e-bike試乗レビュー
ROADREX 6180乗りがBESVのグラベルe-bikeを試乗。スタイリッシュなJG1はどうなのか?
2022年3月25日 07:00
ROADREX 6180を購入して約1年、飽きたわけではないけれど1台にそれなりに乗っているとほかの車種にも乗ってみたくなる。そんなことを考えていたらナイスタイミング! BESVのJG1をしばらく借りられることになったのだ。
このJG1は本格的なグラベルロードバイクタイプであり、しかも価格が40万円以下。スポーツタイプのe-bike購入を検討している人にとって注目の1台という存在だ。
BESVというメーカーを初めて聞いた人がいるかもしれないので少し説明すると、台湾のe-bike専門メーカーで特徴はフレームだけでなく駆動ユニットや制御プログラムも自社で開発している。e-bikeのメーカーは世界中にあるが、そのなかでも自社開発率が高いメーカーである。
そんなBESVが作るJG1も他のメーカーのe-bikeにはない特徴を持つ。ドライブユニットをリアハブに内蔵しているモデルが中心だ。スポーツタイプe-bikeとしては珍しい構造だが、自転車のパーツとしてはボリュームのあるドライブユニットが目立たないため、フレーム形状がスッキリしている。さらに、バッテリーをダウンチューブ内に収めるデザインなので、e-bikeとしてはかなりスタイリッシュな部類といえる。
筆者のROADREX 6180と比べると……率直な感想は「JG1のほうがカッコいい」である。ちなみに、ROADREX 6180はすでに生産終了で後継のROADREX i 6180が発売されている。こちらはフレームにバッテリーが内蔵されるなど大きくスタイルが変わっている。
アシストの使い方次第で小型バッテリーでも約100km走れた
e-bikeを評価する指針のひとつにバッテリー満充電からどれだけ走行できるか? というものがある。JG1はアシストを「OFFモード」「ECOモード」「SMARTモード」「POWERモード」と切り替えることができ、ECOモードであれば105km、POWERモードだと40kmがバッテリーが持つ距離とされている。なお、SMARTモードとはペダルにかかる踏力をトルクセンサーが測定し、最適なアシストに自動調整するBESVオリジナルだ。
話を戻すとJG1では前記したように目安の距離が公開されているが、この手の数値は走行条件によって変わってくるもの。とくにJG1はSMARTモードいう便利なモードがあるし、ハンドルのHMIスイッチを活用すればモード切り替えをギアチェンジのような感覚で使うこともできるので、なおさら航続距離は読みにくい。そこで、今回の試乗ではSMARTモードを基本として途中、モード切替を入れるなど変化のあるアシストパターンで走ってみることにした。
今回の試乗では当初ヒルクライム多めのルートを考えていたのだが、試乗前に車体各部の撮影を済ませておこうとJG1に乗ってみたところ、軽めの車体やバッテリー搭載位置の関係からか「扱いやすい」という印象を受けた。また、リアハブモーターということで後ろ回りに重さを感じるかと思ったけれど、そこも違和感はない。
こうした特性を感じたことから、ヒルクライムのような極端な走行条件ではなくて、街乗りにもつながるような普通のサイクリングをしたほうがJG1の魅力がわかりやすいだろうと考えた。そこでホームコースである多摩川沿いのサイクリングロードを基本に組み立てたコースを走ることに。距離は約70kmだ。
事前の走行で約30kmほど走っていたので、この試乗を合わせると約100kmなる。この距離はエコモードで公表されている航続距離なのでSMARTモードメインの変則的なアシスト利用法であってもいちおうの目安になるだろう。
路面の凹凸通過での衝撃がマイルドに感じる
今回の試乗コースにはふだんROADREX 6180で走っている区間を含んだので、そこではROADREX 6180とJG1の乗り味の違いがわかりやすい。
