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今年の高級炊飯器のトレンドは?~新米をおいしく食べるための炊飯器選び
by 神原サリー(2013/11/11 07:00)
今年も家電メーカー各社から炊飯器の新製品が出そろって、売り場をにぎわしている。高級炊飯器という呼ばれ方をするようになって久しいが、各社のフラグシップモデルはさらに単価を上げて10万円超えのものもある。そろそろ買い替えという人や、今年こそ高級炊飯器をという人のために、2013年モデルの特徴をおさらいしてみたい。
2013年モデルの特徴は「炊き分け」と「内釜」
今年の新製品の一番の特徴は、「お米の人気銘柄」や「自分の好み」などに応じた炊き分け機能だ。2012年に初めて“炊き分け”機能を打ち出し、炊飯器のカスタマイズ化を提案した三菱電機の蒸気レスIHは、銘柄炊き分け機能を追加。パナソニックも好みに応じた5つの炊き分け機能や、スマートフォンによる銘柄炊き分けコンシェルジュ機能を搭載している。また、象印マホービンも、炊飯のたびに、前回のごはんについてアンケートに答えていくことで、自分好みの味を実現させる「わが家炊き選択」機能を設けている。
一息ついたように思われていた“内釜戦争”もまだまだ終わりを見せず、東芝の本丸釜や日立の打込鉄釜、象印の極め羽釜など、厚みを増したりコーテイングを施したりとさらなる深化を見せている。タイガー魔法瓶の本土鍋も遠赤効率を高めていてバージョンアップしているようだ。
炊き分け機能が加わったことで、より自分好みの食味や食感に近づけられるのはうれしいこと。毎日使うものなので、蒸気の出る出ないやデザイン性などもチェックして、ぴったりの一台を選びたい。
200℃スチームと可変圧力で“甘み”が際立つ
~パナソニック「スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器」SR-SPX103
追い炊きと蒸らしの工程で過熱水蒸気を噴射することによって旨みをコーティングするパナソニック独自の“200℃スチーム”と、三洋電機から受け継いだ“可変圧力”によって炊飯時にお米をおどらせてしっかりとムラなく加熱する技術が融合され、ごはんの甘みが際立つ炊き上がりを実現。2012年モデルとの味の違いがはっきりわかるほどの進化を見せている。さまざまな機能が融合された機種ながら、本体の大きさは従来モデルベースで手ごろなサイズだ。
「銀シャリ」を基本に好みの5種類の食感が選べるほか、スマートフォン(Androidのみ)との連携でお米の銘柄による炊き分け機能も備えている。お米の種類によって粘りなどの特性が異なるので、全国人気10銘柄での炊き分けができるのは魅力的だ。スマホでの炊き分け設定をした際に、「炊飯ボタン」を押す前に、「あらかじめ水に浸したお米は炊飯ボタンを2回続けて押してください」と表示されるなど、よりおいしく食べるためのアドバイスが得られるのもスマホ連携のよさといえるだろう。
内釜素材や厚みにこだわり、重さが増していく傾向がある中、パナソニックのダイヤモンド竈釜は薄くて軽く、扱いやすい。他にはない特徴なので、年配の人にもおすすめできる。
全国の人気20銘柄のうまみを引き出すモード付きの蒸気レス
~三菱電機「蒸気レスIHジャー炊飯器 本炭釜」NJ-XW104J
水冷タンクを備えることで蒸気の出ない炊飯を可能にし、連続で高温を続けられるためにおいしさの点でも理にかなった手法を採用している三菱の蒸気レスIH。内釜には、IHとの相性がよく蓄熱性の高い本炭釜を用いている。新モデルでは、内釜と本体をぴったりと密着させて熱を封じ込める「熱密封リング」が新たに加わり、炊きあがりにカニ穴が発生するほどの高火力を実現させている。
昨年モデルから業界に先駆けて採り入れたのが、食べる人の好みに合わせ、ごはんのかたさや粘りを15段階の中から選べるカスタマイズ機能だ。2013年モデルではこれをさらに究め、全国のお米20品種に対応した「銘柄芳醇炊き」機能を搭載。おなじみの「あきたこまち」や「はえぬき」はもちろんのこと、「森のくまさん」などの注目品種にも対応している。パナソニックと違い、スマートフォンを使わずに、本体そのものでこの機能が使えるのはうれしい。
また、こうした炊き分けを可能にしている理由の1つが、重量センサーを搭載していること。0.5合を炊いても、5合炊いても、いつも同じようにおいしく炊き上がるのは三菱ならではの特徴だ。
“わが家炊き”選択ボタンで自分好みの味に
~象印マホービン「圧力IH炊飯ジャー極め炊き」NP-WA10-WP
今回、新モデルとして発表されたのは、最上位の「南部鉄器モデル」の次に位置するもので、内釜の厚みや重さが増してバージョンアップされている。内釜についた独自の羽部分に密着して加熱する「かまどヒーター」により、側面からもしっかりと加熱し、大火力で炊き上げる。ごはんは甘みとねばりがある炊き上がりになるのは、従来モデルどおり。
これまでの奥行きのある本体サイズを一新し、コンパクトで高級感のあるデザインになっている。操作パネルがフタの部分に移行したことで、内釜の位置が手前になり、溝に落ちてしまったごはんのお手入れなどがしやすくなっている。
炊いたごはんの味について「かたさ」「粘り」について、それぞれ3つのアンケートに答えていくと、次回はそれを改善した食感に炊き分ける「わが家炊き選択」の機能が搭載されている。毎回答えていくことで、内蔵されている121通りの炊き方の中から、いつの間にか理想的な炊き上がりが選ばれる仕組みだ。
