e-bike日々徒然

東京2020ケイリン先導車を試乗したら、日本のe-bikeの魅力をあらためて実感

東京2020オリンピック 転車競技(トラック)のケイリン先導車

連日盛り上がりを見せている東京2020オリンピックですが、競技を楽しめるのもあと数日。これから注目したいのが、自転車競技(トラック)のケイリン。既報のとおり、パナソニックが開発したe-bikeが先導車を務めます。

ちなみにケイリンは日本発祥の競技で、7人までの選手によってトラック6周で競われる種目です。ペースメーカーである先導車が選手たちへの風よけとなり、段階的に速度を上げ、選手たちはその後方でポジション争いを繰り広げます。最高時速50km/hまでスピードを上げてペースを作り、残り3周で先導車が離脱し、その後は選手だけでのレースで勝敗を決します。

このケイリン先導車を開発するために、会場の伊豆ベロドロームでの試験を重ねて1年半以上の時間を要したそうです。これまでと同じサイズながら、ドライブユニットは約3倍の出力と約1.4倍の高速化、バッテリーも約1.4倍の電力量にチューニング。そして、それらの速度域で正確に走れるようにフレームの設計にもこだわったそうです。どんなe-bikeなのか気になる人も多いでしょう。

ケイリン先導車をベースにした新型XU1と並べたところ。バッテリーサイズも変わらない
ドライブユニットのサイズも従来のe-bikeと変わらない

ケイリン先導車のチューニングe-bikeを体験

そんなケイリン先導車をローラー台ではありますが試乗してきました。ほかのe-bike同様にドライブユニットとバッテリーを搭載しているので、e-bikeといえばe-bikeですが、まったく別の乗り物だと実感。

ローラー台で試乗体験

車体は変速機のないシングルスピードで、アシストモードもパワーモード(HIGH)のみの構成。漕ぎ出しは重たいのですが、本当に一瞬で30km/h台に突入し、その後は高出力のアシストでペダル回転も軽くなり、グングンとスピードが伸びて一瞬で70km/h以上に到達。80km/hを出そうとするとかなり足がパンパンになりますが。アシスト領域は60km/hまでと説明を受けましたが、通常のe-bikeのように「アシストが切れそう」「アシストが切れた」タイミングを感じることはありませんでした。

変速機のないシングルスピード
アシストモードはパワーモード(HIGH)のみ
ケイリン先導車加速イメージ

もちろん公道を走ることはできませんが、初心者でも驚くほどのスピードが出せるので、もし公道を走ってみたら……と妄想してみました。クルマやオートバイ、通行人が、信じられないスピードで走る自転車らしき存在に驚いて事故が起きてしまうかもしれません。今回はローラー台なのでスピードメーターを見ながら余裕を持ってペダルを回せましたが、何よりそんなスピードで走っていたら怖すぎて走るのをやめるはず。ただ、ケイリンの会場である伊豆ベロドロームや富士スピードウェイのようなサーキットで、フル装備で走るような機会があったら……とも想像しましたが、それでも初心者には危険ですね。

やや話が逸れましたが、本当にあっという間にスピードが出るので一定速度をキープするのが難しいです。実際にレースの最高速度50km/hをキープできるか試してみましたが、すぐに-10km/h~+10km/hくらいの範囲でバラバラの速度に。車体のステム部分には周回ごとの速度が記されていますが、「こんなに速度が出やすいのに、この車体では遅めの速度域をキープできるの?」とライダーのテクニックに驚かされています(まだ見てないですが)。8月4日から始まるレースで、先導車のテクニックにも注目したいと思います。

ステム部分には周回ごとの速度が記されている

日本のe-bikeはやっぱりベストバランスなのかも

今回はモンスター級のe-bike的な乗り物を体験したことで、日本のe-bikeって実は非常にバランスが良いのでは、とも感じました。

日本の場合はアシスト比率が1:2(人力:アシスト)、24km/hに向かってアシストが減っていくルールがあります。そこで海外のe-bikeを例に「24km/hまでじゃ物足りない」「海外のようにパワフルじゃないし」みたいな意見を目にすることもありますが、まだ乗ったことがない人の意見が大半だろうなと思います。

実際にe-bikeに乗ってみれば、各社のアシストセッティングでドライブユニットの好みが分かれることはあるでしょうが、アシスト領域やトルクに大きな不満を感じることはないでしょう。坂道もしっかり上って行けますし、平坦な道では弱いアシストモードで十分だったりします。何より自転車に乗ることができれば、スポーツバイク未経験の初心者でもすぐに安心して走れます。

海外のように自転車文化が育っていない日本では、時には歩道も走ることもあり、速すぎたりパワフルすぎるモデルがビュンビュン走っていたら事故も増えるでしょう。

これまで海外仕様のe-bikeにもいくつか乗ってきましたが、パワフルさ重視のモデルは「ドン」と押し出されてペダルを回す感覚以上にグングン進んで、自転車というよりは別の乗り物といった印象のモデルもありました。そうした感覚が好きな人はe-bikeよりモーターサイクルなどの乗り物が向いているのかもしれません。日本のe-bikeはきちんと自転車らしさを楽しめるように、法律の下で絶妙なアシストフィーリングを実現していると思います。

ストップ&ゴーが得意なので心も体にも余裕を持って走れるe-bike。環境にやさしいのは自転車と同じ。密を避ける時代にうってつけの存在で、いろいろな趣味との相性も抜群。パワフルなアシストだけで走らされるのではなく、きちんと自分の足でペダルも回しながら、誰でも楽しい目的へ向かって気持ち良く走れるのが大きな特徴です。

パナソニックの新型e-bike「XU1」8月5日に発売。ケイリン先導車の開発技術をフィードバックしており、幅広い人が乗りやすいモデルに仕上がったという
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