家電レビュー
パナ8万円超えドライヤーの実力 もはや美髪器といっていいかも
2024年10月22日 08:05
この数年、多くの新製品が発表されて盛り上がっているのが高機能なプレミアムドライヤー。今年一番の話題となったのが9月に発売されたばかりのパナソニック「nanocare ULTIMATE(ナノケア アルティメイト)」です。何よりも驚くのがその価格で、上位モデル「EH-NC80」は直販価格で84,150円(2024年10月現在)とかなり強気な価格帯。そこでnanocare ULTIMATEは本当に価格だけの効果があるのか? 実際に1カ月じっくり試用してみました。
大人気シリーズ「ナノケア」とは何が違う?
ドライヤーといえば、風と熱の力で髪を乾かす家電。このため、通常はドライヤーを使うと髪が乾燥ダメージをうけてしまいます。そんななか「むしろ髪がうるおう」と人気になったのが、パナソニックのヘアドライヤー「ナノケア」シリーズです。その美髪効果により、家庭用のヘアドライヤー国内出荷台数シェアは12年連続1位(日本電機工業会による出荷統計)という驚異の記録をたたき出しています。
このナノケアシリーズと新ラインのnanocare ULTIMATE、どちらも核となるのは、パナソニック独自のイオン技術「ナノイー」。イオンを発生するドライヤーは数多くありますが、パナソニックの「ナノイー」は水に高電圧をかけて目に見えないサイズまで微粒子化しているのが特徴。超微粒子になった水分が髪のキューティクルの隙間から浸透し、髪の内側までうるおいを届けるのです。
ナノケアと新nanocare ULTIMATEの違いはナノイーの発生量。ナノケア最上位モデル「EH-NA0J」は高浸透ナノイー発生デバイスを搭載していますが、新ULTIMATEはこの高浸透ナノイーデバイスの第2世代を内蔵します。第2世代はナノイーの発生量が最大10倍にも増えているため、髪へのうるおいは約1.2倍に強化されているそうです。
まずは普通に髪を乾燥! 気になる「風の勢い」は?
ここからは実際にEH-NC80を使ってみます。ドライヤーはT字型で、丸みのあるノズル先の形状が特徴的なデザイン。本体重量は約590gとプレミアムドライヤーとしては標準的ですが、一般的なドライヤーとしてはやや重めというスペックです。
ところで、nanocare ULTIMATEは「美髪」を重視した製品ですが、ドライヤーなので髪の乾燥性能も気になるところ。その点でチェックすると、nanocare ULTIMATEは風量が0.8m3/分と、ナノケア最上位モデルEH-NA0Jの風量1.6m3/分の半分しかありません。ただし、実際に使ってみるとびっくりするほど風に勢いがあります。
我が家にあった大風量で知られる某ドライヤー(風量2.4m3/分)とnanocare ULTIMATEの風速を比較したところ、某大風量ドライヤーが風速22mだったのに対し、nanocare ULTIMATEは風速24mという結果に! スペック上は風量が半分以下にもかかわらず、風速はnanocare ULTIMATEのほうが速いという驚きの結果になりました。
実際に使ってみても、髪が吹っ飛ぶくらいの風量で、大風量ドライヤーと遜色のないスピードで髪がグングンと乾きました。「速乾ドライヤー」としても大満足の結果です。
最近は送風口を小さくすることで、風圧を高くするドライヤーも増えています。じつはnanocare ULTIMATEも本体サイズと比較して送風口の直径は小さめ。送風口サイズだけならDyson Supersonic r ヘアドライヤーやReFa BEAUTECH DRYER SMARTのようなコンパクトドライヤーに近いです。こういった小口径ドライヤーは風が狭い範囲に集中しがち。風を当てる場所を狙えるというメリットはありますが、髪全体を乾かすのにノズルをこまめに移動させないといけないデメリットもあります。
nanocare ULTIMATEは小口径にもかかわらず風をうまく拡散させ、しっかり広い範囲に送風。ドライヤーの風を「広い範囲に当てたいか」「ピンポイントで狙いたいか」は好みによりますが、ズボラな筆者は広い範囲に当てたい派なので、nanocare ULTIMATEの風質はまさに好みにピッタリでした。
