そこが知りたい家電の新技術

シーリングライトとスピーカーが一体化!? 事業部の垣根を超えて完成した「AIR PANEL LED THE SOUND」

 パナソニックが、Bluetooth対応のスピーカーを搭載したLEDシーリングライト「AIR PANEL LED THE SOUND」を2月21日より発売する。スピーカーと光源を一体にした製品は、珍しいものではないが、既存製品の多くはLED電球にスピーカーを搭載している。今回の新モデルでは多くの日本の家庭で設置されているシーリングライトに、スピーカーを搭載しているという点が新しい。製品開発にはどのような背景があったのか、話を聞いてきた。

Bluetoothスピーカーを搭載したLEDシーリングライト「AIR PANEL LED THE SOUND」

変化する灯りの役割

 「灯りの役割は時代と共に変わってきた」と、エコソリューションズ社 ライティング事業部 ライティング機器ビジネスユニット 住宅商品部 コンシューマー商品企画課 課長 居相 徹氏は語る。

エコソリューションズ社 ライティング事業部 ライティング機器ビジネスユニット 住宅商品部 コンシューマー商品企画課 課長 居相 徹氏

 「電球から数えると、パナソニックのあかりは82年の歴史があるわけですが、まずはとにかく明るくすることが求められ、その後は省エネ性、今は空間演出が求められています。その答えの1つとして、我々が提案するのが、今回のAIR PANEL LED THE SOUND。リビングで光と音を同時に楽しめることで、毎日の生活がより豊かになります」(居相氏)

 製品開発で特にこだわったのが「音の良さ」だという。

 「スマートフォンと同程度の音だったら、この製品を設置する意味がなくなってしまう(笑)。とにかく音の良さ、音の拡がりにはこだわりました」(居相氏)

ライティングとオーディオ、垣根を越えた製品開発

 実はAIR PANEL LED THE SOUNDは、色々なチャレンジを含んでいた。ライティングとオーディオという異なる事業部、どころか内部的な話をしてしまうと、実は会社すら違う、その垣根を超えて、共同で製品開発を進めたという経緯がある。

 会社が違うとはどういうことか。

 パナソニックでは現在「社内カンパニー制」が敷かれており、エアコンや冷蔵庫、テレビ、オーディオなどを扱う「アプライアンス社」と、照明器具、ランプ、太陽光発電システム、自転車などを扱う「エコソリューションズ社」で分かれている。今回の製品はオーディオを扱う「アプライアンス社」と、照明器具を扱う「エコソリューションズ社」が共同で開発した製品なのだ。これは、かなりレアなケースだという。

オーディオを展開する「アプライアンス社」の猿渡氏(左)と、ライティングの「エコソリューションズ社」の居相氏(中央)、速水氏(右)。カンパニーを超えて、共同で製品を開発した

 「カンパニーの垣根を越えた取り組みを、ここ数年進めてきました。AIR PANEL LED THE SOUNDも“クロスバリューイノベーション”として、開発をスタートしましたが、完成までには色々な苦労がありました。アプライアンス社とエコソリューションズ社では、勤務地も違いますが、毎週のようにミーティングを重ねてきました」(居相氏)

 スピーカー部分を担当したアプライアンス社 ホームエンターテイメント事業部 オーディオ・ネットワークビジネスユニット 商品企画部 オーディオ・ネットワーク商品企画課 主務 猿渡清成氏も「とにかく大変だった」と語る。

アプライアンス社 ホームエンターテイメント事業部 オーディオ・ネットワークビジネスユニット 商品企画部 オーディオ・ネットワーク商品企画課 主務 猿渡清成氏

 「シーリングライトというのは、どこでも設置できる汎用性が求められます。LEDシーリングライトに搭載できるスピーカーとして、サイズや重量の制約がある中でのスタートだったので、かなり苦労しました。そもそも、オーディオというのは、趣味嗜好の商品で、色々な形やサイズのものがありますが、AIR PANEL LED THE SOUNDは照明器具とスピーカーを最初から一体化させた製品なので、専用の設計や構造をイチから考える必要がありました」(猿渡氏)

