長期レビュー
パナソニック「Wおどり炊き SR-SPX103」
パナソニック「Wおどり炊き SR-SPX103」後編
~好みに合わせた炊き分けにおこげモードも。おいしい炊飯器ならコレ
(2013/8/29 00:00)
パナソニックがこの夏発売した、最高級モデルの炊飯器「Wおどり炊き SR-SPX103」について、前編では基本的な炊飯機能を紹介した。パナソニックと三洋の技術を掛け合わせることで、ふっくらした香りの高いごはんが炊けることがわかった。
後編では、各種炊飯コースやスマートフォンとの連携機能など、高級機種ならではの多彩な機能を紹介しよう。
[前編はこちら]
銀シャリモードはおいしいうえに、炊きあがりの硬さや柔らかさも選べる
おいしいごはんの好みは、家庭や人によってそれぞれ異なる。固めのごはんが好きだったり、柔らかいごはんが好きだったりする。
そんな好みに合わせて炊けるのが、「銀シャリ」モードだ。同モードは前回も紹介した通り、甘みやうまみのあるふっくらとしたごはんを炊くモードだが、さらに好みに合わせて「かため/しゃっきり/やわらか/もちもち」の4段階から炊きあがりが選べる。おいしいごはんが炊けるうえ、好みの食感まで選べてしまうのだ。
試しに銀シャリモードの「かため」で炊いたところ、通常の銀シャリモードのふっくら感や香りは変わらない一方で、ごはんは固めでパラっとした食感に変わった。
今度は「やわらか」を選んで炊飯してみると、これも銀シャリモードのふっくら・香りが継続する一方で、ごはんは柔らかく、水分の多さを感じさせる仕上がりだった。
ちなみに、ごはんの食感は炊飯時間で変えているようだ。通常の銀シャリモードの炊飯時間は約48分だが、「かため」の炊飯時間は約43分で、「しゃっきり」は約45分と短い。一方、「もちもち」は約51分で、「やわらか」は約54分と、炊飯時間はかなり長い。
どの炊きあがりでも、銀シャリモードのおいしさを損なわず、好みの硬さに仕上がるのは嬉しい。選んだコースは、炊飯後もリセットされることなく固定されるため、炊飯毎にボタンを押し直すこともない。個人的には、通常の銀シャリモードの味で満足したので、炊き分けモードはあまり使わなかったが、通常モードの食感に満足がいかない方は、このモードで好みの食感を探し出していただきたい。
おこげも作れる! 0.5Lの少量炊飯もOK
本製品では、銀シャリモード以外にも、多くの炊飯モードが用意されている。ざっと並べれば、「エコ炊飯」「高速」「少量」「炊き込み」「かまどおこげ」「カレー用」「おかゆ」「すし」など。これに加えて、玄米や雑穀米用のモードもある。
この中で最もオススメしたいのが「かまどおこげ」モードだ。基本的には銀シャリモードと同様、スチームと圧力炊飯を用いるが、釜底にキツネ色のおこげができる点が大きな違いだ。炊飯時間が54分と長いが、その分を釜底の加熱時間に割いているのだろう。
かまどおこげで炊いたごはんの味は、銀シャリモードと変わらずおいしいうえ、おこげ独特の風味とカリッした食感が味わえる。説明書によると、保温には向かないとのことなので、炊きたてでおいしくいただきたい。
「少量」モードが用意されているのもうれしかった。これは0.5~1.5合の少量のごはんを炊くためのモードで、炊飯時間も48分と銀シャリモードとほとんど変わらないが、炊き上がったごはんはこちらの方がデキが良いように感じる。少ない量でもおいしく炊けるように配慮されているのかもしれない。帰宅後に自分ひとりだけのごはんを炊くためにピッタリのモードだ。
「エコ炊飯」は、本製品の出荷時の初期モードとして設定されている炊飯機能で、銀シャリモードと比べて、炊飯時の消費電力量を約1/3カットするという。ただ、スチーム機能は省かれており、炊飯時間も銀シャリモードより少ないため、ふっくら感と香りがイマイチ。せっかく高い炊飯器を購入しているのだから、このモードはあまり使う機会がないかもしれない。
