家電ラボの徹底「本音」レビュー

もはや冷蔵庫は調理家電? 保存だけじゃない“大容量”は使う価値アリ!

家電プロレビュアー・石井和美が、レビューハウス「家電ラボ」で徹底的に試した「本音」の製品レビューコーナーです。
パナソニックの大容量冷蔵庫「NR-F607WPX」

冷蔵庫は共働き世帯の増加を背景に大容量化が進んだが、コロナ禍によるまとめ買いなどでさらなる容量アップが求められている。最近では小さめの冷凍庫を追加する「2台持ち」も珍しくない。大容量タイプはますます注目されており、コンパクトで大容量の冷蔵庫を探している方も多いのではないだろうか。

今回レビューするパナソニック「NR-F607WPX」(店頭予想価格は41万円前後/税別)は、幅68.5cmとスリムながら約600Lの大容量を実現したモデル。さらに、調理補助などの機能まで備えている最新の高機能冷蔵庫だ。

コストコのまとめ買い食材もラクに入る

冷蔵室は明るく広々。上にコンプレッサーがあるので、最上段は狭い

パナソニックの冷蔵庫は特徴的な構造となっており、コンプレッサー(圧縮機)が冷蔵室の上に格納されている。そのため一番上の段は奥半分が使えない状態だ。2段目も奥にコンプレッサーがかかっているため狭くなってはいるが、350ml缶がちょうど入る高さだ。その代わりに、一番下にある野菜室は広く、奥までたっぷり使える。

筆者の身長は162cmと平均的だが、幅68.5cmサイズの大容量冷蔵庫では、一番上の棚の奥に手が届かないことが多い。いつもデッドスペースになってしまっていたので、そのぶん野菜室が広いほうが嬉しい。こういった細かい使い勝手まで考えられているのがパナソニックの冷蔵庫だ。

一番上の段は狭い
真ん中あたりまでしか手が届かないので、狭くても気にならない

冷蔵室の右下にある「クーリングアシストルーム」は、専用ファンとアルミプレートで一気に冷やせるスペース。単に食材を保存するだけではなく、時間がかかる粗熱取りや下味付け、カットした野菜の冷凍などができる。これはパナソニック独自の人気機能となっている。

冷蔵室の右下にある「クーリングアシストルーム」は、保存するだけではなくさまざまな活用ができる
真ん中は冷凍室。3段で整理がしやすそう
野菜室は一番下。コンプレッサーがないため、奥まで広々使える

さっそくふだんストックしている食材と、さらにコストコで買ってきた大量の食材を入れてみた。コストコで買ったのは40cmのピザ、1ダースのオイコス、味付け済みの鶏肉カシューナッツ炒め2kgほど、さくらどり(胸肉)2kgほど、塩鮭7切れ。他にも日本ではあまり見かけないサイズの大きいジュースも購入した。

コストコでいつもの食材を買ってきた

冷蔵室の実際に食品を収納できる空間の容積(目安)は235L。巨大なピザも、ラクに箱ごと入れられる。LEDも明るく、奥まで見やすい。扉にもたっぷり入り、特殊な形状の大きいジュースも入れることができた。棚の高さは変えられる。

食材を入れてみた。まだ余裕がある
コストコの食材は大きいが、全部入れてもまだ余裕がある。いったん冷蔵庫に入れて、これから小分け作業を行なう
巨大なピザも箱ごと保存
ジュースなどもたくさん入れられるので便利

微凍結パーシャルはチルドより長持ち、解凍する手間なくそのまま使えて便利!

冷蔵室の下にある「パーシャル/チルド切替室」には、小分けした鮭、鶏肉カシューナッツ炒め、胸肉を入れておく。「パーシャル」(-3℃前後)と「チルド」(0~2℃前後)で切り替えられるので、パーシャル(中)に設定して保存した。パーシャル設定では微凍結させて、肉や魚を新鮮に保存できる。チルドより長持ちで、調理するときは解凍することなく使える。

1週間後、取り出してみたところ、それぞれ保存状態が異なっていた。脂が乗った塩鮭は入れた時と同じ状態で、鶏肉のカシューナッツ炒めは少し凍っている程度。解凍せずにそのまま調理ができる。ただ、胸肉に関しては、凍ってカチカチの状態になっていた。油分と塩分が多い食品は凍ることはないが、加工をしていない食材そのものを入れると凍りやすくなるようだ。

しかし、チルドでは2~3日しかもたないミンチ肉も、パーシャルにすれば10日前後保存できる。加工品、作り置き、半調理品などを保存しておくと長持ちするだけでなく、解凍の手間が減ってすぐに調理できるのはとても便利だ。

小分けした塩鮭、鶏肉カシューナッツ炒め、胸肉を1週間ほど入れておいた
脂が乗った塩鮭は入れた時と同じ状態。やわらかく、そのまま焼いてすぐに食べられる
鶏肉のカシューナッツ炒めは少し凍っているが、鶏肉を1枚ずつペリッとはがせる。そのまま調理もできる
胸肉に関しては、凍ってカチカチの状態