スピーカー部分
中央の光源のサイドに2つ配置されている

 ライティング事業部の居相氏は「光と音のせめぎ合い」があったと話す。

 「我々の製品は量販店で流通するものなので、サイズに関してはかなりシビアなところがありました。補強板や工事の必要なしで設置できるものというのは、最初から大前提としてあり、それがもしかしたら一番のこだわりだったかもしれません(笑)。それだけに、オーディオの方には色々とわがままなオーダーをしてしまいました」(居相氏)

 一方、スピーカーで特にこだわったのが「音の拡がり」だという。

 「両サイドにスピーカーを配置、角度にもこだわったことで、部屋全体に自然に拡がる音を再現できたと思います。音質と軽量化を両立させるためマグネットの材質にもこだわりました。スピーカーは容積と音質が比例する一面もあるのですが、AIR PANEL LED THE SOUNDに関していえば、従来のスピーカーとは全く違う考え方をしています。従来のサウンドシステムは基本的にスピーカーの真正面に座って音楽を楽しむということを想定して作られていますが、AIR PANEL LED THE SOUNDは、真下に向けて音が拡がるようにデザインしています」(猿渡清成氏)

 今回、取材を行なったのは、エコソリューションズ社内のモデルハウス。実際の設置環境下で、音や光の拡がりを体感してきた。テレビの音をAIR PANEL LED THE SOUNDから、流してもらったところ、普段のテレビとは全く違う臨場感がある。当日は音楽のプロモーションビデオを流してもらったのだが、音を前面からだけでなく、空間全体で感じることができた。また、LDKタイプの間取りだったのだが、リビングスペースだけでなく、キッチンにいても音が届く。調理しながら、テレビの音を楽しむというのは、一般的な間取りでは難しいが、AIR PANEL LED THE SOUNDがあれば実現できる。

今回取材を行なったエコソリューションズ社内のモデルハウス。実際の住宅環境で音や光がどう拡がるか体感させてもらった
実際の住空間で音と光を体感。音が上から降ってくるような感覚は、自宅のリビングでは味わえなかったもの

LEDじゃないとできないデザイン

 本体デザインはエコソリューションズ社 デザインセンター ライティングデザイン部 グローバル課 主務 速水 拓氏が担当する。照明器具のデザインを20年以上担当し、最近は導光パネルを使ったAIR PANEL LEDを手がける。今回のモデルも、AIR PANEL LEDを採用するが、AIR PANEL LEDは、従来タイプの照明器具とは異なり、天井や壁にも光が拡がるのが特徴だという。

エコソリューションズ社 デザインセンター ライティングデザイン部 グローバル課 主務 速水 拓氏

 「光源が蛍光灯からLEDに変わったはずなのに、照明器具はシーリングタイプがメインで外観のデザインは変わり映えしないという状況がありました。しかし、導光パネルを使ったAIR PANEL LEDはLEDじゃないと実現しないデザインが特徴です。LEDは指向性の強い光源で、従来のLEDシーリングライトでは、レンズカバーとアクリルカバーを使って光を拡散させていました。AIR PANEL LEDは、LEDの光を導光パネルで拡散させます。点の光から面の光に変換させることで、下方向だけでなく、天井や壁まで照らせます。アクリルカバーも使わないため、開放的でフラットなデザインも魅力です」(速水氏)

 スピーカーを搭載した新モデルにおいては、従来のデザインを踏襲しながらも、空間との一体化を目指したという。

 「スピーカーを搭載することで、オーディオっぽいクールな要素を追加するかということに関しては最後まで悩みました。しかし、それよりも空間に馴染む、シンプルなデザインを採用しました」(速水氏)