一方、ちょっと気になったのが操作性です。nanocare ULTIMATEは本体前面に電源スイッチ、側面に操作表示液晶画面と風量などの操作ボタンがあります。操作ボタンは髪の状態から運転メニューを選択する「パーソナルメニュー」と「風量切替ボタン」「風温切替ボタン」の3つがありますが、個人的に使いにくく感じたのが「風温切替ボタン」。このボタンは押すたびに「温風」、温風と送風を交互に出す「温冷リズム(風量弱の場合は「毛先集中ケア」)」、「冷風」、約60℃の低めの温風で乾かす「スカルプ」、肌に約1分間イオンを送るスキンケアができる「スキン」といったモードに切り替えができます。
筆者は濡れた髪を乾かすときに最大風量かつ高温でドライし、8割ほど乾いたら風量を落として中温でスタイリング、最後に冷風(送風)でスタイルを固定……としたいのですが、そもそも「低めの温風」が「スカルプ」というのがわかりにくいうえ、メニューの順番も「温風→温冷→冷風→中温→スキンケア」と複雑。スタイリングする場合などはこまめに温風と冷風を切り替えたいときも多いので、せめて押している間だけ冷風が出るコールドショットボタンがあるとありがたいと感じました。
美髪メニューはさすがの実力! 髪がツヤツヤしっとりに
ここからはいよいよnanocare ULTIMATEの美髪機能をチェックします。nanocare ULTIMATEは髪の状態にあわせて、ナノイーやミネラル、マイナスイオンをバランスよく放出する「パーソナルメニュー」があるのが特徴。パサつく髪向けの「MOIST」、うねり髪に「STRAIGHT」、べたっとした髪に「AIRY」、手触りをよくする「SMOOTH」(SMOOTHのみEH-NC80だけのメニュー)というメニューを搭載しています。
個人的に一番効果を感じたのがMOIST。パナソニックによると、MOISTは全メニューのなかで、一番ナノイー量が多いメニューだそう。実際に、MOISTで髪に風を送ると、乾燥で広がっていた髪が手で押さえただけでスーッとまとまるのがわかります。しかも、見た目がよくなるだけではなく、ゴワッとしていた手触りが柔らかくなり、しっとりツルンとした質感に。筆者は家電ライターという職業上いろいろなドライヤーを使ってきましたが、正直ここまで短時間で変化がある製品ははじめてです。
ちなみに、スタイリング時には「ボリュームアップ&ストレーター」を使うことも可能です。これは、歯の片側根元から風がでるクシ形状のアタッチメントで、風を当てにくい髪の根元などに風を送ることができるため、髪の根元を立ち上げてボリュームアップなどに便利。また、髪に沿って風を送ることでストレートヘアを作るのにも使えます。
2モデルあるULTIMATEシリーズはどちらを買うべき?
ところで、nanocare ULTIMATEは現在「EH-NC80」と「EH-NC50」の2モデルがあります。今回は上位モデルのEH-NC80を試用しましたが、EH-NC50との違いは付属品とパーソナルメニューの「SMOOTH」の有無。EH-NC50は直販価格59,400円(2024年10月現在)なので上位モデルよりも2万円以上お得に購入できます。SMOOTHメニューが必要ない場合はEH-NC50を購入するのもオススメです。
ちなみにパナソニックによると、SMOOTHは「髪の手触りが気になる」時に使うモードとのこと。筆者が実際に使ってみると「静電気を抑えてサラサラとした髪」になるという印象のモードでした。正直、指の通りはMOISTよりSMOOTHのほうがスッと通ります。ただし、髪のまとまり感やツヤ感はMOISTの方が上だったので、毛量を抑えたい筆者は今後もMOISTがメインになりそう。どの機種が良いかは自分の髪質によっても変わりそうです。
ドライヤーのなかには「使い続けることで徐々に髪質がよくなる」という製品もありますが、筆者はnanocare ULTIMATEのMOISTを一度使うだけで明らかに髪の状態が変わりました。MOISTでスタイリングした初日に、見た目に鈍感な夫が「なんか髪がキレイになっていない?」と聞いてきたくらいの違いです。
ドライヤーに8万円というとかなり高額にも感じますが、今は1万円近い高級ヘアケア製品も多い時代。何年も使えるうえにすぐ変化を実感できたアイテムと考えると、nanocare ULTIMATEは意外とリーズナブルな製品だといえるのかもしれません。