クーリングアシストルームは、時短につながる便利なスペース

冷蔵庫右下にあるクーリングアシストルームは冷凍室で、「はやうま冷却(冷ます/急冷)」と「はやうま冷凍」の3つのモードを使い分けることが可能だ。設定は冷蔵室にある操作パネルで簡単に行なえる。

「はやうま冷却」は、常備菜やお弁当の粗熱取りにぴったり。我が家も毎日娘のお弁当を作っているが、熱々のお弁当は冷ます必要がある。お弁当は水分が大敵で、熱いままフタをすると水滴が発生してしまい、食中毒につながる恐れがあるからだ。特にこれからは梅雨時になるので、気をつかっている。

いつもは冷めるまで放置しているが、「はやうま冷却」を設定すれば、庫内天井にあるファンから業務用レベルの急速冷却で強い冷気がお弁当にあたり、冷やしてくれる。設定時間は3分と5分から選ぶことができる。もう少し冷やしたい場合は、繰り返して使用する。

あたたかいままお弁当にフタをすると水滴がついてしまう
できたて熱々のごはんは70℃ほど
クーリングアシストルームに入れる
冷蔵室の操作パネルで設定。3分と5分から選べる

5分に設定したところ、ごはんの温度は37℃まで下がっている。表面は少し凍っている部分もあったが、朝の忙しい時間に短時間でお弁当を冷やせるのは嬉しい。

37℃まで下がったお弁当。たった5分でここまで下がるのは嬉しい

また、下味付けも短時間でできるというので味付けたまごを作ってみた。ゆで卵の殻を剥き、保存袋に醤油と一緒に入れ、空気を抜きながら密閉。「はやうま冷却(急冷)」で10分急冷し、よく混ぜてから再度同じことを繰り返した。

一方、そのまま冷蔵庫に入れた味付けたまごも用意し、比較を行なった。見た目は変わりないが、味の濃さがまったく違う。「はやうま冷却」でつけた卵は、味が濃い。下味付けなどにも使えるはやうま冷却は、時短調理に活用できそうだ。

同じように味付けした卵
片方はクーリングアシストルームのはやうま冷却、もう片方はそのまま冷蔵庫へ
操作パネルのクーリングアシストボタンを押し、「急冷」を選ぶ
右が「はやうま冷却」をした卵。見た目はほとんど変わらないが、味の濃さがまったく違うので驚いた

「はやうま冷凍」でカットした野菜を冷凍しておけば日々の調理がラクに

同じくクーリングアシストルームの「はやうま冷凍」機能を使えば、切った野菜を、霜付きを抑えてパラパラに凍結できる。

アルミのバットにラップを敷き、カットした野菜を入れて軽く水気をとっておく。あとはクーリングアシストルームに入れて、操作パネルのクーリングアシストボタンを押して「急冷」を選び、45分にセットする。

カットしたキャベツをバットに入れる
アシストルームを「急冷」45分にセット
見た目はほとんど変わらないが、持ってみるとパリパリ!

もう一方はジップロックに入れてそのまま冷凍室で冷凍してみたのだが、まったく状態が異なった。「はやうま冷凍」したキャベツは見事にパラパラ。ポテトチップスのようなかたさとハリがあり、少量だけ使いたいときも、サッと分けて使える。一方、冷凍庫で冷凍したキャベツは、冷凍室から出したとたんに水滴がつき、しんなりとしてしまった。凍った部分はかたまってしまい、少量だけ出すのが難しい。

左は通常の冷凍室で冷凍したキャベツ。外に出したとたん、袋の中に水滴がびっしり。キャベツがみるみるしんなりしていった。はやうま冷凍で冷凍した右のキャベツはシャッキリ

味噌汁などに少量だけ使いたいときは、「はやうま冷凍」しておけば必要な分だけサッと使える。買いすぎた野菜も、このように冷凍しておけば無駄なく使えるので食品ロスも減らすことができそうだ。仕事で疲れてヘトヘトで野菜を切るのが面倒なときも、カットして冷凍しておけばすぐに使えて便利だ。この機能はとても気に入っている。

クーリングアシストルームは冷凍室としても使えるが、粗熱取りや急速冷凍で使うことが多い場合は、ここは常に空けた状態にしておきたい。ただ、設定するときに冷蔵室の扉をその都度開けなければならない点は不満だった。冷蔵室は開けるたびに冷気が逃げてしまうので、扉の表面で設定できるようにしてほしい。

たっぷり使える冷凍室と野菜室

冷凍室は大量に購入して詰め込んでしまうと食材探しに時間がかかることもあるが、同モデルは100%全開でラクに引き出せるから、奥までしっかり見える。

引き出しは3段となっており、食材を積み上げずに並べて整理しやすい。デッドスペースができにくいので、隅々まで効率的に使うことができた。冷蔵庫の整理が苦手な方でも、これならスッキリと収めることができそうだ。コストコで購入した大きな袋も余裕で入る。