AIR PANEL LEDは、LEDの光を導光パネルで拡散させる。下方向だけでなく、天井や壁まで照らせる
消灯時も空間に馴染む、シンプルなデザインを採用

ボタンはたったの6つ「振り切ったデザインのリモコン」とは

 また、今回「振り切ったデザインを採用した」と語るのが、リモコンだ。1から5まで数字が書かれたボタンが並ぶリモコンは、従来のLEDシーリングライトのリモコンとは似つかないシンプルなもの。このデザインは、本体にBluetoothを搭載し、スマートフォンアプリ「あかリモ」で明るさや色調を管理できる「LINK STYLE LED」だからこそ可能になったという。

 「一般的なシーリングライトのリモコンは、色調や明るさなどのコントロールボタンが必須で、そのほかにシーン切替ボタン、常夜灯ボタン、全灯、消灯なども専用ボタンを設けているので、どうしてもボタンの数が多くなってしまいます。ただ、スマートフォンでシーンや明るさの設定ができる『LINK STYLE LED』であれば、それらの設定は全てアプリでできる。だったら、思い切ってリモコンもシンプルにしてしまおうと」(速水氏)

1から5まで数字が書かれたボタンが並ぶリモコン。このデザインはLink Styleシリーズで初めて採用した
専用アプリ「あかリモ」ではシーンが5つ設定されている。それぞれのシーンには番号が付いており、この番号がそのままリモコンの番号に割り振られる

 従来のリモコンとは全く違うインターフェイスに、当初は議論もあったというが、壁に設置することも考えられたデザインは、一般的なシーリングライトのリモコンとは一線を画す。また、特筆すべきは、このリモコンでは「あかリモ」に対応した照明器具であれば、一括で操作できるという点だ。

 パナソニックでは、従来の一室一灯の考え方から、フロアライトなどを効果的に配置し間接照明を楽しむ一室多灯へシフトする提案を行なっており、フロアライトやラインライト、アッパーライトなどの照明器具をラインナップする。これらの製品は、全てスマートフォンアプリ「あかリモ」に対応しており、事前にアプリで登録しておくことで、一括で操作できる。つまり、付属のリモコンはAIR PANEL LED THE SOUND専用のものではなく、どちらかというと「あかリモ」のリモコンということもできる。

別売りのフロアライト
ラインライトも展開する
アッパーライト。観葉植物の裏などに置くと、効果的な空間演出ができる
スマートフォンアプリ「あかリモ」に登録しておくことで、一括操作が可能

 「一室多灯の考え方は以前からあり、お客様からのニーズも高かったのですが、現状まだまだ普及していません。理由としては、まず複数の照明器具を置くほど、室内が広くないということがあります。もう1つは独立した照明器具を使う場合、スイッチングの手間がかかるという問題がありました。そのたびにON/OFFを繰り返すのが面倒で、使用頻度が下がるというケースです。これらの問題を解決するのが、Bluetoothを搭載した照明器具シリーズ『LINK STYLE LED』です。専用アプリに照明器具を登録することで、一括で操作可能。それぞれのシーンをリモコンのボタンに割り振ることで、一度登録したあとは、アプリを開く必要はなく、普通の照明器具と同じようにリモコン操作できます」(居相氏)

テレビの後ろにラインライト、テレビボードの上にフロアライト、部屋の隅にアッパーライトなどを配置した状態。壁や天井を明るく照らすことで、奥行きが出て、部屋が広く感じられる

様々な生活シーンに

 AIR PANEL LED THE SOUNDは、当初30~40代のDINKSをメインターゲットとして開発したというが、開発中に行なった様々な調査によると、シニアの需要も高かったという。

 「スマホで操作とか、Bluetooth搭載というと、シニア世代は抵抗感があるかと思っていたが、室内で音楽やラジオを聞くという需要はシニアの方からの方が高かった。IoTを駆使することで、照明器具のコントロールが以前よりもずっと簡単に便利にできるようになりました。我々もこれまでの価値観に捕らわれることなく、便利で快適な空間作りに向けて新たな提案を続けていかなければならないと思います」(居相氏)

寝室に設置した例。目覚めの光と音楽をタイマーで設定することもできる

阿部 夏子