れました。オールマイティにどこでも気持ちよく走れるe-MTBと言えましょう。
Trail Neo 4って、どんなe-MTB?
まずはTrail Neo 4の主なスペックから見ていきましょう。
Trail Neo 4はスッキリした外観のハードテイルe-MTBです カセットスプロケット歯数は11-36T、クランク歯数は34T シフター系コンポーネンツはシマノ「CUES(キューズ)」9速を採用 ドライブユニットはボッシュ製「Active Line Plus」ですが、最新のスマートシステムに対応している新しいActive Line Plusです 電源はインチューブバッテリー。ダウンチューブに内蔵されていますが、意外なほど細身に見えます バッテリーはボッシュ製容量500Wh(36V/13.4Ah)の「PowerTube 500(パワーチューブ500)」。満充電から最長で171km(Ecoモード)の走行が可能です。アシストモード毎の航続距離は、Ecoが171km、Tour+が118km、Sportが101km、Turboが94kmです(※ボッシュ シミュレーター参照値) バッテリーは外して単体で充電できるほか、車体に取り付けた状態でも充電できます。充電用ソケットはトップチューブ前方にあり、バネ式のカバー付き。安心感があり、使いやすいソケットです ディスプレイ付きコントローラーはボッシュ製「Purion(ピュリオン) 200」で、カラー表示です 走行速度や現在時刻や走行時間など、さまざまな情報を表示できます。バッテリー残量はパーセンテージ表示 タイヤサイズは、車体サイズMDとLGが29x2.4”(29er)。SMが27.5x2.4”(650b)。ブレーキは前後とも油圧式ディスクブレーキ。フロントサスペンションはSR Suntour XCM 32で、トラベル量は100mm、オフセットは46mm サスペンション上部左側でプリロード調整、右側でロックアウト・解除ができます サドルはキャノンデールブランド品。ドロッパーシートポストは非搭載です 各所にダボ穴があり、さまざまなアクセサリーを装着できそうです シートステー左右にもダボ穴。シートステーをつなぐパイプにも穴があり、フェンダーなどを取り付けられそうです シートステーの下側にもダボ穴がありました。反対側にも同様のネジ穴があります ヘッドチューブ左右にもダボ穴があります。取り付けるアクセサリー次第で、さまざまなジャンルのバイクに変身しそうです 外観的にはあまりe-bikeっぽい感じがなくスリムな印象です 坂の多い街中もスイッスイ走るTrail Neo 4
Trail Neo 4もやはり走る気にさせ、走って楽しめるe-bikeでした。ドライブユニットのボッシュ製スマートシステム対応Active Line Plusは、自然なアシストをする静かなドライブユニットですが、意外なほどパワフル。激坂もガンガン上っていけます。
今回はTrail Neo 4で丘陵地帯からトレイル的なオフロードを走りました。まずは激坂だらけの住宅街。舗装路を走ってみました。
Trail Neo 4で川沿いのサイクリングロードを軽く走ってみました。最初の印象は「あれ? これってActive Line Plus? こんなにパワフルだったっけ?」というもの。アシストモードはTour+にしていましたが、川沿いの30%近い勾配がある堤防をグイッと上ってしまったんです。かと言って過激にアシスト力が出て後輪が滑るような感じもしない。トルクの出方が自然で、マイルドなアシストに感じられますが、でもパワーは十分出ている。そんな感触です スマートシステム対応ドライブユニットに用意されているアシストモード。このうちTrail Neo 4で使えるのは、Ec0、Tour+、Sport、Turboの4種類です。今回はTour+だけで走行しました。Tour+はペダルを踏む力に応じてアシスト力を変えてくれるモード。街乗りから激坂まで幅広く対応できるモードです トレイル的なオフロードの近くの住宅街。丘陵に立っている住宅で、このような激坂が続いています。でもTrail Neo 4ならサドルに座ったまま鼻歌交じりで上りきれます。タイヤのエアボリュームもあるので乗り心地も良好 さらにこんな坂も。しかしやはり、Trail Neo 4なら一気に上まで行けます。風景を楽しみながら激坂を上りきれちゃう 先ほどの激坂を上りきった場所。丘陵がいくつか並ぶ地帯で、高所に行くと風景も空気もいい。でも激坂だらけなので、自転車で走っている人はほとんど見かけません とりあえず激坂の多い舗装路を走ってみた印象ですが、スマートシステムに対応した新しいActive Line Plusは扱いやすいです。スマートシステムで使えるいくつかのアシストモードは、ライダーが感じる「キツさ」を先手先手で取り除いてくれるという印象。
たとえばTurboモードなら「このすぐ先がキツいかな?」と身構える前にグイン! とパワーを出してくれる。とっさの大出力が滑らかに出てくれるので、ライドが上達したような気になります。
そこまで急峻にパワーが出ないTour+モードでも、斜度が変化する坂道を上っていて「このヘンからキツくなるかな?」と思う前に自然にアシスト力が上がります。e-bikeでもギアチェンジは必要ですが、ゆっくり余裕をもってギアチェンジしていけば、新しいいくつかのアシストモードが先回りでサポートしてくれる。e-bikeの楽しさがより高まった感じがする新型Active Line Plusです。
アップダウンのあるオフロードもスイスイ!
