e-bike試乗レビュー
キャノンデールこだわり設計が随所に!! 操る楽しさに溢れた快速系e-bike「Quick NEO」
2020年6月16日 07:30
e-bikeのカテゴリーでもっとも人気が高く、各メーカーも注力するのがクロスバイクタイプです。新モデルも続々追加されていて、もはや何台あるのか把握するのが難しいほどですが、ざっくり分けるとキャリアやフェンダーなどを装備した利便性を重視したタイプと、スピード重視の“快速系”に大別できます。そして、この快速系クロスバイクタイプのe-bikeに加わった魅力的な新モデルがキャノンデールの「Quick NEO(クイックネオ)」。どんな乗り味なのか? そして、同じ快速系のライバルモデルとどう違うのかも気になるところです。
メーカー名 | キャノンデール |
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製品名 | Quick NEO |
実売価格 | 290,000円 |
キャノンデールのこだわりが感じられる車体構成
e-bikeの心臓部となるのがドライブユニットですが、「Quick NEO」はボッシュ製の「Active Line Plus」を搭載しています。と聞いて、あれ!? っと思うe-bikeファンの人もいるのではないでしょうか。筆者も初めて眼にしたときに感じました。というのも「Active Line Plus」は前後長が長めのユニットなのですが、このモデルはユニット部がコンパクトに見えます。一瞬、ハイエンドモデルの「Performance Line CX」が搭載されているのかと思ってしまったくらい。その秘密は、ドライブユニットの搭載方法にあります。「Quick NEO」では、ドライブユニットを斜め(フレームのダウンチューブに沿うような角度)にすることで、前後長を抑えているのです。
ドライブユニット搭載部の前後長を短くするメリットは、ホイールベースを短くできること。特にペダルの中心軸(BB)からリアホイールの中心(アクスル)までのリア・センターと呼ばれるサイズは、自転車の運動性能を大きく左右するものです。ここが短くなるとハンドリングがクイックになり、ペダルを踏んだ際の反応も良くなります。
「Quick NEO」のリアタイヤを見ると、確かにかなりフレームに近付いていて、リア・センターが詰められているのがわかります。同じボッシュ製の「Active Line Plus」を搭載する快速系e-bikeにコラテック「E-POWER SHAPE PT500」がありますが、このモデルはスピードの乗りは非常に良いものの、横から見るとリア・センターが結構長い設計でした。それに比べると「Quick NEO」はe-bikeではない通常のクロスバイク並にリア・センターが詰められているように見えます。
ボッシュ製のドライブユニットは、そもそも搭載角度の変更を想定しているので、このような搭載方法が可能になったといえます。しかし、この形でフレームを作ろうとすると、既存のマウントを使用できず、オリジナルでマウント部分を製作する必要が出てきます。つまり、それだけコストがかかるということ。キャノンデールの場合は、「Quick NEO」だけでなく、後発のロードバイクタイプのe-bike「Synapse Neo」や「Topstone Neo Carbon」などとも共用できるという計算もあるのでしょうが、同ブランドのe-bikeに対する本気度が伝わってきます。
ドライブユニットの搭載方法だけで、だいぶ長くなってしまいましたが、キャノンデールのこだわりはこれだけではありません。ペダルの中心軸(BB)からダウンチューブとヘッドチューブが交わる部分までが、一直線に結べるように設計されているのです。ロードバイクなどのスポーツバイクでは基本となる設計ではありますが、大きいドライブユニットを搭載するe-bikeの場合、簡単なことではないはず。それでも基本にこだわった設計をしてくるところにキャノンデールのe-bikeに向き合う姿勢を感じますね。
ハンドル形状もなかなか攻めています。クロスバイクによくあるフラットバーに見えますが、幅が720mmもあるのです。ほとんどマウンテンバイク並の広さ。日本で売られているクロスバイクのほとんどは、いざというときに歩道も走れる普通自転車の枠内に収まるように幅600mm以内に抑えている中で、この幅はかなり思い切ったもの。マウント位置も低いので、乗車姿勢はかなり前傾になります。
