e-bike試乗レビュー

パナソニックの新型e-bike「XEALT M5」を試乗。取り回しが良くてAUTOモードは楽しすぎた!!

パナソニックサイクルテックが立ち上げたe-bikeの新ブランド「XEALT(ゼオルト)」。その第一弾e-bikeは、ハードテイル(フロントサスペンションのみ)のe-MTBである「XEALT M5」です。2022年4月8日発売予定で価格は442,000円ですが、3月末に試乗会が行なわれたので参加してきました。

パナソニックサイクルテックのe-bike新ブランド第一弾「XEALT M5」
カラーはブルブラックとスターライトシルバーがあります。スターライトシルバーは初回50台限定カラー(7月発売予定)
スターライトシルバーは高級感が漂う明るく清潔なイメージのメタリックホワイトです。e-bike部参加者は「このシルバーはカッコイイ!」と口を揃えました
試乗会は報道関係者向けで、都内唯一のMTBパーク「Smile Bike Park(スマイルバイクパーク)」にて開催されました
高台にあるコンパクトなMTBパークです。前日は都内でも積雪があったほどの荒天で、試乗会開催が危ぶまれましたが、当日は快晴。路面コンディションもまずまずです
密を避けた少人数での試走会です
当日は、インドアバイク&アウトドアインストラクター/トレーナーの平野 由香里さんの案内のもと、初心者も安心に「XEALT M5」をはじめとするe-bikeでの試走ができました

以下、「XEALT M5」の試走レビューをお届けします。……が、この仕上がりのe-MTBが442,000円という価格で買えるのは、筆者的に「とてもコストパフォーマンスが高い」と感じました。「今すぐe-MTBを買うならどれ?」と問われたら、性能や乗りやすさ、コストパフォーマンスの高さから「XEALT M5」を選んじゃう気がします。

XEALT M5は、どんなe-MTB?

では、まずXEALT M5のスペックから見ていきましょう。ちなみに「XEALT」というブランド名は、“eXperience by E-bike Actualize Lively Time”が由来。「XEALTでのe-bikeの体験が、あなたの生活の中に、ココロ躍る時間を創る」ことを意味する造語です。

XEALT M5はフロントのみサスペンションを装備するハードテイルe-MTB。フレームサイズは360mm(適応身長157~170cm)と420mm(適応身長170~183cm)の2種類が用意され、車体重量は360mmが25.4kg、420mmが25.5kg。税込価格442,000円
主なコンポーネンツにシマノ「DEORE」を採用し、ギアは12段変速。チェーンリングは35Tで、カセットスプロケットは10-51T。これまでのパナソニック製e-bike(XM-D2やXM2)には「マルチスピードドライブユニット」が採用されていましたが、XEALT M5ではそれとは別の「GXドライブユニット(直流ブラシレスモーター:250W/90Nm)」を採用。GXドライブユニットは欧州市場にて高評価のユニットで、これを日本仕様としたものを初めて搭載しています
ハンドル左側にディスプレイを搭載。アシストモードは、OFFモード、ECOモード、AUTOモード、HIGHモードがあります。このうちAUTOモードにすると、ペダルを踏んだ力によりアシスト力をECOモードとHIGHモードの間でインテリジェントにコントロールしてくれます。走行可能距離は、ECOモードで約135km、AUTOモードで約96km、HIGHモードで約73kmとなっています。手前側にはウォークアシスト的なボタンがありますが、XEALT M5の場合は「ひと押しでHIGHモードへ移行するためのボタン」として機能します
バッテリーはダウンチューブ内に格納。定格容量は468Wh(36.0V/13.0Ah)で、ダウンチューブ下側から取り外せます。充電はフレームに格納した状態でもバッテリーを取り外した状態でも可能。バッテリーのみ室内に持ち込んでの充電ができます
タイヤは前後とも「MAXXIS ARDENT 27.5×2.40(650B)」。ブレーキは前後ともに油圧式ディスクブレーキです
前後ともに軸固定方式はスルーアクスルで高い安定性・安全性があります
フロントフォーク/サスペンションはSR SUNTOUR「AION35 EVO Boost RLR-PCS」で、トラベル量(上がり下がりする幅)は150mm。フォークコラムはテーパードコラム(1-1/8~1.8インチ)。テーパードコラムは高い剛性が特徴で、直進安定性が高いなどのメリットがあります
フロントサスペンションはロックアウト対応で、上下動が不要な場合はロックしてサスペンションを動かないようにすることができます。ロックのオンオフのためのレバーはハンドル右側にあります
ハンドルの全体像。XEALT M5の全幅は690mmで、普通自転車ではなく軽車両として扱われます(普通自転車は幅600mm以内)。歩道や自転車専用レーンは(例外的なケースを除いては)走行できません(車道を走る必要があります)ので注意が必要です
フロントライトが標準装備。安全に夜間走行ができる明るさで、スイッチはディスプレイ部にあります
サドルはSELLE ROYAL「MILO-1402HRN Cr-Moレール」
TranzX製のドロッパーシートポスト(サドルの高さを一時的に下げられるシートポスト)を装備。トラベル量(上がり下がりする幅)は100mm。上げ下げのためのレバーはハンドル左側にあります。ドロッパーシートポストは、急坂を下るような場合に(腰を後ろに引くために)一時的にサドル高を下げるときなどに役立ちます
オプション品としてキックスタンドが用意されています