上段はアイスクリームなどを並べられる
中段は上段がすこしかかっているが、奥までサッと取れる
一番下の段には厚みのある冷凍食品を入れられる

野菜室もフルオープンで、奥まで広く見やすい。「野菜室専用湿度センサー」が、野菜から放出される湿気でおおよその収納量を検知し、適切な冷却にコントロールする。1週間野菜を保存してみたが、しんなりすることもなく、鮮度を保ったままで生野菜もパリッと食べることができた。

たっぷり入る野菜室。奥までしっかり確認できる。手前には2Lのペットボトルを2列で入れられる

外出先から卵の残量がわかるストックマネージャー

さらに、スマートフォンアプリ「キッチンポケット」と連携した「ストックマネージャー」機能が搭載されている。重量検知プレートが付属しており、卵など管理したい食材を載せてからアプリに登録すると、IoT連携により残量の変動が自動で更新される。スーパーなどの外出先からも残量を確認できるので、買い忘れがなくなるというものだ。

ストックマネージャー機能の重量検知プレート

ストックマネージャーは卵だけでなく、常備しておきたいビールやヨーグルトなど、うっかりするといつの間にか少なくなっている食材のストックに向いている。また、野菜室の手前のスペースに収まるサイズなので、米びつの下に設置するとお米の残量も把握できる。

最初に無線LANなどの設定をする必要がある。「キッチンポケット」アプリをダウンロードし、食材の登録を行なう。

卵を登録する
無線LANに接続してから、アプリで食材を登録する必要がある
卵を全て入れ、100%に設定
卵を2つ使ったところ、80%に表示が変わった
データ更新は「1時間に1回」もしくは、「1日に1回」になるため、リアルタイムで確認するとこのような表示となる

使ってみると現時点では手順が多く、ハードルが高い。こういった設定が苦手な方は、「冷蔵庫の扉を開けて中を確認したほうが早い」と感じるだろう。また、ルーターなどの置き場所にもよるが、無線LANが途切れやすく、今の段階では積極的な活用は難しいと感じた。

ただ海外の展示会では冷蔵庫にカメラが搭載されており、食材が足りなくなると通知してくれるなど、IoTを活用した冷蔵庫が続々登場している。冷蔵庫が単に保存するだけの家電ではなく、IoTで簡単に在庫管理ができるようになれば、よりラクになる。その第一歩として、このような試みに挑戦したことは評価したい。今後は一般的に普及し、より使い勝手も改善されることを期待している。

冷蔵庫本体も「Cool Pantry」アプリをダウンロードしてスマートフォンと無線LANで連携でき、さまざまな設定をしたり、ドア開閉情報などを確認したり、遠隔操作ができる。スマートフォンから庫内照明やランプ表示の明るさなど、細かく設定することも可能だ。「はやうま冷却」「はやうま冷凍」などは、アプリから設定できるので、わざわざ冷蔵室の扉を開ける必要がなく、省エネにもつながる。冷蔵庫との連携は使い勝手が良かった。ただ、ストックマネージャーと本体のアプリが別々なので、それぞれダウンロードして設定などを行なわなければならず、少々面倒に感じた。

クーリングアシストルームの設定をアプリでできるのは便利
本体の細かい設定はアプリでなければできない

整理しやすい真の“大容量”冷蔵庫は使う価値アリ

気になったのは、冷蔵庫の音だ。基本的には静かだが、定期的にブーンという音がする。ちょうど近くに幅68.5cmの他社製冷蔵庫を置いてあったのだが、近くで勉強していた娘が遠い方のパナソニックの冷蔵庫を指さして「あの冷蔵庫、音が大きくない?」と聞いてきた。テレビをつけていたり、音楽をかけていたり、家族で話しているときは気付かないが、まわりが静かなときは気になるときがある。静音性に関しては、もう少し改善していただきたいところだ。

機能面に関しては、実際に料理をする人の気持ちをよく考えて作られた冷蔵庫だ。単に冷蔵庫として保存するだけでなく、クーリングアシストルームを活用してお弁当を冷ましたり、漬け込みを短時間にしたり、野菜を冷凍したり、さまざまな使い方ができる。一度使ってしまうとあまりにも便利で、他の冷蔵庫を使うのがイヤになってしまったほど。

また、冷蔵室、野菜室、冷凍室もとても使いやすい。大容量タイプの冷蔵庫を探す際はカタログの「●●L」という容量の表示を見て、少しでも数字の大きい冷蔵庫を候補に入れるかもしれないが、容量の数字が同じでも、形状によって実際に使える容量は異なる。本製品はデッドスペースができにくく、隅々まで整理して使えるので、食品ロスを抑えたい方におすすめだ。

デザインもよい。流行っているガラストップのツヤツヤした質感ではなく、シックな金属の質感で高級感がある。どんなインテリアにも合うので、ぜひ実物を確認してほしい。

実際に家に置くと派手すぎず、地味すぎず、高級感がある
石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

http://kaden-blog.net/