また、象印ならではの取り組みとして、「理想のごはんを炊くための十箇条」を記したアドバイスシートや、お米の研ぎ方などごはんをおいしく炊くためのコツを収録したDVDを同梱。そのほか、炭酸カルシウム+活性炭を独自配合したカートリッジを採用した「ごはん専用の浄水ポット」も別売しており、炊飯器だけに頼らない、更なるおいしさの追求に余念がない。
厚みのある鉄釜でごはんふっくら
~日立「圧力&スチームIHジャー炊飯器 打込鉄釜ふっくら御膳」 RZ-TW3000K-XV
鉄釜の側面部分の厚みを増強することでIHの発熱効率をアップ、従来からの圧力&スチーム炊飯でふっくらとしたごはんを炊き上げる。サーモスとの共同開発により、内釜を取り囲むようなステンレス二重構造の真空断熱層を設けているため、断熱性能が高く、保温時の消費電力が抑えられる点や、追加スチーム機能により長時間保温をしても水分が逃げにくく、おいしさを保つのも特徴。
他の白物家電にも採用しているマグノリアカラーを用い、落ち着いて品のあるデザインで、どんなキッチンにもしっくりと収まりそうだ。炊飯中に発生する蒸気を水にしてためておき、保温時のスチームとして使う機能を備えているため、炊飯中にほとんど蒸気を排出せず、置き場所を選ばない点も魅力的。
真空吸水と丸釜で粒感のあるごはん
~東芝「一品削り出し本丸釜」RC-10VWG
水を伝わってお米に熱が入るため、吸水というのはとても大切。その点で唯一真空吸水を行なっている東芝では、短時間でもしっかり芯まで吸水させることができるので大きな強みといえる。この真空吸水に加え、昨年から採用の本丸釜でかまどのような熱対流を起こし、高火力のカニ穴沸騰で粒感のあるごはんを炊き上げる。
昨年は熱伝導を助ける内釜のコーティングが銀のみだったのもを、2013年モデルではダイヤモンド、銀、銅の3種類とし、それによって価格等のランクをつけている。最上位モデルとなるRC-10VWGでは底面の厚みを7mmとし、WAVE加工でより均等に米をおどらせてムラのない炊き上がりを実現させている。
また、天面の操作パネルにフラットな「スマートタッチパネル」を採用し、操作に必要な情報だけが浮かび上がる仕様にしている。デザイン性は高いが、操作のしやすさの点では好みや評価が分かれるところだろう。
先に説明した真空吸水機能をいかし、吸水しにくい古米にも十分水を吸わせておいしく炊き上げる「ふっくら古米」モードや、早炊きでもうまみがアップする「そくうま」モードなどは特に魅力的だ。
本土鍋×土かまど×可変W圧力でふっくら&しっかり
~タイガー魔法瓶「本土鍋 遠赤天然土かまど THE炊きたて」JKX-S100
昨年モデルでは天然土かまどを再現した300度の蓄熱性と、土鍋の内釜、そして可変W圧力IHの合わせ技による高級炊飯器の登場で注目されたタイガーの「THE炊きたて」。2013年モデルでは天然土かまど構造の遠赤放射率を高め、甘みを引き出している。ふっくらしていながら、外側が崩れることなくしっかりと粒感もあるのが特徴だ。土鍋を採用した内釜はおひつとしても使えるように、ふたも同梱されている。
また、他社との違いとして、プレミアムモデルの追求だけでなく、インテリア性や新しい炊飯スタイルなど、暮らしや家族構成などに応じて多様な製品ラインアップを展開していることがある。
フラグシップモデルとなる「本土鍋 遠赤天然土かまど THE炊きたて」のほかにも、背面の出っ張りを可能な限りなくして「どこから見ても美しい」をデザインコンセプトにした「360°デザイン炊飯ジャー 可変W圧力土鍋炊き」も発売。
さらに、炊飯時の蒸気を利用して同時におかずも作れるという新しい発想が人気の「タクックシリーズ」の第3弾として5.5合炊きのファミリータイプ「みんなのタクック」もラインアップに加わった。同社の独自技術だったが、ここ2~3年姿を消していた「丸洗いできるふた」の機能をこの「みんなのタクック」に採用し、おかずを作った際のニオイなどを気にする人にも気持ちよく使ってもらえるようにという姿勢がうれしい。
おいしいごはんのためには基本を守って
せっかくお気に入りの炊飯器を購入しても、“炊飯器の基本”を守らずに使ってしまっては、おいしいごはんが炊けない。そこで、ここであらためてイマドキ炊飯器の基本について説明しておこう。
・水加減する際には、内釜を平らなところに置いて、左右の水位線で確かめながら行なう。
・内釜を炊飯器本体に入れる前には、底が濡れていないかチェック。濡れていたら、きちんと拭いてから入れること。
・マイコンジャー、IH炊飯ジャーのいずれも、「浸水時間」はプログラムに含まれている。なのでお米を研いで水加減したら、すぐにスイッチを入れてOK。
・「早炊きコース」は浸水時間をカットしているため、炊き上がりはスピーディだが、あまりおいしくないので、緊急の場合のお助けコースと考える。ただし、「お米をセットしたのにスイッチを入れ忘れた!」という場合は、早炊きコースを使うのが賢い方法。
・浸水時間同様に「蒸らし時間」も炊飯時間に織り込み済み。炊き上がりのブザーが鳴ったら、すぐにほぐすこと。
・炊き込みごはんを作るときには「炊き込みごはんモード」で。
さて、いくつくらいご存じだっただろうか。ここで挙げたのはごく一例(一部、裏ワザ的なものも含む)なので、購入したら、まずは取扱説明書を一読することをおすすめする。思わぬ使い方やコースを発見して、ますます愛着がわくことだろう。