e-bike試乗レビュー

ROADREX 6180乗りがBESVのグラベルe-bikeを試乗。スタイリッシュなJG1はどうなのか?

BESVのグラベルロードe-bike「JG1」の試乗をさせてもらった。ふだん乗っているROADREX 6180とも比べてみたい

ROADREX 6180を購入して約1年、飽きたわけではないけれど1台にそれなりに乗っているとほかの車種にも乗ってみたくなる。そんなことを考えていたらナイスタイミング! BESVのJG1をしばらく借りられることになったのだ。

このJG1は本格的なグラベルロードバイクタイプであり、しかも価格が40万円以下。スポーツタイプのe-bike購入を検討している人にとって注目の1台という存在だ。

BESVというメーカーを初めて聞いた人がいるかもしれないので少し説明すると、台湾のe-bike専門メーカーで特徴はフレームだけでなく駆動ユニットや制御プログラムも自社で開発している。e-bikeのメーカーは世界中にあるが、そのなかでも自社開発率が高いメーカーである。

そんなBESVが作るJG1も他のメーカーのe-bikeにはない特徴を持つ。ドライブユニットをリアハブに内蔵しているモデルが中心だ。スポーツタイプe-bikeとしては珍しい構造だが、自転車のパーツとしてはボリュームのあるドライブユニットが目立たないため、フレーム形状がスッキリしている。さらに、バッテリーをダウンチューブ内に収めるデザインなので、e-bikeとしてはかなりスタイリッシュな部類といえる。

筆者のROADREX 6180と比べると……率直な感想は「JG1のほうがカッコいい」である。ちなみに、ROADREX 6180はすでに生産終了で後継のROADREX i 6180が発売されている。こちらはフレームにバッテリーが内蔵されるなど大きくスタイルが変わっている。

BESVブランド初のグラベルロードe-bike「JG1」。価格は369,600円。フレーム内蔵バッテリーとリアハブモーターを採用。タイヤはグラベルロード用では細めの700×38Cを選択。コンポーネンツはシマノGRX(11S)。車体重量はSサイズ(身長162cm以上向け)で15.8kg、Mサイズ(身長170cm以上向け)は15.9kgと軽量だ
車体サイズ(S)は1,730×510×1,040mm(全長×全幅×全高)。バッテリーが収まるダウンチューブはそれなりの太さになるが、一部を黒で塗り分けすることで視覚的に細めに見えるようにしている
フレームカラーとロゴの入れ方に注目して欲しい。ダウンチューブのボリュームがあるので前記した黒の塗り分けのほか、白いラインも入る。合わせてトップチューブにもラインとロゴが入る。e-bikeという最新の乗り物ながらどこかレトロなイメージを感じた。アウトドアというか登山的なスタイルで乗るのも似合いそう
40万円以下という価格設定ながら、フロントフォークとシートポストはカーボン製となる。これも大きな特徴
フロントまわりのワイヤー処理もフレーム内を通しているのでスッキリ
JG1のフレーム細部。フレームのカラーはオリーブドラブで部分的に黒で塗り分けしている。カーボンフォークは未塗装
グラベルロード用のフレアハンドルを装着。レバーはシマノGRX。黒いバーテープも筆者好み。バーテープは厚みがあるタイプを使っているのでハンドルを握ったときのクッション性も優れている。薄いバーテープより路面からの振動も吸収するので街乗りやツーリングではこっちがいいと思っている
ハンドル部に小型ディスプレイが付く。サイドには給電用USBポートがあるのでスマホなどへ充電ができる。e-bikeならではのパワースイッチ(メイン電源スイッチ)はトップチューブ上側に付き、モードを切り替えるとスイッチの照明もディスプレイと同じ色になる
ハンドル部両側、指が自然にかかる部分にHMIスイッチと呼ぶアシストモード切替スイッチが付くがこれがとても具合がいい。ハンドルから手を離さず操作できるので、アシストのモードチェンジをシフトチェンジのような感覚で使用できた。ギヤ固定のまま走行フィールを臨機応変に変えられるのはe-bikeらしいところ。ROADREX 6180にもこのスイッチが欲しい
そしてリアハブ内蔵のドライブユニット。出力は250W。モード切替で3パターンのアシストレベルが設定できる
ECO(エコ)モード選択時の表示。色分けがはっきりしているのと、モードの頭文字がタブのように位置を変えて表示される。走行中は日の加減で色がわかりにくいこともあるが、タブの位置でモードがわかるのは便利だった
SMART(スマート)モード選択時の表示
POWER(パワー)モード選択時の表示
アシストオフ時の表示

