コヤマタカヒロの男の料理道具!
タイガー「土鍋圧力IH炊飯ジャー THE炊きたて JKX-S100」
~ふっくら甘く香り豊か、おこげもおいしい土鍋釜
by コヤマタカヒロ(2013/9/6 00:00)
秋がやってくる。一年で一番ご飯がおいしくなる季節だ。四十男である以上、普段の食生活では、できるだけ炭水化物を食べることを控えているが、元々、一番好きな食べ物は? と聴かれると「白米」と応えるほどに、ご飯が大好きだ。
新米の季節は、ちょっとだけ自分を許して、おいしいご飯を堪能したい。昔のように大盛り飯を食べない以上、よりおいしく炊ける高級炊飯器が気になる存在だ。そこで、今回はタイガー魔法瓶が今年7月11日に発表した「土鍋圧力IH炊飯ジャー THE炊きたて JKX-S100」を取り上げる。
メーカー | タイガー魔法瓶 |
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製品名 | 土鍋圧力IH炊飯ジャー THE炊きたて JKX-S100 |
希望小売価格 | 147,000円 |
購入場所 | ヨドバシカメラ |
購入価格 | 108,000円 |
タイガーの炊飯器は、2006年から土鍋の内釜を採用してきた。土でできた土鍋には、多くの気泡が含まれている。この気泡が空間断熱を行ない、内部の熱をしっかりと保持。炊飯時に高い温度をキープすることができる。
こうした同社の土鍋炊飯器は「土鍋釜」という名称だったが、今回のJKX-S100より、名称を「本土鍋」に変更。新しい「本土鍋」は厳選された土を三度焼きし、さらに表面6層構造を採用することで、従来製品以上の蓄熱性と強火力による沸騰を実現しているという。
さらにJKX-S100では、かまどの土壁構造を模した「遠赤天然土かまど」を本体内部に組み込んだ点が特徴だ。このため、炊飯時の本土鍋の外部温度は最大300℃にまで到達。より高い温度でご飯を炊きあげられる。
ちなみに筆者宅では、現在こそ一般的な炊飯器(東芝製「真空炊き RC-10VYA」の2007年モデル)を使っているが、数年前まではずっと土鍋でご飯を炊いていた。引っ越しのタイミングで長年使っていた土鍋にヒビが入ってしまい、ちょうど子育て期に入ったこともあり、土鍋での炊飯はいったん休止している状態だ。そういう意味でも、手軽に土鍋でご飯が炊けるこのシリーズは、以前から気になっていた。
タイガー魔法瓶の炊飯器といえば、やっぱりおこげ!
JKX-S100が編集部から届いた翌日、早速ご飯を炊いてみた。このときに炊いた米の品種は、山形の「つや姫」だ。本土鍋の内釜に3号のお米をセット。炊飯モードは「極うま白米」コースで、火かげんは中に設定してスタートした。
セットしてからしばらくは吸水の時間。そしてそれが始まると、お米を炊くときの香りがキッチンに広がり始めた。最近では蒸気レス機能をウリにする炊飯器も数多く登場しているが、JKX-S100は比較的しっかりと蒸気が出る。特に圧力が抜けた瞬間は、一気に上記が噴き出していた。このため、キッチン棚に設置する場合は、炊飯時にしっかりと蒸気の逃げ道を考えてあげる必要がありそうだ。
また、蒸気に加えて、ご飯を炊くときのニオイも普段使いの炊飯器と比較して強かった。著者にはそのニオイがおいしそうに感じられたが、妊婦など、ニオイに敏感な方にはちょっとつらいかもしれない。
セットから、約1時間ほどでご飯が炊き上がった。
蓋を開けると非常に艶やかなご飯が炊けていた。写真ではわかりにくいがカニ穴(炊飯時に生まれる気泡によってできるご飯の表面に穴。強火力で炊けている証拠)も見られた。炊きあがりすぐに食したご飯は、ご飯の香りが非常に強く、弾力も豊か。みずみずしく、モチモチした食感が楽しめた。
高級炊飯器が搭載する最もおいしく炊けるコースの炊飯時間としては、特に遅い印象はない。もちろん、早炊きモードなども用意しているため、より短時間でご飯を炊くこともできるが、せっかく10万円超クラスの高級炊飯器を使う以上、最も惜しく炊ける「極うま白米」コースの利用が良さそうだ。
そして、本土鍋ならではの魅力といえば「おこげ」だ。火かげん「中」で炊いたご飯の底面にはしっかりとおこげができていた。炊飯時、そして炊きあがった後に口にしたときに感じる香りの強さはこのおこげができるほどの火力がその理由の1つだろう。
本土鍋と相性のよい炊き込みご飯を作る
「白米」をひとしきり楽しんだあと、続いて炊き込みご飯に挑戦してみた。まずは来たるべきシーズンに備えて牡蠣ご飯だ。今回は冷凍の牡蠣を味付けした出汁に投入して、しばらく鍋で煮込んで牡蠣のエキスを抽出。その出汁でご飯を炊く。炊飯モードは「炊き込み」に設定し、火加減は「中」だ。