取扱説明書には、これらの炊飯モードを活用した、どんぶりや混ぜごはん、炊き込みごはんのレシピが掲載されている。今回はこの中から「深川めし」に挑戦してみた。作り方は、刻んだ人参と生姜を内釜に入れ、アサリの茹で汁でごはんを炊き、アサリを混ぜるだけと簡単。アサリと生姜の香りが満載の、とてもおいしい炊き込みごはんができた。なおレシピにはこのほか「牡蠣めし」「欧風チキンライス」「鶏飯」「冷汁」「栗おこわ」なども掲載されている。
電気代表示で無駄な保温が少なくなった
本製品で面白かったのが、炊飯終了後や保温終了後に、かかった電気代を液晶画面に表示する点だ。たとえば炊飯終了後には「約4.8円」と炊飯に掛かった電気代を表示し、保温を切った後は「約6.2円」といったように、炊飯と保温を合わせた料金が表示される。このように事あるごとに電気代が表示されるため、無駄な保温はすぐに切るクセが付いた。
保温機能では、「スチーム再加熱」機能が便利だった。これは保温中のごはんにスチームを投入することで、パサ付きや保温臭を軽減するというもの。保温中に本体のスチーム再加熱ボタンを押すとスタートする。再加熱終了後は、ごはんがまるで炊きたてのようなアツアツになった。
ちなみに、保温開始から約5~6時間後と10~12時間後には、自動でスチームを放出する機能も備えている。
スマホで米の種類別炊き分けが可能。入っている銘柄は限られているのでご注意
さらに面白い機能としては、パナソニックが展開するAndroidスマートフォン用アプリ「Panasonic Smart App」との連携機能がある。本体蓋の右側にあるアイコン部分に、おサイフケータイに対応したスマートフォンをかざすことで、各種機能が利用できる。
アプリの中心機能は、米の銘柄に合わせたプログラムで炊飯する「銘柄炊き分けコンシェルジュ」だ。日本には多様な米の銘柄があるが、その1つ1つの性質に合わせて、おいしさを引き出す炊き方をしてくれるとのことだ。
早速アプリをダウンロードし、銘柄炊き分けコンシェルジュで我が家の銘柄を選ぶ。我が家では、その名のとおりツヤツヤっとした炊き上がりが美しい、山形県の「つや姫」を使っている。
しかし……アプリにはつや姫の名前がない。同じ山形県産の「はえぬき」はあるのに……。
実は銘柄炊き分けコンシェルジュに登録されている銘柄は、2011年度の作付けの上位に入った10銘柄のみとなっている。その10銘柄とは「コシヒカリ」「ヒノヒカリ」「ひとめぼれ」「あきたこまち」「キヌヒカリ」「ななつぼし」「はえぬき」「きらら397」「まっしぐら」「つがるロマン」。つや姫はそれらの銘柄よりも作付け量が少なく順位が低いため、アプリにも登録されなかったということだ。
非常に残念だが、アプリにつや姫が登録されれば、本体を買い換えなくても、つや姫に適した炊飯ができるはず。アプリではこのほか、炊飯や保温の電気代の確認や、予約やお気に入りの炊飯方法の設定もできるが、これらは本体でも操作や確認ができるので、銘柄炊き分けコンシェルジュの充実を切に願う。せめて、上位20銘柄くらいは登録しておいてほしい。
間違いなくおいしいごはんが炊ける炊飯器。“史上最高傑作”も納得
ひと通り機能を紹介してきたが、本製品を一言で表現すれば「間違いなく、おいしいごはんが炊ける」炊飯器であるということだ。銀シャリモードはふっくら感とごはんの香りが素晴らしく、普通の炊飯器とは比べ物にならないほどおいしい。さらに、かためややわらかめなど、おいしさはそのままに好みに合わせて炊くこともできる。おまけに、おこげまで作れてしまう。
あえて欠点を指摘すると、パナソニック独自のスチーム機能を使うために、毎回水容器に水を入れるのが面倒な点か。この水容器に水を入れなくてもエラーなどは特に発生しないし、無しでもおいしいごはんが炊けるが、この給水作業がラクになれば、もっと便利になりそうだ。
パナソニックと三洋の技術が見事に融合した、本当においしい炊飯器だ。「オススメの炊飯器は?」と聞かれたら、間違いなくコレを推したい。一度口にすれば、ごはんのふっくら感と香りの高さの前に、“史上最高傑作”であることに納得するはずだ。