まずアシスト力の出方だが、ROADREX 6180に使用されているシマノSTEPS「6180シリーズ」と比べると、JG1のドライブユニットはどのモードでも初期から積極的に強めのアシストをしてくれるように感じた(モードなりの強さで)。しかし、ROADREX 6180の発進がキツイというわけではない。表現的にはBESVのアシストが「スッ」と鋭く立ち上がるのに対して、シマノSTEPS「6180シリーズ」はジワッと立ち上がる感じだ。とはいえ「スッ」とくるのも「ジワッ」と立ち上がるのも走行条件次第で「こっちがいい」という印象は変わるもの。だからアシスト特性の違いは優劣を付けるものでなく「乗り味の話」と捉えておいて欲しい。
サイクリングロードでは飛ばしすぎている一部の自転車乗りの速度抑制のため、路面に凹凸が設けられていることが多いが試乗コースも同様だ。ROADREX 6180でこれを通過する際は強めの衝撃が伝わってきたので、JG1でも速度を落として凹凸へ進入したところ……「ん?」手に伝わる衝撃が少しマイルドになっているように感じた。
ROADREX 6180もJG1もグラベルロードバイクなのでエアボリュームが多いタイヤを履いている。そのためタイヤでの衝撃吸収性はいいのだが、実はJG1のタイヤはROADREX 6180より細いので、理屈からいえば太いタイヤより衝撃吸収性は落ちるはずだ。
では、なぜ衝撃が弱くなったと感じたのかというと、これは適度にしなる特性を持つカーボンフォークの効果だろう。凹凸の衝撃はタイヤやホイールで吸収されたあと、カーボンフォークでも吸収しているので手に伝わる衝撃がマイルドになるということだ。
まあ、サスペンション付きのMTBほどではないが、それでも手に伝わる衝撃が減ることは好ましいことだけにROADREX 6180と比べてここは「明らかにいい」と感じた部分だった。
JG1のドライブユニットの能力は必要十分
多摩川サイクリングロードは起伏が単調なので途中から川沿いを離れ、小高い山のあるエリアに入り、ダラダラ続く上り坂を走ってみた。
ここでは勾配に合わせてギアを軽くして走行。ECO→POWERとアシストモードを切り替えてみたところ、ECOでは上り坂であることを多少感じるペダルの踏み込み感だった。対してPOWERモードにすると、坂という感じはかなり薄くなる。少し向かい風の平地を走行しているような感じだ。
ROADREX 6180で同じ坂を走ったことがないのでアシスト力の差はわからないが、JG1の登坂性能に不満はないという印象。また、この坂を越えたあと見つけた短めだが勾配の急な坂も走ってみたがそこでも力不足は感じなかった。
70kmの行程は疲れたけどアシストで乗り切る
上り坂エリアからサイクリングロードへ復帰。ここからは比較的平坦な道が続くのだが、さらに追い風だったので走るのがとても楽だった。そこでチョコチョコとアシストをオフにしてバッテリーを節約してみた。とはいえ距離にして4~5kmくらいなので、たいした節約にはなっていないだろう。
折り返し地点での休憩後に帰路につくが、行きに追い風だったのであれば帰りは向かい風になる。しかも折り返し序盤より中盤くらいがいちばん向かい風がきつくなる。この時点でバッテリー残量表示は最後の1目盛りだったので「ギリギリ足りないか」と思ったが、エコモードに固定で走ったら電欠せずに帰宅できた。バッテリー交換をせず約100km走り切れたのは、252Wh(36V/7.0Ah)というバッテリー容量から考えるとかなり優秀といえるだろう。
このような結果になったのは、アシストを状況に合わせて適切にするSMARTモード主体での走行も大きいが、BESVをはじめe-bikeは車速が20km/hくらい出ていればアシスト力を弱める設定なので、JG1のように車体構成的にその速度域での巡行が楽なモデルは余計に電費がいいのだろうと推測できる。
ということで、高額なモデルが多いe-bikeのなかで、JG1は40万円以内で買えて、スタイルもカーボンフォークなどの装備も良く、そしてアシスト能力、バッテリーの持ちもいいのは優秀。全国でもJG1の試乗車を取り扱う店舗も多いので、気になった人はぜひ試乗していただきたい。