ご飯が炊きあがり、蓋を開けると炊き込みご飯ならではの非常に香ばしい香りが漂う。表面は艶やかで、ちょっと水加減が多かったかな? と感じたが、ご飯を混ぜてみるとしっかりとした焦げができていた。出汁をとった牡蠣は、銀杏などとともに本土鍋に投入。サックリと混ぜ合わせて、再び蓋を閉め、しばらく炊き込みご飯となじませる。
数十分後、お茶碗によそってみると、おこげがよりしっかりした色になっていた。見た目は濃いが、おこげの部分も炭化はしておらず、風味のよいおこげの味わいが楽しめた。もちろん、おこげ以外の部分も、みずみずしく、そして柔らかく炊きあがっていた。ただし、炊き込みご飯の火かげんは「中」が限界の印象。これ以上焦げると焦げ臭さが気になりそうだ。
次の炊き込みご飯は、市販の「まいたけ貝柱」(グリコ)の炊き込みご飯の素を使った。さらに冷蔵庫にちょうど舞茸の残りもあったため、パッケージに加えて、舞茸をプラスしている。
牡蠣ご飯では味は問題なかったものの、おこげがちょっと焦げすぎているようにも感じられたため、今回は火かげんを「弱」にした。その状態が下の写真だ。おこげはわずかにできたというレベルで固さはほとんど感じられなかった。おこげの強さは味付けの濃さにも影響されるため、何度か試して最適なバランスを見つけ出したい。
煮込み系料理も簡単にできる
高級炊飯器ながらおかず調理ができることも、JKX-S100の特徴の1つだ。本製品はご飯をおいしく炊くことに注力したフラッグシップモデルだが、おかず単体の調理機能を搭載している。
JKX-S100のおかず調理は、一度沸騰させたあと、95度で設定した時間加熱を続ける仕組み。一般的な炊飯器でのおかず調理と同じく、食材を最初に入れるだけで手間なく作れるのが魅力だ。
ここでは付属のレシピブックに載っていた「スペアリブの梅風味煮込み」と「お手軽鯖大根」を作ってみた。ともにわずかに下ごしらえした食材を本土鍋に入れて、60分、「調理」モードで加熱するだけだ。
スペアリブは骨から肉が簡単に剥がれるぐらい軟らかくなっていた。梅のおかげでしつこい豚肉もさっぱりといただくことができた。
また鯖大根の大根は、箸がすっと入るがちゃんと歯ごたえも感じられる柔らかさになっている。水煮の鯖缶を使ったためか、若干味は薄かったが、おいしく食べられた。
しかし、10万円超の炊飯器でおかず調理をすることには、若干の戸惑いを覚えた。おかずを作る以上、ご飯は必要。だが、JKX-S100でおかずを作ってしまうとせっかくのおいしい炊きたてご飯が楽しめないとう矛盾も生まれる。おかず調理はあくまでオマケ機能と考えるのが良さそうだ。
メンテナンスも簡単。炊きたてが楽しい炊飯器
最後に、メンテナンス性をチェックする。JKX-S100では内ぶたとスチームキャップの2つが取り外しでき、洗うことができる。どちらも取り外しはワンタッチで、構造もシンプルなため、簡単に洗うことができた。メンテナンス性は非常に良い。
こうしてJKX-S100を約2週間ほど使って見たが、その感想はまさにブランド名である「THE 炊きたて」という印象だ。
毎年、仕事がら各社のフラグシップ炊飯器のご飯を食べ比べることが多いが、正直なところ、フラグシップ機の炊きたてご飯は、どれもおいしいのだ。それぞれ差はあるが、すでに好みの領域に入っている。また、炊飯時の調整により、炊きあがりの味わいを変えられる炊飯器すらあるのだ。
しかし、JKX-S100はその中でも「おこげ」ができるという明らかな個性により、より炊きたてご飯が楽しめる。炊飯時に圧力をかけるため、食感は柔らかめで、甘みが強調される傾向にはあるが、炊きたてのみずみずしさと、カリッと焦げたおこげによるコントラストのある味わいが楽しめるのはほかにない魅力だと言えそうだ。
ただし、この高温で炊きあげ、「おこげ」が楽しめる構造は、どうしても保温機能との相性が悪い。実際、「火かげん中」以上で炊いた場合、時間経過によりおこげの範囲が広がり、固さも増す傾向が見られた。
実際、JKX-S100には他社の炊飯器ではあまり見かけない「保温なし」設定や「6時間(3時間)保温」モードも用意している。保温機能はあまり重視していないようで、このため、生活時間の異なる家族が、自由な時間にご飯を食べるといったスタイルや、前日夜に炊いたご飯を翌朝、お弁当に使うといった使い方にはあまり適していないように感じられた。
とはいえ、前述の通り、炊きたてのご飯は風味豊かで非常においしい。他の高級炊飯器と比べるて、お米本来の甘みや香りを存分にたのしむことができる。保温性を重視せず、食事のタイミングに合わせてご飯を炊く。おかずに合わせて火加減を変えて、時にはおこげも楽しみたい。そう考える方におすすめしたい炊飯器だ。