アシストの使い方次第で小型バッテリーでも約100km走れた

e-bikeを評価する指針のひとつにバッテリー満充電からどれだけ走行できるか? というものがある。JG1はアシストを「OFFモード」「ECOモード」「SMARTモード」「POWERモード」と切り替えることができ、ECOモードであれば105km、POWERモードだと40kmがバッテリーが持つ距離とされている。なお、SMARTモードとはペダルにかかる踏力をトルクセンサーが測定し、最適なアシストに自動調整するBESVオリジナルだ。

話を戻すとJG1では前記したように目安の距離が公開されているが、この手の数値は走行条件によって変わってくるもの。とくにJG1はSMARTモードいう便利なモードがあるし、ハンドルのHMIスイッチを活用すればモード切り替えをギアチェンジのような感覚で使うこともできるので、なおさら航続距離は読みにくい。そこで、今回の試乗ではSMARTモードを基本として途中、モード切替を入れるなど変化のあるアシストパターンで走ってみることにした。

ダウンチューブの設けられたバッテリーボックスはキー付き。カバーを開くとこのようなスペースにバッテリーが収まる
充電器は標準付属。充電時間は約3.5時間
オプションで追加バッテリーが用意されている。さらに画像のようにフレームに装着できるバッテリーバッグもある。この組み合わせを用意しておけばロングツーリングでもバッテリー残量を気にせずアシストを使っていける

今回の試乗では当初ヒルクライム多めのルートを考えていたのだが、試乗前に車体各部の撮影を済ませておこうとJG1に乗ってみたところ、軽めの車体やバッテリー搭載位置の関係からか「扱いやすい」という印象を受けた。また、リアハブモーターということで後ろ回りに重さを感じるかと思ったけれど、そこも違和感はない。

こうした特性を感じたことから、ヒルクライムのような極端な走行条件ではなくて、街乗りにもつながるような普通のサイクリングをしたほうがJG1の魅力がわかりやすいだろうと考えた。そこでホームコースである多摩川沿いのサイクリングロードを基本に組み立てたコースを走ることに。距離は約70kmだ。

事前の走行で約30kmほど走っていたので、この試乗を合わせると約100kmなる。この距離はエコモードで公表されている航続距離なのでSMARTモードメインの変則的なアシスト利用法であってもいちおうの目安になるだろう。

信号はないが撮影でチョコチョコ止まるので発進時の電力消費は発生する条件。ずっと巡航ではアシストが強く入らないのでバッテリーが減らないのだ

路面の凹凸通過での衝撃がマイルドに感じる

今回の試乗コースにはふだんROADREX 6180で走っている区間を含んだので、そこではROADREX 6180とJG1の乗り味の違いがわかりやすい。

まずアシスト力の出方だが、ROADREX 6180に使用されているシマノSTEPS「6180シリーズ」と比べると、JG1のドライブユニットはどのモードでも初期から積極的に強めのアシストをしてくれるように感じた(モードなりの強さで)。しかし、ROADREX 6180の発進がキツイというわけではない。表現的にはBESVのアシストが「スッ」と鋭く立ち上がるのに対して、シマノSTEPS「6180シリーズ」はジワッと立ち上がる感じだ。とはいえ「スッ」とくるのも「ジワッ」と立ち上がるのも走行条件次第で「こっちがいい」という印象は変わるもの。だからアシスト特性の違いは優劣を付けるものでなく「乗り味の話」と捉えておいて欲しい。

アシスト能力を積極的に使っていくような特性と感じた。e-bikeに乗り始めでまだ脚力がない段階ではこの特性はうれしいところ

サイクリングロードでは飛ばしすぎている一部の自転車乗りの速度抑制のため、路面に凹凸が設けられていることが多いが試乗コースも同様だ。ROADREX 6180でこれを通過する際は強めの衝撃が伝わってきたので、JG1でも速度を落として凹凸へ進入したところ……「ん?」手に伝わる衝撃が少しマイルドになっているように感じた。

ROADREX 6180もJG1もグラベルロードバイクなのでエアボリュームが多いタイヤを履いている。そのためタイヤでの衝撃吸収性はいいのだが、実はJG1のタイヤはROADREX 6180より細いので、理屈からいえば太いタイヤより衝撃吸収性は落ちるはずだ。

では、なぜ衝撃が弱くなったと感じたのかというと、これは適度にしなる特性を持つカーボンフォークの効果だろう。凹凸の衝撃はタイヤやホイールで吸収されたあと、カーボンフォークでも吸収しているので手に伝わる衝撃がマイルドになるということだ。

まあ、サスペンション付きのMTBほどではないが、それでも手に伝わる衝撃が減ることは好ましいことだけにROADREX 6180と比べてここは「明らかにいい」と感じた部分だった。

