e-bike試乗レビュー

世界チャンピオンに“走る・曲がる・止まる”の基本から学べるe-MTB講習会へ行ってきた

e-bikeの魅力が一番体感できるのは山道を走るe-MTBだというのは、多くの人が認めるところでしょうが、なかなか乗る機会や場所がない……という人も少なくないでしょう。そうしたユーザーに向けて、メーカー各社もe-MTBが体験できる試乗会などの機会を設けています。そのうちの1つであるパナソニックのe-MTB講習会に参加してきました。

使用するパナソニック「XEALT M5」は、フロントのみにサスペンションを装備したハードテイルタイプのe-MTBで基本を身につけるには最適

都内唯一のMTBコースで世界チャンピオンから学べる

場所は都内唯一のMTBコースである東京都稲城市にある「Smile Bike Park(スマイルバイクパーク)」。使用されるe-bikeは今年4月に発売された同社の「XEALT M5」です。スポーツバイク初心者に向けた内容で、参加料が無料というのもうれしいところです。

先導付きでコースを走る試乗会のような感じかと思っていたのですが、インストラクターに基本を学ぶレッスンも受けられるとか。しかも、インストラクターは元トライアル世界選手権チャンピオンの有薗 啓剛さん! そんな贅沢な機会はなかなかありません。

トライアル世界選手権のエキスパートを1996年に制している有薗啓剛さん。全日本選手権も8連覇しているスゴい人です

MTB競技にはいくつか種類がありますが、スピードや体力が物をいうダウンヒルやクロスカントリーと違って、トライアルは低い速度域でのバイクコントロールが問われる競技。そんな競技のチャンピオンだからこそ、速く走るためのテクニックではなく、MTBを確実に操るための技術を学ぶことができます。

まずはe-bikeに慣れるため、有薗さんの後について広場をグルグル走り回り、アシストの感覚に慣れます
慣れてきたら、坂を上ってコースへ。かなり急な上り坂ですが、e-MTBなら座ったまま話しながら上れてしまいます

コース上の広いスペースに移動し、本格的なレッスンが始まります。内容は、MTBでの“走る・曲がる・止まる”の基本的な操作を身につけるというもの。基本となる乗車姿勢から始まり、ブレーキ操作や車体のコントロール方法などを学んでいきます。基本的な内容ですが、メニューがとてもよくできていて、遊びながら自転車のコントロールを覚えられる感じ。初心者はもちろんですが、ある程度乗れるようになっているつもりの人でも学べることは多そうです。

まずは乗車姿勢のレクチャーから。凹凸のある路面を走るMTBはスタンディング姿勢で乗るのが基本ですが、「ペダルは水平に」など細かい注意点も教えてくれます
用意された板の上を真っ直ぐ走る2輪の教習所でやる一本橋のようなメニュー。有薗さんは簡単そうにやっていますが……
やってみると、結構難しい。前後タイヤの通る場所を意識するなど、MTBだけでなくロードバイクでも役立ちそうなメニュー
できるようになってきたら、板を2本、3本と縦に並べてチャレンジ。上手な人はこれもスイスイこなします

使うのは、ちょっと長めの板を何本かだけですが、並べ方しだいでいろいろな操作を練習することができます。スピードも出ていないので、失敗しても怪我する心配もありません。メニューが適度にチャレンジングなので、失敗しながらも何度もチャレンジしたくなります。

続いて、板を互い違いに並べて、その間をジグザグに走るメニュー。低い速度でコンパクトに曲がる必要があります
勢いで行っても曲がれないので、筆者は転倒……。でもまったく痛くないので、笑って練習を続けられます
思った以上に難しいのですが、曲がりきれなくても板を踏むだけ。「もうちょっと……」とか言いながら、みなさん楽しんでいる様子

狭い板の間を曲がって抜けるには、車体のコントロールはもちろんですが、ライン取りも考える必要があります。どちらもスピードが上がってきても役立つテクニック。個人的には、ブレーキの練習メニューが一番ためになると感じました。MTBだけでなく、どんな自転車に乗っても役に立ちそう。e-MTBは、制動力が高い油圧式ディスクブレーキを採用しているものが多いですが、それをコントロールするためにもこういう練習はしておいたほうが良さそうです。ちょっとしたスペースと段差があれば、どこでも練習できそうですし。

板に向かって走って行き、前輪が乗り上げたところで止まるというブレーキの練習。当たり前ですが有薗さんはうまい!
筆者も何度か練習してできるように。急ブレーキをかけるのではなく、手前から速度をコントロールするのがポイントのようです
有薗さんは同じことを後輪でも。タイヤが乗り上げたところで止めるのは、見ているより難しい

遊びながら、“走る・曲がる・止まる”の基本を身につけたら、あとの時間は参加者みんなでコースを走り回ります。この日は、e-bikeはもちろん、MTBやスポーツタイプの自転車に乗るのは初めてという人も参加していましたが、みんな危なげなく、そして楽しそうにコースを走り回っていました。これからe-MTBに乗りたいという人は、こういう基本を身につけておいたほうが、より安全に、そして楽しくオフロード走行ができるようになるのは間違いありません。街乗りしかしないという人でも、一度体験してみると安全に自転車を操れるようになるだけでなく、新たな楽しさが見つかることでしょう。

有薗さんの先導でコースを走りますが、みんな確実に上達している! そして楽しそう!
激坂を笑顔で上れてしまうのがe-MTBの魅力ですが、それだけではない操る楽しさを味わえるようになります

e-MTBを楽しむためにはコントロールが大切とアドバイス

最後に、有薗さんにe-bikeの魅力や乗る際の注意点などを聞いてみました。「一番は体力に関係なく、誰もが一緒に楽しめることですね。今日も男性と女性、MTBの経験者と初心者、さらに年齢層もさまざまでしたけど、みんなで一緒に走れましたよね。そういう乗り物ってなかなかないので、e-bikeにはすごく可能性を感じています」(有薗さん)

確かに結構MTB経験がありそうなライダーから初心者まで、この日は多様な参加者が集まっていましたが、みんな同じように楽しそうでした。親子で参加している人もいましたが、特に体力差も感じていなかった様子。

「注意点ということだと、やはりe-MTBは重いのでコントロールがやや難しい面があります。だからこそ、いきなりスピードを出すのではなく、低い速度域でコントロールの基本を身につけておくのが大切だと思います。今回やったようなメニューは、e-MTBだけでなくロードバイクや普通の自転車に乗るときにも役立つものなので、ぜひ一度体験してもらいたいですね」(有薗さん)

実際にやってみて感じたのは、一本橋やブレーキのコントロールなど、単純に「できる」「できない」ではなく、上手な人はさらに高度なコントロールをしている奥の深い技術だということ。ある程度の経験があって「できるつもり」になっているライダー(筆者のような)も、参加してみるとより奥の深い楽しみ方が味わえるかもしれません。パナソニックのe-MTB講習会は、今後も定期的に開催される予定なので、ぜひ情報をチェックしてみてください。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。