ここからは、車体の細部を写真とともに見ていきましょう。バッテリーはインチューブタイプのボッシュ製「PowerTube 500」。500Whの大容量で、知らない人にはe-bikeに見えないスッキリしたデザインを実現しています。ディスプレイはコンパクトな「Purion」。ホイールもキャノンデールのオリジナルです。
ホイール軸はフロント12×100mm、リア12×142mmのスルーアクスルで剛性の高い現代的なもの。そして、フロントハブにはキャノンデールオリジナルのホイールセンサーが装備されています。これはANT+とBluetoothの2つの通信方式に対応し、サイクルコンピューターや専用のスマホアプリに走行距離やスピード、消費カロリーなどのデータを送信可能。しかも、センサー自体に900時間のデータを自動保存できるというすぐれもの。キャノンデールのオリジナルアプリとの連携で、上記データを記録できるほか、登録した車種の取り扱い説明書やメンテナンス情報なども見られるとのこと。タイヤ交換などのメンテナンス時期を知らせるサービスにも対応しているとか。
自転車を操る楽しさを感じられるe-bike
またがってみて、まず感じるのはハンドルの幅広さと姿勢がかなり前傾すること。ハンドルを握っただけで“やる気”にさせてくれるスポーティなライディングポジションです。でも、ハンドル位置は結構近めなので、初めてスポーツタイプの自転車に乗る人でも乗りにくいことはないでしょう。ロードバイクとはまた違った乗車姿勢で、どちらかというとマウンテンバイク的なポジションです。ペダルを強めに漕いでみると、太ももの背面からお尻の筋肉が効率的に使える感じ。快速系e-bikeの中でも前傾は強めです。
加速はかなり俊敏。メーターを見ると、あっという間に22~23km/hに達しています。それもアシストのパワーで加速しているというより、自分がペダルを踏んだ力で加速しているような不思議な感覚。これは、リアセンターが短くペダリングに対する反応がいいフレームの設計と、幅の広いハンドルを押し引きすることでペダルを踏む力を助けられることが大きいように感じられます。試しに、アシストを切って乗ってみても、立ち漕ぎをするとかなりいい加速をします。もちろん、重さはあるのですが、漕いでいる感覚は普通のクロスバイクとあまり変わりません。
ただ、アシストが切れる24km/hを超えてからのスピードの乗りはコラテックの「E-POWER SHAPE PT500」などに比べると、控えめな印象。これは履いているタイヤが細かいブロックがあるタイプなので、抵抗が徐々に大きくなることが要因でしょう。前傾している姿勢なので、速度の維持はしやすく、22~24km/h程度で巡航するのが一番気持ちいい感じでした。
乗車姿勢は、個人的にはかなり好みです。適度な前傾はスポーツバイクに乗っている気分を高めてくれますし、ハンドルの幅もコントロールしやすい。サンフランシスコあたりのピスト乗りの間では、近年こういう幅の広いフラットハンドルが流行っているようですが、その理由がよくわかります。スタート・ストップが多い街中では加速しやすいですし、街中の細かい路地を曲がるのも楽しい。自転車をコントロールする楽しさが味わえます。
テスト走行では、都内から自宅に向かういつものルートを走ってみました(スタート地点が編集部ではないのが少し違いますが)。ジャイアントの「ESCAPE RX-E+」やコラテック「E-POWER SHAPE PT500」などの快速系e-bikeで走行したのとほぼ同じルート。この2車種と比べると、24km/h以上での伸びがやや控えめだったので、そんなに期待はしていなかったのですが、帰宅してから記録を見ると平均速度は20km/hで今までで一番の数値でした。おそらく、22km/hくらいまでに達する加速が良かったのが要因でしょう。「Quick NEO」は、かなり速いです。
あと、個人的に気に入ったのがコーナーリングの気持ち良さ。街中の交差点や路地などを曲がるときにも、車名のとおりクイックなハンドリングが味わえます。これもリア・センターの短さが効いているのでしょう。それでいて、クイック過ぎて不安な感じがないのは、ヘッドアングルが寝かせ気味で、フォークオフセットが55mmと大きめに取られているが効いているのだと思います。リアを短めにして、フロントを安定志向に振るという設計は、バッテリーのある前側が重くなりがちなe-bikeに合っているのでしょう。e-bikeでも街中で操る楽しさを味わいたい人におすすめのモデル。これなら、日々の通勤に使っても毎日楽しく会社に向かえそうです。