住宅街の激坂を何本か試走したところで、今度はトレイル的なオフロードに向かいます。そこは丘陵の尾根づたいにあるオフロード。なので行くためには丘陵の頂上近くまで上る必要があります。
丘陵地帯の住宅街付近に急な上り坂が。距離は短いですが、自転車に乗って上って行こうとは思わない急坂です。その先にオフロードがあります この坂を人力MTBで上ったことがありますが、いちばん軽いギアにしてもなかなかタイヘン。使う力と心拍に注意していないと、途中で足を着いてしまう感じ。そんな坂なので、たまに徒歩の人がいるくらいで、空いていて気持ちいいです 少し上るとすぐ高度が感じられます。周囲に見えていた屋根がどんどん減っていく感じ。Trail Neo 4だとこの坂をグイグイと上れる。静かに力強く進み、急坂の途中で変化していく風景を楽しめるe-bikeです 坂を半分くらい上ったところ。距離も短く標高差もそれほど大きくないのですが、人力自転車で上ると「はぁはぁぜぇぜぇ」と体力を奪われます。e-bikeなら歌を歌いながら上れてしまいます。e-bikeは「楽しめるエリアをグイッと広げてくれるモビリティ」なんだと再認識しました 坂の終盤あたり。この勾配がずっと続いていて、その先にトレイル的なオフロードがあります こんな感じのオフロード。オフロードというより、丘陵の斜面の林のなか、みたいな感じですが。Trail Neo 4はリアサスペンションがないので、木の根を通過するような場合は少しお尻を持ち上げないと、突き上げによりバランスを崩してしまいます。でも腰を浮かせれば、「フルサスMTB向けのオフロード」でも楽しみながら走破できる感じ。悪路を走ると後輪がそこそこ「跳ねる」のですが、車体の重量バランスがよく、ペダルに乗せた足が安定を失いにくく、わりと安心して悪路を楽しめるe-bikeという印象です やっぱりキャノンデールのバイクは乗りの「走る気」を引き出します。走っていると楽しくなってきて、どんどんペダルを踏みたくなる感じ。また、どちらかと言えばシティライド向きのドライブユニットであるActive Line Plusですが、こういうトレイル的なオフロードでも十分なパワーが感じられました どんどん上って頂上付近に到着。「あれ? この道、こんな短かったっけ?」と思いました。ライダーのやる気がe-bikeにより引き出され、いつもよりスピーディーに到着したんだと思います。Trail Neo 4は楽しく気持ちよく走れるe-MTBです 試走を終え、Trail Neo 4についてこう思いました。「Trail Neo 4はけっこー売れちゃうんじゃないかな」と。
Trail Neo 4は、あまり高級ではないパーツを採用するなどして、販売価格を抑えたe-bikeだと思います。コンポーネンツは競技志向ではなく実用性や汎用性を重視したもの。ほかにも、ドロッパーシートポストがありません。
ただ押さえるところは押さえていて、タイヤは悪路走破性も良好な29インチ(29er)。バッテリーも大容量で、ダウンチューブが細く見えるデザインもいいですね。
また、これは筆者の印象ですが、体の真下に重心があるような感じで、障害物を通過するときでもちょっと抜重するだけで安定的に乗り越えられる。車体のコントロール性もよく、狙った線にピタリと沿って曲がれる。
一見、シンプルでコスト抑えめのハードテイルe-MTBという感じですが、走ってみると「街乗りもラクだしオフロードも楽しいし、パーツ類もこれでいいじゃん」という印象になります。個人的にはドロッパーシートポストは欲しかったですが、Trail Neo 4はe-bikeとしても自転車としても、非常によいバランスでつくられている1台だと思います。
そんなe-bikeが399,000円。ほかのe-MTBと比べると明らかにコストパフォーマンスが高い。なので、「Trail Neo 4はけっこー売れちゃうんじゃないかな」と。
Trail Neo 4はe-MTBである、というのもありますね。e-MTBなら普段使いもできますし、トレイルで遊ぶこともできる。1台のe-bikeをいろいろな目的で使いたい! という場合はe-MTBがいいように思います。また、ハードテイルe-MTBなのでフルサスe-MTBよりは重くなく、そのぶん扱いやすさもあります。
ともあれ、Trail Neo 4、とても完成度の高いe-MTBだと思います。「なるべく安くて、でも幅広く使えて楽しめるe-bikeを探している」というなら、ぜひTrail Neo 4に試乗してみてください!