路面にこのような凹凸が設けられているが、カーボンフォークのJG1はアルミフォークのROADREX 6180より手に伝わる衝撃がマイルドになっていた
路面のペイントを通過するときも衝撃が若干伝わってくる。それが緩和されるのはありがたい
JG1のタイヤサイズは700×38C。ROADREX 6180よりは細いが十分なエアボリュームがあるのでタイヤでの衝撃吸収性もいい
衝撃吸収性が良いのでこのような未舗装路も入っていく気になる。未舗装ゆえ路面抵抗が増えたがSMARTモードで適切なアシストが入ったので、路面の抵抗をあまり意識することなく、しかもギアポジションを1段下げるくらいで進むことができた
走行性能とは関係ないが、カーボンフォークで前まわりが軽いため、持ち上げて段差を超えるのも楽。階段や段差がある自宅に保管する場合、負担が少なく済むだけに前まわりの軽さは大きなメリット。一方でドライブユニットのあるリアは重さがあるが、前が乗ってしまうと後ろを持ち上げるのは苦でない

JG1のドライブユニットの能力は必要十分

多摩川サイクリングロードは起伏が単調なので途中から川沿いを離れ、小高い山のあるエリアに入り、ダラダラ続く上り坂を走ってみた。

ここでは勾配に合わせてギアを軽くして走行。ECO→POWERとアシストモードを切り替えてみたところ、ECOでは上り坂であることを多少感じるペダルの踏み込み感だった。対してPOWERモードにすると、坂という感じはかなり薄くなる。少し向かい風の平地を走行しているような感じだ。

ROADREX 6180で同じ坂を走ったことがないのでアシスト力の差はわからないが、JG1の登坂性能に不満はないという印象。また、この坂を越えたあと見つけた短めだが勾配の急な坂も走ってみたがそこでも力不足は感じなかった。

サイクリングロードから離れて約2kmほど上り坂が続くエリアも走った。ECOモードでは多少坂であることを意識するが、POWERモードだと平地並み
2km坂を越えたあとで見つけた坂。勾配はきつい。撮影でこの位置で停車後に坂の途中からPOWERモードで再スタート。アシストの立ち上がりが早いBESVのドライブユニットはこういうシーンに向いているかも
上り切った場所の公園からの風景。上った高さはこんな感じ
サイクリングロードにある河原側から土手へ上る道。ここではSMARTモードを試した。速度が落ちてきたあたりでアシスト量が変わるので、切り替わりの手前では少々漕ぐ力が必要。でも、まあペダルバイクよりはるかに楽

70kmの行程は疲れたけどアシストで乗り切る

上り坂エリアからサイクリングロードへ復帰。ここからは比較的平坦な道が続くのだが、さらに追い風だったので走るのがとても楽だった。そこでチョコチョコとアシストをオフにしてバッテリーを節約してみた。とはいえ距離にして4~5kmくらいなので、たいした節約にはなっていないだろう。

折り返し地点での休憩後に帰路につくが、行きに追い風だったのであれば帰りは向かい風になる。しかも折り返し序盤より中盤くらいがいちばん向かい風がきつくなる。この時点でバッテリー残量表示は最後の1目盛りだったので「ギリギリ足りないか」と思ったが、エコモードに固定で走ったら電欠せずに帰宅できた。バッテリー交換をせず約100km走り切れたのは、252Wh(36V/7.0Ah)というバッテリー容量から考えるとかなり優秀といえるだろう。

このような結果になったのは、アシストを状況に合わせて適切にするSMARTモード主体での走行も大きいが、BESVをはじめe-bikeは車速が20km/hくらい出ていればアシスト力を弱める設定なので、JG1のように車体構成的にその速度域での巡行が楽なモデルは余計に電費がいいのだろうと推測できる。

ということで、高額なモデルが多いe-bikeのなかで、JG1は40万円以内で買えて、スタイルもカーボンフォークなどの装備も良く、そしてアシスト能力、バッテリーの持ちもいいのは優秀。全国でもJG1の試乗車を取り扱う店舗も多いので、気になった人はぜひ試乗していただきたい。

試乗中のスナップ
試乗車にはオプションのキックスタンドが装着されていた。価格は2,860円。BB部に付くタイプなので目立たないのがいい。スポーツバイクはスタンドレスが定番になっているが、やっぱりスタンドがあるのは便利
折り返し地点は多摩川の羽村取水堰。平日ながらサイクリストは多かったが、e-bikeには会わなかったなぁ
JG1の魅力がよく実感できた箇所。止まりそうなくらい速度を落としたあと上り坂。そして、上り切ったところで再び止まりそうなくらい速度を落とし、急な向き替えをする。乗りやすくアシストが強くレスポンスがいいのでスイスイ行けた
深田昌之