XEALT M5の登坂力はどうなのか?

新しいドライブユニットを搭載したというXEALT M5。やはり気になるのはその登坂力です。どんな感じで急坂を上ってくれるのかを、まず試してみました。

ちなみに試走したスマイルバイクパークは、初心者でも楽しめるコンパクト気味なMTBパーク(コース)です。ただ、コンパクトにまとまっているぶん、傾斜はやや急峻。気持ちよく下って楽しんだ後には、(人力自転車で)張り切って上ると息が上がって気持ち悪くなっちゃうくらいの激坂が待ち構えているのでした。

いよいよXEALT M5で試走。まずは登坂力を試してみました
小さめのスラロームコースの真横を上る急坂。人力MTBで上ると軽く息が上がってしまいますが……。XEALT M5のHIGHモードだとスイスイグイグイ。腰を降ろしたままで大丈夫です
地面のタイヤ跡にご注目。そこそこ濃いタイヤ跡で、タイヤにより地面が強く蹴られていることがわかります。十分なアシスト力が働き、このくらいの坂なら息が上ることはありません
XEALT M5に搭載されたGXドライブユニットのアシストモードは4種類。OFFモード、ECOモード、AUTOモード、HIGHモードがあります。このうちAUTOモードは、ペダルを踏んだ力に応じてECOモード~HIGHモードの間のアシスト力をインテリジェントに選んで発揮する、いわばオートマチック・アシストモード。以降は、このAUTOモードで走ってみることにします
AUTOモードにした場合のGXドライブユニットアシスト特性。AUTOモードにしておけば、状況に応じてアシスト力が自動的に変化します
緩やかな上りが続き、コーナーとともに上り傾斜が増すエリアを試走
急な上りを目前に気を引き締めてペダルを踏みましたが……グイグイと上り切ってしまいました
パナソニックのe-MTBは、HIGHモードにして走ると力強くて楽しいんですが、状況によっては「パワーが出過ぎる!」みたいな瞬間があります。平坦~緩い上り坂のダートロードでHIGHモードにしていると、アシスト力が強すぎてリアタイヤがホイルスピンするようなことも。これはXEALT M5でも同様です。しかしXEALT M5でAUTOモードを使っていると、ペダルを踏む力によりアシスト力が幅広くコントロールされる(できる)ため、不意のリアタイヤのホイルスピンが非常に起きにくい。パワフルにも繊細にも走れるAUTOモード、非常に好都合であり快適です
今度は、Smile Bike Park名物(?)の「コース終わりの激坂」です。e-MTBでも十分な助走をしていないと上りきれない急登坂
やや下り~平坦からの急登坂をAUTOモードで走ります。写真は平坦部分を走っている状態で、アシスト力はあまりかかっていません
急登坂に入り、ペダリングする力が増すと、一気にアシスト力が発生。後輪タイヤ跡からわかるように、急登坂が始まったところから強いトラクションがかかっていました
そして、その後もグイグイと登坂。この間、一瞬やや傾斜が緩やかな箇所がありますが、そこで後輪がアシスト力のためにホイルスピンするようなことも起きませんでした
この日の走行は序盤のみECOモードやHIGHモードを切り替えていましたが、AUTOモード体験後は「もうAUTOモード一択だ」という感じで、アシスト力はすべてXEALT M5任せにしました。ギアチェンジは必要ですが、アシストモードの切り替えはオートマチックという点、意外なほど便利で快適で実用的です

安定感が安心感を呼ぶ、取り回しやすいXEALT M5

続いて、スラロームやトレイルライド。MTBコースをいろいろ走ってXEALT M5の走行感を探っていきます。

こちらはショートスラロームコース。筆者は、正直言って、スラロームが苦手です。このショートのコースでも(下りなので)けっこうスピードが出て怖い~
でも頑張ってトライ。以前このパークに来てトライしたとき、1度目で怖くて急ブレーキをかけ、足をついて止まってしまったという記憶がありますが……
おっ、おっ、今日は案外大丈夫?
顔が緊張しておりますが、苦手ながらもフツーに行けちゃってます
あら~、普通にクリアできました。実はこのあたりで(筆者的観点では)けっこースピードが出ていますが、安定的に走っていけます。その後もこのショートスラロームコースを走りましたが、XEALT M5は総じて安定していて、カーブを抜けて車体が正立するまでのスムーズさと安定感が秀逸だと感じられました。その安定感が安心感につながているのかもしれません
続いてよりダイナミックで長めで高低差も大きいスラロームコース。怖っ!
仕事での試走ということで渋々トライする筆者。顔がビビってます
高低差が怖い感じ……だと思っていたんですが、操舵性がいいというか、取り回ししやすいというか、視線の方向に素直に向かってくれるというか、そんな感触。ここでも安心感とともに車体が軽快に動いてくれて、怖いはずのスラロームでしたが、ちょっと楽しめました
ちなみに、写真の左側には「スラロームを下ったあとに上り返すための激坂」があります。人力MTBの人たちはその激坂を(無駄に体力を使うのを避けて)MTBを押して上っていますが、XEALT M5だとその激坂をペダルを踏んで上ることができます。上りきったところから下を見ると「まあよくこの激坂をサドルに座ったままペダリングして上がってこれたなあ」と思ったりします。ちなみに、XEALT M5は12段変速ですが、ギア比は500%オーバーの超ワイドレシオなので、ギアを軽くすれば(ゆっくりですが)ホントに平坦路を走るくらいラクにこの激坂を上れます
超上級者コースというところにもトライ
急な下りがありつつ急カーブがあったりします
スピードを抑えつつ下れば大丈夫。1回目はシートポストを下げるのを忘れてバランスを崩しそうになりましたが、2回目はシートポストを下げて体を後輪側に引いて走り下りることができました。XEALT M5は制動力も十分あり、安心して激坂を下れます
走っていて感じられる安定感と安心感、それから取り回のしやすさは、XEALT M5が「日本人に最適なサイズ感と取り回しやすさを最優先した車体設計」だからなのかもしれません。走行中、車体との一体感があり、なんというか「コンパクトに乗れている」という感じもします。「手に余る」という感じではなく、「これならどうにか扱える」という走行感や操作感があります
だいぶ慣れてきたので、ファンライドという感じでダートロードを走行。ある程度スピードを出してカーブに入っても安定感があり、ブレないラインどりをしやすい。これってテーパーコラムだから? まあ全体的にバランスがいい車体なんだと思います
やっべーXEALT M5おもしれー、e-MTBやっぱサイコー! みたいな感じでどんどん走行

走行後の印象ですが、全体的にとても扱いやすいe-MTBだと感じられました。また、実際は車体は小さくなく、軽くもないんですが、走っていると「軽快に走る小ぶりなe-MTBだなあ」という印象になってきて不思議です。

それと、アシストモードをAUTOにしていると、後から気づく「あぁAUTOモードだからかぁ」という快適さと走りやすさがあります。たとえば急坂の途中で止まっての走り出し。ペダルをグイと踏めば急激にアシスト力が発揮され、すぐに両足をペダルに乗せられる安定感が出て、ペダルをより速く回せる速度にも間もなく到達する。ので、急坂の途中での上りへ向けての走り出しがとてもしやすい

あるいは、上り急坂のすぐ上の急カーブ。急坂を上り切ったらゆっくり車体を転回させつつ、バランスを保つためにペダリングもある程度続ける必要があります。ただのHIGHモードでこれをやろうとすると、アシスト力が出すぎて急カーブでバランスを失いがち。でもAUTOモードだと、優しいペダリングに応じて、出るアシスト力も優しめ。なので、ペダリングの緩急が必要な状況でもぎこちなさが全然出てこなくて非常に走りやすいです。

まだおっかなびっくりですが、走り慣れつつ、再度あの怖~いスラロームに挑戦したりも

といった感じでXEALT M5のAUTOモードをすっかり気に入りつつ、XEALT M5のMTBとしての走りやすさにも惹かれた筆者です。インチューブバッテリーで、ドロッパーシートポスト装備で、コンポーネンツもなかなか高品位で、いいですね~XEALT M5。すごくよく走るし。

これで442,000円って……たとえば外国ブランドのe-MTBと比べたりすると、相対的にかなり安い気がします。コンテナ代とかがかからないから? ともあれ、お買い得感があるXEALT M5なので、興味があればぜひ試乗なさってください!

スタパ齋藤